「2009国際食品工業展」開催、食品加工業で活躍するロボット

~「ロボット・フード・パーク」も設置


 社団法人日本食品機械工業会が主催する「2009国際食品工業展(FOOMA JAPAN 2009)」が6月9日(火)から12日(金)までの4日間、東京ビッグサイトにて行なわれた。「FOOMA JAPAN」は東京ビッグサイトの東ホール、西ホールすべてを使った食品加工機械・装置関連の大規模な展示会だ。32回目となる今年は出展者数は665社、2,915間。テーマは「おいしいテクノ、あります」。ロボット業界からも産業用ロボットの新たな用途開拓の場としても注目されている食品加工業界だが、今年は特別企画として西ホールアトリウムに「ロボット・フード・パーク」が設置され、お好み焼きを焼いたり寿司を皿に盛ったりするロボットや、「ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクト」出場ロボットが来場者を呼び込んでいた。多くの自動機が活躍する展示会だが、本誌では昨年同様、ロボットを中心に紹介する。

「ロボット・フード・パーク」

 「ロボット・フード・パーク」では、株式会社安川電機の双腕ロボットを使った東洋理機工業株式会社による「お好み焼きロボット」や、株式会社馬場鐵工所によるスキューズ株式会社のハンドを使った板前ロボット、インタロボット株式会社の「ティッシュ配りロボット」、株式会社楽墨堂の「テーブルロボット」など、本誌読者にはおなじみのロボットが並んでデモンストレーションを行なっていた。「ROBO-ONE」事務局からは「ROBO-ONEお手伝いロボットプロジェクト」に出場した「アリモプレナ」と「ダイナマイザー」が、予選で行なったデモを行なっていた。「ロボット・フード・パーク」は目立つ場所にあることもあり、多くのマスコミがロボットによるプレゼンテーションを取材していったという。

ロボット・フード・パークRooBoによるイージーオーダーロボット「Pul」楽墨堂の「テーブルロボット」。テーブル上にものを載せた状態で倒立振子でバランスをとって走行する
【動画】インタロボットの「ティッシュ配りロボット」【動画】東洋理機工業の「お好み焼きロボット」。味付けのアレンジは音声認識で行なう安川電機の双腕アームを使用。「ロボットの非製造分野への進出の可能性」を探ることを目的として試作したもの
【動画】馬場鐵工所の「板前さんロボット」が寿司を皿に盛る。スキューズのハンドをファナックのアームに付けたものこちらは同じく「パティシエロボット」。アームはデンソーウェーブハンドはエアーによる人工筋肉で動く
【動画】お手伝いロボット。きゅうりを千切りにする「ダイナマイザー」。杉浦さんは「ROBO-ONE」常連【動画】椅子に座るモーションも作成したそうだスミイファミリーの「アリモプレナ」もスタンバイ

 会場内でも今年はあちこちでロボットが活躍していた。押尾産業株式会社のブースではファナックのロボットを使ったビジョンセンサー付き自動充填・キャッピングロボットそのほかを提案していた。半自動の既存の機械とロボットを組み合わせることで作業者1~2名を削減することができるという。また「食材トッピングロボット」は空気を吸引して具材をトッピングしていけるロボット。さまざまな形状の物体を設定変更無しで吸引して置いていくことができる。そのほか、同社の多関節ロボットを使ったシステムをアピールしていた。

【動画】自動充填・キャッピングロボット。エンドエフェクタを回転させ、別の機械と協調して仕事を行なう【動画】食材トッピングロボット【動画】決まった形ではないものも設定変更無しで扱える

 パラレルリンクのハンドリングロボットを使ったシステムのデモも目立った。テンチ産業株式会社のブースでは、三明電子産業株式会社のパラレルリンクロボット「Para-Robo」を出展してデモしていた。省スペースを実現できるという。位置決め精度は±0.5mm。また、ボッシュパッケージングテクノロジー株式会社でも画像認識でコンベア上のワークを認識し作業するパラレルリンクロボットのデモが行なわれていた。120個/分で作業ができる。さらに2個取り、3個取りのエンドエフェクタを使うことで、作業速度を2倍、3倍にできるという。同様にABB株式会社のパラレルリンクのロボット「FlexPicker IRB360」は株式会社ニッコーのブースでも活躍していた。こちらは最大で200個/分の処理能力を持つ。食品の箱詰めを主な用途としている。

【動画】テンチ産業ブースでコンベアで運ばれて来たワークを運ぶパラレルロボット【動画】ボッシュパッケージングテクノロジーのパラレルリンクロボット【動画】2個取り、3個取りのエンドエフェクタも使用可能。最大可搬質量は1kg
【動画】ニッコーブース。ビジュアルピッキングロボット「FlexPicker IRB360」を使ったトッピングロボット【動画】同じく、こちらはエビを扱う

 「ロボット・フード・パーク」では寿司職人ロボット、パティシエロボットとして活躍していたスキューズ株式会社の人工筋肉を使ったハンドは、会場内の株式会社馬場鐵工所ブースでも活躍していた。ただ人工筋肉システムは精度やスピードを出すのが難しい。現状ではまだ課題も多そうだ。同社ではパワーに応じて複数のタイプの人工筋肉を用意しているという。

スキューズのロボットハンド。アームはファナック【動画】スキューズのハンドを使ったロボットがイチゴを運搬するデモの様子スキューズの小型エアコンプレッサ
人工筋肉には種類も【動画】箱詰めしていくロボットも

 オークラ輸送機株式会社はパレットに荷物を積んでいくロボットパレタイザ「A1800」や、ケーシングを行なうケーサロボット「AP30」を組み込んだパッケージング搬送ラインコーナーをブース内で「実演ラインコーナー」として再現、デモしていた。「A1800」はアームを軽量化・高剛性化して1,800サイクル/時の処理能力を実現した。可搬質量は140kg。独自の制御技術で高効率運転を実現し、消費電力を従来比で最大50%削減したという。箱詰めや取り出しを行なうケーサロボット「AP30」は従来比で半分に横寸法をダウンサイジングした。可搬質量は60kg。

オークラ輸送機のケーシングロボット。手前が2軸でケーサロボット「AP30」、一番奥はロボットパレタイザ「A1800」【動画】動作の様子。事情によりアップはなし同社ではロボット販売プロジェクトを展開している

 株式会社尾上機械では、「自動倉庫システム」のデモを行なっていた。在庫管理機と連動し、クレーンが自動でラックを出し入れするシステムだ。標準タイプで高さ21mまで対応しており、原料・資材保管・製品保管などさまざまな用途に使えるという。入庫から出庫までを無人で行なえる。操作はリモコンでも行なえるそうだ。説明してくれた方は「ロボットというほどのものではない」と仰っていた。ロボット倉庫を目指すのであれば、これのさらに上を行かなければならないということだ。

尾上機械ブース自動倉庫システム【動画】自動倉庫システムの動作の様子

 今年の「FOOMA JAPAN」の会場は不況やインフルエンザの影響もあるのか、少しだけ落ち着いた感じがあった。だが、1つ言えるのは、取材撮影の折に「ロボットの媒体なんですが」と申し出ても怪訝な顔をされることが明らかに減った、ということだ。ここでは明らかにロボットといっても良いような機械だけを紹介したが、「ロボット的な技術が入り込んだ機械」ならば、会場のあちこちで見られた。これからもロボットのようなセンシングや精密計測、精密制御の技術は食品加工業界で使われていくことになるのではないかと感じさせられた。少なくとも現場から期待されていることは間違いない。是非、ロボット関係者たちも現場に足を運んでニーズを汲み取り、新たな市場を開拓していってもらいたい。



(森山和道)

2009/6/15 16:36