5月27日~30日の日程で、東京ビッグサイトにて「2008国際食品工業展(FOOMA JAPAN)」が開催されている。主催は社団法人日本食品機械工業会。今回で31回目となる展示会で、食品製造の川上から川下にいたるまで、開催史上最大規模となる705社が出展している。テーマは「食と機械の未来が、ここにある。」。東京ビッグサイトの東西両ホールを使用した大規模な展示会だ。
会場内ではいわゆるFA、大規模な食品加工用の巨大な攪拌機械や自動梱包機械、搬送機械のほか、小規模な店内でも活用可能な小型自動機械に至るまで、さまざまな機械が展示されている。多くの機械は実働可能な状態でデモンストレーションされており、会場内ではフライヤーからは揚げ物、業務用オーブンからは焼きたてのパンなどのにおいが立ち上り、それが自動スライサーで切断されて、来場者に配布されている。空腹状態で行くと、ちょっと困ってしまう展示会である。
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コテのようなアームが鯛焼きを持ち上げる
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【動画】次々に焼かれていく鯛焼き
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さてロボットだが、目立ったのがFAと産業用ロボットのファナック株式会社によるビジョンセンサー付きロボットアームの導入例だ。同社の産業用ロボット(M-430iAを使ったビジュアルトラッキングによる高速ハンドリング)は2007年の「今年のロボット大賞」も獲得した。
押尾産業株式会社のブースでは液体の入った袋の箱詰め作業を行なう多関節ロボット、そしてピッキングロボットとしての活用例が実際にデモンストレーションされている(同社ウェブサイトによるロボット解説はこちら)。
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押尾産業株式会社のブース。2台のロボットを使った展示を行なっている
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「今年のロボット大賞」を獲得した「M-430-iA」シリーズを使ったロボット
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【動画】動作の様子
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こちらはソース袋など小型の物体を吸引で操作するロボット
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カメラ、エンコーダ、赤外線センサーなどを使って把持すべき物体の位置と置く場所を正確に認識するロボットシステム
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認識状態はティーチングペンダント上に表示される
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【動画】動作の様子
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【動画】こちらは株式会社馬場鐵工所ブースのロボットハンドリングシステム「焼き菓子トレー詰め装置」
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また、株式会社馬場鐵工所(Avantec)のブースでは、ロボットハンドリングシステム「焼き菓子トレー詰め装置」として、同じく「M-430-iA」シリーズを使ってまんじゅうをピックアップしてトレーに置くロボットのデモが行なわれている。ブースではファナックの説明員が解説を行なっており、同社らのロボットを使った食品加工業界進出への意気込みが感じられた。
矢崎化工株式会社は、無人搬送システムの展示を行なっている。同社では床上に貼られた磁気テープによるラインをガイドとして動く「フリークル」というAGV(Automatic Guided Vehicle)を販売している。作業工程に応じて移動機やコンベアと組み合わせ、組み立てラインや搬送装置、動く作業台として使われている機械だ。
同社のAGVは形状やサイズ、ソフトウェアの変更がユーザーによって行なえるため、生産システムの変更にフレキシブルに対応できるという。動作は床上にコマンドテープを貼るだけで、停止や速度切り替え、方向切り替えなどが可能だ。速度は分速4m~50mまで可変。大きさや牽引力も用途に応じてさまざまなタイプがあるそうだ。標準タイプの「FH-L50060」の場合は牽引力26kg、電源電圧はDC24V、自重は74kg(バッテリを除く)。搬送総質量はAGV含めて600kg。
なおこのような搬送ロボットでは、たとえば自動車業界など人件費が比較的高い業界では導入が進んでいるが、パート労働者の多い食品業界では、まだまだこれからの段階にあるそうだ。
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矢崎化工の無人搬送システム「フリークル」
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【動画】動作の様子
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【動画】磁気を使ったコマンドテープによって動作する
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古川機工株式会社は三菱重工製のロボットアームに取り付けるエンドエフェクタを出展してデモしている。パン種やミンチ、ジャムやマヨネーズなどやわらかな、ゾル・ゲル状の「ワーク」(対象)の形をくずさず、そのままの状態ですくいあげて移動する、すくいあげ移載機「swiTR(スイットル)」だ。現在、特許を申請中とのこと。なお名まえは「Special World Idea Technology Revolution」の略称。
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古川機工のすくいあげ移載機「swiTR(スイットル)」
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【動画】動作の様子
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株式会社ニッコーは「高性能切り身ロボット・プロフェッショナルジュニア」を出展。これは、事前に着る前のサケの重量を測定した上で各切り身の重量を指定すれば、その重さに応じて自動的に切り方をコンピュータが判断して切断してくれるシステムだ。切断対象はあくまでサケであり、構造的なばらつきはそれほどない。だから重量指定だけできっちり切ってくれるというわけだ。
また、ABBの高速ピッキングロボットシステム「Flex Picker」も合わせてデモされていた。
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切り身ロボット「プロフェッショナルジュニア」
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操作側から
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切る前の魚体の重さを計測する
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【動画】切断の様子。角度が悪くて見えないが刃物でスパスパと切っていく
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切ったあとはこのとおり
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高速ピッキングロボットシステム「Flex Picker」
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【動画】動作の様子
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【動画】形状を認識して正確にピックアップしていく
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オムロンはカメラを使った異物混入、文字検査機能システムを展示している。また日立は現場で使える防塵防滴タッチパネルなどを出展していた。
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オムロンのビジョンセンサー「FZ2」。一個につき72ミリ秒でチェックを行なう
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より安価なほかのシステムも合わせて展示されている
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液晶モニター一体型ローコスト視覚センサー「ZFV-C」
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日立タッチパネル情報端末「NR5」
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食品加工現場で使えるように防塵防滴ファンレス
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また、展示会場内の「アカデミックプラザ」ではさまざまな大学による研究がポスターで紹介されている。ここでは、立命館大学ロボティクス学科平井研究室から、立命館大学知能情報学科田中研究室、大阪電気通信大学情報工学科登尾研究室と共同で行なわれた「レオロジー物体のシミュレーションと力学パラメータの同定」という研究が紹介されている。
これは食パンのようにやわらかな物体を、これまたやわらかい指先を持ったロボットが把持しようとしたときの物体変形などをシミュレーションすることを目的として行なわれた研究だという。
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ポスター発表が行なわれているアカデミックプラザ
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立命館大学ロボティクス学科平井研究室ほかによる「レオロジー物体のシミュレーションと力学パラメータの同定」
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レオロジー的変位特性を再現するために「3要素モデル」を提案
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3次元モデルの動的変形シミュレーションを行なった
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食品加工業界でさまざまな「自動機械」が活躍していることが実感できる本展示会だが、全体を見渡しても、いわゆるロボット、「知能機械」の姿はまだまだ少ない。逆にいえばまだまだ入る余地があるということだとも言える。しかしながらコストの問題は大きい。この展示会をざっと見るだけでも、さまざまな、機能的な機械が既に現場で欠かせないものとなっていることが分かる。そこに新たにロボット技術を導入しようと思ったら、既存の機械以上の能力を発揮する必要がある。ロボット関係者が現場のニーズを知るためにも、この展示会は良い機会となりえるかもしれない。
■URL
2008国際食品工業展
http://www.foomajapan.jp/
( 森山和道 )
2008/05/28 16:18
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