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テープカット。左からアジアグラフ実行委員長 河口洋一郎氏、CoFesta2008実行委員会副委員長 松谷孝征氏、経済産業省副大臣 吉川貴盛氏、財団法人デジタルコンテンツ協会会長・大坪文雄氏、国際3Dフェア実行委員長 河合隆志氏
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会期:10月23日(木)~26日(日)
会場:日本科学未来館ならびに東京国際交流会館
10月23日(木)~26日(日)の日程で、デジタルコンテンツの祭典「DIGITAL CONTENT EXPO2008」が開催されている。会場は日本科学未来館ならびに東京国際交流会館。主催は経済産業省と財団法人デジタルコンテンツ協会。
「DIGITAL CONTENT EXPO2008」は、昨年開催された「ASIAGRAPH 2007 in Tokyo」を拡大したもので、今年は音楽・放送・映画・ゲーム・アニメ・CG・3Dなどデジタルコンテンツ産業関連イベントや展示会からなる複合イベントとなっている。CGイベント「ASIAGRAPH2008 in Tokyo」「ConTEX(次世代コンテンツ技術展)2008」「国際3D Fair2008」などが行なわれており、漫画家の井上雄彦氏や、ギタリストの布袋寅泰氏など、著名人による講演も目玉となっている。
23日にはプレス向け内覧会とオープニングセレモニーが開催され、メインステージでは独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)と川田工業株式会社による「恐竜型二足歩行ロボット」や、ヒューマノイド「HRP-2」による会津磐梯山踊りなども披露された。
2002年12月に完成・公開された研究プラットフォーム用ヒューマノイド「HRP-2」は、腕を使ったロボットの自由度の解説をしたあとに、体操動作などを使って全身動作のバランス制御技術を披露。踊りだけでなく床への横たわりや起きあがり、片足バランスも披露した。
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【動画】起きあがり動作
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片足バランス
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【動画】片足のままでも指で押される程度であればバランスを維持できる
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ティラノサウルス型の恐竜型二足歩行ロボットは愛知万博でも人気を博したロボット。頭部や尻尾も動くリアルな外見と柔らかなボディが特徴。二足歩行ヒューマノイドロボットの技術が転用されている。人間も恐竜も直立二足歩行する。そこに目をつけて取りあえず「歩く」だけでもアプリケーションとなるロボット・コンテンツを探して開発したものだ。こちらも同じく片足バランスなどで技術をアピールしていた。
2台のロボットは会期中もデモンストレーションをメインステージで行なう。
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【動画】恐竜ロボット登場
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【動画】上体を持ち上げたり吠えたりして威嚇
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【動画】頭部や脚部の動き。足裏は大きいが脚の構造そのものは実際の恐竜にそっている
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【動画】表面は柔らかい
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【動画】体を左右に振ったり尻尾を振ったりする恐竜型ロボット
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【動画】恐竜型ロボットでも片足バランス
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【動画】方向転換して退場
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ロボットステージの実演予定表
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ステージで流される映像にも注目
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「アニメの世界を現実にする科学技術」
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会場のほかの展示は、3D技術やCG、VR(バーチャルリアリティ)、AR(オーグメンテッド・リアリティ)関連の技術や作品の展示が多い。なかなか写真では伝えづらい体感できる(あるいは体感しなければ分からない)コンテンツが多い。いくつか動画と写真で紹介する。
まずは日本科学未来館のシンボルゾーンの展示から。ここでは「ConTex」のテーマ展示として「アニメの世界を現実にする科学技術」というコンセプトで集められた技術展示が行なわれている。
慶応義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 稲見研究室は再帰性反射材とプロジェクター、ハーフミラーを使った光学迷彩を出展。光学迷彩とは物体をあたかも透明にしたかのように見せる技術である。将来的には、たとえば車の車内に張って死角をなくしたり、飛行機のなかに全部張って全天球コックピットのようなものを実現することを応用例として考えているそうだ。
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光学迷彩。背景のポスターが透けて見えているように見える。
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直接見ると普通
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応用例
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東京大学大学院 情報理工学系研究科 國吉・原田研究室からは人工知能ゴーグル「AI Goggle」が出展されている。PCに接続したカメラ付きのゴーグルを付けることで、見た物体を認識させていくというもの。入力画像から色や形など40次元くらいの情報を取って、正順相関分析(CCA)という手法で概念を学習させていくことができるシステムだ。
見たものを片っ端から認識していくため、動画として撮影されたライフログのデータをキーワードで簡単に検索できるようになる。たとえば、このシステムを使えばメガネをどこかに置き忘れたときにも検索するだけで最後にどこに置いたか探すことが簡単になる。まだ大規模な実験を行なっていないため、どのくらい多くの単語数に対応できるかなどは研究中。将来的にはロボットに搭載することも想定しているという。
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人工知能ゴーグル「AI Goggle」のデモの様子。見た物体を認識していく
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【動画】デモの様子
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未知の物体を追加学習させることもできる
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オリンパス株式会社未来創造研究所「Eye-Trek」は眼鏡に装着する小型ディスプレイシステムを展示。眼鏡につけられるというのがウリなのだが、眼鏡をかけていると逆に眼鏡を外して試さなければならない。しかしながら視力が悪いと何も見えない。仕方ないので絵の前に設置されたモバイルEye-Trekを覗かせてもらった。たとえば東京駅を見ると時刻表などが重畳されて見える。
そのほか、会場内の展示の一部も簡単に画像・動画でご紹介する。3DCGなどは実際に目で見ないと分からないだろうが、雰囲気だけ感じて頂ければ幸いである。なおここで紹介したもの以外にもさまざまな技術やデジタルアートの展示が行なわれている。
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オリンパスのモバイルEye-Trek
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【動画】会場入り口のデジタルアース
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スリーディーが出展している地球儀型ディスプレイ「Magic Planet」。300万円程度で主に博物館などを対象に販売中とのこと
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ヤマハ株式会社はY2プロジェクトとして「VOCALOID」など自社技術をアピール
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こちらは「TENORI-ON(テノリオン)」
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【動画】東大 廣瀬・谷川研究室による「structured creature」。2008年度グッドデザイン賞を受賞している
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【動画】Kwangwoon大学 3Dディスプレイ研究センター「360度バーチャルスタジオシステム」
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【動画】3DISによる眼鏡なしで立体に見えるLCDモニター
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【動画】NHK放送技術研究所によるコミュニケーションシステム「TV4U」のデモ。番組記述言語「TVML」で書かれており実際に一部子ども番組で使われている
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会場の様子
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ご覧頂ければ分かるようにロボットと直接関わりのあるコンテンツの展示は他にはあまりない。なぜデジタルコンテンツのイベントの中でロボットなのか。この疑問に対して、プロデューサーである東京大学IRT研究機構プロジェクトマネージャー IRTコンテンツ研究部門部門長である石川勝氏が答えてくれた。
石川氏は「ロボットの実用化にはコンテンツが必須です」と語る。ここでいう「コンテンツ」とは、ロボットが行なう役に立つ仕事やエンターテイメントなどのアプリケーションのほか、ヒューマノイドや恐竜型ロボットのように、姿かたち、外見も含んだ概念だ。
現在のロボットは、「番組のないテレビ受像機のようなもの」だという。テレビの世界では受像機を作る技術者と、番組制作を行なうコンテンツクリエイターとでは、役割の分業化が進んでいる。両者に要求されるセンスや能力はそれぞれ別物だからだ。
だが現在のロボットは、いわばテレビ受像機を作る技術者たちだけがいて、「こんなことができるのではないか」とアピールしている段階に相当するという。石川氏は「もっと楽しめるもの、役に立つものを作る人材が必要です。そうだと思いませんか?」と強調する。そしてこれが、「DIGITAL CONTENT EXPO2008」の会場でロボットのデモンストレーションを行なっている理由だという。
デジタルコンテンツクリエイターたちは優れたセンス、高いスキルと能力を持っている。プログラミングができる人も多い。ロボット・コンテンツを作ることに対して彼らに興味を持ってもらいたいのだという。経済産業省は今年から技術戦略マップの中に「システム・新製造」カテゴリを新たに作った。そのなかにはロボットコンテンツも含まれている。これからはロボット単体だけではなく、ロボットコンテンツを作ることのできる人材育成が必要とされている。
■URL
DIGITAL CONTENT EXPO2008
http://www.dcexpo.jp/
【2005年3月4日】二足歩行する恐竜型ロボット公開~愛・地球博で展示運用(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0304/nedo.htm
【2005年1月13日】HRP-2、人間と一緒に会津磐梯山を踊る(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0113/hrp2.htm
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・ バーチャルヒューマノイドと握手できる「ASIAGRAPH 2007 in Tokyo」開催(2007/10/12)
( 森山和道 )
2008/10/24 14:44
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