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ロボットの国際会議「ICRA 2008」現地レポート
〜初のロボット製作コンペは大盛況、ソニーの3指ロボット発表も


 米国電気電子学会(IEEE)が主催するロボット分野の主要国際会議の1つ、「International Conference on Robotics and Automation、ICRA)」が5月19-23日に米カリフォルニア州パサデナ市で開かれた。今年はICRAとしては初めて、「ICRA Robot Challenge」と呼ばれるロボットの競技会を実施したのが大きな特徴だ。

 制限時間内にある与えられた課題を解決できるロボットの製作競技と、惑星探査ロボットの技比べ、ロボットと人間のより良いインタラクションを競うものの3種類が行なわれ、日本からも参加チームがあった。一方、通常のテクニカル・セッションではソニーが新しい3指のロボットハンドを発表するなど、世界中から最先端の研究成果が披露された。


ルール説明を行なうペンシルベニア大学 マーク・イム准教授
 5月21日の午前8時20分。ICRA会議場の106号室で、ペンシルベニア大学のマーク・イム准教授が、「Planetary Robotic Contingency(惑星での非常事態に対応するロボット)」コンテストのルールを発表した。シナリオはこうだ。「君たちは火星にいる。砂嵐が基地の太陽発電機を損傷した。ロボットを使って、電力が底を着く5時間以内に破損した太陽電池パネルを回収し、新しいパネルを設置しなければならない」。得点は、破損したパネルを基地に持ち帰れば10点、新しいパネルを設置できて10点、新パネルに付いているワイヤーを所定の位置に取り付けてLEDが点灯すれば10点(2本で20点)、もう1枚パネルを設置できればさらに10点。翌日に課題がもう1つ用意されており、2日間の合計得点を競う。

 この競技に参加しているチームは5つ。各チーム・メンバーはパネルを囲んで考え込む。でもパネルを測定し、見ることができるのはたった5分だ。その後、パネルは惑星表面を模擬した縦横約6mずつのフィールド(sandbox)に設置され、チームは決してスクリーンの向こう側を見ることができない。ロボットは本体に取り付けられたカメラの映像のみを頼りに無線で遠隔操作する。外から惑星表面を映すカメラも故障中で、制限時間の1時間半前にならないと復活しない、というルールの凝りようだ。

 今回の競技の最大の特徴は、課題が発表となる前に、各チームはロボットを組み立てる部品をすべて揃えておかなければならないという点だ。チームは部品を自由に選べるが、全部で重さが25kg以下、しかも体積の制限があり、イム准教授は課題発表前に各チームの部品の重量などをチェックした。あくまでも「ロケットで打ち上げられる部品が限られる状況下、惑星における予測できない事態への速やかな対応を競う」(イム)という設定だ。


各チーム・メンバーはパネルを囲んで考え込む テーブルの上から自由に部品を選ぶことができた

競技のフィールド 惑星表面を観察可能なカメラは故障中という設定

 こういった状況では、問題に応じて臨機応変に組み立てられるようなモジュール型のロボットが生きる。実はイム准教授は目的や環境に応じて自分で形を変えることのできるモジュール型ロボットの研究が専門で、今回の競技では同准教授が開発したモジュール「CKbot」を使うのが基本だ。あるいは日ごろから独自のモジュールの開発に取り組んでいればそれを使うことも可能で、今回は南デンマーク大学のチームが独自のモジュールを用い、残り4チーム(南カリフォルニア大学、コーネル大学、マサチューセッツ工科大学、ワシントン大学)がCKbotを使った。

 米国ではこのところ、各種団体が主催するロボット大会が花盛りだが、なぜICRAでも今年から競技会を開くことにしたのか。競技会の共同代表を務めたワシントン大学(セントルイス)のウィリアム・スマート助教授は次のように説明する。「ICRAはセンサーやナビゲーション・システムなどロボットの要素技術の論文発表が中心だ。それはそれでもちろん重要なのだが、ロボット工学者としては完全なシステムを世の中に見せられないといけない。しかし完全なシステムを作ることは難しく、競技会方式でその難しさや、それを達成するための技術力、労力に関心を向けられるようにしたかった」。


「CKbot」 CKbotを複数組み合わせてロボットを作る ICRAにおけるロボット競技の共同代表者を務めたスマート助教授(右)とカーネギー・メロン大学のポール・リブスキ博士

 チームがロボット製作に没頭する間、テクニカル・セッションをのぞいてみることにすると、ソニーが新しい3指のロボットハンドを発表していた。手のひらに載せた絹ごし豆腐を包丁で切ったり、絹ごし豆腐やゆでたまご、紙コップをつかむことができる。タクタイルセンサーを用いて滑りを防ぐ仕組み「Slip Extractor」を開発したのが特徴だ。同社がこの研究に取り組む目的は、家庭や職場で役立つ実用的なロボットの実用化であるという。

 もうひとつ注目を浴びたのは、スイスのローザンヌ工科大学(EPFL)が開発した重さわずか7gのバッタ型のロボットだ。このロボットの映像はYouTubeで見ることができるが、本物のバッタの飛び方を模倣し、自身の高さの27倍、1.4mまでジャンプすることが可能だ。このロボットはまだ頭脳を持たないが、飛び方を制御できるようになれば、障害物の多い場所をぴょんぴょん跳ねながら楽に移動できるので、レスキュー・ロボットや探査ロボットに活用できると期待されている。


【動画】ソニーの3指ロボットハンド。豆腐を切断するところ 【動画】卵や豆腐、コップをつかみ上げるところ

ハンドの構造 スイス・ローザンヌ工科大学のバッタロボット(写真提供:EPFL)

 惑星有事対処ロボットの競技会場に急いで戻ると、10時過ぎに真っ先に出場したトップバッターのコーネル大学のロボットがエアロック(基地の出入り口)でスタックしていた。3度目の挑戦でようやく出口は出られたものの、細い車輪が砂利にはまってうまく動けない。そして30分後にいったんギブアップ。


【動画】エアロックでスタックしたコーネル大学のロボット 【動画】ロボットを遠隔操作するコーネル大学のチーム、スクリーンの向こう側を直接見ることはできない

 次に登場したワシントン大学のロボットは車輪にプラスチックの容器を使っていて、コーネル大学に比べて動きがスムーズだ。11時には故障した太陽電池パネルをつかむことに成功した。そしてパネルをエアロックの中に無事に持ち帰れたものの、ロボットの車輪が段差を登り切れず、なかなか中に入れない。でもパネルは回収できたということで、10点をまず獲得できた。


【動画】太陽電池パネルをつかむことに成功したワシントン大学のロボット 【動画】その後、段差に引っかかってしまった

 12時を過ぎて外部環境を映し出すカメラが作動し、ロボットの操作がしやすくなった。この日、最も動きが滑らかだったマサチューセッツ工科大学(MIT)のロボットは、ロボットがせっかく回収したパネルを誤ってエアロックから引っ張り出し、再び中に入れることができなかったので、やや減点の7点。

 南カリフォルニア大学(USC)はチームの学生が全員、運悪くこの時間帯にICRAの会場で働くボランティアに割り振られてしまったため、代表者で同大学のコンピューター・リサーチ・サイエンティストのベーナム・サレミ氏が1人で奮闘。ロボットはパネルにたどり着いたが、うまくつかめなかったので5点。再トライしたコーネル大学も同じ状況で5点。


【動画】マサチューセッツ工科大学のロボット。この日最も動きがなめらかだった 【動画】南カリフォルニア大学のロボット。パネルにはたどり着いたがうまくつかめず

 南デンマーク大学は独自のモジュールを2種類使ってロボットを組み立てた。モジュールの中にバッテリやセンサーなどすべてが含まれている青いボール型の「ATRON」と、形は同じだが一つ一つがバッテリーやアクチュエーターなど別々の役割を果たす棒状の「Odin」だ。形が斬新で目を引くが、無線通信で問題があり、ロボットがうまく動作しない。


南デンマーク大学のロボット。独自のモジュールを使っている ボール型モジュールの「ATRON」 個々のモジュールにはバッテリやセンサーなどを内蔵

棒状モジュールの「Odin」 形は同じだがそれぞれ別々の役割を果たしている 【動画】うまく動作はしなかった

 次々にロボットが課題をクリアしようと試みるが、全体的に予想以上に苦戦している。そこでイム准教授が競技時間を延長することに。1時25分にUSCが新しいパネルを台に載せることに成功し、拍手が湧き起こるがワイヤーの配線はノータッチ。

 そして最後はMITが絶体絶命の緊急策。新しいパネルをガムテープでぐるぐる巻きにしてロボットに固定し、ロボットのアームでパネルとパネル台の電線を接続することに。実世界なら、ロボットは惑星表面に置き去りにしてでも電力を得ようという作戦だ。配線が成功したことを示すパネル台上部のLEDが点灯すると、会場からは歓声。火星にいる宇宙飛行士たちはなんとか助かったというわけだ。


パネルを台に載せることに成功したUSCのロボット LED点灯に成功したMITのロボット 配線のアップ

 競技初日の得点結果は、最後まであきらめなかったMITが17点でリード。初日が終わった段階でのイム准教授のコメントは「ちょっと僕は楽観的すぎたかな」。同准教授は前日にチームに対してCKbotの講習を行ない、各ロボットの動きを見て感心していたのだが、本番はどのチームもすべての課題に取り組むことができなかったからだ。明日の課題はもっと難しくするのか、という質問に対しては、微笑みだけが返ってきた。


初日の得点表
 有事対処ロボットの競技が終わると、次は同じフィールド内で「The Sandbox Challenge」と呼ばれる惑星探査ロボット競技だ。この競技には、米カンザス大学とドイツのヤコブス大学のほか、日本から東北大学大学院・工学研究科の吉田和哉教授と永谷圭司准教授のチームが参加した。実はメキシコの大学も参加予定でチームメンバーたちは会場に到着していたが、ロボットが米国入国の際に税関に引っかかり、結局間に合わずに棄権となった。

 競技は自律移動型ロボットの技比べだ。着陸船の傾斜プラットホームから惑星表面に降り、フィールドの端にある科学基地に近付いてデータを取得し、環境地図作製や惑星表面に置かれた物体の回収、障害物の乗り越えといった技を競う。どの課題にチャレンジするかは各チームが自由に選択できる。翌日が本番で、初日はそのための練習日にあてがわれていた。

 東北大学のロボットは惑星探査ローバーの「エルドラードII」。この日は2度、傾斜プラットホームから落ちそうになり、石にぶつかって休止してしまうなど、調子が悪い。「最適経路を見つけるプログラムの中にアルゴリズムの問題があったのと、正しい経路を選べてもその経路に沿って移動できるようにするためのプログラムにもバグがあった」と吉田教授は説明する。「今晩、デバッグして本番に備えます」と永谷准教授。カンザス大学のチームも問題続きで、みな研究室の外でロボットを動かす難しさを実感していた。


東北大学「エルドラードII」 【動画】傾斜プラットホームから落ちそうになったり石にぶつかって休止してしまうなど、調子が悪かった

 一方、ICRA会議場のロビーでは、もうひとつの競技、「HRI Challenge」が開かれていた。「HRI」は「Human-Robot Interaction」の略で、人間とロボットのインタラクションを研究する、最近の注目分野。競技はどのようにロボットと人間が「交流」するかは指定しないが、ロボットは人間と相互作用することで学習する能力を持つか、人間を認識し、会話するなど社交的に振る舞う能力を持たなければならない。審査はICRAに参加している8人のロボット専門家が行なうが、それがだれだかは知らされない。評価は相互作用のしやすさや分かりやすさ、おもしろさ、便利さ、革新性など13項目を5段階で行なう。ICRAの参加者全員にも投票できるようなアンケートが送られたが、その集計結果は来年のICRAで発表になるという。

 HRIチャレンジに参加したのは5チーム。情報通信研究機構(NICT)の小嶋秀樹主任研究員とカーネギー・メロン大学の博士課程に在籍中のマーク・ミカロウスキー氏が共同開発中のぬいぐるみロボット「Keepon(キーポン)」と、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と大阪大学の「ロボビーIV」、英国のハートフォードシャー大学の「KASPAR」、MITの出身者が開発し、商品化を目指しているダイエット支援ロボット。そして、EPFLのオード・ビラード教授のチームが人間によるデモを通じてロボットをプログラムする研究に用いている、富士通オートメーション製のヒューマノイド「HOAP-3」だ。ロボビーは残念ながら、会場にはロボットそのものの姿はなく、人間と交流する姿を映像で見るしかなかった。


英国 ハートフォードシャー大学「KASPAR」 【動画】KASPARのコントロール画面、馬のおもちゃを見せられて喜ぶKASPAR

 会場の人気を二分したのは、いずれもYouTubeを通じてすでに世界的な知名度を得ているキーポンとHOAP-3だ。黄色い雪だるま型のキーポンは人間の顔を検知して視線をあわせ、首をかしげたりポンポン上下に伸縮して感情を表すことができ、リズムに乗ってダンスを踊ることも可能だ。この日は、人間が台の上で体を動かしてキーポンに動きを伝えたり、逆にキーポンのする動きを人間が真似するゲームで遊べるようにしてあった。


【動画】キーポンと遊ぶICRA参加者 キーポンの説明をする小嶋主任研究員

キーポンの構造 【動画】キーポンの中身の動き

 HOAP-3とはピンポンのビデオゲーム「PONG(ポン)」で対戦できた。EPFLでは、モーションセンサーを使った特製スーツを人間が装着してロボットに動きを伝えたり、実際にロボットの手を取って動かしてあげることで動作を教える研究に取り組んでいる。YouTubeで注目を浴びたのはオムレツを作るHOAP-3だ。EPFLの博士研究員、シルバン・カリノ氏によると「対象物の位置を変えたり、動きの軌跡を変えながら何度かデモをすることで、ロボットのスキルが徐々に一般化され、そのスキルを再現できるようになる」プログラムを開発した。


【動画】HOAP-3。ピンポンのゲーム「PONG(ポン)」で対戦ができた カリノ氏(中央)とHOAP-3 【動画】踊るHOAP-3

 一方のダイエット支援ロボットは、ホンコンに本社を置くIntuitive Automata社が商品化を目指しているもの。MITでこのロボットの研究に取り組み博士号を取得したコーリー・キッド氏が同社を創業した。「ダイエットに成功するためには、1日の摂取カロリーと運動量の記録が欠かせない。今は紙かパソコンを使って記録する人の大半が途中で挫折してしまう。ロボットを使えば挫折しないでダイエットを続けることが可能だということがフィールド試験で分かった」と同氏は説明する。

 タッチ画面を通じて食べた物や運動量のデータを入力するのはパソコン用のダイエット支援ソフトと同様だが、ロボットは「朝食はスープにしたらどうか」や「このところ運動量が減っているようだが」といったアドバイス、コメントを音声で伝えてくれ、双方向のコミュニケーションを促す。


ダイエット支援ロボットと開発者のキッド氏 ダイエット支援ロボット

【動画】動作の様子 Robovie開発者の大阪大学・大学院工学研究科の石黒浩教授もダイエット支援ロボットに関心を示していた

 HRIチャレンジの結果は、社交性でトップの成績だったKeeponと、同じく学習能力で1番優れていたHOAP-3が仲良く優勝。2位はダイエット支援ロボット、3位が英国のKASPAR、4位がロボビーという結果になった。


優勝したKeeponとHOAP-3(写真提供:ICRA事務局) 受賞者たち(写真提供:ICRA事務局)

 そして、惑星有事対処ロボットの競技2日目。午前8時半過ぎにイム准教授がシナリオを発表する。ちょうどその週末に米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「フェニックス」が実際に火星に着陸する予定であったことから、フェニックスの破片が火星基地の外部に設置された二酸化炭素を酸素に変換するスクラバー装置に被害を与えたという設定だ。スクラバー装置の通気口の蓋が落ちたので、代わりに通気口を何かでふさぎ、装置の外壁に入ったひびを特殊な接着剤(練り歯磨き)で修復しなければならない。スクラバー装置からはずれた蓋を回収して10点、装置側面のひびに接着剤を付着できれば10点(2箇所で20点)、そして通気口をふさぐことができれば、ふさいだ面積によって3〜15点という得点の仕組みだ。

 どのチームも前日の教訓を生かし、ロボットの車輪や駆動方式などを改良していたため、この日は断然走りが良い。初日に続き真っ先に飛び出したコーネル大学は紙を円錐形に丸めて栓を作り通気口をふさごうとしたが、栓を落として失敗。ワシントン大学は元の栓の回収に成功して10点を獲得した。

 一番盛り上がったのは、MITのロボットが外から通気口をふさごうとする中、南デンマーク大学の棒型ロボットがチューブの中から栓をしようとしていたときだ。南デンマーク大学の栓が中から見えてきたのでMITのロボットはひとまず休止させられた。ところが、南デンマーク大学の栓が小さすぎて、落っこちてしまった。一方のMITは通気口をふさぐのに成功したものの、ロボットが抜けないため、得点をもらわずに別の課題に挑戦するためにロボットをリセットすることにした。南デンマーク大学は大きめの栓で再トライ。見事、中から栓をふさぐことができた。


【動画】ワシントン大学のロボットは栓の回収に成功 【動画】南デンマーク大学の棒型ロボット。チューブの中から栓をしようとしていた 【動画】ところが栓が小さすぎて落下

【動画】MITは無事通気口を塞げたがロボットが抜けなくなった チューブの中を這った南デンマーク大学のロボット

 通気口ふさぎで最も美しかったのは、蓋に磁石を使ってぴたっと付着させるのに成功したUSCのロボット。USCは前日にボランティアに借り出されていた学生たちがみんなチームに復帰し、課題を分担できたので、次々にタスクをこなして行く。昨日と違って、3台のロボットがいっしょに動く場面も多くあり、競技は白熱した。


【動画】USCのロボット。蓋に磁石を使っていた 3台のロボットが入り乱れて動く オペレーターたちもヒートアップ

 2日にわたる競技の結果は、唯一、練り歯磨きのタスクまで挑戦できたUSCが40点を獲得して優勝。トロフィーを獲得した。USCの勝因は「ある程度、事前に課題を予測したうえでロボットの機構を決めていたので、与えられた課題に対応しやすかったこと」とリーダーのサレミ氏は自己分析する。

 2位がMIT、3位がワシントン大学。このほか、特別賞として、両日とも真っ先に課題に挑戦したコーネル大学が「Fastest Prototyping (最速プロトタイピング)」賞、独自モジュールを使った南デンマーク大学が「Coolest Robot(最も格好良いロボット)」賞を受賞した。また2位のMITは「Most Persistent in the Face of Life Threatening Events(生死にかかわる出来事を前に最も粘り強い)」チーム、3位のワシントン大学は他と異なったデザインや技を披露したかいがあって「Most Innovative(最も革新的)」なチームという特別賞ももらった。


USCが獲得したトロフィー 【動画】装置外壁の傷に練り歯磨きを塗るUSCのロボット

優勝したUSCのチーム 最終的な得点結果

 そして、いよいよ惑星探査ロボットの決勝。1番目に登場したのはドイツのヤコブス大学のアンドレアス・バーク教授のロボット。インテリジェントなレスキューロボットを作るのが同教授のゴールで、計算はすべてオンボードで行なわれている。ごつくて大きな石も乗り越えることができたが、重さは25kg。さらに軽量のものを開発中という。


【動画】科学基地からデータ取得に成功したヤコブス大学のロボット ヤコブス大学のロボット

 東北大学も本番は、着陸機の傾斜プラットホームの乗り降りに成功し、科学基地からのデータ取得も達成した。ロボットは着陸機と科学基地の場所は知っているが、その間にある障害物の場所は知らない。東北大学の「エルドラードII」は北陽電機のレーザー測距式センサーの最新版「Top-URG」を搭載して、障害物を検出していた。科学基地から着陸機へうまく戻ることができなかったが、それはエルドラードIIが砂地で動くのに適したロボットで、車輪や走行距離計測の仕方が今回のような大き目の砂利の環境には向かなかったためという。「研究室の中にいると気付きにくいけれど、人にタスクを与えられて実際にやってみて初めて分かることが多い。こうやってロボットの完成度が上がってくるのは良いことだ」と吉田教授は語っていた。


会場でロボットの解説をする吉田教授 【動画】傾斜台を慎重に降りるエルドラードII

【動画】科学基地に到着してダンスを披露したエルドラードII 東北大学チーム(写真提供:吉田教授)

 カンザス大学は他と違って、4台の小型ロボットを使って環境地図を作る戦略だった。4台がフィールドのあちこちを這い周り取得したデータで環境地図を作り、その地図を使って、別の科学調査ロボットが実際の調査をするという仕組みだ。この日は科学調査ロボットが故障して出番がなかったが、まずは危険な作業を低コストの小型ロボットにさせて、より高価な調査ロボットは高度なタスクに専念させようという発想に基づいている。


【動画】カンザス大学のロボット。4台のロボットで環境地図を作る試みをしていた 【動画】ロボットの動き レスキューロボットの開発で知られる千葉工業大学未来ロボット技術研究センターの小柳栄次副所長も競技を見学していた

 惑星探査ロボット競技はそれぞれが別々のタスクをこなし、順位を決めるのが難しかったため、各チームは達成した項目ごとに賞状が与えられ、3チームともトロフィーを受け取った。

 3つの競技で盛りだくさんだったICRAだが、競技参加者は異口同音に「楽しかったし、日ごろの研究成果を披露できたのはよかった」(ヤコブス大学のバーク教授)と語っていた。競技事務局としては2009年5月に神戸で開かれるICRA 2009でも第2回チャンレンジを実施する計画で、来年は会場が日本であるため、日本からの参加者が増えることが期待されている。


URL
  ICRA 2008
  http://icra2008.usc.edu/
  Root Challenge結果
  http://icra.wustl.edu/results/index.html

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( 影木准子 )
2008/05/30 15:50

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