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IRSによるレスキューロボットデモ公開

~5年間の研究成果を披露

HELIOS Carrier
 2006年12月21日、国際レスキューシステム研究機構(IRS)は、明治安田生命ビルアトリウム内にてレスキューロボットのデモンストレーションを行なった。

 今回デモンストレーションを行なったのは、文部科学省による「大都市大震災軽減化特別プロジェクト(略称:大大特)」の中で研究開発されてきた、総勢18のロボットとシステムである。プロジェクトそのものは、その名のとおり“大地震などの大きな災害が大都市で起こった際の被害をなるべく減らす”ために、2002年から2006年度までの5年間をひとつの区切りとして、ハザードマップの作成や建物の耐震性評価・補強など、さまざまな分野から多くの切り口で研究されていたものである。

 その中には「レスキューロボット等次世代防災基盤技術の開発」として、被災者救助にロボットをはじめとする先端技術を活かす研究が挙げられており、IRSを中核として多くの大学が参加していた。そして、その5年間のひとつの成果報告として行なったのが、この日のデモである。レスキューロボットがデモをするには小さなフィールドだったが、各ロボットが約20分の持ち時間で性能と研究のポイントを解説し、小さな子供や大手町のビジネスマンの関心を呼んでいた。


会場となった「明治安田生命ビル アトリウム」。会場左手の石造りの建物は重要文化財の「明治生命館」 木材やパレット、階段が持ち込まれ、それぞれのロボットがその能力をアピールできるように適宜組みかえられていた

瓦礫内で情報収集を行なうタイプ

 「レスキュー」というと、オレンジ色のツナギを着たレスキュー隊員が被災者を担ぎ出して救出しているイメージがあるかもしれないが、この「大大特」で研究されていたのはその「救出」以前に、被災者がいるのかいないのか、いるならどこに被災者が倒れているのか、その情報収集に当たるロボットである。大きく分けて2タイプがあるが、そのひとつが「瓦礫の中に入り込むタイプ」である。

 このタイプで多く利用されているのが「ヘビ型ロボット」、特に東京工業大学の広瀬茂男教授が中心になって開発した「蒼龍」である。同研究室で作られた「IRS蒼龍」とその改良型「蒼龍IV」の発表のほか、神戸大学の大須賀公一教授による「Hyper-蒼龍IV」、東京電機大学の栗栖正充助教授・京都大学の横小路泰義助教授らによる「レーザーレンジファインダ搭載レスキューロボット」など、他大学での研究プラットフォームに利用されたものも発表されていた。ヘビ型ロボットは電気通信大学の松野文俊教授らによる「KOHGA」もデモを行なった。

 また、簡易型の探査ロボットとして大阪府立工業高等専門学校の土井智晴助教授による「くるくる4」と、東北大学の田所 諭教授による「繊毛振動駆動型 能動スコープカメラ」も登場した。「くるくる4」は電源がない被災地でもすぐに運用できるうえ、非常にコンパクト。また、「能動スコープカメラ」は消防隊員が実際に使っているファイバースコープに振動モーターと繊毛を巻きつけているので、今すぐにでも使えそう、という評価を得たそうだ。


「IRS蒼龍」。マイクとスピーカーが組み込まれているので、潜り込んだ先で被災者とやりとりもできる 先端に通常のCCDカメラと熱を感知するサーモグラフィーがあるので、視界が0でも体温で被災者を探し出せる(左下がサーモグラフィー) 【動画】「Hyper-蒼龍IV」。本体の能力はもちろんだが、後ろに伸びている「FST」が角度を計算することで潜り込んだ位置がわかるようになっている

「Hyper-蒼龍IV」のケーブルのアップ 「Hyper-蒼龍IV」に組み込まれたマルチカメラのモニタ(全身に32個の小型カメラがあり、同時に確認できる) 「レーザーレンジファインダ搭載レスキューロボット」の頭に付いているレーザーレンジファインダ部分

【動画】普段は内部に収納されて、壊れないように保護されている 「KOHGA」。前後にカメラがあり、サソリのように逆側に持ち上げることで俯瞰視点にできるようになっている 「くるくる4」。本体には電源などが内蔵されておらず、非常にコンパクトになっている

【動画】「くるくる4」の運用イメージ。有線なので画像も鮮明だ “猫じゃらし”を手で握ったり緩めたりすると動く、あの原理で駆動する。入り込んだ場所がわかるようにセンサをつけるなどの改良も考えられている 【動画】「能動スコープカメラ」の映像と操作系。特に難しいことはなく、直感的に使えるようだ

比較的広い空間でパワフルに探査するタイプ

 一方、完全に潰れていない家屋の中や地下街など、ある程度の空間が確保されている中で探索を行なうタイプのロボットも登場した。

 RoboCupレスキューで優勝するなど好成績を収めている、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 小柳栄次副所長の「Pelican」シリーズや前出の広瀬教授、松野教授など5研究室がかかわった「HELIOS」シリーズ、松野教授単独の「KOHGA2」などが、大柄な機体とアームなどの機能を活かしたパワフルな走破性を見せた。


「Pelican」シリーズのHibiscus。この機体に関しては過去記事を参照 【動画】下面のほぼすべてがクローラーになっているため、どこかが接触していれば駆動力を伝えられるのだ 【動画】カメラを見ながら運転するのだが、操作に慣れているせいかデモの後はブースまでカメラを見たまま戻っていた

「HELIOSVIII」。実用性を考え、先代の「VII」の約半分の重量(45kg)に押さえたアーム型の機体 【動画】障害物を乗り越えるために使える腕の先には、障害物をつかんでソフトにどけることができる“手”が付いている 【動画】「HELIOS Carrier」はアームで繋がれた2機のクローラーで互いに支えることで、かなり大きな段差や急角度の壁も走破できる。アーム自体が空気圧で伸縮する機構も搭載

【動画】「KOHGA2」による不整地走破。“亀の子”になることもなく、まったく問題にしていない 松野教授による「FUMA」。カメラの付いたアームで機体を持ち上げることで段差をクリアできる 「FUMA」は過去の現場の映像をセンシングしたデータに重ね合わせることで、仮想マップの中で操作することができる。視界が悪いときにも有効だ

 そのほか、岡山大学自然科学研究科による「ジャッキロボット」、「カッターロボット」や、湘南工科大学・秋山いわき教授の「レスキュー用生存者探査レーダー」、筑波大学・坪内孝司教授の「マルチセンサヘッド」など、ロボティクス技術から派生した探査機器のデモも行なわれた。


【動画】文字通り“自走するジャッキ”。油圧のジャッキ自体は手動。カッターロボットは10mmの鉄筋まで切断できる 「レスキュー用生存者探査レーダー」。ベニヤ板の下にセンサがあるが、障害物の向こうの呼吸を感知して反応するので、見えないところの生存者も探索できる センサの波形。呼吸の場合、規則的な波が現れるらしい

「マルチセンサヘッド」のデモ。階段の向こうにある人形を、レーザーレンジファインダで探査すると…… 【動画】このような形で3Dのデータとして取り込むことができ、CCDカメラだけではわからない、その空間の情報が手に入る

 それぞれのデモ自体はとても簡易的なもので、「不整地」や「狭あい空間」は角材や木製パレット、ブロックなどで作ったもの。そのぶんロボットの動きや機能ははっきりと見ることができた。

 22日には有楽町の東京国際フォーラムで「大大特」の総括シンポジウムが行なわれる。そちらはまたあらためてレポートする。


URL
  国際レスキューシステム研究機構
  http://www.rescuesystem.org/

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( 梓みきお )
2006/12/22 18:44

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