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【 2009/04/17 】
第15回総合福祉展「バリアフリー2009」レポート
~ロボットスーツ「HAL」や本田技研工業の歩行アシストも体験できる
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「第12回 ロボットグランプリ」レポート【大道芸コンテスト編】
~自由な発想でつくられた、楽しい大道芸ロボットが集結!
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北九州市立大学が「手術用鉗子ロボット」開発
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ROBOSPOTで「第15回 KONDO CUP」が開催
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ヴイストン、秋葉原に初の直営店舗「ヴイストンロボットセンター」、29日オープン
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【 2009/04/14 】
大盛況の「とよたこうせんCUP」レポート
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第33回国際福祉機器展レポート

~介護支援ロボットや電動車いす用ロボットアーム、リハビリ用各種器具など

 東京ビッグサイトにて9月27日~29日の日程で「第33回国際福祉機器展」が開催された。主催は全国社会福祉協議会 保健福祉広報協会で、参加団体数は632。各種車いすや福祉車両、介助器具、リハビリ補助、コミュニケーション器具などが展示されている。今回は、国際モダンホスピタルショウ2006レポートで紹介した入浴補助器具が非常に目立った。

 介護や福祉はロボットの応用領域として必ずあげられる分野だ。ここではロボット技術に関係があるものに焦点をあてて紹介する。

 まずは、Exact Dynamics BVによる上肢(腕や手)が不自由な人の自立を助ける補助アーム「ARM(Assistive Robotic Manipulator)」。電動車いすなどに取り付けられるロボットアームだ。

 電動車椅子のバッテリを使って駆動する。自由度は7で、先端にエンドエフェクタとしてグリッパがついている。およそ1.5kg程度の物体を把持でき、ほぼ人間の手が届く範囲に腕が届くようになっている。眼鏡をかける、食器を扱う、コップに水を注ぐといった高度な作業も可能だという。ブースでは実際に筋肉の障害で上肢にハンデを持つ人がこのロボットアームを扱うデモビデオが紹介されているが、その様子は驚くべきものだ(ウェブサイトでも見ることができる)。

 操作は基本的にジョイスティックあるいはキーパッドを使って行なう。しかし基本的にはコマンド操作の類はできず、一関節ずつしか動かせない。ただ各関節にはエンコーダーが入っていて、手先のグリッパを水平に保ったまま動かすことはできる。また挟み込みや衝突などへの対策もなされている。衝突によって関節位置がずれたときにはリセットで対応する。

 日本の窓口であるテクノツール株式会社機器開発部の島田隆氏によれば「決して高度な技術は使われておらず賢くはない。だが、経験から必要十分な『使える』機能が搭載されている」ロボットアームだという。

 日本ではまだ販売されていないが、現在検討中とのことだ。なおヨーロッパでの販売価格は標準タイプで22,500ユーロ。


ARM(Assistive Robotic Manipulator) 実際には基部から電動車椅子に設置する形になる 操作用キーパッド

 株式会社日立メディコマッスルケアプロジェクトと東京理科大学工学部小林研究室は、圧縮空気を使った空気圧式人工筋肉「エアマッスル」を使った着用型ロボット「マッスルスーツ」や、歩行補助装具の「ハートウォーカー」などを展示している。ハートウォーカーは装着することで健常者と同じパターンで膝や股関節を動かして歩行動作が可能になるという。

 また松下電器産業株式会社は、同じくコンプレッサーを使ったロボットスーツ「上肢リハビリ支援スーツ・リアライブ」を参考出品している。同社の社内ベンチャー制度によって設立されたウェアラブルパワーアシスト技術の研究開発会社・アクティブリンク株式会社が開発したもの。

 半身麻痺になった人がリハビリに使うことを想定しており、健常な腕を動かすと、その動きをセンサーが検知して、反対側の腕に装着したマッキベン式の人工筋肉が動いて、対称な動きを行なう。これによってリハビリになるという。


東京理科大+日立メディコの「マッスルスーツ」 こちらは腰までサポートするタイプ

手の拘縮(こうしゅく)を防ぐことを目的としたサーボによるワイヤー駆動を使った装具 歩行補助装具「ハートウォーカー」。両手が自由に使える点が特徴

松下電器の「上肢リハビリ支援スーツ・リアライブ」 背面からエアコンプレッサーに繋がっている

【動画】動作の様子 概念図

 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所は、「歩行トレーニング用ロボット「Lokomat」」を用いた臨床研究と基礎研究に関するパネル・ビデオ展示を行なっている。実物は見ることができないが、歩行訓練を行なうことで脊髄損傷にどのような影響を与えることができるかという興味深い研究について話を伺うことができた。

 脊髄には歩行の周期的な振動パターンを生み出す、いわゆる「セントラル・パターン・ジェネレーター(CPG)」が存在するが、トレッドミルの上で歩行動作を行なわせることで、CPGに対して良い刺激を与えることができ、それが回復に影響するという。

 身体機能を技術で代償する研究を行なっている独立行政法人労働者健康福祉機構 総合せき損センター医用工学研究部は、立ったままの移動を補助する「立位移動器」(製造:株式会社有薗製作所)や、屋内で介助用車椅子を牽引する自動搬送ロボット「AGV .sd×2」(株式会社ヘッズとの共同研究開発)などを出展している。


国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所による「歩行トレーニング用ロボットLokomat」を使った研究紹介の様子 介護用車いす自動搬送車「AGV .sd×2」 「立位移動器」

 ナブテスコ株式会社は介助用電動車椅子のほか、装着者の歩行速度を検知して自動的に足の振り出し速度をコントロールするインテリジェント義足や、車椅子の階段移動用リフトなどを出展している。

 最新型の「ハイブリッドニー」は、床反力位置を自動判別して、油圧抵抗を切り替えることで急激な膝折れを防止する。リンク機構によって床反力が踵側なら油圧抵抗がオン、つま先側なら自動的にオフになるのだ。これによって電力を使用せずに制御することができるという。また同時に柔らかい空圧制御を用いることで足の振り出しは適切に調節される。もちろん、体重を支持しながら膝を曲げることもできるという。

 移動リフトは車輪とロボットアームが交互に作動し階段を昇降していく仕組みとなっている。


インテリジェント義足 車椅子移動リフトの仕組み

 株式会社エヌウィックは、安否確認機能付き自動排泄処理機「マインレット夢」を出展。排泄物を自動的に吸引、温水洗浄、温風乾燥を行なうという機械で、多くの来場者の注目を集めていた。同社ではこれを「介護支援ロボット」と呼んでいる。

 株式会社西澤電機計器製作所は本や雑誌のページを自動でめくってくれる「ブックタイム」を出展。信州大学中沢研究室ほかと共同で開発したもの。マウススティックや呼気スイッチのほか本体操作でも扱える。

 年をとったら誰もが老眼からは逃れられないが、株式会社日本テレソフトは携帯式電子拡大鏡「AMIGO(アミーゴ)」を出展。文字を大きくして見る、拡大ビューアだ。画面サイズは6.5インチ、重さは600g。バッテリでは3時間程度もつ。背景色や文字色は側面のダイヤルをいじることで6モードから選ぶことができる。軽いのでどこにでも持ち運んで使える点が特徴だ。


介護支援ロボット自動排泄処理機「マインレット夢」 【動画】自動ページめくり器「ブックタイム」

小型の本にも対応できる 携帯式電子拡大鏡「AMIGO(アミーゴ)」

 周南マリコム株式会社の「Kademo(カデモ)」は家電機器と電源コンセントの間に子機を挟み込むことで、家電製品の利用状況を元に遠隔から見守りができる機器。動作状況確認は専用ウェブサイトで行なう。

 株式会社匠電舎は「RFIDを内蔵した絵カードを使った重度言語障害者補助用コミュニケーションエイド」を出展。RFID内蔵のカードをアンテナの上に置き、カードを押すとそのカードに書かれた音声が出力されるというもの。もう少しカードが扱いやすければ現実的かもしれない。

 東邦商事株式会社の室内専用車いす「フリーチェア」は、本体幅50cmとコンパクトで木製。アタッチメントをつけることで簡単に国内最小の電動車いすにもなるもの。


家電を使った遠隔見守りシステム「Kademo(カデモ)」 「RFIDを内蔵した絵カードを使った重度言語障害者補助用コミュニケーションエイド」 室内専用電動車椅子「フリーチェア」

 三菱プレシジョン株式会社は横浜市総合リハビリテーションセンターと共同で開発した、赤外線を使った視覚障害者用音声情報案内システム「TALKING SIGNS」を出展。街角や建物内で、環境側に設置された赤外線の信号をレシーバーで受けて、情報を音声ガイドするというもの。

 日本電気株式会社は同社の画像認識技術「iCamEasy」を使った、白杖認識システムを出展していた。カメラで白杖を認識して音声ガイドを行なうシステムだが、白杖と白い傘の区別もちゃんと行なえる優れ物である。ふだん使っている白杖がそのまま使え、ユーザー側は特別に何もしなくて良い点が特徴。現在、石川県の七尾西湊合同庁舎に導入されているという。

 三洋電機はネットワークカメラを使ったベッド・モニタリングシステムを参考出品。ベッドから離れたことをセンサーで検知するとカメラの電源が自動的にオンになる仕組み。

 また東陶機器株式会社は、立ち上がりを補助するトイレや、ユニバーサルデザイン、バリアフリーデザインが施された水回りシステムを展示している。


赤外線を使った音声ガイド「TALKING SIGNS」システム 「TALKING SIGNS」レシーバー 携帯電話につけるアタッチメント型のレシーバーも開発中

NECの「iCamEasy」を使った白杖認識システム 三洋電機のベッド・モニタリングシステム

TOTOの立ち上がり補助トイレ、トイレリフト。垂直昇降か斜め昇降かはユーザーの状況に応じて選択できる 手すりつきもある。スイッチは右左どちらにも付けられる

 このほか、先日の産総研によるインテリジェント車いす他も展示されている。


インテリジェント車いす 福祉車両は自動車メーカー各社が出展している

あい・あーる・けあ株式会社と今野製作所による「チェアーライダー」は装着すると普通の車椅子が電動車いすになる電動カート 重量は13kg程度で車椅子と同じくらいの重量

URL
  保健福祉広報協会
  http://www.hcr.or.jp/

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( 森山和道 )
2006/09/29 17:43

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