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小嶋秀樹氏(左)とマーク・ミカロウスキー氏
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1年半前にインターネットで流した動画をきっかけに、世界から注目が浴びるようになった、踊るぬいぐるみ型ロボット「キーポン(Keepon)」が商品化されることになった。このロボットの開発に取り組んでいる日米の研究者が共同で、米国にベンチャー企業を設立し、ロボットの販売を始める。まずは主に研究機関や博物館などに向けて販売するが、将来はエンタテインメントの領域を含め、各分野で利用できる新しいロボットの開発・販売にも取り組む方針だ。
新会社を設立したのは、キーポンの生みの親である小嶋秀樹氏と、共同研究相手であるマーク・ミカロウスキー氏の2人。小嶋氏は9月末でこれまでキーポンの開発に取り組んできた情報通信研究機構(NICT)を退職し、10月1日付けで宮城大学事業構想学部デザイン情報学科の教授に就任した。ミカロウスキー氏はロボットの研究で著名な米カーネギー・メロン大学(CMU)の博士課程に在籍する。新会社の名前は「ビートボッツ(BeatBots)」で、CMUのある米ペンシルベニア州ピッツバーグ市を本社とする。両氏がこれまでにロボットの競技会で獲得した賞金と個人資金を使って創業した。
黄色い雪だるま型のキーポンは、もともとはロボットを使って子供のコミュニケーション行動を観察することを目的に小嶋氏が開発した。キーポンは広角ビデオカメラの目、マイクロフォンの鼻を持ち、人間と視線を合わせ、首をかしげたり、体を上下に伸縮させることで「感情」を表すことができる。同氏は特に、過去5年間は自閉症児とキーポンとのやり取りを通じ、自閉症の原因に関する新たな考え方や治療法を導き出す研究に取り組んできた。
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【動画】CEATEC JAPAN 2008で子ども型ロボット「Infanoid」(写真手前)とともにデモをするキーポン
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一方、研究を通じて小嶋氏と知り合ったミカロウスキー氏は、キーポンが音楽のリズムに合わせて踊れるようなソフトウエアを開発した。ミカロウスキー氏が昨年、ノリの良い音楽に合わせてキーポンが踊るビデオを、YouTubeを通じて世界に配信したところ、人気が爆発。その後、世界各国でさまざまなイベントに招待されるようになり、「商品化はしないのか」と聞かれるようになった。ミカロウスキー氏の最初のオリジナルビデオはここ、その後、ハイテク情報誌の「ワイアード(Wired)」が2007年のNextFest(ネクストフェスト)のプロモーションのため、キーポンと米国のロックバンド「スプーン(Spoon)」を共演させたビデオはここで見ることができる。
ビートボッツ社の最初の商品が現行キーポンのコピーで、商品名は「Keepon Pro」。価格は約3万ドル(約300万円)で、日本のロボットメーカー、ココロが生産する。小嶋氏が在籍していたNICTには、契約に基づいてロイヤリティーが支払われる。最初は主にキーポンを使って人間とロボットのインタラクション(HRI、Human Robot Interaction)の研究に取り組むことを望む研究機関や、ロボットを展示する博物館などを対象に販売する。ただ、ビートボッツ社は「研究やセラピー、エンタテインメントの分野で幅広く利用されるさまざまなロボットをデザインし、商品化することを目指す」(ミカロウスキー氏)としている。「Keepon Pro」に続いて、「近い将来、よりシンプルな機構で駆動できる、より低価格のキーポンを発売したい」と小嶋氏は話している。
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( 影木准子 )
2008/10/02 17:00
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