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産総研、知能システム研究部門 研究成果展示会「オープンハウス2006」を開催


 11月15日、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)知能システム研究部門は、研究成果展示会「オープンハウス2006」を開催した。サブタイトルは「Robot Technologyで明日を描く」。

 産総研知能システム研究部門との連携に関心のある企業や研究機関を対象にしたもので、合計18件のRT(Robot Technology)関連の研究展示と、4件のセミナーが開催された。セミナーと展示を合わせて紹介する。


各種ロボットの展示

 まずは空中用のロボット、UAV2点が展示されていた。「自律型無人ヘリコプタ」は小型の無人ヘリの実現を目指したもので、HIROBOの市販ホビー用ラジコンヘリに機器を搭載した。重量11kg、エンジンの排気量は15cc。

 高精度な位置姿勢情報から、自律飛行、自動離着陸ができる。胴体下部には産総研の開発した汎用3次元視覚認識システム「VVV」を搭載しており、3次元画像が取得できる。OSはART-Linux。

 なお三次元視覚システム「VVV」の詳細については、2003年の「PC Watch」の記事「HRP-2 Prometの隠された能力」を参照してほしい。現在、同システムは株式会社アプライド・ビジョン・システムから商品化され、販売されている。


自律型無人ヘリコプタ 別室でデモされていたRTミドルウェア準拠の三次元視覚コンポーネント

 「物流産業支援型空中ロボット」は、特に末端物流での航空用途を想定した無人機。100kg程度の物体を運ぶことができるという。2005年11月に初飛行に成功した。主翼はまるごと動かせるようになっていて迎え角を変化させることができる。今年3月には短距離(25m)での離陸に成功した。

 「小さくて遅い飛行機械」を目指しており、翼は電動で折りたたむこともできる。将来は飛行ロボットを空中で捕捉・離脱させるロボットアームを開発していくという。取りあえずの用途には火山観測時の物資投下などを考えているそうだ。


物流産業支援型空中ロボット 胴体正面 ジェットエンジン2基を搭載。安全性や騒音を考慮した設計になっている

飛行テストの様子 飛行機を空中で捕捉できるアームロボットと組み合わせる予定 新物流システム構築を目指す

 「センサーネットワークシステム」と題された展示には、小型のクローラ付きロボットが出展されていた。幅36cm、高さ20cm、5.5kg。実際にはこのロボットを複数使ってネットワークを組むというシステムを考えているという。また、無線センサネットワークと、このロボットを組み合わせて連携することもできる。

 三角クローラと直線クローラを組み合わせたボディは、必要に応じて変形して不整地を移動する。本体には超音波による測距センサーや湿度や温度、ガスのセンサー、カメラのほか、スピーカーを搭載しており、Bluetoothで外部から通信して音声を送るといった使い方もできる。

 具体的な用途としてはレスキューなどのほか、高級果実などを栽培している農場などでの、湿度や気温などの情報収集用途を考えているそうだ。


センサーネットワークシステム・ロボット 【動画】ロボットの旋回動作

【動画】変形して坂を上って降りる。最大登坂性能は45度 【動画】変形してトランクを登る

自律移動芝刈り機を目指す、環境走査型ロボットシステム
 「環境走査型ロボットシステム」は、芝刈りや草刈りをアプリケーションとしたロボットだ。システムは外部支援用の測量機トータルステーションと、移動プラットフォームからなり、屋外環境で自律移動するために環境をくまなく移動する「環境走査」、そのための経路計画、移動制御技術、立木や窪地などの検出技術を開発している。

 移動プラットフォームは芝生などを傷つけないよう低圧タイヤが用いられている。不整地対応のためにインホイールモーターが採用されており、4輪が独立に駆動する。前輪モジュールと後輪モジュールの間には受動間接があり、4輪が常に設置するように機構設計されている。

 2006年度中に市販の芝刈り機をコンピュータ制御した自律移動制御芝刈り機の実現を目指すという。

「医薬品アンプルハンドリングシステム」は、三次元視覚システム「VVV」を使ったロボットで、オオクマ電子株式会社、株式会社アプライド・ビジョン・システムと共同で産総研が開発したもの。

 医療事故の15%は薬品の取り違えで起きている。医薬品アンプルの格納作業を自動化することで、取り違え事故が減ることが期待されるという。


医薬品アンプルハンドリングシステム 【動画】ラベルが添付された円柱状アンプルなら認識できる

 知能システムグループが開発しているロボットのなかで、HRP-2と並んで有名なものが、あざらしロボット「パロ」だ。産総研では「メンタルコミットメントロボット」と呼んでいる。'93年に開発が始まり、現在のパロは第7世代。株式会社知能システムから販売されている。2007年には第8世代を開発し、海外でも売り出すという。

 「布のハンドリングロボット」は、柔らかくて変形する布を一枚ずつつまみあげて、また別の場所に置くことができるロボット。残念ながらデモはなかった。

 「スキルアシストロボット」は、自動車組み立てラインでの重量部品搬送を手助けするロボット。力だけではなく、スキルをアシストすることができる。ヒューマンエラー等についても配慮がなされている。実際にトヨタ自動車のラインに導入されており、活用されているが、事故が起きたことは一度もないそうだ。


パロの群れ。各世代のパロが並べられていた パロ年表 おしゃぶりをくわえているのは充電中。色が違うのはゴールド

布のハンドリングロボット。このほか手のひらを持つ3本指ハンドのロボットも開発されている 指先のひずみ情報などを使って、布を1枚ずつ扱うことができるという

【動画】スキルアシストロボット 【動画】人の腕が危険な位置にあるとアラートが鳴る スキルアシストシステム(山田グループ長の講演から。後述)

 また、あちこちで活用されていたのが「無線センサネットワークノード」だ。各種センサを取り付けられるネットワークノードで、家畜のモニタリングや橋脚やビルの監視などをアプリケーションとして考えているという。

 ロボット本体ではなく周囲の環境を知能化させてロボット実用化を図る「ユビキタス・ロボティクス」の研究の展示として、電子タグを利用したロボットによる書籍片づけや、皿の片づけを行なうデモも実施されていた。詳細は、後述のセミナーにて、空間機能研究グループ研究グループ長の大場光太郎氏が講演した。


大規模分散センサネットワークのデモ。合計100個の温度センサモジュールを微弱無線で繋いでいる 一箇所だけアイスパックが一緒に入れられているのだが、温度センサでそれが分かる

センサノード単体。さまざまなセンサを付けることができ、原価数百円で作れるという 他のデモの一例。サンタ人形に付けた加速度センサーから動きを無線で読み取る

【動画】ユビキタス・ロボットのデモ。本を掴み、本棚から空いているところを探して本を差し込むロボット 【動画】皿をテーブルからトレイに片づけるロボット 複数の作業を同じロボットでやらせることでタスクにおける共通構造を探す研究

システム全体はRTミドルウェアで統合されている ドアの横にセンサーノードが貼り付けられていた

部屋の天井にもセンサーノードが貼り付けられている テーブル上の皿にはタグ、テーブルにはアンテナが埋め込まれている

 ヒューマノイドロボット「HRP-2(通称:プロメテ)」は、体操のような動作や会津磐梯山踊りで全身協調動作のデモを行なった。また、冷蔵庫からカンを取り出したり、床におちたビニール袋のような未知物体を拾い上げる、生活支援を目的とした自律機能のデモも行なわれた。

 なお、これらのデモについては「PC Watch」で既報している。会津磐梯山踊りについて知りたい方は2005年1月の記事「HRP-2、人間と一緒に会津磐梯山を踊る」を、冷蔵庫そのほかの生活支援デモについてより詳しいことを知りたい方は2006年1月の記事「HRP-2、生活支援のための自律能力を向上」をご覧頂きたい。

 HRP-2本体については2002年12月に「川田工業、出渕裕氏デザインの2足歩行ロボット「Promet」公開」でレポートしている。


【動画】HRP-2による会津磐梯山踊り 【動画】体操動作

 以前、記者発表のときにはあまり動かなかった小型ヒューマノイロボット「HRP-2m Choromet(チョロメテ)」もシャドーボクシングのような素早い動作や起きあがりなどでアピールしていた。チョロメテについては2006年5月の記事「産総研ベンチャーほか4社が共同で「HRP-2チョロメテ」を開発」を参照されたい。

 ゼネラルロボティクス株式会社から販売されているチョロメテだが、これまでに20体ほど売れているそうだ。


チョロメテ。高さ35cm、重量1.5kg 【動画】屈伸からしゃがみこみ、腹筋動作 【動画】起きあがりから片足バランス

【動画】背面から起きあがり動作 【動画】シャドーボクシング

セミナー 〜RT(Robot Technology)の可能性

産総研知能システム研究部門長 平井成興氏
 セミナーは4件行なわれた。まずはじめに、「ロボット技術戦略の最新動向〜新サービス創成を目指すRT」と題して、産総研知能システム研究部門長の平井成興氏が講演した。

 産総研知能システム研究部門では、人間型から空間埋め込み型まで、さまざまな形でのロボット技術(RT)、ロボットシステム技術を探索している。RTとは、実世界に働きかける機能を持つ情報システム、知能化システムのことだ。

 もともと平成13年に日本ロボット工業会「21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略」が、これからのロボット市場を模索するうえで、ロボットの本質は機能の統合・ソリューションであるというところに行き着いたのだという。そのほうが、ロボットの形にとらわれることなく、各要素を市場展開できるのではないかと考えたのだそうだ。

 市場を拓くためには皆が技術を使えるようになる必要があり、そのためにはオープン化が望ましい。部品もソフトウェアもロボットシステムごとに毎回違うようでは、コストは下がらず、敷居が高い。だが部品が共通化されていれば、ロボットデザイナー的な人がロボットのコンポーネントを市場から集めることでロボットを作れる。

 このような考え方のもと始まったのが「RTミドルウェアプロジェクト」(平成14年〜16年度)だ。おおざっぱにいうとハードウェア、あるいはロボット用のソフトウェアを繋ぐためのミドルウェアを開発し、ネットワークで結合して使おうというものだ。

 平井氏は「モジュール化技術によってロボットを作ろうという点ではスタートを切れたと考えている」という。現在、RTミドルウェアは、経済産業省の「技術戦略マップ」の次世代ロボット開発計画のなかにも組み込まれて開発が進められている。


 経済産業省は現在、ロードマップを作って技術開発を進めるべきだという考えで政策推進を行なっており、さまざまなロードマップをつくっている。そのなかでロボットは、現状のロボット中心・限定タスクから、だんだん、インフラ中心・公共タスクへと展開していくとされている。将来的にはGPSなどの位置検出技術やRTミドルウェアによって、空間全体として人々の支援を行なえるような社会を、ひとつのゴールとしている。

 ではどんなサポートをロボットは行なうのか。基本的には人間が人間を助けるときにやるような仕事をやってほしいわけだ。そのときにフルセットのロボットは必要ない。各部品が空間ネットワークで構成されていればいいのである。そうすれば技術的敷居も低くなる。

 ロボットを活用するための政策提言は2005年1月から検討を続けていた「ロボット政策研究会」から今年5月に発表された。要旨は、開発のための開発ではなく、実用ロボットの開発の重視、ユーザー視点に立ったサービス産業のなかでのロボット活用ビジネスの振興、そして安全技術や法制度などの社会環境整備である。

 それに対して行なわれているのがロボット要素技術をモジュール化するためのインターフェイスの基盤技術開発を目指す「次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト」、福祉介護分野でのロボットをつくる「人間支援型ロボット実用化プロジェクト」、そして今年度から始まった「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」である。ロボットの出口を見せることで可能性を見せることを目指す。

 ビジネス振興のためには、メーカー、サービスプロバイダー、ベンチャーなどを繋ぐ「ロボットビジネス推進協議会」の設立、「今年のロボット」大賞のような表彰制度も創設された。安全性に関しては次世代ロボット安全性確保ガイドラインの策定などが検討されている。

 現段階のロードマップでは、2010年にサービスロボットが普及段階に至り1.8兆円、2015年には本格普及段階に入って3.1兆円の市場ができることになっている。なお省庁連携のロボット基盤技術整備も始まりつつあるという。平井氏は、「総合的にロボットを使いやすいものにするためのストラクチャーのアプローチが重要だ」とまとめた。


RTミドルウェアの概要 次世代ロボット開発のためのアクションプラン 2015年までのロボット政策全体像

知能システム研究部門 副部門長 兼 ヒューマノイド研究グループ長 比留川博久氏
 続けて、現在のロボットビジネスの現状と課題、そして「ユーザー指向ロボットオープンアーキテクチャ(UCROA)」の背景について知能システム研究部門 副部門長 兼 ヒューマノイド研究グループ長の比留川博久氏が講演した。

 現在のロボット産業は基本的に景気動向に応じて出荷額が変化していると見ることができる。いっぽう出荷台数は増えているので、ロボット単価そのものは安くなっている計算だ。今後20年で少子高齢化によって、労働者人口が470万人減り、高齢者人口が933万人増えると見られている。そのギャップは1,403万人。この労働力人口減少の25%をロボットが代替するとみると、はじめて5.8兆円になり、よく取り上げられるロボット市場予測の金額に達する。だが労働力人口減少の1/4もロボットが代替するとは考えにくい。

 いっぽう、次世代産業用ロボットも徐々に知能化が進んでいる。ファナックの全方位ビジョンを使ったピッキングロボットや安川電機の双腕協調ロボットなど、面白いロボットも登場してきた。

 第3次産業用ロボットは、大きな期待がかけられているがまだ大きくはない。しかしながら富士重工の掃除ロボットはいま年間売り上げ10億円規模のビジネスに近づいている。これらに使われている自律移動ナビゲーション技術はいくつかの問題はあるものの、実用段階に入っている。

 比留川氏は、おもしろい例として、魚群探知機と連動するイカ釣りシステムなどを挙げた。また「教育市場もバカにならない」として、1万台以上売れている「Robodesigner」や、きちんと教材とすることで需要を開拓したZMPの「e-nuvo」を挙げた。また、福祉ロボットには安全技術や厚生労働省の認可などが重要になるが、これもまた50万円程度の単価の市場を形成している。


 家庭用ロボットの現状は厳しい。年間100億円以上売れたロボットはソニーAIBOとirobotのRoombaの2つしかない。この例が示唆するのは、家庭用市場は当てると大きいが難しいということだ。ホビー用ロボット市場も小さいが各社数億円程度の市場規模は形成している。

 市場の現状は、ビジネス用途の500万円以下、教育や福祉ロボットの50万円以下、家庭用ロボットの5万円以下の市場の3つのカテゴリに分けられるというのが比留川氏の見方だ。

 いずれにしても現在の最大の問題は「投資額と市場規模のミスマッチにある」という。現状の技術では、100億円規模の市場を拓くことは難しい。逆にそのために十億円規模の投資は困難だ。

 また、産業用ロボットメーカーはニーズに応えるのに手一杯で開発意欲には乏しく、電機メーカーは研究所で開発しているため事業との結びつきが弱い。「愛・地球博」(愛知万博)の「プロトタイプロボット展」では、主に大学を中心として1,000人以上の研究者が集まった。しかしながら一向に製品開発の力とはなっていない。このように、ロボット研究と製品開発の間には大きなミスマッチがあって、うまくいっていない。

 ではどうするか。2010年までは年間10億円規模の市場を狙う。そして大企業は開発投資ではなく小規模事業を許容すべきだという。なぜ研究ではなく事業なのか。部品メーカーを養成するためと、ニーズに対する市場からの真摯なフィードバックを受けるためだ。比留川氏は「たとえ少額であっても販売してお金をもらうと『こんなものはダメだ』と客から罵倒される。すなわち真剣に意見がもらえる。そうでないと本当のニーズは分からない」と語った。

 では投資額と市場規模ミスマッチはどうやって解消するのか。開発投資額を少なくするか、製品単価を下げることは短期的に行なえるかもしれない。開発コストを下げるための方策の提案が、産総研主導の「UCROA」だ(詳細)。また、製品コストもを下げないといけない。産総研ではそのために低価格部品の開発も行なっているという。


ロボット産業の現状 ファナックと安川電機の産業用ロボット 移動サービスロボット

「自動イカ釣りシステム」と「ロボQ」 エンターテイメント・癒しロボット市場も数億円規模に成長している ヒューマノイド市場も全て合わせれば数十億円くらいは売り上げている

「プロトタイプロボット展」では1,000人以上の研究者が集ったが…… 今後のロボット開発の方向性

知能システム研究部門 空間機能研究グループ長 大場光太郎氏
 知能システム研究部門 空間機能研究グループ長・大場光太郎氏は「ロボットのための環境構造化の動向〜ICタグ、屋内GPSなどの新しいロボット要素」と題して講演した。ICタグや屋内GPSといった技術はロボティクスの研究者・技術者たちにとってはまだ縁遠いのが現状だという。

 まずICタグそのほかの前に、「ユビキタス・ロボティクス」の概要について説明した。ヒューマノイドは一体型のシステムで、基本的に単体がサービスを行なうことが前提となっている。だがサービスの視点でみると、ヒューマノイドは解のひとつでしかない。空間に要素を配置してサービスを行なうという解もある。環境、インフラを賢くできればロボット単体を安くすることもできる。それが空間機能化であり、ユビキタス・ロボティクスに繋がる。

 大場氏らは平成15年にタグを皿に貼り付け、16年に無線ネットワークノードの開発、今年はユビキタス・ロボティクス家庭環境、大規模センサーネットワークを開発してリリースしている。

 家庭にロボットが入ってきたとき、たとえば机の上のコップをとってくれと頼むタスクがあったとする。だがこれに応えることは現状のロボット、人工知能技術ではむずかしい。だがモノにタグをつければ、知識を環境に埋め込める。それによってロボットの実用化は格段に近づく、というのが大場氏らの考え方である。

 タグをつけることにより、ロボットのプログラミングはまったく変わってくるという。まったく未知の環境であっても、ロボットが動けば、環境から情報が流れ込んでくるからだ。平成15年に作られたシステムでは、ロボットから要求を送ると、テーブル上に載った皿のデータをその下のアンテナで拾い、ロボットへ情報を送るようになっている。

 「タグを使い始めて分かったのは、一言でタグといっているが動作周波数によって性質がまったく異なること」だという。スペックそのままで動くわけでもない。かなり周囲の環境に影響を受けるからだ。また、電池があるからアクティブ、なければパッシブ型というわけでもない。二次電池を搭載しているセミアクティブ、セミパッシブ型のタグもあるからだ。

 産総研では微弱無線を使う、消費電力が少ないタグを作っている。産総研ベンチャーのワイマチック株式会社から販売されている。だが作った当初は売れると思っていなかったそうだ。ほかのタグが受信機(リーダー)が高かったのに比べ、原価数百円のこれが2台あれば受送信ができること、そしてもともとロボットと共存させることを考えていたため、ノイズに強かったことが特徴だという。

 このタグはセンサーネットワークにもなる。しかしセンサーネットワークは2003年ごろにはブームになったが、いまは「死の谷」に入ってしまっているのではないかという。研究者が開発のために行なう研究ではなく実際に動くものがなかなか出てこなかったため企業は興味を失ってしまっているのが現状だ。そこで大場氏らはいま、実際に100個のタグを動かしてみる研究を行なっている。


ユビキタス・ロボティクス ロボットのなかにあったRT要素を外部化することで、知能分散だけでなく、物体認識やセンサのインフラ化も行なえる ユビキタス・ロボティクス家庭環境(上述のデモ動画ほかを参照)

無線ネットワークノード センサネットワークはいま「死の谷」にあるという

 大場氏は、スードライトを使った屋内GPS技術についても解説した。スードライトとは、地上に設置する擬似的衛星である。位置をとるためには最低4箇所のGPSが必要だが、実際にはなかなか難しい。そのために位置データを補助として提供するものだ。

 だがこれはかなり高価で1基400万円もするので、気楽に設置して実験を行なうことはできない。しかし、GPSによる測位には完全に時計の同期をとる必要があるが、もし屋内で使うのであれば、有線で同期はとれる。そうすればもっと安価にできるはずだ。そこで現在、より安価なシステムの開発が進められている。

 実際に歩行者ITSなどの実験を行なったところ、数センチの精度で位置が取れるという。これがあればロボットは屋内屋外問わず、シームレスに動けるようになる。ただし、ロボットのためだけにこれをつけることはまずできない。非常時通報システムなどにも使えるといった用途が必要だ。インフラは一個の用途だけでは成り立たない。RT要素が組み合わさってロボットを形成するというのがユビキタス・ロボティクスの考え方だが、なるべく安価にするためには空間にばらまくほうが得だ。

 大場氏は、最初はRTを外部化することは機能や知能の分散だけだと考えていたそうだ。しかし、どこにばらまくかによって物体認識という付加価値も生まれるし、それがセンサーのインフラ化にもつながる。ひいては、生活環境でのロボット市場の早期創出に繋がるのではないかと考えているとまとめた。


スードライト概要 スードライト設置風景

知能システム研究部門 安全知能研究グループ長 山田陽滋氏
 最後に「ロボット安全〜機械安全の基礎から人間共存ロボットの安全技術動向まで〜」と題して、知能システム研究部門 安全知能研究グループ長の山田陽滋氏が講演した。山田氏は、風邪が流行しているときは予防のためにマスクも二重にしているという。

 ロボットが事故を起こした場合、どうなるか。ディーラに対しては瑕疵担保責任しか問えない。だからユーザーは、メーカに対して製造物責任を問うことになる。そこで問題になるのが安全性だ。安全性とは「許容できないリスクが存在しない状態」のことである。

 ではリスクとは何か? そのまえにハザードという言葉を知らなければならない。ハザード(危険源)とは危害を引き起こす可能性のある識別可能な状況、すなわち潜在的な危害シナリオ、危害事象のことである。

 リスクの定義は多義的で、危険なこと、あるいは損失が生じるか朽ちる、あるいは損失の大きさと発生確率の積などのことである。より一般的にはハザードの確率、重篤度、危険回避性の積である。

 安全はリスクとの関係で定義される。許容できないリスクが存在しない状態が安全なのだから、リスクが許容できる状態が安全だということになる。逆にリスクが大きいと安全ではないということになる。

 次がリスクアセスメントプロセスだ。現在ではリスクアセスメントは法律で義務付けられている。またそれに基づいて、リスクを自分たちが許容できる範囲以下にするリスク低減プロセスがある。まず使用状況を明確化し、ハザードを同定し、リスクを見積もる。もし許容されないと、製品を世の中に出すことはできない。

 ではリスクはどのように低減するのか。本質安全設計、安全防護による保護方策・付加の安全方策、使用上の情報(残留リスク)提供の3ステップを順番どおり行なわなければならない。つまり、安全設計をせずに注意だけするようではだめだということだ。

 産総研ではFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)という手法でリスク発見を行ない、定量化してリスク低減を行なっている。技術に安全をゆだねる上では、部品ごとのリスクを低減する機能安全の考え方が重要だという。

 制御システムの安全性確保はISO 13849-1でカテゴリー3、カテゴリー4というかたちで分類されている。サービスロボットはカテゴリー3だ。

 産総研では自動車組み立て用のスキルアシストシステムを開発し、実際に現場で導入されている。事故はまだ一件もおきていないという(上述のデモ動画参照)。

 今年、産業用ロボット規格のISO 10218-1が改定された。以前はとにかく柵で覆わなければならなかったが、教示以外でもロボットの近くに人間が寄ることができるようになった。また、パワーで80W、力で150N以下であれば人間と共存できるとされた。これによって比較的力の出せるロボットが市場に出ることができるようになったという。

 山田氏は、ロボット実用化のためには、リスクの緩和や社会的ルール作りを、実績を伴った形で行なっていく必要があると述べた。また安全技術は単独メーカーだけではできない。事故情報を共有することが重要だ述べた。また被害者保障を考えると強制保険も必要だと語った。


「安全」は「リスク」との関係で定義される リスクアセスメントとリスク低減のための3ステップ 保護方策は3ステップで

産業用ロボットの規格の動向 山田氏によるロボット市場創出のための提言

 セミナー会場は、産総研側も「予想外」と語るほどの満席になり、追加でイスが必要になるほど。大勢の企業関係者たちが熱心に聴講していた。


URL
  産総研知能システム研究部門
  http://unit.aist.go.jp/is/index_j.html
  RTミドルウェア
  http://www.is.aist.go.jp/rt/

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( 森山和道 )
2006/11/16 21:09

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