前回に続いてサービスロボットゾーンをレポートする。サービスロボットゾーンは会場全体の1/3程度、産業用ロボットゾーンの半分ほどしかないが、出展社数は多かった。
なかでも最も大きなブース面積を使っていたのが、富士重工業ブースだ。同社が事業展開している清掃ロボットや、地雷探査ロボット、危険物把持装置のほか、株式会社ツムラとの共同開発である連結式医薬品容器交換ロボットがデモを行なっていた。クリーンルームで動作でき、プラスマイナス5mmの精度で位置決めができる容器搬送ロボットで、2007年の「今年のロボット大賞」を獲得した。
27日に設立記者会見を行なった株式会社ロボテストは、富士重工業ブースの裏にブースを設置し、同社事業をアピールした。製造から含めたロボットづくりの技術習得を目指すところが同社のユニークな点だという。
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危険物把持装置。危険物をエアパッドによる吸着とフィンガーで把持できる
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地雷探索ロボット
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ロボテスト・ブース
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ALSOK(総合警備保障)では、同社の警備ロボットシステム「リボーグQ」を大々的にアピール。特にロボットにオムロンの顔認証システム「OKAO Vision(おかおビジョン)」を組み込んだことで、動き回るロボットによって顔認識が可能になった。事前に顔を登録された人間を、雑踏の中から素早く見つけることができるという。
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ALSOKブース
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顔認証のデモを来場者に対しても行なっていた
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ALSOKの警備ロボットはカスタマイズされてあちこちに導入されている
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ロボットサービスイニシアチブ(RSi)とロボットビジネス推進競技会、独立行政法人産業技術総合研究所は合同でブースを出していた。ブースでは各技術の紹介のほか、RSi-RTミドルウェアの連携デモなどが行なわれた。
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RSi、ロボットビジネス推進競技会、産業技術総合研究所のブース
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RSi-RTミドルウェアの連携デモ
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同じくデモの様子
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日本SGI株式会社は同社が販売している走行ロボット開発支援プラットフォーム「BlackShip」や「セグウェイ」の展開例を展示していた。BlackShipは研究開発に用いられている。たとえば日立製作所基礎研究所ではBlackShipを活用してRFIDリーダをつけて環境情報を読み取りながら移動するロボットを製作し、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術と組み合わせた空間モデルマッピングの研究を行なっているという。
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BlackShip
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つくばチャレンジに出場したロボット
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日立基礎製作所基礎研究所での応用例
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株式会社イクシスリサーチは同社が開発しているEthernet接続4ch DCモータコントローラ「iMCs06」のほか、プラットフォームロボットの「タンクベース」、セガと共同開発した「カードDEチャレンジ・SimROBOT」ほかを展示した。カードDEチャレンジ・SimROBOTはカードを使ってロボットをゲームのなかで組み立てるもので、最後はクイズに答えるようになっている。
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イクシスリサーチ・ブース
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イクシスリサーチのEthernet接続4ch DCモータコントローラ「iMCs06」
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タンクベース。展開時60cm、折り畳み時39cm、重量9kg
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カードDEチャレンジ・SimROBOT
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高校生達に人気
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部品のカード
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株式会社ココロのブースでは診療中の患者が受ける負担を再現できるシミュレーター全身患者ロボット「シムロイド」のほか、アクトロイドの腕や頭部の内部メカが初公開された。なおシムロイドは文部科学省「優れた大学改革教育の取り組み」平成17年度~19年度医療人GP選定事業に選ばれている。
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ココロブース
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アクトロイドの顔
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【動画】動く状態で展示された。近くで見ると歯車の動きまで見られる
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腕の内部も公開された
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【動画】「シムロイド」のデモ。歯科医師研修用
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【動画】シムロイドの動き
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山崎教育システム株式会社ブースでは、育児体感赤ちゃんロボット「マイベビー2」が展示された。主に保育関係の学校で教材として用いられてる赤ちゃんロボットで、ミルク、ゲップ、おむつ、あやすの4つの世話を体験することが出来る。また赤ちゃんを激しく揺すったり叩いたりすると泣き出す。学納価格は68,000円。
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育児体感赤ちゃんロボット「マイベビー2」
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【動画】揺らすと泣く
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株式会社トラストテクノロジーは同社のロボット開発キット「ロボモジュール」をデモでアピール。教育用として、段ボール製ボディのシマウマ型ロボットのデモも行なっていた。
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トラストテクノロジーブース
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シマウマロボットも
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株式会社ビジネスデザイン研究所は、高齢者向けのコミュニケーションロボット「よりそいイフボット」や「ハローキティロボ」を出展していた。来年発売予定の「ポコボット」も参考出品されていた。こちらは高さ40.6cm、重量約6kgの人型ロボットの形状をしたパソコンで、頭部にはウェブカメラとLEDを搭載。ロボット制御ソフトウェア「PoCoBoTWORKS」で周辺機器を連携制御でき、会話によるコミュニケーション機能を持っている。
また同時に同社が国内販売を行なう恐竜ロボット「Pleo」もデモされており、来場者に大人気だった。
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イフボットとハローキティロボ
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ロボット型PC「ポコボット」
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受付ロボットも展示されていた
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【動画】「Pleo」の動作デモ。12月1日から予約受付中
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同様に人垣を作っていたのがタカラトミーによるi-SOBOTだ。i-SOBOTブースでは懸賞バージョンなども含めて、i-SOBOTのカラーバリエーションも展示されていた。残念ながら発売の予定はないそうだ。また、i-SOBOTのモーターが分解され、内部をルーペで見られるようになっていた。
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黒山の人だかりだったi-SOBOTブース
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i-SOBOTブース
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いろいろなi-SOBOT
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カラーバリエーションも
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i-SOBOTのモーター
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システクアカザワのブースではお馴染み小型ロボット「PLEN」がデモを行なっていた。富士通フロンテックブースはサービスロボット「enon」のデモを行なっていた。障害物を認識するセンサー数を倍にして安全性を高めたという。
トピー工業はクローラロボット「S-90」、「S-92」、「T-01」の3機種を出展している。小型カメラを搭載し、遠隔操縦するロボットだ。それぞれ、住宅の床下点検用、プラント配管や空調ダクト、化学工場での火災時などでの使用を想定しているという。
北九州ロボットフォーラムブースでは新日本非破壊検査株式会社が3台の移動台車を連結させて「く」の字型に突っ張らせることで配管内を上って移動する「マルチ自走式配管検査ロボット」がデモをしていた。配管内の傷や減肉検査を行なうロボットだ。
またロボット産業振興会議のブースでは、テムザックやメカトラックスほか九州のロボットや部品がいろいろ出展されていた。
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北九州ロボットフォーラムブース
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【動画】新日本非破壊検査株式会社「マルチ自走式配管検査ロボット」
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ロボット産業振興会議のブース
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マイクロソフトブースでは「Microsoft Robotics Studio」をアピール。複数の会社がRobotics Studioを使ったロボット制御のデモを行なっていた。ZMP社は会期中に記者会見も行なった「e-nuvo Walk ver.3」、テムザックはロボットコントロールユニット「R2C-Unit」を展示していた。
テムザックの「R2C-Unit」は携帯電話網を使った通信制御技術をユニット化したもので、例えばこれをLEGOマインドストームに搭載すれば、簡単に携帯電話網を使った遠隔コントロール可能なロボットができるというもの。テムザックによるマイクロソフトとの協業の第一成果となる。また、株式会社ロボエンジンも「Microsoft Robotics Studio」を使った小型ロボット「EMMA-U0A」の動作デモを行なっていた。
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ZMPは二足歩行ロボットシミュレータをアピール
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テムザックによるロボットコントロールユニット「R2C-Unit」
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【動画】株式会社ロボエンジンによる小型ロボット「EMMA-U0A」の動作デモ
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千葉工業大学/ピューズはレスキューロボット「Kenaf」、モータードライバーとそれを使った「Halluc 2」を出展。
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千葉工業大学/ピューズのブース
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Halluc 2
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fuRoモータードライバー
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アサンテは神奈川県ブースにて、シロアリ対策ロボットのデモを行なっていた。センサー類を内蔵した新型ロボットも合わせて展示されており、実用化に向けて着々と歩を進めているようだ。
同じく神奈川県ブース内でステラ技研は自力走行型の壁面空間作業支援ロボット「天龍」を展示していた。真空吸着用のポンプと自力走行型モータを搭載、6m/分で走行できるという。重量は20kg。ビル壁面での超音波診断や建設現場での簡易資材搬送システムとしてのアプリケーションを想定している。
株式会社キュー・アイは、水中TVロボット等を展示していた。
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シロアリ対策ロボットが並ぶアサンテブース
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新型床下点検用ロボット
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カメラや噴霧器を最初から搭載した
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3つのカメラ映像を見るモニターユニット
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キュー・アイの水中TVロボット
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ステラ技研の壁面空間作業支援ロボット「天龍」
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● RooBOブース
知能技術株式会社ブースでは、株式会社アスウェイとの共同開発である、コミュニケーション可能なテントウムシ型トイレ掃除ロボット「LADY BIRD」を展示していた。これも先日発表されたばかりだ。
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RooBOブース
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知能技術「LADY BIRD」
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【動画】呼びかけに応じて交通情報を案内する様子
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東洋理機工業株式会社ブースでは産業用ロボットを使った「たこ焼き」のデモが行なわれていた。同社で「産業用ロボットを他の使い方ができないものか」と考え、「サービス用途開発に向けた話題作り」としてデモしたもの。産業用ロボットが家庭用のたこ焼き機や竹串を使ってたこ焼きを焼く姿はなかなかユニークで、多くの人々が見つめていた。なお同社が配布しているチラシには「産業用ロボットのアプリケーションシステムのことなら何でもご相談下さい(たこ焼きが本業ではありません)」と書かれていた。
また、その横にはイージーオーダーロボット「pul(プル)」が並べられていた。「コミュニケーションロボットの雛形」として製作されたロボットで、音声認識機能、ネットワーク機能等を保ち、必要に応じて外部機器を接続できる。デザインは有限会社ブリューナク、造形は造形工房ヒムカが手がけており、病院での「患者見守りロボットシステム」、また日本食研の宮殿工場内の展示用ロボットとして既に導入例があるという。
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初めに油を塗るのは人間が行なっていた
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【動画】まず粉を入れていく
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【動画】タコを入れる
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大阪のロボットベンチャー・ヴイストン株式会社のブースでは同社がこれまで開発してきたロボット、販売しているロボットを並べるほか、間もなく発表される新型ホビーロボットも既に出展されていた。
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ヴイストンブース
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近日発表のホビーロボット
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株式会社レイトロンはコミュニケーションロボット「Chapit(チャピット)」を出展していた。
ビー・エル・オートテック株式会社は学習用ロボットキット「VariBo(バリボ)」を並べてアピールしていた。
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レイトロン「Chapit」
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ビー・エル・オートテックのブース
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「VariBo」
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近藤科学ブースでは2足歩行ホビーロボット「KHR-2HV」のデモが行なわれていた。今回の国際ロボット展では、同社ブース以外の場所でもあちこちでKHRの姿が見られた。
双葉電子工業ブースでは、同社のモーターを使った各種ロボットが並べられていた。お客の反応は「非常にいい」とのこと。ロボット展だけに、単に動きを見るだけではなく、構造や内部の制御に興味を持って食いついてくるお客が多かったようだ。
ロシアの会社Android Robotics社のブースでは同社の小型二足歩行ロボット「ドブリーニャ」が展示されていた。Bluetoothを使って操作でき、ときどきデモも行なっていたようだが、筆者は残念ながら動作している様子は一度も見ることができなかった。
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近藤科学ブース
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双葉電子工業ブース
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Android Robotics社「ドブリーニャ」
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有限会社擬人擬工藝は、携帯電話のゲームソフトウェアと連動できる小型エンターテイメントロボット「ぶるクル」を展示していた。「ぶるクル」は縦横高さ23mm程度、電池含む重量10g以下の小型ロボットで赤外線通信で動く。発売予定は2008年夏で、1台あたり1,300円~1,800円を予定しているという。ユニークな動きと一円玉大のロボットの動きに多くの人が魅力を感じていたようだった。
旭光電機株式会社はマスタースレーブを使って三菱重工業のwakamaruを動かすデモを行なっていた。このマスタースレーブシステムは、もともと瓦礫内探索ロボットの位置探索用に神戸大学工学部 大須賀教授らと共同研究中の「FST(フレキシブル・センサ・チューブ)」を使ったもので、従来のシステムと違って人の動きを制約せず、かつ小型軽量である点が特徴。FSTは5cm間隔に配置した各関節の角度情報から軌跡や先頭位置を取得できる。全身型モデルも来年3月に完成させる予定だという。
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旭光電機株式会社ブース
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レスキューロボット用に開発されたFST
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センサーが中に入ったチューブ
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【動画】FSTによるマスタースレーブシステムの動作デモ
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ロボットの受託開発を行なっているセントラル技研工業株式会社は監視カメラモジュール「見て言う蔵」や移動ロボットを出展していた。
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セントラル技研工業ブース
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ロボットカメラ「見て言う蔵」
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● 韓国企業も多数出展
今回は韓国企業の出展が従来にも増して目立った。しかも日本語によるチラシや日本語が堪能な説明員がいる企業ブースが少なからずあり、韓国企業による日本市場への展開意欲と勢いを実感した。いくつかを紹介する。
ED Corporationは「ARO」という等身大女性型コンシュルジュロボットを出展している。胸のモニターで情報提示やゲームなどができるほか、カードリーターなどもついている。
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ED Corporationブース
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コンシュルジュロボット「ARO」
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【動画】AROの動き
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知能型ロボットのプラットフォームなども展示されていた
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ロボット開発キット
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ROBOTIS社はDYNAMIXELで組み上げるロボットキット「バイオロイド」のほか、同社のヒューマノイドロボット「URIA(ユリア)」のデモを行なっていた。
GRANDPORT社は小型ロボット「REO-I」を展示していたが、動作デモは行なっていなかった。HANOOL Robotics社は筒型の移動ロボットをブースで動かしていた。
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GRANDPORT社ブース
robo2_p1310494.JPG REO-I
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REO-I
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HANOOL Robotics社の移動ロボット
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Woori Technology Inc. はマルチテイメントロボット「MURIDER」を参考出品している。マルチメディアプレーヤーとして使えるだけではなく、ホイールで動き回るインテリジェント・アプライアンスとしても使えるロボットだという。
YUJINROBOT社は同社のホームネットワークロボット「iRobi Q」のほか、掃除ロボット「iClebo」のデモを行なっていた。「iRobi Q」はネットワークに接続して、天気予報そのほかのサービスを提供するというコンセプトのロボット。胸はタッチディスプレイになっている。
掃除ロボットはACE ROBOTブースでもデモが行なわれていた。韓国でグッドデザイン賞を受賞したロボットだという。
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YUJINROBOTブース
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同社の掃除ロボット
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iRobi Q
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ACE ROBOTの掃除ロボット「ROWELL PREMIUM」
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■URL
2007国際ロボット展
http://www.nikkan.co.jp/eve/07ROBOT/
【2005年12月1日】2005国際ロボット展開催(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1201/irex.htm
■ 関連記事
・ 「2007国際ロボット展」レポート 【産業用ロボット編】(2007/11/30)
( 森山和道 )
2007/12/03 18:59
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