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「2008年国際航空宇宙展」が開幕
~宇宙やロボット関連の展示をレポート


4年ぶりの開催となった「国際航空宇宙展」。オープニングにはブルーインパルスによる記念飛行も行なわれる予定だったが、天候不良のため中止となってしまった
 10月1日(水)~5日(日)までの日程で、パシフィコ横浜にて「2008年国際航空宇宙展(ジャパンエアロスペース2008/JA2008)」が開催されている。主催は社団法人 日本航空宇宙工業会。国内外の航空宇宙関連企業・団体等を一堂に集めた展示会で、最近では4年ごとに実施されてきた。1日(水)~3日(金)は業界関係者のみの入場となるが、4日(土)~5日(日)は一般にも解放され、ヘリコプターなどのデモフライトも行なわれる予定だ。

 展示の内容は、大きく分けて宇宙分野と航空分野があるが、本レポートでは主に宇宙分野の話題を中心に紹介していきたい。


三菱重工業ブース

 まずは三菱重工業のブース。日本の主力ロケットであるH-IIA(というか、M-Vは退役し、GXは目処が立たず、現状では衛星打上げに使えるのがH-IIAのみになってしまっている)や開発中のH-IIBの模型が展示されていたほか、次世代のロケットエンジンの紹介も行なわれていた。

 「LE-X」は、H-IIAで使われているLE-7Aエンジンと同様に、第1段のエンジンとして検討されているもの。LE-7Aは世界的に見ても効率の良いエンジンではあるが、構造が複雑。LE-XはLE-7Aと同等の性能を維持しながら、部品点数を35%低減することを目標としており、シンプルで頑丈なエンジンになる見込みだ。説明員の話では、2~3年後を目処に開発フェーズに入りたいということだ。


「LE-X」の縮小模型 スペックの予定

 もう1つの「MB-XX」は上段用のエンジンで、こちらは米Pratt & Whitney Rocketdyneとの共同開発。推進剤は液体水素/液体酸素で、高信頼性・高性能・低リスク・高コストパフォーマンスが特徴だという。すでに2005年9月に実証エンジンの燃焼試験に成功している。推力によって、MB-35とMB-60の2種類が用意されている。


「MB-XX」の模型 スペックに幅があるのは2種類あるため

IHI/IHIエアロスペースブース

 IHI/IHIエアロスペースのブースでは、LE-7Aエンジンで使われているターボポンプなど、同社の製品が並べられていた。


LE-7A用の液体水素ターボポンプ こちらは液体酸素ターボポンプ 退役したM-Vの模型も

 あまり大々的ではなかったものの、同社ブースではGXロケットについても紹介されていた(GXロケットの全体の取りまとめはIHIが担当している)。GXロケットは2段目に使用されるLNGエンジンの開発(JAXAが担当)が難航しており、完成がズルズルと遅れている。計画の見直しも検討されている状況で、メーカー側からは恨み節も聞こえてくる。


いつまで模型のままなんだろう…… GXロケットの概要

北海道産のロケットにも注目

 まだ宇宙には届いていないのだが、ロケットで注目なのは北海道で作られているCAMUIロケットだ。燃料にポリエチレンを使っているのが特徴のハイブリッドロケット(燃料が固体、酸化剤が液体)で、火薬類を使っていないために、安価な打上げが可能というメリットがある。


CAMUIロケットは今年の特別展示に選ばれるほど注目は高い。これは最も大型の推力250kgf級 燃料はポリエチレンが使われている。このブロックは実物で、穴が2つ開いているのがポイント ブースには推力90kgf級の実機も。実際に打上げられたもので、再利用が可能だ

 現在、最も大型なタイプはCAMUI-250S(全長4.7m、外径160mm、重量48.5kg、推力250kgf)で、これは今までに1回しか打上げられていないのだが、より小型のCAMUI-90P(全長2.9m、外径120mm、重量23kg、推力90kgf)は2008年8月に開催された「缶サット甲子園」で8機連続の打上げに成功するなど、ビジネスとしても軌道に乗りつつあるようだ。

 今後の大型化のスケジュールについては、2年後を目処に、推力800kg~1tクラスを実現したいとのこと。2~30kgのペイロードでマッハ2が出せるようになる見込みで、「これくらいになるとニーズはかなりある」と開発責任者の永田晴紀・北海道大学教授は見ている。


浜松産の惑星ローバー?

 特別展示のコーナーに、CAMUIロケットとともに置かれていたのが静岡県浜松市の製造業6社が開発した惑星探査ローバー(プロトタイプ)。実際に宇宙で使われることを想定したものではなく、技術力のアピールといった意味合いが強いプロジェクトだが、製造業が盛んな浜松市らしく、全長1.3mの本格的なローバーに仕上がっている。


熱環境などを考慮したものではないが、なかなか本格的 クローラ型だが、三角形の変わった形をしている

 三角形のクローラが特徴のローバーは、通常はそのまま進むが、岩石などの障害物にクローラが当たって力が加わると、三角形部分が回転してそれを乗り越えられるようになっている。

 浜松商工会議所の「宇宙航空技術利活用研究会」(SAT研)に所属する原田精機工業など有志企業6社が協力して開発した。今回は展示だけだが、2008年6月の「第26回 宇宙技術および科学の国際シンポジウム」(ISTS浜松大会)では、動作デモも行なわれたということだ。


新潟産の無人ジェット?

 新潟県新潟市のブースには、無人飛行が可能なジェット機が展示されていた。これは産業技術総合研究所が中心となって開発したもので、新潟市や長野県岡谷市などのメーカーが製作に協力した。産総研のブースに説明のパネルも展示されていたのだが、担当者が不在だったので、詳細については聞くことができなかった。


翼が大きすぎてパーティションの上を通り抜けている 付け根部分。翼を前後左右に傾けて機体を制御する エンジンは産総研のブースでも展示されていた

 無人機は各社が開発しているが、この実験機(産総研は「飛行ロボット」として紹介していた)の特徴はジェットエンジンを採用していることだろう。無人で貨物を輸送することを目的としており、100kg程度までなら運ぶことが可能とされる。

 GPSを搭載しており、経路を指定しての自律的な飛行が可能。将来的には、ロボットアームを使った空中発着(ロボットアームで機体をキャッチ&リリースする)により、滑走路を不要にすることまで考えられているそうだ。


CFRP製の無人VTOLも

 無人機はジーエイチクラフトのブースでも展示されていた。同社は複合材を使った開発に特化したメーカー。「QTW-UAS」は飛行速度にあわせて傾きを変えるティルトウィングが特徴となっており、ホバリングから時速100kmを超える高速飛行までが可能。垂直離発着が可能なので、滑走路も不要だ。


「QTW-UAS」の最新型(FS4)。実機が展示されている 経路を指定して自律的に飛行することも可能 CFRPで椅子も作ってしまった。一応、売っているとか

 「QTW-UAS FS4」はGPSやジャイロなどのセンサーを搭載しており、マニュアル操縦のほか、自律的な飛行も可能。飛行時間は最大60分間で、さまざまなミッションに対応できることを同社はアピールしていた。


国内外の航空機展示・デモフライトも

 会場ではこのほか、国内外の航空機メーカーによる展示が多数行なわれている。その一部を写真で紹介しよう。


三菱重工業はMRJを大きくアピール。写真はスケールモデル MRJ客室の実物大モックアップ。予約制でMRJの内装を体験できる MRJの仕様説明

当然ながら海外のメーカーも多数出展。写真はロッキード・マーチンブース ロッキード・マーチンブースに展示されていた実物大のTHAADミサイル(一番下) ユーロコプターブースに展示されていたNH90。ヘリコプターはいくつか実機が展示されている

富士重工業ブースでは同社が主翼を生産する小型ビジネスジェット機「エクリプス500」の模型とともにスバルの「EXIGA」を展示 IHIブースに展示されていた旧日本軍のジェット戦闘機「橘花(きっか)」の「ネ20 ターボジェットエンジン」

防衛省ブースでは「心神(しんしん)」の実物大RCS試験模型を展示 心神の側面 展示モデルの概要。レーダー反射断面積(RCS)の計測に使われた

土日には屋外でヘリコプターによるデモフライトも予定されている。時間は13:00~15:00 航空自衛隊「CH-47J」による空中消火デモ

URL
  2008年国際航空宇宙展
  http://www.japanaerospace.jp/


( 大塚 実 )
2008/10/02 18:52

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