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米ハイテク見本市「WIRED NextFest 2008」レポート
〜トヨタが米国で「i-REAL」を初披露


シカゴの高層ビルと名所をバックにi-REALが走った
 米国のハイテク情報誌「WIRED(ワイアード)」が主催する未来技術見本市「NextFest(ネクストフェスト)2008」が9月27日(現地時間)に開幕した。今年で5回目を迎えるこのイベントはシカゴ市内で開催され、主要スポンサーの1つとなったトヨタ自動車が、同社のパーソナルモビリティー「i-Real」を米国で初披露した。他にはヘビ型ロボットや自己再構成可能型ロボットといった基本技術から、すでに商品化されている歩行支援装具や案内ロボットまで、さまざまなロボットの展示があった。


トヨタが大々的に未来技術を展示

 トヨタが今回展示したのは、2003年に発表したパーソナルモビリティーの初代機「PM」と2005年に発表した「i-swing」、そして2007年の「i-REAL」。環境にやさしい次世代の「プリウス プラグインハイブリッド」と、コンセプトカー「1/X」(エックス分の1)の展示もあった。北米トヨタのスティーブ・スターム副社長によると、トヨタが米国において「モーターショー以外で新技術をこれだけまとめて見せるのは初めて」だ。お披露目の場としてネクストフェストを選んだ理由は、「未来技術、特にロボットを含めた環境関連の新技術を一般に見せる場として定評があるから」(スターム副社長)としている。

 9月25日の晩に開かれた開幕イベントではシカゴ市のリチャード・デイリー市長もトヨタの展示ブースを見学。「i-REAL」のプロモーションビデオはシカゴ市内で撮影している。「i−REAL」のデモンストレーションの後は多数の招待客が車両の周りに集まり、関心の高さをうかがわせた。招待客の1人で車椅子を利用する弁護士のドナルド・ホールステン氏は、「すばらしい。欲しい。でも米国では保険でカバーされるかどうかが売れるかどうかのカギを握るだろう」と話していた。


トヨタの展示ブース トヨタが展示したパーソナルモビリティー3種 「プリウス プラグインハイブリッド」

コンセプトカー「1/X」 開幕式で北米トヨタのスターム副社長が壇上であいさつ シカゴ市長もトヨタの展示を見学

【動画】i-REALを使った出勤風景 【動画】i-REALをデートで使うケース 弁護士ホールステン氏は「欲しい」と語っていた

 翌日は報道陣向けに会場が公開され、トヨタのパーソナルモビリティーシリーズの開発で中心的な役割を果たしてきた技術企画統括センターZ-AD主幹の谷中壮弘氏が、地元テレビ局などの取材を受けた。テレビ局のアナウンサーも「i-REAL」に試乗し、実際に乗った人の間では「intuitive(直感的に使い方が分かりやすい)という感想が多く聞かれた。今年のネクストフェストはシカゴ市内の名所である公園、ミレニアムパークの一角で開かれたが、外では「ザ・ビーン(豆)」の愛称で親しまれる巨大オブジェの周りで谷中氏らがi-REALを乗り回す場面もあった。


i-REALに乗っているのが谷中氏 【動画】地元テレビ局のアナウンサーもi-REALに試乗 【動画】美しいオブジェをバックに谷中氏らがi-REALを乗り回した

会場は高層ビルが見下ろすシカゴ市内のミレニアムパーク 今年の展示会場は公園内に建てられたテント

 昨年、ロサンゼルスのコンベンションセンターで開かれた第4回のネクストフェストに比べると、今回は展示数が半分以下の40点と小規模であったが、展示期間を10月12日までの2週間と長くし、一般入場料を無料にしたのが特徴。トヨタのほか、ゼロックスとシティグループが3大スポンサーだった。会場は地元民だけでなく観光客にも人気のスポットにあるため、多数の人々が訪れることになりそうだ。

 トヨタはまた、同じくシカゴ市内で10月1日〜8日に開催されるファッション関連のイベント「Fashion Focus Chicago 2008」にもパーソナルモビリティーを出展する予定だ。「米国では今後1年くらいをかけてさまざまな分野の人々に見てもらって市場をテストし、顧客の関心度を測りたい」と北米トヨタのスターム副社長は語った。


ヘビ型や羊型のロボットも登場

 一方、ロボットの研究で有名な米カーネギー・メロン大学(CMU)からは3グループの展示があった。1つはハウイー・チョーセット准教授のグループが開発したヘビ型ロボット。長さ約1.2m、重さ約2.5kgのこのロボットは、HiTECが市販するサーボモーターからエレクトロニクスを取り除き、カスタム部品に入れ替えたモジュールを16個使っている。いずれは「都市災害における救助活動や発電タービンの点検など」に利用されるようになるのが目的だ。「ロボットは基本的に救助隊員が遠隔操作するが、いったん行くべき場所が決まれば、自律的に動く」(チョーセット准教授)。ロボットの周囲にはシリコンゴムが配置され、表面がつるつるしたポールや足などを登ることも可能だ。現在は「もっと直感的に使えるようにするインターフェースを開発中」であるほか、中・長期的には「新しい機構や進み方、アルゴリズムの開発に取り組みたい」と同准教授は話していた。同准教授はまた手術ロボットにも関心があり、医療分野で「Cardiorobotics(カーディオロボティクス)」という会社を創業している。


【動画】這い回るヘビ型ロボットは災害救助などが目的 【動画】足に登る時は足をぐっとつかまれる感触がする

【動画】シリコンゴムが周囲に付いているのでつるつるしたポールを登ることもできる ヘビ型ロボットのモジュールは市販のサーボモーターをカスタマイズした

 CMUの芸術学部の客員助教授で、テクノロジーを使った作品を手掛ける芸術家のオズマン・カーン氏が開発したロボットが、羊の形をした「Mower(芝刈り機)」。外部を発泡スチロールで覆われたこのロボットは、ネクストフェストの会場テントの外で草を食みながら動き回り、通行人を引き付けていた。もともとは今年の夏にCMUの地元であるピッツバーグ市の祭典「Robot 250」に出展するために作られた公衆芸術作品だが、「ロボットと家畜は双方とも人間に隷属するという面で共通するという発想がひとつの起点になった」とカーン氏は言う。

 芝刈りロボットは目の部分に超音波センサーがあり、人間など障害物を検知すると動きを止める。自律的に動くが、首輪によって、周囲の目に見えない電気的な柵を越えないようになっている。「次は羊の群れを作り、GPSで動くようにしたり、羊同士が互いにデータのやり取りをするような作品に取り組みたい」(カーン氏)と言う。


【動画】芝刈りロボットは「メリーさんの羊」の音楽を流しながら動いていた おもしろいサインも歩行者を引き付けた 遠隔操作しているのが製作者のカーン氏

芝刈りロボット内部の腹部 腹部のアップ 芝刈りロボットの口

 そして、CMUから出ていた3つ目のロボットが、昨年のネクストフェストで人気を博した雪だるま型ロボットの「キーポン」。CMUの博士課程に在籍するマーク・ミカロウスキー氏と情報通信研究機構(NICT)の小嶋秀樹主任研究員(10月1日から宮城大学事業構想学部デザイン情報学科教授)が共同で、ロボットを自閉症児のコミュニケーションに関する研究に活用し、ロボットと人間の相互作用におけるリズムの重要性について調べている。今年は小嶋氏が転職・引越しで忙しいため、ミカロウスキー氏が1人で参加した。なおキーポンは商品化が予定されている。詳細はこちらの記事に掲載しているのでご覧頂きたい。


キーポンと、人間とロボットのコミュニケーションにおけるリズムの重要性について研究するミカロウスキー氏 【動画】小嶋氏が開発したキーポンは、ミカロウスキー氏が音楽にあわせて踊れるようにして世界的な人気を集めた

 一方、ペンシルベニア大学のマーク・イム准教授の研究グループが展示したのがモジュール型ロボットの「ckBot」。目的や環境に応じて自分で形を変えることのできる、「self-reconfigurable robot(自己再構成可能型ロボット)」の一種で、モジュールは1辺6cmの立方体の形をしている。つなげたモジュールの数で特定の動きをするように設定されており、この日は3つで1ユニットを構成するckBotがバラバラの状態から5ユニット連結し、全体で犬のように歩くデモが予定されていたが、残念ながら何らかの問題でうまく行かなかった。別のデモでは、シカゴ市が2016年の夏季オリンピック誘致を目指しているため、「2016」の形をしたckBotがオリンピックのマークに変化することを見ることができた。


ckBotの開発リーダー、イム准教授 【動画】ckBotモジュールが4個つながるとこんな動き

「2016年」の形をとったckBot 「オリンピックマーク」を再現 【動画】2016の数字がオリンピックマークに変化したところ

 イム准教授が目指す「50-100年後のゴール」は、こうしたモジュールがもっと小型になり、家の片隅の箱の中に多数しまっておくことで、掃除や洗濯など家事の種類によってロボットが随時自分を組み立て直し、姿を変えられるようにすることだ。こうすれば、目的に応じてロボットをいくつも家の中に置いておく必要がなくなる。


すでに製品化されたロボットも

 ドイツに本社のある総合福祉機器メーカーのオットーボック(Otto Bock)社が展示していたのが、歩行支援装具の「Sensor Walk(センサー・ウォーク)」。ホンダが開発した「歩行アシスト」装置のような装着型だが、膝の伸展に重要な役割を果たす大腿四頭筋が弱い、または働かない患者向けだ。足全体を覆い、上部にバッテリ、中部に膝を安定化させるロック、足裏に体重を検出するセンサーが装備されている。義足・義手で多くの実績を持つオットーボック社と大手医療機関のメイヨー・クリニックが共同開発した。

 センサー・ウォークは足裏のセンサーがある一定の体重を検知すると膝の部分がロックして安定的に体を支えられるようにする。足が地面を離れるとセンサーが再び検知し、今度はロックを解除する。従来、こうした歩行支援装具は機械的なロックを備えており、いったん足をまっすぐに伸ばさないとロックが解除されないため、患者は不自然な歩き方をせざるをえなかった。センサー・ウォークは足裏センサーとロックの機能を個々の利用者の体重や歩き方によってカスタム・プログラミングすることで、より自然な歩行を可能にした。

 すでに商品化されており、価格は2万ドル。現在、米国連邦政府による高齢者と身体障害者を対象とした健康保険制度「メディケア」の対象となるように申請中で、もしこれが実現すると、患者負担は2割の4,000ドルで済むようになる。


オットーボック社の歩行支援装具「センサー・ウォーク」 膝間接のアップ 腿の部分にバッテリを搭載

センサー・ウォークの足裏 【動画】「センサー・ウォーク」の仕組み オットーボック社は義足・義手の技術で蓄積を持つ。列車事故で片腕・両足を失ったキャメロン・クラップ氏も同社の製品をアピールするため会場に現した

 モバイルロボッツ(MobileRobots)社が開発した案内ロボットの「GuiaBot(ガイアボット)」も製品化済みだ。同社の営業部長のスティーブン・オリアリー氏によると、ガイアボットを購入した最初の顧客の1つが日本の大手自動車メーカーで、「米国内の工場見学ツアーにロボットを利用するということで、間もなく出荷する」と言う。ガイアボットはいったん現場のマッピングが完了すれば、あとは完全自律制御。ツアーガイドとして利用する場合など、パソコンで簡単に経路を設定することが可能だ。カメラと2本のレーザーで障害物を検知するが、万が一レーザーが機能しない場合には、天井を向いたカメラから得られる情報で進み続けることができるという。ネクストフェストの会場では、ロボットのコーナーのガイドをしていた。


【動画】会場ではロボット・コーナーのガイドを務めていたガイアボット パソコンで簡単に経路を決められる

 米航空宇宙局(NASA)の「MARCbot」(Multi-function Agile Remote Control Robot)はもともと月面探査用に開発が進めされてきたが、まずは地上で実用化されることになった。NASAのシニア・エンジニアのトム・ブライアン氏によると、米国防省が爆弾探知ロボットとして利用するため、NASAから「MARCbot」の技術のライセンス供与を受けたメーカーが生産し、国防省に納入するという。マイクロソフトの家庭用ビデオゲーム機「Xbox」のコントローラーを使ってインターネット経由で遠隔操作する。市販のコントローラーとインターネットを活用することで、「ロボットの低コスト化を実現できた」(ブライアン氏)。米陸軍が今後利用する爆弾検知ロボットも同じ仕組みで、Xboxのコントローラーの新規需要が生まれそうだ。


NASAのMARCbotは惑星探査用に開発されたが、まずは米国陸軍が地上で使うことになった 【動画】MARCbotの操作にはXboxのコントローラーを利用する

 2009年のネクストフェストの会場候補地として、北京が挙がっている模様だ。もしそれが実現すれば、中国からどんなロボット技術がお目見えするか、たいへん楽しみである。


URL
  WIRED NextFest 2008
  http://www.wirednextfest.com/

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( 影木准子 )
2008/10/02 16:19

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