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【 2009/04/17 】
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第25回日本ロボット学会学術講演会 展示ブースレポート


研究開発ロボットから実用ロボットまで多様な展示

 本講演会では、さまざまなロボットや要素技術に関連する製品の展示も行なわれていた。ここでは展示コーナーの中で目を引いたロボットや技術について紹介しよう。

 ロボット単体としては、ロボットアームから、監視ロボット、ローバ、サービスロボット、福祉系ロボットなどが展示されていた。

 たとえば、AAIジャパンは、研究開発・教育用の小型移動ロボット「e-puck」のデモを実施【写真1】。このロボットは3個の赤外線センサやカメラなどを備え、衝突を回避したり、ラインをトレースすることが可能だ。視覚センサ系が充実しており、認知・認識の研究に向いている。また、同社が扱うハーモニック・アームは研究用で車体などに組み込める高性能アームだ【写真2】。名前のように駆動系にハーモニックドライブを採用しており、0.2mmの先端精度を持つため、正確な位置決め制御が行なえる。

 段差を乗り越えるレスキューロボットとして、8輪の不整地移動ロボット「Octal Wheel」(防衛大学校)も展示されていた【写真3】。こちらは、前輪後輪が各4つで構成された4WS+4DS構造の移動ロボット。車輪で動くためセンサが不要で実用的だ。段差に来るとそれを検知し、リンクを働かして最前輪の2つのタイヤを持ち上げて登っていく。マイコンにはルネサンス・テクノロジーの製品を使用しているという。


【写真1】AAIジャパンの研究開発・教育用の小型移動ロボット「e-puck」。スイス連邦工科大学で開発されたロボットだ。視覚センサ系が充実しており、認知・認識の研究に向いている 【写真2】ハーモニック・アームは研究用の高性能アーム。駆動系にハーモニックドライブを採用しており、正確な位置決め制御が行える 【写真3】8輪不整地移動ロボット「Octal Wheel」。4WS+4DS構造の移動ロボットで、段差に来るとそれを検知し、リンクを働かして最前輪のタイヤを持ち上げて登っていく

 三菱電機特機システムズは、工場やプラントなどで起きた災害現場で活躍する小型クローラ移動ロボット「FRIGO-M」を展示【写真4】。総務省・消防庁消防大学校と共同で開発されたものだ。防水・防塵・防爆性能を備えており、水陸、不整地での走破性を実現している。

 スマッツはパソコンやインターフェイスを5.25インチベイに組み込んだ、White Box Robotics社のロボットを紹介【写真5】。PCベースのオープン・スタンダードタイプで、プロセッサの変更や、I/Oボードの追加も可能。研究開発用途に利用でき、温度・湿度、磁気・超音波・レーザー、振動などの各種センサを用途に合わせて付けられる。

 日本SGIは、走行ロボット開発支援プラットフォームとして、Segwayの「RMPシリーズ」【写真6】などを出展。これはPTシリーズと同じ部品を使用した移動用ロボットプラットフォームだ。USB、CANインターフェイスでコンピュータと接続して制御できる。デモでは2輪タイプのRMP200がうまくバランスを取りながら倒立していた。


【写真4】小型クローラ移動ロボット「FRIGO-M」。水陸、不整地での走破性を実現し、工場やプラントなどで起きた災害現場で活躍 【写真5】White Box Robotics社の研究開発用ロボット。PCベースのオープン・スタンダードタイプで、プロセッサの変更やI/Oボードの追加など柔軟性に富んだロボットプラットフォームとして利用できる 【写真6】Sagwayの走行ロボット開発支援プラットフォーム「RMPシリーズ」。写真は2輪タイプのRMP200。うまくバランスを取りながら倒立

 一風変り種だったのは、GPS、ソナーを搭載した調査用の無人リモコンボート「みずすましRC-S2」【写真7】。位置確認、水深、水温などのデータをロギングでき、海底調査や海洋建設の準備などに利用できるという。もしバッテリが切れそうになっても、自動回帰機能により、スタート位置に戻ってくるので安心して利用できる。

 一方、医療・福祉分野で利用できそうなロボット関連製品も数多く紹介されていた。立命館大学では、人間のスキルを損なわずに下肢パワーを高速・高精度に増幅させる「パワーペダル」を展示【写真8】。足の不自由な人でも残存機能を利用して自分の意思で歩行できるように、足先に備え付けられたセンサで歩行コントロールできるもの【写真9】。今後は実用化に向け、オートバランス機能や、大容量給電システム、小型制御ボックスなどの開発を行なっていくそうだ。

 足の不自由な人のリハビリテーションに適した歩行支援機器「歩行王」(あるきんぐ)【写真10】を展示していたのは相愛のブース。駆動系にオムニホイールを採用することで、全方向(前後左右・斜め・回転)での複合的な歩行訓練を可能にする支援機器だ【動画1】。速度や距離をユーザーの状態に合わせてセッティングして自動運転が行なえる。

 また同様の機構として、小野電機製作所が全方向移動車輪を備えた搬送ロボット「Vmax」を紹介していた【写真11】。このロボットも、狭い場所を切り返し運転せずに、瞬時に任意の方向に自在に動きまわれる特徴がある。VR装置の搬送や、ヒューマノイドロボットの半身、福祉機器などに用いられているという。


【写真7】無人リモコンボート「みずすましRC-S2」。GPS、ソナーを搭載などを搭載し、海底調査や海洋建設の準備などに利用できる。自動回帰機能を備えているので安心だ 【写真8】立命館大学が開発した「パワーペダル」。頑強な機構ながら、軽量化のための工夫が凝らされている 【写真9】「パワーペダル」の足先部。センサがに備え付けられており、足の不自由な人でも残存機能を利用して、歩行をコントロールできる

【写真10】相愛の歩行支援機器「歩行王」(あるきんぐ)。駆動系にオムニホイールを採用している点が大きなポイント 【動画1】こちらはモータ内蔵型オムニホイールを利用した駆動系のデモ。高知工科大学、高知大学、相愛の産学共同研究の成果 【写真11】小野電機製作所の搬送ロボット「Vmax」。が全方向移動車輪を備えている。東工大が開発したVUTON-1をベースにした製品

 サービス系ロボットとしては、富士通研究所と富士通フロンティアによって共同で開発された「enon」【写真12】があった。主にオフィスや商業施設などで、ヒトの案内や物の搬送、巡回監視などの作業をサポートするロボットだ。胴体部にタッチパネル式の液晶が装備されており、さまざまなサービスメニューが表示される。

 また、ロボットを楽しく学べる教材関連も展示されていた。近藤科学は同社の2足歩行ロボット・KHR-2の頭部に新製品の小型マイコンボード「KCB-1」を増設して、デモンストレーションを実施【写真13】。KCB-1は、サイズは30×35mmほどで小さく、ロボットを拡張させるために適している。

 ZMPも、ロボットを活用したエンジニア育成カリキュラムとして、車輪型ロボット教材「e-nuvo WHEEL」などを出展【写真14】【動画2】。これは、4輪/倒立2輪/倒立振子の3モードで、運動解析から現代制御理論までを理解できるようにしたロボット教材。

 「Robovieシリーズ」で知られるヴイストンは、お掃除機能付き教材ロボットキット「Beauto」を参考展示【写真15】。車体の背面に掃除用ブラシが付いており、液晶画面とボタン操作でプログラミングができる。ロボットハンドを付けたサッカーロボットや、ライントレースロボットに改造することも可能だ。

 ロボット教材「Robo Designer」を発売しているJAPAN ROBOTECHは、新製品として汎用性の高く安価なCPUモジュールやインターフェイスボードなどの各種ロボット教材を展示していた【写真16】。


【写真12】ヒトの案内や物の搬送、巡回監視などの作業をサポートするロボットサービス系ロボット「enon」。タッチパネル式の液晶に、さまざまなサービスメニューが表示される 【写真13】近藤科学の小型マイコンボード「KCB-1」をKHR-2 の頭部に取り付けてデモ。ボードサイズが小さく、2足歩行ロボットの改造に適する 【写真14】ZMPの車輪型ロボット教材「e-nuvo WHEEL」(前方)。4輪/倒立2輪/倒立振子の3モードで、運動解析から現代制御理論までを理解できる

【動画2】輪型ロボット教材「e-nuvo WHEEL」のデモ。倒立2輪モードで動作している。制御理論の習得に適している 【写真15】ヴイストンの掃除機能付き教材ロボットキット「Beauto」。裏側に掃除用ブラシが付いており、液晶画面とボタン操作でプログラミングができる。価格は17,850円 【写真16】JAPAN ROBOTECHの各種ロボット教材。写真右端に新製品の汎用ボードモジュールがある。安価なCPUモジュールやインターフェースボードなどを提供

テレパシーでのロボット操作!? やユニークな3次元ベクトル分布触覚センサが目を引く

 ロボット要素技術関連では、機構部品、サーボモータドライバ/コントローラ、各種センサ、画像認識技術などがあった。

 サーボモータドライバ/コントローラ関連では、千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター(fuRo)で開発されたHalluc II【写真17】に搭載されている2軸ブラシレスモータドライバー(製造元ピューズ)【写真18】や、東京工業大学発ベンチャーのハイボットが広瀬研のロボットに搭載されているドライバー/コントローラの汎用製品などを展示【写真19】。いずれもコンパクトにモジュール化されており、使いやすそうだった。

 ハーモニックドライブシステムズは、同社のギアに参考出品のアブソリュートエンコーダを組み込んで、専用ドライバと共にデモを実施していた【写真20】。アブソリュートタイプのエンコーダは電源が切れても絶対位置を検出でき、すぐに位置決め動作が可能だ。


【写真17】fuRoで開発されたHalluc IIも展示。脚は8脚あり、駆動には脚・車輪ハイブリッド方式を採用。平地・荒地など状況に合わせて形態を「ビークル」「インセクト」「アニマル」というモードに変化させて動作できる 【写真18】Halluc IIに搭載されている2軸ブラシレスモータドライバー。fuRoから依頼を受けて開発したもの。コンパクトにモジュール化されている

【写真19】東京工業大学発ベンチャーのハイボットの展示。小サイズながら高性能なドライバ/コントローラなどモジュールがたくさん。ヘビ型ロボッなどに搭載されている 【写真20】ハーモニックドライブシステムズの参考出品。ノンバックラッシュで精度の良いハーモニックドライブシステムズに、アブソリュートタイプのエンコーダを組み合わせたもの

 センサ関連で特に印象的だったのは、追坂電子機器のブース。次世代の福祉機器にバイオフィードバックが利用されているが、同社はこの分野を支える技術として表面筋電位計測装置を販売。この表面筋電位計測と筋電スイッチを応用し、ロボットの遠隔制御のデモが行なわれていた。高感度な筋電センサとスイッチによって、筋電をトリガーとして2足歩行ロボットを遠隔で人が操作するものだ【写真21】【写真22】。

 ポイントはロボットへのモーションコマンドを無線で飛ばしている点。あたかもテレパシーでロボットを操っている感じがして、大変興味深かった【動画3】。そのうち、このような筋電を利用した2足歩行ロボットのバトル大会も開催されるかもしれない。


【写真21】追坂電子機器の表面筋電位計測装置。バイオフィードバックなど、BMIの研究には欠かせない計測装置だ 【写真22】表面筋電位計測装置で測定した筋電をPCで表示しているところ 【動画3】高感度な筋電センサとスイッチによって、筋電をトリガーとして2足歩行ロボットを遠隔操作。モーションコマンドを無線で飛ばし、テレパシーでロボットを操っている感じだ

 またセンサ関連製品で有名なニッタが、ユニークな3次元ベクトル分布触覚センサ「GelForce」【写真23】や、超小型の6軸力覚センサを展示し、来場者の注目を浴びていた。GelForceは、力が加わると、その3次元ベクトル分布をリアルタイムに計測できるセンサ。

 透明な弾性体内部に格子状に2層配置された赤と青のマーカーをCCDカメラで計測し、力が加わったときの変形情報を測り、力分布を計算するという原理だ。将来、ロボットハンドの指先につけて、触覚センサとして利用できるかもしれない。

 また、超小型の6軸力覚センサは、XYZ方向、および軸まわりのモーメント成分をリアルタイムに検出できるもの。同社では、すでに外形φ18×H20mm、重量10gという小型6軸力覚センサ「XFS」を販売しているが、参考出品のセンサは、さらにひとまわり小さいサイズになっていた【写真24】。

 ビュープラスは、高解像のカメラと複眼カメラを展示していた。前者は5メガピクセルで15fpsを実現し、抜群の解像度と階調表現力を持つ。一方後者は、コンパクトな筐体に25個ものVGA解像度の撮像素子が配置された小型カメラ【写真25】。PCI Expressダイレクト接続が可能で、毎秒200MBの転送スピードで25眼分の非圧縮画像をリアルタイムにPCに取り込める。

 機構部品で目を引いたのは、日本トムソンの超小型リニアテーブルだ。100円玉と比べて、そのサイズがいかに小さいか良く分かるだろう【写真26】。


【写真23】ニッタの3次元ベクトル分布触覚センサ「GelForce」。この種のセンサはまだ他社でも発売されていないユニークなもの 【写真24】超小型の6軸力覚センサ。XYZ方向、および軸まわりのモーメント成分をリアルタイムに検出

【写真25】ビュープラスの複眼カメラ。コンパクトな筐体に25個もの撮像素子が配置されている。PC上に5×5のVGA映像が映っている。トンボロボットがつれる!? 【写真26】日本トムソンの超小型リニアテーブル。ベアリングを製造する同社の技術を集結したもの

URL
  日本ロボット学会
  http://www.rsj.or.jp/
  第25回日本ロボット学会学術講演会
  http://www.robotics.it-chiba.ac.jp/RSJ2007/

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( 井上猛雄 )
2007/09/27 17:06

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