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目指すは人機一体の実用マシン
〜立命館大学・金岡克弥チェアプロフェッサーインタビュー

Reported by 森山和道

パワーエフェクタを操作する立命館大学総合理工学研究機構先端ロボティクス研究センター 金岡克弥チェアプロフェッサー
 「缶をそうっとつまんで下さい。そう、そしてそのまま力を入れると――」

 言われるままに指先に軽く力を入れると、機械の指先の上で、ポンと音を立ててスチール缶が縦に潰れた。

 立命館大学総合理工学研究機構先端ロボティクス研究センターの金岡克弥チェアプロフェッサーは「マンマシンシナジーエフェクタ(MMSE、人間機械相乗効果器)」という技術の研究を進めている。一言でいえば人間のパワーを増幅する機械だ。

 これまでに作ったのは指のパワーを増幅する「パワーフィンガー」、それを拡張して腕を使って動かす「パワーエフェクタ」、そして脚のパワーを増幅する「パワーペダル」である。パワーフィンガーとパワーエフェクタは「愛・地球博(愛知万博)」の「プロトタイプロボット展」に出展された。実際に試した人もいるだろう。

 大人なら誰でも操作できるとのことなので、パワーエフェクタを試させてもらった。パワーエフェクタは500kgに相当する握力を出すことが可能、重量50kg程度の物体を持ち上げることができる。単に強いパワーを出すだけではなく、手先の感覚だけで生卵をつかむこともできるというデバイスだ。

 「最初はそおっと動かして下さい。慣れればある程度強く扱っても構いません」

 腕を動かすとそれに合わせてギュンギュンとモータとギヤの音を立てて機械が追従してくる。想像していたよりもずっと軽く、すーっと動く。まるでリンクだけの機械を自分で動かしているかのようだ。だが後でパワー増幅制御を切って動かしてみたところ、この機械は実際には非常に重たかった。

 腕を動かしていると時折ガクガクと振動することがあるが、すぐに収まる。機械は非常に大きな力を出している。だが、ロボットに動かされているという感覚はほとんどなく、ロボットを自分で動かしているという感覚しかない。不思議なことにこのダイレクトな操作感、「自分で動かしている」という感覚が、奇妙な安心感を生む。本当に安全かどうかとは別の次元で、機械への信頼のようなものが一瞬で生まれたのを感じた。

 金岡氏も「このへんのダイレクト感が他の技術とは違うところなんです」と語る。


パワーエフェクタ 500kgに相当する握力を出せる パワーエフェクタ。下の箱も含む大きなシステム

【動画】パワーエフェクタの操作 【動画】空き缶を潰す 見事に潰れた空き缶

 マンマシンシナジーエフェクタの技術のポイントは、「仮想パワーリミッタシステム」にある。この技術を使えばリンクの構造や特性もあまり関係なく、もっとずっと大きなものであっても、ほとんど同様に扱えるという。

 「だから小さくしていくよりも巨大ロボット的に大きくしたほうが、このようなシステムの用途はあるのではないか。少なくとも技術的アドバンテージは出ます」

 2007年に発表された「パワーペダル」は、竹馬のように乗るタイプだが、乗りこなしには時間がかかるし、トレーニングしても乗れない人も多いだろう。「我々も完成だとは思っていない」と金岡氏は語る。「本当は片足6つのモータが必要なんですが今は予算の都合で3つしかない。だからバランスを取る機能はオミットしてしまっているんですね。結局、重い竹馬に乗っているような感じなんです。パワーは増幅されるんですけど」。

 当面の課題は、パワーペダルの足首を開発するための予算を獲得することだという。


マンマシンシナジーエフェクタとは

 「マンマシンシナジーエフェクタとは、人間のみ、あるいは機械のみでは実現できない機能を、人間と機械の相乗効果(マンマシンシナジー)によって実現する効果器、という、我々が提唱するデバイスの概念/総称です」。金岡氏らのウェブサイトにはこうある。

 ロボットというと、人の仕事を代替してやってくれるものだというイメージがある。だが金岡氏は「私は別に、自分の代わりに何かをしてほしいとは思わなかったんですよ」という。

 「私が求めているものは、非力で頭の悪い自分の代わりに何かをやってくれる強力で頭の良いロボットではない。そうではなく、自分が努力して獲得した能力を自分がロボットを使うことでさらに拡張できるんじゃないか、そういうところがおそらくロボットに求めるものだったんだろうなと、マンマシンシナジーエフェクタの研究を始めた頃に気づきました」

 1971年生まれの金岡氏はロボットアニメ世代でもある。研究室には「超時空要塞マクロス」に登場する可変戦闘機「バルキリー」のオモチャがあった。だが「すごいことをしているロボットに興味があったのではなく」、むしろ「ロボットに乗ってすごいことをしている自分に憧れていた」ことに気づくに至ったそうだ。

 金岡氏は少林寺拳法四段だ。ロボット制御と格闘技には相通じるものがあるという。


 「ロボット制御では何をやっているかというと、複雑な多リンク系の動特性(ダイナミクス)をいかにモータ駆動力で操るかということですね。ロボットだけならがんばれば数式でモデル化できる。でもロボットの操作者である人間や、扱う対象物まで全部モデル化することはできない。でも、モデル化できるモノしか持ってはいけませんなんてロボットでは何もできない。モデル化できないもの、よく分からないダイナミクスを、限られたモータの能力でいかにうまく扱うか。未知のダイナミクスを含むシステムをうまく扱う問題は、格闘技において相手と自分がいるときに関節技、少林寺拳法では柔法と言いますが、をかける問題と同じです。自分と相手が触れ合った状態。そういう状態では、相手の身体と自分の身体が一つのシステムを構成している訳です。相手が自分の意志と関係あるのか関係ないのか分からないところで動いている。それを自分の身体の限られた駆動力、筋力を使っていかに操るかという問題は同じなんですよ。脳で直感的にやるか、コンピュータで数学的にやるかの違いはありますが、やりたいことは同じです」

 さらに、少林寺拳法の身体の動かし方を修行するときのインスピレーションと、ロボットの制御手法を開発するときのインスピレーションも同じだと語る。

 「結局は同じなんですよ。同じ力学の上で動いているわけですから、人間の運動制御と機械の運動制御の原理原則は同じはず。原理原則が共通ならば記述できるはずですし、記述できるならばロボットに移し替えることができると思うんですよ。よく言われる例えですが、鳥の飛び方と飛行機の飛び方は違うけど、原理は同じだと。でも鳥の羽ばたきを単純に移し替える必要はなく、飛行機のボディに適した飛び方がありますね。それと同じ事が言えるはずです。単純に人間の動きをモーションキャプチャーして移すことは適切ではない。いわゆるモーションデザインというのも拳法の「型」と同じで、それだけではあまり「実戦」の役には立たない。しかし、モーションそのものではなく人間の運動制御の原理をなんらかの形で抜き出して、ロボットに実装してみようという考え方なら妥当だと思います」

 ただ最初からこのように考えていたわけではなかったと振り返る。「成り行きで流れに乗ってきたところはあります。研究が進むままにやってきたらこうなった」。マンマシンシナジーエフェクタの前は、フレキシブルアーム(柔軟ロボット)の研究を行なっていた。あまり剛性のないリンクを持つロボットの制御である。フニャフニャなロボットをどうやって精密に動かすか。それを考えていたことが、今日に繋がっているという。


仮想パワーリミッタシステム

 ここでマンマシンシナジーエフェクタの「仮想パワーリミッタシステム(Virtual Power Limiter System: VPLS)」とはどんなものなのか聞いてみた。仮想パワーリミッタシステムとは「エネルギーの流れを仮想的にモニタして、それを制御システム内でリアルタイムに適宜調節する仕組み、技術」だという。一言でいえばエネルギーの流れを検知して制御する技術だ。2004年に金岡氏が特許出願している。

 「力を見るだけでは不十分です。力を加えても動かなければそれは安定ですね。また、人間が加えた力とは違う方向に動くとまずい。それを見るわけです。加えた力と、その力に対してどう動いたか、両方を見ています。そうしないとまずいかどうかが分からないからです」

 例えばパワー増幅器の場合、操作する人間と、操作されるロボットの間にはエネルギーのやりとりが定義できる。その流れをセンサで見る。そして流れの方向をうまく調節することで、ロボットは人間に逆らう方向のパワーを出すことはできないようにし、逆に外部には大きなパワーを出せるようにしたものだと金岡氏は語る。

 操作グリップに力センサを置いておけば、人間がグリップにどんな操作力を加えているか測ることができる。そしてエンコーダーを使うことでロボットがどう動いているかも分かる。その力と速度の情報からパワーの流れを見るのだ。人間からエネルギーが出ているのか、それとも人間にエネルギーが流れこんでいるのかを常にモニタし、それに応じてロボットの挙動を計算し、調整する。

 パワー増幅器の場合、人間からロボットにエネルギーが流出する場合は、人間がロボットを操作していることになるので良いが、逆はまずい。そういう状態にあると仮想パワーリミッタが判断したときはロボットの出力を下げる。それを2ms毎の周期で制御しているという。

 人間とロボットが触れ合ったダイナミクスの中で、何らかの原因で振動が生まれる。それを抑えるまでのタイムラグがあるのでガクガクすることがある。だが、気にせず動かせば仮想パワーリミッタがその振動を抑える。

 「エネルギーの流れをリアルタイムで調節することができれば、パワー増幅システムにおいて常に問題になる、不安定性や暴走の問題を回避できる。ガクガクするのも設定次第でもっと減らせる。そうすると今までは危なくて使えなかった機械を人間のそばで使える」


【動画】パワーエフェクタ。振動するが仮想パワーリミッタが抑える様子
 従来の産業用ロボットにおける本質安全のような考え方とは異なるが「少なくとも制御技術としての安全性は保証できる」という。

 肝心なところは人間とロボットの間でどのようにエネルギーがやりとりされているかということだ。人間がロボットに力を加えて動かすと、直接の反力やアクチュエータで増幅された力などが人間・ロボット系に作用する。その結果としてロボットが運動し、その運動がロボットの速度として人間に還ってくる。

 「人間の操作に関わる因果関係を見ている訳です。人間が操作力を加え、その結果としてロボットが運動し、それをまた人間が操作するという因果の循環を、仮想パワーモニタが力センサ・速度センサを使って見ています。仮想パワーモニタは、人間とロボットの間でやりとりされるパワーの符号を見て、人間と機械、どちらにエネルギーが流れているかを判定しているわけです。まずいと制御に介入する何らかの手段を使って、ロボットに対して指令を出して出力を制限する。例えばブレーキをかける。非常にシンプルです」

 より安全性を高めるのであれば、仮想パワーリミッタのなかに本質安全を入れるのではなく、例えば仮想パワーリミッタを2段階かけ、それがおかしくなったら全体を止めるというループを入れるべきなのではないかと考えているという。

 しかし、「そもそもパワー増幅ロボットを絶対に安全にしないといけないとなると、何もできないロボットにしかならない」と金岡氏は語る。

 「こういうパワー増幅システムだと人間はロボットの懐に入って直接操作することになる。人間はロボットに直接触れている訳ですが、ロボットが人間に致命的な力を与えないように、人間を潰してしまわないように可動範囲制限を設けるとか、最初からそういう構造にしてしまうべきです。ロボットの可動範囲は人間とクロスするけど、体幹には来ないようにするとか。さらにその上で、運用上のルールで安全性を確保する。制御が暴走するというのは論外ですが、パワー増幅制御が正常でも使い方を誤れば危険なのは当たり前。安全は制御とは別の次元で確保するべきだろうと思います。こう言うと『あまり安全じゃないのか』と思われるかもしれませんが、例えば自動車に対して『危険だから人間が乗っているときは人間以上の速さで走らないように』などというのはナンセンスですよね。制御のレベルで本質安全を入れるというのはそういうことです。そうではなく、キャビンの剛性を高めるとか、エアバッグを装備するとか、交通ルールを遵守させるとか、安全運転技術を啓蒙するとか、外側の部分で安全は確保すべきだと思っています。『使い方を間違えると危ないよ』と言うことは別に悪いことではないでしょう。このあたりの話はいわゆる本質安全と機能安全のバランスという難しい問題なのですが、少なくとも過剰に本質安全を求めると、技術としては十分安全でも、万に一つの可能性を恐れて発展を阻害することになりかねない。それだけは避けたいですね」


「パワードスーツ」ではない

 金岡氏は「マンマシンシナジーエフェクタは、パワードスーツのような使い方もできるが、一般に『パワードスーツ』と呼ばれているものを目指しているわけではない」と強調する。いわゆる「パワードスーツ」は、人間の機構をメインに使うということが暗黙の前提になっているからだ、という。

 「人間の身体そのものの力学的・生理学的な構造の詳細は、どうでもいいと思っているんですよ。我々がやろうとしているところはそこではない。我々がやりたいと思っているのは人間の身体的スキルをロボットの操作系として力学的に使うことです。それがベーシックな前提となっているので、人体のリンク構造がどうなっているかは一応考慮しますが、それをメインに使うわけではなく、人体の詳細な解析も必要ない」

 マンマシンシナジーエフェクタは、服のように身にまとうウェアラブルなものではなく、歩行動作をベースにした人間の周期的な動作とバランススキルを活用することで乗りこなす「自転車」や、「バイク」のようなものだと考えたほうが近いという。

 「パワーペダルもウェアラブルロボットではない。着るものではなく乗るものです。自転車をパワードスーツだと呼ぶのなら、我々のものもそう呼べるかもしれませんが、ウェアラブルなものとは違います。自転車は確かにうまくできていて、練習は必要ですが、慣れればあまり考えなくても操れる。我々がやらなあかんのも、たぶんそういうところです。そこがウェアラブルと違うところで、ウェアラブルロボットはサイズも動作もばっちり人間と合わせないといけない。だが、そうではなく、人間の発揮する力を、いかにうまくロボットの操作系として力学的に取り出すかというところが問題なんです。操作系が、人間にバチッとかぶせてしまうようなものである必要は全然ない。むしろそれには無理がある。そう考えると、自転車のようにペダルをこいでハンドルを回すインターフェイスは人間の操作スキルを力学的に取り出す手段として良くできています。ああいうことをロボットにおいてもロボット技術を使ってやるべきです。人間と機械の力学的なインタラクションをうまく設計できるのであれば、パワードスーツのようなシステムよりもうまく使えるだろうと思います。むしろウェアラブルで人間と機械の動作をバチッとシンクロさせるシステムの方が難しいと思いますね」


パワーペダル
 ウェアラブルロボットのインターフェースは出力に対して入力が多すぎる、つまり、実際にやる作業に対して、人間から取り出さなければならない情報が多すぎる。人間の動作にシンクロさせるための情報を取ってくるのは無駄な努力だと言い切る。

 つまりマンマシンシナジーエフェクタの研究は、インターフェイスの研究でもあるということだ。他方、現在の操作型ロボットの多くはコマンド入力をとっている。だが人間と機械の力学的なインターフェイスを正しく発展させることがロボットの用途を広げるという。

 「例えばバイクでは、コマンド入力だけでは伝えられない、非常に微妙な、アナログで身体的な情報が、人間とバイクが一体となったダイナミクスの中で有効だからこそ、人間が操作する必然性があるだろうと思ってるんですね。産業用ロボットでは自動運転する機械に職人技を埋め込んでいくという考え方が今は主流かもしれない。でも私は、機械に埋め込むことができない、より高度な職人技のようなところにアプローチしたいと思います」

 なぜだろうか。

 「たぶん、そういうところが、次世代ロボット実用化においては一番の狙い目だろうなと思うからです。産業用ロボットでも自動化できるところはだいたいやってしまっている。まだ課題はありますが、それは既存のものを改良するマイナーチェンジであって、本質的なイノベーションはそこからは生まれないでしょう。それは、自動化ではまったく太刀打ちできない、でも人間ならできる、というところから生まれるのだろうと考えています。そしてイノベーションによって生産性を上げることができるのであれば次世代ロボット実用化に寄与するだろうと。そのためにはコマンドのようにいったん言語化してからロボットに渡すのではなく、そこに至る以前の言語化できない身体的なスキルのままでロボットに渡せるインターフェイスじゃないといけないだろうと。それが合理的な理由のひとつかもしれない」


パワーフィンガー このように指にはめて使う スーパーボールもこのとおり

 2005年、愛知万博でのNEDOの「次世代ロボット実用化プロジェクト」の支援を受け、まず最初に開発されたのが、人の指の力を100倍〜200倍程度増幅する「パワーフィンガー」だ。最大握力は200kg程度。スーパーボールのような弾性力があるものでもバチンとつぶせる。電動工具のように家庭で使用しても違和感のないものを目指して製作したが、力に耐えるための減速機が重く、全体の重量もずっしり重い。万博でもみんなに重たいと言われたそうだ。その結果、マンマシンシナジーエフェクタは小さくするものではなく、もっと大きくすべきだと考えたという。

 「パワー増幅なんて家庭では不要。もっと大きなものを作り、家庭外で使うべきだと気づきました。作るまではあまり具体的なイメージはなかったですね。我々も最初は『おもしろパワードスーツ』みたいなものをぼんやりと想像していたのかもしれません」

 そして同じく愛知万博のために、多軸を持ち、より大きな腕である「パワーエフェクタ」を作った。その後。脚である「パワーペダル」を作ったのは、やはりロボットなので移動させたい、だが単純に車輪で動くのではなく、不整地移動機能を持たせたいと考えたからだ。7倍の脚力が出せるが、「それは歩きやすい数字であって、スペック上は40倍以上出せます」とのことだ。

 「先ほどの力学的なインターフェイスという話に繋がるんですけど、脚の部分を車輪で置き換えるとするとコマンドに近くなる。脚を動かすスキルには単純な移動だけではなくて、もっと他の役割がある。人間の脚の動きは作業上でも重要な役割を果たしています。重いものを持ち上げるときには腰を入れたほうが良いと言いますね。そういうのは脚を含めた全身スキルですよね。全身スキルを力学的インターフェイスを通して実現する上では、脚という手段は確かに有効なんだろうなと思っています」


パワーペダル 背面 正面から

側面 側面にずらりと並ぶバッテリ 搭乗者の足底部分に力センサ

サドルに腰掛けてハンドルを握る形式。ハンドルは身体を支えるため。ハンドルで操作するのではない 脚立を使ってつり下げられていた マンマシンシナジーエフェクタのこれまで

 パワーペダルはどうやって乗りこなすのだろうか。現在はバランスを取るための足首部がないが、それを付ければ不整地歩行が可能になるという。しかも人間は大雑把な脚の動きの指示をするだけでいいという。

 「機械がやる部分と人間がやる部分を分離してハイブリッド制御をします。歩行スキルにおいて、ゆっくり歩くバランス制御については、実は人間よりも機械の方が得意です。一方、地面を見て不整地を判断して歩くこと――例えば、ここは固いのか柔らかいのか、滑るのか、崩れるのか、濡れているのか……、結局どこに足を踏み出せば良いのか、といった知識ベースの判断は人間でないと分からない。いずれはできるでしょうが当分はできない。そこは人間がやるべきです」

 だが人間は、「ここは爪先でおりよう」とか、「足裏全体をべたっとつけたほうが安全だ」といった判断をし、足を操作している。そのような細かい動きはできるのか。

 「できます。足を地面についているときは複雑ですが、浮いているときはパワーエフェクタと同じですから。人間の操作によってはこけてしまうこともあるので、ある意味無責任ですが。人間がやるのは歩くところを自分で選んで脚を出すだけです。今のヒューマノイドは多少の段差にのりあげても大丈夫な程度でしょう。でもこれならば、瓦礫や山野などの不整地でも自在に二足歩行できます」

 さらに大きな利点がある。パワーペダルのバランス制御は全身の情報を見る必要がない仕組みだ。上に乗ったものがどんな動きをしてもバランス制御できる。

 「例えばいまのヒューマノイドは、全身の動きを使ってバランスがとれるように目標軌道を生成していますが、パワーペダルは足のみでバランス制御します。足のコントロールは上体の情報を知る必要がない。ですから、上体の設計と関係なく足を設計して、上の動きに関係なくバランスが制御できる。例えばASIMOがやっているように、全身の動きを見て精密に角度制御するわけではありません。詳細はいずれ発表しますのでお楽しみに」

 ただ、人間と機械のハイブリッド系なので、本当に設計したとおり動くかどうかは、操作しないと確かめられない。実際に人間と組み合わせてどうなのかというところの検証には実物のハードウェアが必要だ。


最終的に人機一体となるのが理想

 確かに使いこなせるようになったらバイクのモトクロスのように「人機一体」の素晴らしいスキルを発揮できるかもしれない。だが、使いこなすのは難しそうだ。

 「そう。あれは生身では無理でバイクを使うからこそ発揮できるスキル。生身のスキルを何も変えずにそのまま再現できるのがパワードスーツかもしれませんが、それを目指したいわけではないんです。我々が目指しているのは、これ(MMSE)を使いこなすスキルが生み出す、新しい職人みたいなもの。人間の生身や既存の道具ではできないけど、MMSEの「緻密なパワー増幅」のような従来にない機能を使いこなすことで実現する新たなスキルができると良いんじゃないかと。つまり、既存の道具で実現される「高度な職人技」のさらに向こう側にまで行きたい。そういう新たな職人を、敢えて「ニュータイプ」と呼んでもいいかもしれません(笑)」

 金岡氏は人間の可能性を信じているという。

 「人間は慣れれば何でもしますからね。人間が成長することを見越しておいて『このくらいできるやろ』とハードルを上げる。ハードルが高い分、役に立つのができると思う」

 それが人と道具の正常進化だと考えているという。

 「僕は『機械が学習してどんな人にも合わせるので誰でも上手くできます』というのは好きじゃない。『誰がやっても一緒なら、いっそ機械が全部やってくれよ』と思ってしまう。せっかく人間が持っている『機械に合わせられるスキル』を無駄にするのはもったいないと思うんですよ。もちろん、合わせるという行為が人間にとって非常に面倒であれば避けたほうがいい。けれど人間はそれを楽しんでやることで、自分でも思ってもみなかったような高度なスキルを発揮する。それは、道具のダイナミクスに導かれる動きのようなものがあって、いい道具を使うと、道具の特性でうまく動いてしまうからです。自転車やバイクが倒れずに走れるのはまさにそういうことですね。そういうものを導いてやればいい。手を離してもまっすぐ進むけど人間がちょっとコントロールを加えてやるといろんなことができる」

 普段の動かし方でそのまま動かせるということが長期的に良いことだとは思わないと強調する。

 「例えば字を書くときには、指先をそのまま動かすよりもペンを持ったほうがいいし、ペンの重さも軽ければいいというものでもない。なんでも軽薄短小、何も感じないほうがいいというのは間違いだと思う。道具には使いやすい特性があるし、ロボットは道具として扱うべきであって、人間の身体の直接的な一部となるのは望ましいことではないでしょう。腕のいい職人と使い込んだ道具のように最終的に人機一体となるのが理想であって、最初から何も着けてないような感覚では、人と道具の相乗効果を生み出さない」


 このような機械、道具を最初から意識的に開発していくためには、新しいデバイス設計論が必要になりそうだ。むしろ新しい学問分野が必要かもしれない。そのための努力も地道にやってはいるという。

 「若い人をつかまえて議論してます。共感していただける人たちも若い人の中にはいます。とはいえ、安易に目新しい学問分野を立ち上げるよりもむしろ、ロボット工学を機械工学の発展として正しく位置付けることの方が重要だと考えています」

 ロボット工学の今後のあり方などについて、よく議論しているそうだ。金岡氏は、ロボット工学がやるべきことは、力学をどううまく使うかだと思っていると語る。

 「ロボットの本質は『よくできた機械』です。そこをもっと伸ばしてやらないといけない。そのためには既存の機械工学を発展させることが必要になる。なぜかというと多リンク系だから。振り子でも複数重ねるととたんにカオスになる。その力学をどう扱えばよいのか、よく分かっていないのです。ロボット工学の王道は、人間、感性、コミュニケーション、情報、ネットワーク、などではなく、力学と制御です。ロボットの力学的機能をきちんと役立つように発展させていけばロボット工学は人に後ろ指を指されずに済むようになる。ヒューマノイドやオモチャロボットばかりやっていると、いずれ後ろ指さされますよ。ロボット工学で何ができ、何ができないのか、何をすべきなのかをもっと発信しないといけないですし、一般の人にも理解してもらいたい」

 だが道のりはまだまだ遠そうだ。パワーペダルは「知的クラスター創成事業 岐阜・大垣ロボティック先端医療クラスター」の支援を受けて開発されたが、技術はさておき、パワーペダルそのものの評価は必ずしも良くなかったという。

 「もともと医療福祉ロボット技術の実用化を目的としたプロジェクトだったので。大勢の意見では、これでは医療福祉分野での早期実用化は困難だということでした。評価して頂けた意見もあったのですが」


 では、実用化はまだまだ先、10年くらいかと聞くと、こう返ってきた。

 「もっと手前ですよ。何を目指すかによりますけどね。『パワーエフェクタ』と『パワーペダル』を合わせた身長3mくらいの全身パワー増幅MMSE試作機であれば、予算が潤沢なら1年くらいで出来ますよ。基本的には土木建築用のパワーローダーみたいなものです」

 パワーローダーは映画『エイリアン2』に出てきた作業用機械だ。あれよりもずっと優れたもの、操作者に力フィードバックを返せるようなシステムを作ることができるという。

 「あのくらいであれば今の技術でも十分できる。できますよ。ちょっとカバーをつけるだけで、警察や消防にも使えると思います。足首のない今のパワーペダルに乗るのは怖いですけどね。でも足首をつければできます。そのための研究も進めていて、シミュレーションではできているし、ハードウェアの概略設計も進めていますので、あとは作るだけです」

 費用に関しては、足首だけなら1,000万円くらいだろうという。バランスを取り、不整地歩行を可能にする足首部ができれば、パワーペダルでキャンパス内を歩き回ってみせると語る。また、「身長3mくらいの全身パワー増幅MMSE試作機」は、基本機能だけなら「1億円くらい」、付加的な機能を付けるなら「数億円くらい」でできるのではないかと考えているそうだ。

 企業やベンチャーキャピタルとも話はしており、なんとかして、こういうものが作れるんだということを、実物でバンと示したいと考えているという。だが世間はなかなか世知辛いのが実状であるようだ。

 なお、この手の技術であれば海外からのアプローチがあってもおかしくなさそうだが、今のところ全くないそうだ。


マンマシンシナジーエフェクタズ株式会社

 金岡氏はロボットベンチャーである「マンマシンシナジーエフェクタズ株式会社」の代表取締役社長でもある。2007年10月、自腹を切って資本金100万円を出して起業した。

 なぜ大学の先生が、わざわざベンチャーとして起業したのだろうか。

 「ちゃんとできるという自信を示したかったというのが大きなところかもしれませんね。もちろんパフォーマンスだけではありません。実際にこういうシステムを徐々に売り物にしていきたいという気持ちもあります。モノを売るのか技術を売るのか、そのへんははっきりしていませんが、実用に値する技術であるということを会社としてはっきりさせていきたいと思っています」

 何にしても必要なモノはハードウェアだ。

 「失礼かもしれませんが、たぶん記事を書いてもらってもそんなに注目はされないでしょう。ロボットの力学的機能を言葉だけで伝えるのは本当に難しいからです。倒れることもある機械なんだと言ったら、『そんなものは危ない』と言われます。でもそこにこだわっていては誰もバイクには乗れないんです。実物でやって、こういうものかと思ってもらえれば。歩行において高い運動性を発揮するのは半ば倒れているに等しいんです。絶対に倒れないものはのっそりとしか動けない。『実際に乗ってみたらけっこう安心だね』といわれるようなシステムになることを期待しています」

 単純な動力だけではなく、制御が入っている「ロボティックツール」を作ることが目標だ。「人間の操作スキルをどうやって力学的に取り出すのか、どういうふうに人間の操作力を整形するのか。どうやってロボットの強大な力を緻密に制御するのか。その部分が大事だと考えています」。


「パワードスーツ」ではないが……

 マンガ・アニメ作品の『アップルシード』をご存じだろうか。あの中に人間が着用するパワードスーツ(ランドメイト)が出てくる。このランドメイトを作ることが金岡氏の一つの夢だという。「夢といっても遠い未来の話ではない。技術的には数年かければできるでしょう」。

 アップルシードの中では軍隊や警察がパワードスーツを使っている。

 「自動化は絶対にできない、自律ロボットに置き換えることはできないこと、人がその場で判断しないといけないことはいっぱいあるはずなんですよね。例えば自動警察ロボットができたら気持ち悪いし、おそろしい存在です。それはどんなに自動化技術が進んでも人がやらんといかん部分でしょう。人を排除するのではなくやっぱり人間がやるところが大事です。といっても犯罪者も使うことになったら結局アニメの世界になるんですけど」

 金岡氏はアニメ『アップルシード』のビデオを見ながら「人が扱うからこそ道具を使いこなすことができる。そのままではないですが、これと類似の、同じような機能を持ったシステムなら、今の我々の技術でも作れるはずです。ということを、いろんなところで話しているんですが伝わらない」と自嘲気味に笑う。

 今は企業では短期的な成果を求められることが多い。イノベーティブな機械を作ることで生まれる新たなニーズを分野ごと開拓するという発想にはなかなかいかないという。「そうは言いつつ、意気に感じた企業が多大な支援をしてくれたからこそ、現在のMMSEがある訳ですから。分かる人は分かってくれます。理解してくれる方々を地道に増やしていくこと。これしかないですね」。

 それにしてもヒューマノイド研究には魅力を感じないと明言する金岡氏が、ランドメイトの実現が夢だと語るのは不思議な感じがした。

 「私が今のヒューマノイド研究が違うなと思っているのは、ヒューマノイド自体が目的になっているところに違和感があるからです。ヒューマノイドはたくさんの可能な解の一つでしかないはず。解の一つがああいうものであるというのは私もすごく嬉しいですよ。でもあれを作ることがロマンなんだというところは好きではない。役に立つものを作ろうとして論理的な考察を積み重ね、考え抜いた結果が人型なら嬉しいけど、「人間の環境ではとにかく人型が最適だ。疑問の余地はない。以上」という安易な前提で研究を進めるのは工学ではないだろうと。そっちへ進んでいるように思うので魅力を感じない」


ロボットとは力学と数学を結びつけるための工学的手段

 マスメディアのロボットの捉え方にも不満があるという。

 「道具としての力学の制御という観点からロボット工学を論じていけば、ロボットは役に立つはずなんですよ。役に立たないとおかしい。もともと機械工学なんですから。マスメディアは、浮世離れした研究者が役に立たない「次世代」ロボット技術を世に出したならば、批判する役目を担っているはずです。機械工学を多リンク系に拡張しようとする試みがロボット工学なのに、ロボット工学は人間を解明するサイエンスだとか、問題のすり替えみたいなことも起こっている。ロボットを使って他分野の研究を推進できるならば有意義だとは思いますが、それが「ロボットの研究」ではないことは、マスメディアに携わる方々も分かっているでしょう。ましてや、ただのオモチャロボットを、最先端ロボット技術はここまで来た! と紹介し、タレントに「すげー」と言わせるような子供騙しをしていてはいけないでしょう」

 ロボットとはなんぞや、という定義には全く興味がない、という金岡氏に、敢えてロボットとは何かと聞いた。

 「ロボットとは、現実世界の力学と抽象世界の数学を結びつけるために、人間が生み出した工学的手段だ。なんとか言おうとすればこういうことになるのではないですか。数学という抽象世界がある。一方、力学の現実世界がある。その二つは深く関連していて、数学は物理を理解するのに使われるし、ロボット工学も数学で記述される。けれどこれまでは数学の世界を直接現実に結び付けることはできなかった。ですが今はコンピュータに実装してそれをアクチュエータで出せば、数学の抽象世界を現実の力学世界に持ってくることができる。その手段がロボットです」

 それは何を意味するのか。

 「力学世界の法則からは、人間だろうがロボットだろうが逃れられない。でもそこに人間の意志を反映させることができるようになる。これまでは自らの肉体にモノを言わせるしか方法がなかったのです。力学法則を作り変えることはできないけれど、人間の描く有意義な抽象概念を、力学法則を破綻させない範囲でなら顕在化できるだろうと。その手段がロボットなんじゃないかと思うんです。バッサリと単純化して言ってしまえば「夢を現実にする手段」です。だから人はロボットに魅かれるのではないでしょうか。でもその「夢」は、力学的な機能として数学という言語でクリアに記述してこそロボットに実装できる、ということを忘れてはいけません。その記述方法を見い出す試みが、ロボット工学のアプローチだと言えるでしょう。アプローチという観点では、「既存の理論にとらわれず試行錯誤を繰り返し」とか「生物を模倣してどうこう」というところにヒントはあるかもしれないが真理はない。真理は力学と数学の中にある。それを人間の意志で結び付け、有意義な力学的機能をいかにして引き出すか。我々は、そういう新しい手段をロボット工学として手に入れたんです」


モデル化できない世界へ――思考の転換

 このほか、空力ではなくロボティックな方法――スラスターを付けた足先で外乱を制御して素早く運動して飛行するロボットなどの研究も行なっている金岡氏。そもそも、ロボット工学の研究者になったのはどうしてなのだろうか。

 もともとは化学工学を学び、そこから紆余曲折あってロボット工学に入ったのだそうだ。

 「修士課程までは化学です。残念ながら優秀な学生ではありませんでしたが(笑)。化学工学なのでプラント制御という分野があって、そこで古典制御理論を勉強しました。けっこう面白いなと。そっちをやりたいなというのは確かにありましたね。化学の成績は全然でしたが、制御を知ることができたのは良かった。そしてロボットも制御だということが分かって、じゃあ繋がるということで博士課程から移ったんです」


金岡克弥氏 研究室風景。実用化研究に重点をおいている

 最初に、正確にモデル化し切れないフレキシブルアームの制御研究をやったのが良かったのかもしれないという。

 「もっと普通のロボットをやっていたら、ロボットはモデル化してコントロールするものだという哲学になっていたかもしれません。そこは指導教官のご慧眼だったと思っています。学生時代のいい加減な私を見て、フレキシブルアームを考えさせるのが良いと思われたのでしょう(笑)。そして、モデル化できないものを、できないままなんとか扱うことを博士課程のときに考えた。それが今の研究にも直接繋がっている。みんな頭がいいので、頑張ってモデル化してしまうんですよね。それはそれですごいけれど、モデル化したモデルの上ではうまく動いてもそれ以外の部分をどう扱うかはほとんど議論することができない。そっちへいったら今の方向には来なかったでしょうね」

 いま必要なものは、一歩踏み出す勇気だという。

 「例えば二足歩行においても、既存の手法でかなりのことはできるので、そこでやってしまっていて、別のパラダイムに行くキッカケがない。軌道制御ベースでやっていれば論文は書けるし。それで満足してしまっているのではないか。不整地歩行みたいなところはまともに取り組むと大変ですからね。もちろん『私ならできる』とも思っていません。でも、軌道制御ベース、モデルベースでは難しすぎるけど考え方を変えてやればやれる方法はあるし、アプローチの方向さえ間違ってさえいなければ、とにかく「なんとかする」ことが必要なのではないかと言いたいんです。「できそうなところをやる」のではなく、です。そこの『思考の転換』を先駆けてやりたいなと思っています。一つの転換が『人と機械の相乗効果』というところですし、もう一つが『こけてもかまわない』というところ。そのあたりも入れてやれば不整地歩行も決して無理な話ではないと思うんです」

 ともかく、作ってもらって実物を見て、できれば自分自身も試させてもらわなければ何とも言えない面もある。少なくともパワーエフェクタを実際に操作させてもらった瞬間、筆者自身、このマシンに対する感じ方はガラッと変わった。金岡氏も何度も「作りたいですね」と語った。


広々している立命館大学のびわこ・くさつキャンパス
 「なんとかね。1億円とはいわないから、足首を作ることさえできればパワーペダルの印象も変わると思います。あれ(パワーペダル)で作ろうと思っている足を作れば、階段も降りられますし、不整地も歩けるはずです」

 そのときの足の機構は全面的に組み換えることになるという。「全然違う足になる。そこはご期待下さい」。

 情報世界と物理世界を結びつけるといっても、「単なる情報世界のディスプレイ」としてのロボットには全く興味がないという。「そうではなくて、人間が意志として持っている抽象的なものを現実世界に顕在化させることで現実世界を作り替える、現実世界のためのロボット工学であってほしい。「魔法」が使えてしまう情報世界の中での「実現」ではなく、力学法則の厳しい制約の中でインタラクションすることこそ、本当に難しくて、本当に有用なのだと思います」。

 動かしてみないと、どう動くかは分からない。その難しさは、現実世界を反映している。我々は、体全体を使ったり、膝を使ったりして全身を巧みに操る。金岡氏の研究そのものも、まだ動かし始めたばかりで硬さが残っている状態なのかもしれない。だが動かしていくことで、世知辛い現実世界の中でも自在に動けるようになっていくのかもしれない――。そんなことを考えながら立命館大学を後にした。


URL
  立命館大学
  http://www.ritsumei.jp/
  先端ロボティクス研究センター
  http://www.ritsumei.jp/research/c05_03_07_j.html
  立命館大学 金岡研究室
  http://www.ritsumei.ac.jp/~kanaoka/
  マンマシンシナジーエフェクタズ
  http://homepage.mac.com/mmse/
  【2005年6月13日】愛・地球博「プロトタイプロボット展」開催(PC)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0613/nedo.htm

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2008/12/25 13:01

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