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「宇宙開発戦略本部」が始動、日本の宇宙開発はどう変わる?
~国際航空宇宙展・特別講演レポート


宇宙開発戦略本部事務局の横田真・内閣参事官。当初は事務方トップの豊田正和・事務局長が講演する予定だったが、スケジュールの都合で急遽キャンセルに
 パシフィコ横浜にて開催中の国際航空宇宙展において、1日、宇宙開発戦略本部事務局の横田真・内閣参事官が「我が国の宇宙戦略」と題し講演を行なった。宇宙開発戦略本部は、宇宙基本法の施行に伴い8月27日に発足した新組織だ。今後、日本の宇宙開発をどうするのか。事務方の発言を聴くために、会場は立ち見が出るほどの満席となった。

 講演の内容について触れる前に、まずは背景を説明しておきたい。今まで日本の宇宙開発は、実施機関として独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)があり、諮問機関として文部科学省の宇宙開発委員会があった。科学技術政策全体の企画立案・総合調整で総合科学技術会議も関係してくるのだが、いずれにしても、宇宙開発は科学技術の枠内で語られていたわけだ。

 しかし宇宙技術は、もはや生活のあらゆる部分に関わっている。新たに発足した宇宙開発戦略本部では、本部長に内閣総理大臣、副本部長に内閣官房長官と宇宙開発担当大臣が充てられ、それ以外の全ての国務大臣が本部員となる。今後はこの組織が省庁の枠組みを超えて、「宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進する」(宇宙基本法 第二十五条)ことになる。

 日本の宇宙開発について、「これまでは研究開発主導型だった」と横田氏。日本の宇宙機器産業は、海外と比べても、特に官需の比率が高い。規模自体も、米国の20分の1、欧州の3分の1しかないのだが、海外の民需が30%台であるのに対し、日本の民需はわずか4%。国の宇宙関係予算のうち、JAXAの分が70%を占めている現状をあげて、「利用を主眼にした宇宙戦略を作っていく必要がある」と政策の転換を訴えた。


日米欧の宇宙機器産業の比較。官需が多い事情は同じだが、民需の差があまりにも大きい 国内の宇宙機器産業の市場規模(左)と人員構成(右)。ともに減少しているのが分かる 来年度概算要求における宇宙関係予算。総額4,085億円(前年度比29%増)を要求している

 また宇宙基本法については、「宇宙の軍事利用に道を開くもの」との懸念があるが、「専守防衛の範囲内で」と明言した上で、「各国において、宇宙は重要なツールと考えられている。日本も安全保障の分野で、宇宙の技術を使っていくことをきちんと位置付けるべき」と述べた。

 もう1つ、宇宙基本法のポイントとして横田氏があげたのは、宇宙産業の振興。日本の宇宙産業の規模は、金額・人員ともに縮小している。実用衛星は米国に牛耳られ、主力ロケットのH-IIAにしても、まだ商業衛星の打上げを受注した実績はない。横田氏からは、民生技術の強みを最大限活用するとともに、政府による衛星・ロケットの計画的な開発・調達を通じて、国際競争力を強化するという方針が述べられた。

 今後は「宇宙基本計画」の作成が重要な任務の1つとなるが、それを検討する専門調査会が、この講演と同時刻に開催されていたそうだ(そのために事務局長が来られなくなったのだ)。ちなみに専門調査会の委員には、大学、産業界からの有識者のほか、バンダイ社外取締役の松永真理氏や、漫画家の松本零士氏、日本科学未来館館長・宇宙飛行士の毛利衛氏なども名前を連ねている。


宇宙開発利用に係わる行政組織。宇宙開発戦略本部が統括する 宇宙開発戦略専門調査会の構成員。幅広く人材を集めた

 「一番考えなければならないのは、まず“輸送系や人工衛星ありき”ではなく、利用方法を広げていくこと。利用が広がれば人工衛星の需要が増え、その結果としてロケットのニーズも増える。そのような意識で宇宙基本計画を作っていきたいと考えている」と横田氏。宇宙基本計画は、11月末までに骨子を取りまとめ、来年5月を目処に作成する予定だ。

 また宇宙基本法には、JAXAを始めとする宇宙開発利用に関する機関、行政組織の在り方についての見直しも含まれている。「来年の夏くらいまでに一定の方向性を提示する」(横田氏)とのことで、場合によっては、JAXAの再編もあるだろう。将来の宇宙開発に大きな影響があるだけに、どのような議論を経て、どういった結論になるのか、注視していく必要がありそうだ。

 宇宙基本法は、政治が宇宙分野でリーダーシップを発揮するための仕組みと言えるが、昨今のように政権がころころ変わってしまっては、果たして将来のビジョンなど示せるのか、という疑問もある。結局、いままでと同じように、官僚任せになってしまっては意味がない。また最初から軍事利用にしか興味がないようでも困る。有人ロケットの検討や民間宇宙機のための法整備など、政治が判断することはいろいろある。きちんと宇宙技術を理解して方針をたてられるよう、今後は政治の側のレベルアップも求められるだろう。


URL
  宇宙開発戦略本部
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/
  2008年国際航空宇宙展
  http://www.japanaerospace.jp/

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( 大塚 実 )
2008/10/03 17:53

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