11月29日、株式会社ゼットエムピー(ZMP)、マイクロソフト株式会社、双葉電子工業株式会社は、二足歩行ロボット教材「e-nuvo WALK ver.3」を開発したと発表し、「2007国際ロボット展」を開催中の東京ビッグサイトにて共同記者会見を開いた。双葉電子工業とZMPがアクチュエータを共同で開発し、統合開発・実行環境として「Microsoft Robotics Studio」を採用した。29日からZMP社のウェブサイトにて、教育機関での実習教育、企業での社員研修向けに販売を開始する。
「e-nuvo WALK ver.3」は、高さ35.3cm、重量2.5kg。片足6×2で全部で12の自由度を持っている。OSはWIndows XP/Vista、通信インターフェイスはUSB 2.0。価格は58万8,000円。教育現場で使われることを想定し、壊れにくく頑丈な設計となっているという。モーションエディタを使うことで、モーションを組むのも比較的容易となっている。
ZMPが今回「Microsoft Robotics Studio」を利用して開発した二足歩行ロボット制御システムでは、ユーザーはPC上のシミュレータであるバーチャルロボットと、実機のリアルロボットの両方を同じプログラムで動かすことができる。これにより、ユーザーはプログラムの開発に集中することができ、アルゴリズムの完成度を事前検証によって高めていくことができるとしている。
「e-nuvo Walk」は、ZMPが2004年から展開している二足歩行ロボット教材シリーズ。芝浦工業大学工学部電気工学科の水川真教授が総監修を行なっている。第2世代までで200以上のユーザーが使用しているという。ZMP社としては、今回「Microsoft Robotics Studio」を採用することで、これまでの機械、電気、電子、制御など、主としてハードウェアよりの背景を持つユーザーだけではなく、ソフトウェア系のユーザー層に対してもロボット活用教育研修事業を展開しやすくなったという。
アクチュエータは双葉電子工業と新規に共同開発した「インテリジェント・アクチュエータ・モジュール(ISM)」を採用した。自動車業界を中心に活用されている通信プロトコル「CAN」に対応したモーターで、「同サイズの小型サーボモータとして世界初ではないか」という。トルクは21kgf・cm(DC9.6V)。今後、ISMは教育機関や企業に対して製品展開していく予定はあるとされたものの、予定価格や販売経路などは明らかにされなかった。
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双葉電子工業とZMPによる新モータ「ISM」
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裏側にフタバのロゴ
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CANを用いた分散制御システムの学習が行なえる
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【動画】ボールを蹴る
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Robotics Studioによるプログラム
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Robotics Studio対応でロボットの上位アプリ開発がより容易になった
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情報処理系のユーザーもターゲットに
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マイクロソフトロボティクスグループのゼネラルマネージャー タンディ・トローワー氏
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会見ではまずマイクロソフトロボティクスグループのゼネラルマネージャー タンディ・トローワー氏が、「Microsoft Robotics Studio」立ち上げ経緯や概要、特徴について簡単に述べた。2004年にロボット市場に対してビル・ゲイツ氏から指示があり、トローワー氏がレポートを提出したと経緯を説明した。ロボット市場には期待を持っているという。トローワー氏は「Micsosoft Robotics Studio」は初心者からベテランまで活用できる統合開発環境だとアピールした。
特に日本はロボットに対して幅広い関心を寄せてきた市場であり、ロボットユーザーによるコミュニティもあり、研究開発を政府も支援していることから、日本市場に対しては重要視しているという。トローワー氏は愛知万博にも訪問し、日本のロボット開発の現状を視察、日本が高齢化社会を迎えていることからも今後の日本市場については注目していると述べた。
「Microsoft Robotics Studio」そのものは、これまでに15万件のダウンロード数があるという。「Robotics Studioで開発されたツールはさまざまなタイプのロボットに使える。多くのRobotics Studioが使われれば、より多くの技術移転がほかのロボットに対して起きることになる」と今後の可能性を展望した。
株式会社ZMP代表取締役社長 谷口恒 氏は、先だって株式会社FRIと株式会社パソナテックと共に設立会見を行なったロボテスト社の事業概要と合わせてZMP社の事業について述べた。「Microsoft Robotics Studio」上で動作する2足歩行ロボットシミュレータを同社が提供することでロボット開発が進むとし、「Micorosoft Robotics Studio」がハードウェアとソフトウェアをつなぐ架け橋になると期待しているという。「ロボットが大衆化を迎えるための第一歩」とし、ミドルウェアができることで、従来はあきらめていたような開発が可能になるのではないかと語った。
なお、マイクロソフトを選んだ理由のうち、もっとも大きなものは、「Microsoft Robotics Studioを使った教材が欲しい」という実際のユーザーからの声があったことだという。そのほかのミドルウェアとの比較は行なっていないという。
双葉電子工業株式会社 代表取締役副社長 金綱伸光氏は、「今回は第一ステップであって、これからどんどん製品を発表していく」と述べた。双葉電子工業のサーボモーターはホビーロボット用としても用いられている。
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株式会社ZMP代表取締役社長 谷口恒 氏
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双葉電子工業株式会社 代表取締役副社長 金綱伸光氏
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【動画】ZMP坂井氏によるデモの様子
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【お詫びと訂正】初出時、双葉電子工業株式会社 金綱伸光氏のお名前を誤って表記しておりました。お詫びとともに訂正させていただきます。
■URL
ZMP
http://www.zmp.co.jp/
e-nuvo
http://www.zmp.co.jp/e-nuvo/
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/ja/jp/
Microsoft Robotics Studio日本語ウェブサイト
http://www.microsoft.com/japan/robotics/
双葉電子工業株式会社
http://www.futaba.co.jp/
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( 森山和道 )
2007/11/30 00:39
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