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スタパ齋藤の「京商 マノイAT01 組み立てレポート」(その1)

Reported by スタパ齋藤

おっかなビックリ、マノイAT01にチャレンジ

今回購入した京商「マノイAT01」
 早くホンダのASIMOが庶民価格で発売されないかな~、そしたらとりあえず買うよな~、でも個人宅にはデカいよなASIMOちゃんな~、てな妄想に耽る俺。

 ロボットが好きで、二足歩行ロボットなんかさらに好きであり、最近は個人で二足歩行ロボットを組み立てて動かせるキットもあるゆえソチラ方面に興味津々であった。ので、一時期、手を出しかけたが、しかし、手を引っ込めてしまった。

 正直なトコロ、なんかですね、情報に圧倒されて“引いちゃった”という感じ。ホレ、よくあるじゃないスか、新しいコトを始めようと一歩踏み出……そうとすると、その世界の全体を見たいと思って情報収集。すると、雑誌やウェブでは最新トピックが流れている。見聞きすると、スゲく高度なコト、複雑なコト、積み重ねの上に成り立った偉業等々が飛び込んでくる。

 興味だけでそんな世界を覗くと、最新の情報に圧倒されてしまう。結果、引く。「おっもしろそぉ~」と思って一歩出した足だが、「皆さん凄く高度なコトをなさっている」「難しそう」「手に負えないのでは?」「無理かも!?」「なんかヤル前から疲れてきた」と、出しかけの足を引っ込めちゃう状態。多くの趣味のジャンルでありがちですな。ことマニアックな部分を多く持つジャンルほど、そうなりがちじゃぁ、ありません?


 そんなわけで二足歩行ロボットには手を出していなかった拙者なんスけど、しかし、ASIMOは一向に個人向けに市販される雰囲気も小型化される雰囲気もなく、一方ではいろいろなトコロで繰り広げられるロボット系競技、それから組み立てキットの新製品発売。

 ん~、なんかちょっと怖いっていうかドキドキするんだけど興味津々。やっぱり思い切ってヤッてみよう!! というコトで京商のマノイを組み立ててみることに。モノはマノイ(MANOI) AT01

 ちなみに、つい最近、マノイことPF01が発売されたが、このPF01と、拙者がチャレンジしたAT01は、基本的には別ものだそうだ。

 AT01は、軽量で運動性能を重視した二足歩行ロボット。一方のPF01は、ロボットデザイナーの高橋智隆氏がデザインを手がけた組み立てキットで、運動性能よりもデザインやパフォーマンスを重視したロボットだそうだ。


いきなり尻込み?

 嫌いなモノをねこの鼻先にグイと出すと、ねこちゃん、イヤ~ンって感じで尻込み・後ずさりするでしょう? あの気持ちがわかりましたよ。マノイAT01(以下、マノイ)のキットのパッケージを広げてみて。

 拙者が“組み立てキット”にイメージしたのは、例えばプラモデルですな。プラモデルのパーツを一望すると、何となくパッケージの完成品写真をイメージできる。このパーツがココで、なるほどこのパーツはこの部分だな、みたいに。しかし、マノイちゃんのパーツ群は、徹底的にパーツなのである。どこがどうマノイになるのか、まるでわかりゃしねえバラバラのパーツ。


マノイAT01のキット内容(の一部)。パッケージを開くと、いきなり膨大な量のパーツが。……コレ、ホントに、マノイになるの? てな不安を感じたりして
 パーツを箱から出して机上に広げ、多量のパーツ群を見て、……パーツを箱に戻しちゃおうかナ♪ と思ってしまった件の詳細に関しては割愛する。また、説明文を「話題のマノイAT01です。一度開封しただけで新品同様です。ノークレームノーリターンでお願いします」としてオークションに出そうかなと思った件の詳細についてはさらに徹底して割愛するが、初心者にはいきなり荷が重い感じ。

 聞くところによると、二足歩行ロボットの自作は、パーツ単位で購入したり自作したりし、組み上げる方々も多いという。マノイのような必要部品全部入りのキットは易しいほうらしい。だがしかし!! 二足歩行ロボど初心者の俺にとって!! この膨大で小さくて何のコトかちっともわからねえパーツ群!! いきなりプレッシャー!! 無理無理~アリエナイ~!!

 とか一瞬怯んだが、このまま怯みっぱなしの人生を歩むのもナンである。関係ねえよ。組み上がんなかったらそれまでだ。ていうか「え? マノイ!? なんですかソレ」という態度で、俺の記憶からマノイの存在を削除してASIMOの発売・小型化を待つし。って、やっぱり怯みがちなスタンスであったが、とりあえず説明書を開いて読み始めた。


頼もしい組み立てガイド

 プロショップと呼ばれるような、趣味系の専門店。ソコに行けば趣味に必要なモノが何でも揃う。客も店員も趣味の同好。腕に覚えのあるヤツラばかり。初心者にとっては、このいかにも“一見さんお断り”な雰囲気を持つショップには、なかなか入りづらいものである。もっと言えば、「入るのが怖い」という気分だろう。

 二足歩行ロボット自作に興味を持ち、そこに首を突っ込もうとしたら、百戦錬磨な方々の活躍や先端的情報に圧倒された俺であるが、それはまだ入ったことのないプロショップの前に立った時の気分と似ていた。でも興味が勝って、入ってみたら……案の定、ソレってナニ? コレってドレ? なプロショップ内迷子状態。とても不安。滲む汗。マノイのパーツ群を見たときの気持ちと似ている。

 しかし、多くの人がいずれプロショップの常連客になる。そして、プロショップ常連になるきっかけというモンが必ずある。切っ掛けは、多くの場合、気さくで親切な店員さんだったりする。ステキなプロショップにはイケてる店員さんがあり、品物よりもむしろ店員さん目当てで来る客が多いほどだ。

 というわけで、プロショップに入る前、ショーウィンドウ越しに店員さんの表情・振る舞い・接客の様子をよーく見るのが吉……って、そーゆー話なのかよ>俺!! マノイはどーした>拙者!!

 マノイ自作において、怯みがちであった俺を完全に前向きにさせ、マノイの世界に引き込んでくれたのは、キット付属の説明書であった。完全に意味不明なパーツ群を、完璧なまでに説明しきった、非常にわかりやすく丁寧な説明書である。プロショップにおけるイケてる店員さん的存在、みたいな。


マノイAT01に付属する説明書。B5判・109ページの冊子で、マノイのパーツリスト、組み立て全行程、ソフトウェア設定、ボディやオプション品の取り付けまで網羅されている。このうち、組み立て工程に最も多くのページが割かれている 説明書の中。組み立て手順と説明が書かれている。行程毎に注意すべき点が添えられていて、初心者には特に有り難い。また行程ごとに図説があり、図は細部まで緻密に描かれているので、パーツの向きを間違えにくい

慣れた人ならまだしも、説明書を斜め読みして行程を進めるとたいていミスをする。「え? なんでハマんないの!?」とか思って説明書を読み返すと、案の定、注釈に重要なコメントを発見したりして

 付属説明書には、マノイの組み立て手順が全て解説されている。精密な図入りで、的確な文章で組み立て手順が書かれ、ポイントを押さえた注意も添えられている。この図と説明文と注意書きに従って組み立てて行けば、迷うことも間違うこともほぼナイと思われる。

 ていうか正直な話、説明書が平易&詳細でなかったら、拙者のマノイ、組み上がってナイと思ったりするわし。マノイのキット全般にもコストかかってるんだと思うが、説明書もかなりマジメに作られたんではないかと思う。二足歩行ロボット組み立てド初心者(つーか初体験)の俺でも、結局、マノイを組み上げることができたんだから。


コンピュータ制御に萌え!!

 付属説明書のお陰で怯んだフィーリングが消えノープロブレムな心意気で組み立てを始めたが、序盤の行程である種の萌え体験をした。

 マノイは17個のアクチュエーター(機械的な作動装置)により動作する。アクチュエーターはサーボモーターで、つまり関節とかが数値制御のモーターで細かく正確に動くわけですな。で、行程の序盤で、このサーボモーターの“原点出し”という設定を行なう。モーター自体の動作の基準点を決める作業だ。

 この作業、17個のサーボモーターを、RCB-3と呼ばれるマイコンボードに接続して行なう。マイコンボードはパソコンと接続する。マイコンボードとパソコンの接続はUSB(シリアルUSBアダプタ)経由で、パソコンにインストールした「Heart to Heart 3 ソフトウェア」を使用する。

 つまりこの作業、17個のサーボモーターを、パソコン経由で操作するんですよ!! イキナリ!! アクチュエーターをコンピュータでコントロール!! くぅ~っ!! イカス!! 電子計算機制御の二足歩行ロボット!! 俺の世代としては今もなお十分興奮可能な状況だ。


キットに付属するマイコンボードこと「RCB-3」。これがマノイの頭脳となり中枢神経となる。接続されたサーボモーターやセンサー(別売)は、RCB-3により制御される RCB-3に17個のサーボモーターを接続したところ。RCB-3やサーボモーターの電源は、付属のバッテリ(MANOIと書かれた緑色のもの)。RCB-3は、付属のシリアルUSBアダプタにより、パソコンと接続されている

パソコン上ではHeart to Heart 3 ソフトウェアを使用。マノイの動作プログラミングに使うソフトだが、CH1……の各スライダーを動かすと、それぞれのサーボモーターが動作する

 説明書に書かれたとおりにセッティングし、パソコン上でHeart to Heart 3 ソフトウェアを操作すると……ズギャーン!! サーボモーターがギッとかジジジッとか動くんですけど!! まだ双方向性は感じられないけどサイバネティックな感覚なんですけど!! キャー楽しい!! ってソレだけで楽しめて安上がりですな>わし。

 この“サーボモーターの原点出し”から得られる感触、二足歩行ロボットとかに憧れる人にとっては、なんつーか、萌えの原点のように思う。当たり前と言えばアタリマエのコトではあるが、コンピュータで操作すると、これがサーボモーターの動きとなって見える。

 起承転結的には、マウス操作が“起”で、サーボモーターの動きが“結”であり、途中の“承転”あたりブラックボックスの中で起きててよくわからねえが、ナゼか萌える拙者。ラジコンのリモコンを動かすと、ミニカーとかが走ったり曲がったり。これに非常に近い「ワタシが制御してるよーん!!」という感覚。これは単純明快に、楽しい!!


ロボット組み立てで見えてきたもの

 わかりやすい説明書とサーボモーターをコンピュータ制御する感覚。一気にマノイ組み立てを進めていった俺だが、組み立て作業を進めるうち、当初の不安や怯みは消えていった。

 前述のように、最初は“二足歩行ロボットの自作”というコトにビビりがちだったんですな。考えてみれば、サーボモーターを始めとするパーツを組み合わせて、ボディを作り、各サーボモーターを数値制御することで、歩行等の動作をさせるだけではある。パーツ数や行程数・種類は多いものの、基本的にはプラモデルやラジコンを楽しむのに近いホビーだ。

 けど、ロボットの競技会の様子を見たり、達人のロボットの性能を知ったりすると、もーなんか凄く先端的で職人的な世界になってるんじゃないか、と。しかも、二足歩行ロボだし!! ゼロから全てを紡ぎ出した人々だけの世界!? てなイメージを持っていた。もちろん、ゼロからなさった先人のお陰で、現在の、ホビーとしてのロボット自作があるわけだが。

 ともかく、実際に手を出してみると、まず楽しめる。多量のパーツが徐々にロボットとしてのカタチを成す。関節等の動きは「なるほど、だから腕をああやって動かせるのか」とロボットに対する理解を自然と深めてくれる。また、そういうコトが少しずつ理解できてくると、「これって結局趣味だし、気楽にヤレばイイってコトですな」と肩の力が抜ける。他の趣味と同様、何ら制約のない、自由な世界である。

 同時に、既存のメーカー製二足歩行ロボットとか、あるいは建設機械とか、もしくは誰かが競技に出してるスゲくよく動くロボとか、そういうモノに対する見方が変わる。

 例えば……よく、テレビ等のスポットで二足歩行ロボがチラリと紹介され、それに対して「歩くんですね~、でも家事手伝いはしてくれないみたいですね~」とかいうコメントがある。これを「フッ」と笑うか、「ムッ」と怒るか、の変わり方だと思う。

 ロボットを組み立てることは、いろいろな楽しみを含むが、俺としては、世の中にあるイロイロな“物理的に動くハードウェア”を非常に身近にさせ、より深く考えさせる行為にも思える。単にクレーンが穴掘ってるだけの光景が、モーター、油圧、トルク、制御等々、さまざまな技術の集大成披露宴に見えてくる。で、そーゆーの、人間が頭と手を使って作り出したモノなんである。凄いんである。人類は凄まじいんである。

 とビジョンばかり広げまくっているが、まだ拙者のマノイちゃんは二足で歩いたコトない状態。さぁ、理屈こねてないで、さっさと一人前のマノイちゃんへと仕上げなければ!!


URL
  京商
  http://www.kyosho.com/

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2007/06/25 15:21

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