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世界のロボットが競演−米ハイテク見本市「WIRED NextFest」レポート
〜史上最大のロボット・コンテストの発表も


今年のNextFestはロサンゼルスのコンベンション・センターで開かれた
 米ロサンゼルス市で9月13日〜16日(現地時間)、ハイテク情報誌「WIRED(ワイアード)」の主催する技術見本市「NextFest(ネクストフェスト)」が開催された。この行事は小中学校、高校の生徒や先生を中心とした一般人に世界各国で開発が進む先端技術を紹介するのが目的で、4回目となる今年は150件以上の技術の展示があった。中でもロボットはNextFestの大きな部分を占めており、今回は賞金総額が史上最大のロボット・コンテストに関する発表があったほか、日本をはじめ、欧州や中国、アラブ首長国連邦のロボットもお目見えした。


Googleがロボット・コンテストに資金供与

 祭典初日に大きな注目を集めたのは、月面のロボット探査実現に賞金総額3,000万ドル(約35億円)を提供するという「Google Lunar X PRIZE」の発表。民間主導によるコンテスト形式で世の中に技術革新をもたらそうと活動する米国の非営利団体「X PRIZE財団」とインターネットの巨人、Googleが手を結び、大会を実施する。

 民間の宇宙航空機を月に軟着陸させ、ロボットを使って月面を500m以上探査、ルールで定められた動画やデータを地球に送信できた最初のチームには2,000万ドルが贈られる。準優勝や特別賞も用意されており、賞金はすべてグーグルが提供する。

 X PRIZE財団の創設者で会長のピーター・ディアマンディス氏によると、コンテストの目的はこうだ。「1960、70年代の最初の月面探査は政府主導で、その後、打ち切られた。しかし月ではまだやるべきことがたくさん残されている。例えば、月に豊富なシリコンで太陽電池を作って発電し、エネルギーを地球に送ることができる。コンテストは、いずれロボットを使ってこうした作業を月面上で自動化できるようになることを示すための第一歩だ」。名付けて「Moon 2.0」。インターネットの世界では「ウエブ2.0」の動きが活発だが、月面探査も民間、ロボットによる第2段階を迎えたと位置付ける。

 「科学は深刻なマーケティングの問題を抱えている」と話すのはGoogleの共同創業者の1人、ラリー・ペイジ氏だ。今や世界指折りの憶万長者であり、「X PRIZE財団」の理事も務めるペイジ氏は新コンテストの発表にも姿を現し、「世の中には科学的に解決されるべき課題がたくさんあるのに、その重要性やおもしろさが人々にきちんと伝わっていないために、だれも取り組んでいない。国際的なコンテストの実施はこの問題を解決する一番のやり方だ」と語った。

 また、このコンテストに勝つためには「一企業、一カ国でチームを組むのではなく、国際的なチーム作りが不可欠」(ペイジ氏)とし、その動きを促進するためにチーム・メンバーの多様性に対しても賞金を出すようにしたという。

 優勝者が2,000万ドルの賞金を勝ち取るための期限は2012年末。発表の場には米航空宇宙局(NASA)のシャナ・デイル副長官も壇上であいさつし、NASAが新コンテストの考え方や意義を支持する意向であることを示した。



「Google Lunar X PRIZE」を発表するGoogle創業者のペイジ氏 【動画】新コンテストの開始が宣言された

 今回のNextFestは「ロボット」や「セキュリティー」、「環境」、「エンタテインメント」など11のテーマに分かれ、「Robot Row(ロボット街)」には13件の展示があった。


アラブ首長国連邦のヒューマノイドも登場

 米テキサス州を拠点とするロボット・ベンチャーのHANSON ROBOTICS(ハンソン・ロボティクス)は新型ヒューマノイドの「Zeno(ジーノ)」を発表。身長約43cmで、目をつぶって笑ったり怒ったり表情を変えられるジーノは、リアルな表情を持つロボット作りに強みを持つ同社と、ロボ・ガレージ代表の高橋智隆氏の協力で生まれた。

 高橋氏とハンソン創業者のデイビッド・ハンソン氏は2年前のNextFestで知り合ったのをきっかけに今回一緒にロボットを作ることになり、高橋氏はジーノの体と歩行を担当した。ただし、ハンソンが発表前にジーノのソフトを載せ変えたため、発表当日のジーノは歩けなかった。


ジーノはハンソン氏と高橋氏の協力で生まれた 【動画】ジーノは歩けなかったが、顔の表情を変えられた ジーノを動かすには米Massive Softwareのソフトが使われている

 ハンソン氏のゴールは「3年以内にジーノを300ドル未満で発売すること」だ。その際には、ジーノがパソコンを通じて日々ソフトをアップグレードし、「進化」できるようにする。ジーノにまつわる「物語」を含め総合的にマーケティングする「キャラクター・ロボット」市場の形成を目指しており、いずれは他社のキャラクター・ロボットにもハンソンのソフトを販売、またはライセンスしたいと考えている。

 ハンソンの現在の事業は、リアルな表情を持つヒューマノイド用の頭を顧客の注文に応じて作製することだが、その顧客の一つが韓国科学技術院(KAIST)だ。KAISTがNextFestに出展した2足歩行ロボットの「アルバートHUBO」は、ハンソンが作った故アルバート・アインシュタインそっくりの頭部を持つ。実はKAISTとハンソンの関係も過去のNextFestでの出会いを通じて生まれた。


ハンソン社は現在、リアルなロボット頭部の開発販売で収入を得ている 【動画】HUBOはアインシュタインの頭+アシモの体、といった感じ

 今年のNextFestにはアラブ首長国連邦を本拠とするPal Technology(パル・テクノロジー)の人型ロボット「Reem-A」も登場した。Palの本業は海水淡水化プラント用設備などの生産だが、約3年前からスペインのバルセロナにロボット開発チームを置いている。身長1.4m、体重41kgのReem-Aは毎時1.5kmで歩行でき、人間の顔や物体を認識できる。

 開発チームリーダーのダビデ・ファコンティ氏によると同社は間もなく次世代の「Reem-B」の開発を終える予定で、新しいロボットは「Reem-A」に比べて信頼性が高く、より人間に近い形の手で現在の6倍の重さである6kgを持ち上げられるようになるという。「自宅やホテルで働く使用人や秘書業務ができるサービス・ロボットの開発がゴール」(同氏)だ。

 一方、スイスのローザンヌ工科大学(EPFL)が展示したヘビ型ロボットは、本物のヘビの脳内信号処理をニューラル・ネットワークで人工的に再現して動かしている。コンピューター科学者とロボット工学者、生物学者の混成チームならではの開発成果だ。ヘビと同様に、ロボットは陸上では這い、水中では泳ぐ。現在のロボットは水を検知できないため、人がリモコンで陸上モードから水中モードに切り替えているが、次世代機には水の自動検知機能も付ける予定だ。ロボットのお尻に付けている管は、中に水が浸入しないように外から空気を送り込むためのもの。バッテリーは内蔵されている。同グループはこの前にサンショウウオの脳の仕組みを利用したロボットを開発しており、今回のヘビ型は生物を真似たロボットの第二弾だ。


【動画】アラブ首長国連邦の会社が開発したReem-A 【動画】ローザンヌ工科大学が開発したヘビ型ロボット。陸上から水中へ動作モードを変えられる

 スウェーデンのViktoria Instituteの Future Applications Labで開発されている「GlowBots(グロウボッツ)」はヒューマン・ロボット・インタラクション(HRI)を研究するためのもの。グロウボッツはコーヒーカップ大の車輪型ロボットで、上部に148個の発光ダイオードを使った小型ディスプレイが載っている。さまざまなパターンを映し出しながら動き回るが、人があるパターンのロボットを持ち上げて振ると、そのロボットは「その人にパターンが気に入られたと“自信”を持つようになり、自分とは異なったパターンのロボットに近付いて、自分と同じパターンに変われと促すようプログラミングされている」(開発リーダーのマティアス・ヤコブソン氏)。この研究によって何か技術を商用化しようというよりも、「人間とロボットの関係作りについて調べたい」としている。

 このほか欧州から「ロボット街」に展示したのはロボット・ハンドを開発する英国のシャドー・ロボット。シャドーのハンドは独自のエア・マッスル(空気アクチュエータ)を48本使い、20の自由度を持ち、24種類の動きができる。価格は仕様によるが、約10万ドル(1,150万円)。2004年の発売以来、大学などに5つを販売したという。


グロウボッツは1台4,000ドル 【動画】パターンを変えながら動き回るグロウボッツ 【動画】シャドーのロボット・ハンド

 複数の同型のモジュールをつなぎ合わせ、さまざまな形のロボットを作り出せる「self-reconfigurable robot(自己再構成可能型ロボット)」の「SuperBot(スーパーボット)」を展示したのはサザン・カリフォルニア大学のグループ。NASAの資金援助で開発が進められており、単独で約500gのモジュールをこれまでに20個つなげることに成功しているという。最終ゴールは宇宙にこうしたモジュールを多数まとめて打ち上げ、例えば月面で目的に応じてロボットの形を自由に変えられるようにすることだ。


【動画】スーパーボットの単独モジュールの動き 【動画】歩くスーパーボット 【動画】ヘビ型のスーパーボット

日本のロボットにも人だかり

 今年のNextFestのメイン・スポンサーは日立製作所だったが、日本のロボットも会場で人気を集めた。小型ヒューマノイドの「クロイノ」と女性型の「FT」を展示したロボ・ガレージのほか、テムザックが2足歩行の「キヨモリ」を、早稲田大学の高西淳夫研究室が人を乗せられる汎用2足ロコモータ「WL-16RIII」を披露し、日本に比べてロボットを直に見る機会の少ない米国の子供たちはデモの度に黒山の人だかりを作っていた。NextFestは「教育」を大きな使命として掲げており、13日と14日の2日間だけで、地元の学校の子供たち合計約1万5,000人が無料招待された。


テムザックのキヨモリは開幕式でも登壇 【動画】キヨモリを一目見ようと多数の人が集まった 【動画】早大の2足ロコモータに試乗しようとたくさんの子供たちが列を作った

ロボ・ガレージの高橋氏によるデモ 開場を待つ地元校の子供たち

 「ロボット街」以外でもあちこちでロボットの姿が見られ、「エンタテインメント」の展示スペースで子供からも大人からも「かわいい」と大人気だったのが、情報通信研究機構(NICT)の小嶋秀樹主任研究員らが開発した雪だるま型ロボットの「キーポン」。広角ビデオカメラの目、マイクロフォンの鼻を備えたキーポンはもともと、ロボットを使って子供のコミュニケーション行動を観察することを目的に開発されたものだが、米カーネギー・メロン大学の博士課程に在籍するマーク・ミカロウスキー氏が音楽のテンポにあわせてダンスを踊れるようにプログラミングし、踊るキーポンのビデオをインターネットで公開したのを機に、米国で人気が爆発した。

 キーポンを使った自閉症児のコミュニケーションに関する研究で実績を持つ小島主任研究員は、「科学的な研究は論文で評価されるが、本当に生活の中で役立つ技術を開発するためにはできるだけ多数の人に触れてもらう機会を作らないといけない」とし、NextFestのような催しに参加することは重要だと考える。これまでキーポンは人間と視線を合わせ、首をかしげたり体を上下に伸縮させることで「感情」を表していたが、今回は新たに任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」のリモコンを使って人間がキーポンにリズムを伝えるなど相互作用できるようにした。

 次のステップとして、キーポンに触覚センサーを付け、「本当の意味での触れ合いに関する実験をしたい」(同主任研究員)と言う。また今後はカーネギー・メロン大学が運営する保育園での実験にも利用する計画で、キーポンを「HRIの研究の優れたプラットホームにしたい」(ミカロウスキー氏)考えだ。また米国では「キーポンを商品化してほしい」との要望が強く、同氏のほうにも関心のあるメーカーから声が掛かっているという。


キーポンの共同開発に取り組む小嶋氏とミカロウスキー氏 【動画】キーポンと遊ぶ子供たち

 このほか、ロボットに直接関係ないが、将来ロボットに応用できそうな技術として、ドイツのIdent Technology が人間の皮膚が形成する電場の変化を計測するセンサー「Skinplex」を展示していた。例えば車の中のエアコン・スイッチにこのセンサーを使えば、スイッチに触ったのが運転手なのか助手席に座っている人なのかが分かり、それにあわせて車内の温度制御ができる。会場では人形にセンサーを組み込み、人が人形の足や手などどこに触っているかが分かるというデモを行なっていた。

 最後に、現段階でロボットとは呼びがたいが、「ロボット街」に堂々展示されていたのが、中国の自称「アンドロイド」の「Zou Ren Ti」。博物館や展示会用にリアルな人形を作る中国の会社が、その創業者とそっくりの人形を作った。現在できることは頭を動かすことくらいだが、会場の人気を集め、米国のテレビ局などがからひっきりなしに取材を受けていた。米国における営業活動のため、シアトル市にオフィスを開設したという。


「Skinplex」。人間の皮膚が形成する電場の変化を計測し、人形のどこに触れているかが分かる テレビ局の取材撮影を受けるZou Ren Ti、創業者と人形は同名 【動画】人形は頭を動かすことができる

URL
  WIRED NextFest
  http://www.wirednextfest.com/


( 影木准子 )
2007/09/19 14:58

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