6月21日(土)~22日(日)に、大阪電気通信大学四條畷キャンパスにおいて、ET(Embedded Technology:組み込みコンピュータ技術)とロボットをテーマにした体験・展示の複合イベント「ET×ロボット2008」が開催された。主催はET×ロボット実行委員会、共催は大阪電気通信大学。
● ET入門講演会「誰にでもわかる組み込みシステム」
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南角茂樹准教授(大阪電気通信大学)
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会場ではまず、大阪電気通信大学 南角茂樹准教授によるET入門講演会「誰にでもわかる組み込みシステム」が行なわれた。
南角准教授は、「身の回りの家電製品で、コンピュータが使われていないものを上げてください」という質問から、講演を始めた。自宅にある家電製品を思い浮かべながら、答えを見つけられずにいると、南角准教授は「業界では、蛍光灯が最後のアナログ家電と言われていました」と言った。“最後の”と但し書きがつくのは、蛍光灯もいまではインバーター制御になり、コンピュータ搭載されている製品が珍しくないからだ。
組み込システムというのは、特定目的の機能を実現するために開発された、メカ、ソフトウェア、ハードウェアから構成されるシステムのことを言う。工場で作業をする産業用ロボットや工作機械はもとより、家電製品も商品に新機能を追加し付加価値をつけるために、コンピュータを搭載し組み込みシステムの対象とされるようになった。
今では、我々の身の回りにあるものはほとんど全てと言って差し支えないほど、コンピュータを搭載している。
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身の回りにある家電、エレベータや自動ドア、人工衛星まで、あらゆる製品に組み込みシステムが搭載されている
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プログラム制御技術応用分野の広がり
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IH炊飯器 熱加減を制御するコンピュータ システムブロック図
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車載組み込みシステム
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コンピュータと現実世界の繋がり
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南角准教授は、身近な例として、携帯電話を取り上げて組み込みシステムの解説をした。携帯電話はひとつのボタンでも、表示される画面によって異なる機能が割り当てられる。メニューボタンは、Webブラウザを使っている時には「メニュー」キーだが、設定画面では、「カスタマイズ」キーになっている、という感じだ。これもコンピュータが組み込まれていて、プログラム上で画面を判定して、ボタンの機能をプログラム的に振り分けているから実現している。
音声というのは、入力も出力もアナログだが、携帯電話はアナログ信号をデジタルデータに変換して通信する技術を駆使している。
初期の携帯は、音声というアナログデータだけで処理されていたが、携帯電話の普及と、高機能化に伴ってデジタル化せざるを得なかったという。まず周波数の問題がある。携帯電話で使用できる周波数は法律で定められているため、同じ周波数の電波を複数送ることは、アナログでは不可能だ。デジタルなら、同じ周波数に10人分の電波を乗せることも可能になる。それ以外にも、ノイズの除去などデジタルだから解決できることはいろいろとあるという。
例えば、メールを入力している最中に電話が掛かってきた時、会話をした後にメールの続きを入力できる。このような複雑な割り込み処理に対応できる仕組みは、全て組み込みシステムの成せる技である。組み込みシステムは、ユーザーに意識されないくらい自然に身の回りにあるのだ。
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携帯電話はひとつのボタンが画面に応じて違った機能を持っている
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携帯電話のシステムにはアナログとデジタルが混在している
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組み込みシステムは、外部からの割り込み処理に対応することが必須
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つまり、組み込みシステムは前述の携帯電話のように、いつどのような条件で割り込み処理が入るのか分からない。その点が、実行ボタンを押せばその結果を表示する会計管理ソフトや出退勤管理ソフトなどと違う点だ。
組み込みシステムは、「メカ」「ハード」「ソフトウェア」の3つの分野が協調し、1つの目的を達成するシステムだ。どれかひとつでも不備があれば、システムは稼働できない。携帯電話業界などで顕著なように、新製品投入サイクルは短くなるのに、機能は複雑になり開発するソフトウェア量は増大している。このような背景があって、組み込みシステム技術者の需要は高まっているという。
南角准教授は「組み込みシステムに興味を持ち、将来、自分が開発した製品を多くの人の役に立つ喜びを感じてほしい」と語った。
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組み込みシステムは「メカ」「ハード」「ソフトウェア」の3つの分野が協調したシステム
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講演後に、興味深そうにさまざまな基板に手を触れる聴講者達
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● ET&ロボット体験、製作・プログラミング教室
会場では、来場した小中高校生向けに、レゴを使った「ETロボット製作&プログラミング教室」や、大阪日本橋でんでんタウン協力の「触覚センサーで自律移動するオリジナルロボット工作教室」「ETプログラミング教室」「ET&ロボット体験教室」などが開催された。初級者~上級者まで多くの参加者が、ロボット工作とプログラミングを楽しんだ。
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ロボット工作教室
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センサーで障害物を検知して移動するロボットを製作
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レゴで製作したロボットを使い、レース形式で動作チェックを行なった
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ET&ロボット体験教室では、大阪電気通信大学の自由工房による人型ロボット操縦体験コーナーが大人気。午後には、ミニ・バトルトーナメントも開催された。他にも、ロボカップ小型リーグのデモンストレーションや、大阪府立工業高等専門学校のブースでロボットの展示があった。同校の学生が製作したアニマトロニクスは、エアシリンダーでジャンプするカンガルーロボットや、カマキリロボットが人気を集めていた。
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人型ロボット操縦体験。ミニ・バトルトーナメント大会風景
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ロボカップ小型リーグデモンストレーション
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カンガルーロボットはしっぽを空気圧で床に打ち付けてジャンプする
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カマキリロボットは有線で操縦する。リアルな造形で男の子に人気だった
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サンリツオートメーションは、レスキューロボットコンテストのプラットホームに採用されている遠隔操作IPシステムを活用し、ラジコンカーにカメラを搭載しゲーム感覚で楽しめる展示をしていた。遠隔IPシステムは、キャプチャと画像圧縮を並行処理しながら、無線LAN経由で100ms以下の遅延時間を実現している。人はわずか0.1秒の遅延でも違和感があるため、車速と操舵角度情報から、伝送遅延分の予測画像を算出して加工し、遅延が生じていない画像を補整して、リアルな操作を可能にしている。
今年の8月には、デジタル入出力8ch、オーディオ入出力、CANなどを追加したボードを新発売するという。
アールティは、新製品のハーフサイズマウス「Pi:Co」で子ども達に迷路ロボットのデモンストレーションを行なった。子どもに迷路を作ってもらい、マウスがスタートからゴールまで自走する。ゴールした後も迷路の探索をしてからスタート地点に戻り、第二走行は今、探索した走路の中から最短距離を選んで走るマウスの賢さに子どもも保護者も感心していた。
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レスコンボードを搭載した車をゲーム感覚で操縦できる体験コーナー
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前後に搭載したカメラで撮影した画像をリアルタイムで転送する
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難しい迷路を作ってマイクロマウスの知能に挑戦する子ども達
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■URL
ET×ロボット2008
http://et-x-robot.jp/
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( 三月兎 )
2008/06/26 00:01
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