前回までのレポートでは、大手企業などを中心とした産業用ロボットやサービスロボットに焦点を当ててレポートをしてきた。今回は、ロボットベンチャー企業などが展示を行なった「ロボットマッチングセッション」、大学・研究機関らによる「RT交流プラザ」の展示を紹介していく。
● 「ROBO-ONE」組も続々出展の「ロボットマッチングセッション」
有限会社杉浦機械設計事務所は二足歩行ロボット格闘大会「ROBO-ONE」出場ロボット「ダイナマイザー」を並べていた。
アミューズメントロボットの開発を手がけるエスケイパンはロボットキット「Gogic Five」をデモ。なおGogic Fiveは「Gogic Player」としてエレキットから販売される予定になっている。
株式会社アールティはハーフサイズマイクロマウスロボットキット「Pi:Co(ピーコ)」を出展しデモしていた。来年6月に発売予定。
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有限会社杉浦機械設計事務所ブース
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「ダイナマイザー」
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小型猫型ロボットも展示
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エスケイパンブース。Gogic Fiveのデモなどをしていた
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アールティブース
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来年6月に発売予定のハーフサイズマイクロマウスロボットキット「Pi:Co(ピーコ)」
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Hotproceedは近藤科学「KHR-2HV」用のレーザー発射オプション「Blaser System」を出展。ロボットにレーザーガンを取り付け、それを撃ち合うことで点数を競うという競技だ。発売はクラフトハウスが担当し、12月下旬を予定している。予価は3万円とのこと。
雅雅ドリームワークスはKHR-2HV用の外装「Master-02 DRAPE」を展示。12月15日に同社サイトから発売予定だ。
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Hotproceedと販売を行なうクラフトハウス・ブース
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Blaser System
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KHR-2HVに取り付けた状態
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【動画】レーザーを発射した様子
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ジオラマのなかで遊ぶ様子を撮影したパネル。合成ではないそうだ
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雅雅ドリームワークスのKHR-2HV用の外装「Master-02 DRAPE」
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宇宙機器の制御系設計、特にモーターの位置決め制御系設計を得意としているという株式会社テクノロードは、ROBO-ONE on PCで何度も優勝している杉浦登氏が設立したベンチャーで、こちらは「ヒューマノイドロボットシミュレータ」を参考出展していた。物理演算APIにODEを採用したシミュレータで、ロボットのさまざまな動作を簡単にプログラミングできる。今後はROBO-ONE出場ロボットなどのデータをコンバートしてシミュレーションで動かしてみるといった試みも進める予定だという。
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テクノロード・ブース
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テクノロードの「ヒューマノイドロボットシミュレータ」
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日本精工は今年10月に発表された階段を認識して昇降する4脚ロボットを展示していた。ヒューマンアシストを目指してロボット開発を行なっているという。残念ながらデモは行なわれていなかった。
スキューズ株式会社はエアアクチュエータを使った義手を展示していた。この義手については同社が開催したマーケティングセミナーのレポート記事を参照されたい。
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日本精工の四脚車輪型ロボット
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スキューズの義手
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ロボットアクティブステージでは多くのデモが行なわれた。最終日にはROBO-ONEも行なわれた。
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アクティブステージでのレスキューロボットデモの様子
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週末にはROBO-ONEも開催された
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● 大学・研究機関による「RT交流プラザ」
千葉大学野波研究室ブースでは、ステレオカメラを持った双腕ロボットのほか、大型の6脚歩行ロボット「COMET-IV」が展示されていた。「COMET-IV」の動きはビデオで上映されていた。
東京工業大学 北川・塚越研究室からはレスキューロボットなどが出展されていた。
学校法人芝浦工業大学 水川真研究室からは、屋外自律型移動ロボット「PAR-NE07」が出展されていた。「つくばチャレンジ」に出場したロボットで、記録は250m。また筑波大学の移動ロボットも並んで出展されていた。
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【動画】千葉大学野波研の双腕ロボットによるデモ
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千葉大学野波研「COMET-IV」
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東工大 北川・塚越研究室ブース
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芝浦工業大学ブース
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電気通信大学は、各研究室が1つずつブースをとってロボットを出展していた。
電気通信大学共同研究センター 田口研究室では2足スケーティングロボット「BSR-1改」が展示されていた。残念ながら動きはビデオでしか確認できない。現在は片足スケーティングを行なう「BSR-2」を開発中とのことだ。またミニ管内移動検査ロボットも合わせて展示されていた。
電気通信大学松野研究室ではネジ推進機構を持つヘビ型ロボット「ネジヘビ2」のデモを行なっていた。関節ユニットの数は増やすことができるので、将来は関節ユニットを増やすことで無線化などを計画しているという。
電気通信大学 知能機械工学科ロボティクス講座 下条・明研究室ブースでは、MFC(Macro Fiber Composite)というフィルム状の圧電複合材料を使った「水中ロボット」が動く様子を見ることが出来た。現在は昆虫のような動き方だが将来は魚型のロボットを開発する予定だという。
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電通大 田口研究室「BSR-1改」
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【動画】電通大松野研「ネジヘビ2」
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【動画】電通大下条・明研のMFCを使った水中ロボット
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電気通信大学田口研のミニ管内移動検査ロボット
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早稲田大学人間科学学術院 可部研究室は、笑いで健康を創造するロボットとして「toccoちゃん」というロボットを紹介していた。パンダの外装がつけられているが、中身は近藤科学「KHR-2HV」である。
産業技術総合研究所知能システム研究部門分散システムデザイングループと株式会社AUCのブースでは、移動検査ロボット「DIR-1(ディアー・ワン)」が展示されていた。重量5.5kgのくローラ式ロボットで、広角・ズーム用CCDカメラのほかLED照明や、照度センサー、可燃ガスセンサ、非接触温度センサー、加速度センサーなど多くのセンサーを持ち、リンク機構の活用によりロボット本体と同じ高さ20cmの段差を乗り越えることができる。水たまりでも走行できる防水性を持っている。
東京理科大・小林研究室ではロボット受付嬢SAYAとマッスルスーツを展示していた。SAYAは呼びかけると答えてくれた。
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早稲田大可部研「toccoちゃん」
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産総研/AUCの移動検査ロボット「DIR-1」
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【動画】東京理科大・小林研のSAYA。呼びかけると音声認識で答えてくれる
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東京理科大・小林研のマッスルスーツ
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静岡大学松丸隆文研究室ブースでは、プロジェクターと、そこから投影されるアイコンを踏むことによるステップ・オン・インターフェイスを用いた移動ロボットをデモンストレーションしていた。
明治大学理工学部情報科学科 武野純一研究室は「ロボットによる鏡像認知」を使った「人工意識」の研究を展示。感情を意識するシステムを開発しようとしているそうだ。
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静岡大学松丸隆文研究室ブース
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明治大学 武野研の「ロボットによる鏡像認知」
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東京電機大学/理化学研究所/情報通信研究機構ブースでは、開発中のレスキューロボットシステムを展示していた。以前から開発されているレスキュー用のユビキタスコミュニケーターを球体にしたもので、転がしても先端に全方位カメラをつけた部分が上を向くようになっている。これをロボットが運搬し、自動的に必要な場所に蒔いていくことでセンサーネットワークを構築するシステムの開発を目指しているという。
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新開発中の球状ユビキタスコミュニケーター
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【動画】転がしても常に全方位カメラが上に向く
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内部機構
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ロボットで自動散布していく
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より小型化したモデルも開発中
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ロボットによるレスキュー支援を目指す
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● 同時開催イベントでもロボット
今回は「パテント・ソリューション・フェア」「クラスタージャパン2007」「2007産学技術交流フェア」「全国インキュベーションフォーラム2007」が同時に開催されていたが、そちらにもいくつかロボットが出展されていた。あわせてご紹介する。
産業技術総合研究所 情報技術研究部門は、「雑音に頑健な音声認識システム」を出展していた。8個のマイクからなるマイクアレイを用いて音源定位を行ない、目的の音だけを分離できるという。また、音響モデルを使うことで背景雑音の歪みを推定し、除去することができる。マイクアレイで除去できなかったノイズを特徴補正で除去することで頑健性を高めているという。
応用例として、音声対話ロボットや音声コマンドで動作する音声認識電動車椅子が出展されていた。
株式会社ロボットライフ21は、株式会社ビジネスデザイン研究所の関連会社。株式会社クイックサンと共同開発した、音声認識技術を使って声でブラウザをコントロールする「ロボット・ブラウザ」を出展していた。表示されたウェブサイトのリンク先には自動的に3桁のナンバーが振られ、それを読み上げるとリンク先に飛べる。マウスやキーボードを使えない人たちのためのバリアフリー技術だ。
今後も同社では、ロボットの技術、いわゆるRTを活用した製品を開発・販売していくという。
早稲田大学産学官研究推進センター・インキュベーション推進室ブースには、ナレッジサービス株式会社が営業している「ろぼのケプロジェクト」による「カッパノイド」を出展。カッパノイドはリアルとバーチャルの融合を目指したプロジェクトの一環として開発されたロボットで、おなかをなでると喜びの動作をしたり、バーコードリーダになっていうる口でバーコードを読み取ったりする。2007年神戸ビエンナーレで入賞したという。
デモは「インフルエンザでお休み中」とのことで見ることができなかった。
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産総研の音声対話ロボット
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産総研の音声認識電動車椅子
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ロボットライフ21「ロボット・ブラウザ」
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カッパノイド
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岐阜県研究開発財団は、早稲田大学高西研究室のオーラル・リハビリテーション・ロボット「WAO-1」を出展。アゴの耳下腺や咬筋をマッサージするロボットで、2本の6自由度アームでアゴを揉む。仮想コンプライアンス制御によって、柔らかいもみかたができるという。
今後は治療効果を検証し、術式の確立、コストパフォーマンスの向上を目指す。
とちぎコンソーシアムは、栃木県の各メーカーと宇都宮大学工学部機械システム工学科准教授の尾崎功一氏らが共同で開発した農業ロボット「イチゴ摘みロボット」を出展。車輪による移動ロボットで、大きさは幅68cm×全長120cm×高さ120cm。イチゴを摘み取るための3軸直動アームを持つ。アームにはカメラが取り付けられており、熟したイチゴの色を認識し、イチゴを傷つけないように摘み取ることができる。ビニールハウスくらいの明るさであれば間違うことはないという。またビニールハウス内の移動も自動で行なう。
宇都宮大学発ベンチャーである合同会社ロモビリティ陽東 開発部部長の原紳氏によれば、今後は「摘みとり」だけではなく、より実用的な「収穫」ロボットとすることを目指すという。
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早稲田大学高西研究室「WAO-1」
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とちぎコンソーシアム「イチゴ摘みロボット」
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イチゴ摘みロボットの正面
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【動画】イチゴ摘みロボットの動作の様子
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■URL
2007国際ロボット展
http://www.nikkan.co.jp/eve/07ROBOT/
【2005年12月1日】2005国際ロボット展開催(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1201/irex.htm
■ 関連記事
・ 「2007国際ロボット展」レポート 【サービスロボットゾーン編】(2007/12/03)
・ 「2007国際ロボット展」レポート 【産業用ロボット編】(2007/11/30)
( 森山和道 )
2007/12/04 16:39
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