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身の丈のロボットイベント「ROBO_JAPAN」終了、来場者数は55,696人
~一般からのロボットへの興味は5年前から変化なし?


会場の様子
 29企業、7大学・専門学校、7団体が出展した「ROBO_JAPAN」が終了した。当初、2000年頃のロボットブーム立ち上がりのときに開催された世界初のパートナーロボットの博覧会「ROBODEX」の後継というふれこみで始まったこのイベント。しかしながら、主催側の思惑ほど出展者・スポンサーが集まらず、結局のところは規模を縮小して開催された。使用したホールはパシフィコ横浜のDホールのみだった。

 「ROBODEX」のときと違ってロボット事業そのものから撤退してしまったソニーはもちろん、本田技研工業からもブース出展はなく、メインステージでのASIMOのデモンストレーションのみ。NECやサンヨー、パナソニックといった家電関連企業からの出展はなし。一時は期待されたトヨタ自動車からの出展がないと決まったことが決定打となり、来場数減少を予想した多くの会社が出展を控え、小規模なブース出展も減ってしまったと聞く。既に実用化されているロボットの出展も限定的だった。さらに「ROBODEX」のときには初めて発表された大物ロボットも出展・初公開されたのだが今回はそれもなかった。プレスと関係者内覧会の日にはお祭り騒ぎのような雰囲気はまったくなく、どちらかといえば閑散としていた。

 ところが、最終的な来場者数は55,696人を記録した。午前中、天気が悪かった初日こそ14,177人に留まったものの、2日目は21,855人が来場。3日目も19,664人が来場した。チケット売り場の行列などはほとんどなかったが、特に大勢が来場した2日目は、会場内はむわっとした熱気に包まれていた。Dホールのみを使った、どちらかといえば地味なロボットばかりの展示会でのこの数字。大手スポンサーこそつかなかったものの、来場者数だけから判断すれば、十分成功イベントだったと言えるだろう。ただし、子ども達も含む数字であるため、イベントとして黒字か赤字かはまた別の話だ。


 会期日数、規模やイベントの性格も異なるのだが「ROBODEX」のときと比較してみよう。ホンダからは「ASIMO」、ソニーからは新型「AIBO」、ソニー「SDR-3X」が一般初公開された「ROBODEX 2000」の来場者数は50,219人(会期は2000年11月24日~26日の3日間、出展社数は17団体)。会場スペースを1.5倍にし、ソニーから「SDR-4X」が展示された「ROBODEX 2002」は66,264人(会期は2002年3月28日~3月31日の4日間、27団体が出展)。ソニー「SDR-4X II」や産総研「HRP-2 Promet」が一般初公開となり鉄腕アトムの誕生日を記念するという形を取った「ROBODEX 2003」は67,094人だった(4月3日~6日の4日間、38団体が出展)。来場者数だけ見れば決して見劣りしない数字だと言える。ちなみに国立科学博物館で行なわれた「大ロボット博」の来場者数は2007年10月23日~2008年1月27日の3カ月でおおよそ25万人超と聞いている。

 今回とは対照的に多くの家電メーカーからもロボットが出展されていた「ROBODEX 2000」のときには最終日には午前中に当日券が完売になってしまい、桜木町の駅前にまで3時間待ちの行列ができていた。今回、そのようなことが起きなかったのはなぜか。おそらく、会場内に来場者が滞留しなかったことが理由だろう。まず、大手スポンサー企業の巨大なイベントステージが今回は設置されていなかったため、会場内に空間的にもかなりの余裕があった。また、ROBODEXのときは基本的に一度出たら再入場できなかった。だが今回は会場内のトイレ数が少なかったこともあり、半券を見せれば再入場が許されていた。これらのことが観客の動線に影響を与えたのだと考えられる。また、食事スペースが会場外に取られており、そこへの出入り通路が開放されていたため空気が流れていたことも観客たちの感覚に影響を与えたのかもしれない。


会場の様子(wakamaruブース付近) 【動画】会場の様子 ホンダ「ASIMO」のステージを見つめる人々

プレス内覧会とは一転して活気のあった会場

パシフィコ横浜
 さて筆者が個人的に一番気になったのは、前日に行なわれたプレス向け内覧会のときの会場の様子と、実際の会期中の会場の様子の落差である。会期中は多くの子連れファミリーが会場を訪れた。筆者が見る限り、彼らはみなロボットとのふれ合いを楽しんでいたようだ。今回のイベント企画に携わった千葉工大fuRoの先川原正浩氏は「さわった感動は見る感動よりもずっと大きい」と語る。大きな特徴だが、今回の「ROBO_JAPAN」会場では基本的にロボットと来場者を区切る柵がないところが多かった。子ども達は嬉々としてロボットに直接ふれることができた。子どもたちが喜ぶ姿を見て親もまた楽しそうだった。

 「ROBO_JAPAN」の会場は、もともと休日は家族連れでにぎわう横浜みなとみらい地区にあるパシフィコ横浜である。中には本当にふらっと来て楽しんで喜んで、という人々も少なくなかったようだ。ビッグサイトや幕張メッセで行なわれるビジネスショーとは全く異なるイベントの顔である。

 今では、秋葉原のロボット専門店や、大手家電量販店に行きさえすれば、ホビーロボットは店頭で見ることができる。だが会場ではそれらのロボットでさえ多くの来場者の注目を集め、そこかしこで記念撮影の対象となっていた。外国人の姿も多かった。会期中に行なわれた二足歩行ロボットの格闘大会「ROBO-ONE」に至ってはまさに黒山の人だかり。ストーリーのないロボットバトルに対して拍手が沸き上がっていた。内覧会のときにゆったりしすぎているように思えた通路幅は、会期中はむしろちょうどいいくらいだと感じた。

 結局のところ、各ロボットの知名度はホビーロボットやトイロボットであってもまだまだ高くない。実物のロボットを見たことがある人たちとなるともっと少ないのだ。


レゴマインドストームNXTの工作教室の様子 京商「MANOI」ブース タカラトミーブース

iRobot「Roomba」のブース デンソーウェーブのクレーンゲームには行列ができた 千葉工大ブース。肩車しているお父さんたちの姿は多かった

パネル展示だけの「今年のロボット大賞」も多くの人が見入っていた
 ビジネスショーである「2007国際ロボット展」の来場者数は2007年11月28日~12月1日の4日間で104,211人。それに比べると一般の人の興味はまだまだであるとみることもできる。また、パートナーロボット、次世代サービスロボットをめぐる雰囲気は、2005年の愛知万博(愛・地球博)をピークに、高原状態にあると見るのが一般的だ(愛知万博で行なわれたプロトタイプロボット展の来場者数は11日間で約123,000人)。

 今回のイベントについても開会前には色々な声が聞かれた。だが「ROBODEX」の数字と比較すると、一般の方々のロボットへの興味や関心、期待は、ロボット関連業界の人たちが考えているほど特に上がってもいなければ特に下がってもいないのではないだろうか。ロボット業界内部の人たちだけが勝手に盛り上がったり落ち込んだりしているのかもしれない。「ROBODEX」のときには、これから新しいロボット産業を立ち上げるぞという雰囲気や勢いが会場内の演出にもほどこされていた。それは二足歩行ロボットが歩行するだけでどよめきがわいていた当時ですら背伸びしているようにも思えた。ある意味、今回の展示会は「身の丈」に戻っただけとも言える。これが今のパートナーロボット、家庭向け次世代ロボットの現状だと見るのが妥当なのかもしれない。

 来場者達がどんなプロフィールなのかについては筆者自身は知り得る立場にない。だが、来場者たちがロボットに対して好意的な層、あるいは好意的な人と近しい関係にある人々であることは間違いないだろう。


キャズム
 今回行なわれたセミナーのなかで、iRobotの会長、ヘレン・グレイナー氏は、ハイテク分野のマーケティング・コンサルタントであるジェフリー・ムーアの著書『キャズム ハイテクをブレイクさせる「超」マーケティング理論』(翔泳社)の図を示した。ベストセラーなのでご存じの方も多いと思う。ハイテクオタクである「イノベーター」、ビジョン先行派の「アーリーアダプター」は比較的早期に新しい商品に飛びつく。だが、そこから次の段階、価格と品質を重視する「アーリーマジョリティ」への間は連続的ではなく、ギャップ(キャズム)がある、という話である。多くのハイテク商品はこのキャズムにつまづき、「アーリーマジョリティ」のところまで辿り着くことなく市場から姿を消していく。

 おそらく、実際のロボットに対して深い知識は持たないものの、このようなイベント会場にわざわざ来てくれる人たちは、「アーリーマジョリティ」の一番左端の人たちなのだろう。彼らは「アーリーアダプター」ではない。だが、ロボットに対して好意的な目を持っている彼ら「アーリーマジョリティ」のところにまで届く商品、抱えている問題を解決してくれる「ホールプロダクト」であれば購入してくれる。それを作ることができた人たちが成功する。展示ブースの中にいる人たちと外にいる人たち。いま、目の前にあるのが「キャズム」だ。そんなことを考えながら会場を歩いた。


ROBODEXから5年、今後の展開が鍵

 会場内で行なわれた「第14回ROBO-ONE」では、1mを超えるロボットが登場し、優勝した。大型ロボットからだんだん小さくしていって等身大を実現していったのではなく、個人の趣味である30cmサイズのロボットから徐々に大きくしていくことで等身大ロボットが生まれたのである。今後、さらに高精度な制御やセンシング、知能技術においても同様の発展が起こるのであれば、「ROBO-ONE」ならびに非製造業向けロボットの将来は明るいと言える。少なからぬ人が期待している、パソコンと同じようなロボット技術発展の道のりもあり得ると思えるからである。

 優勝した前田武志氏は、ロボット単体を作る能力のみならず、ロボットを作り続けることのできる環境も含めて、時間をかけて構築してきた人であると筆者は考えている。以前本誌でもインタビュー記事でお伝えしているとおり、自分自身もビジネスになるとは思っていなかったロボットをビジネスに変えていける社長との出会い、そしてその後の発展過程は、ベンチャー企業のありかたの1つとして参考になるだろう。何事も一朝一夕で可能になったわけではないということである。


ROBO-ONEを見つめる人々 受賞ロボットたち 優勝した前田武志氏

 「ROBO_JAPAN」は「ROBODEX2003」から2005年の愛知万博(愛・地球博)をはさんで5年ぶりに実現したパートナーロボット専門の展示会イベントだ。先述の先川原正浩氏は「2、3年に一度、このようなロボットイベントをやりつづけることが、『ものづくり』への興味喚起にも繋がる」と語る。子どものころに両親とロボットイベントに行って1日遊んだという記憶はずっと残るだろうし、彼らこそ将来のロボット購買層になるはずである。「ROBO_JAPAN」がそのまま次へと繋がるかどうかは今のところ分からないようだが、今後に期待したいところだ。

 また、会場には進路選択において重要な岐路にある中学生や高校生たちの姿は、他の年齢層に比べると少なかったように思う。受験や学生生活で忙しい彼らに対してロボット、機械工学、情報工学についてアピールするためにはまた別の手段が必要なのかもしれない。まだまだ、ロボット工学、ロボットビジネスを盛り上げるためにはさまざまな模索が必要だ。


URL
  ROBO_JAPAN 2008
  http://www.robo-japan.jp/robo/

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( 森山和道 )
2008/10/20 13:55

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