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ロボットカルテット演奏会
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東京お台場にある、トヨタのクルマを題材にした入館料無料のテーマパーク「メガウェブ」で、4月22日から5月6日まで無料イベント「ロボットと遊ぼう!」が開催された。目玉はトヨタ・パートナーロボット4体が合奏する「ロボットカルテット演奏会」。また、「ホビーロボット大集合」では各種ホビーロボットも展示され、触れることができただけでなく、ダンスパフォーマンスなどのイベントも行なわれた。その模様をお届けする。
● ロボットカルテット演奏会は3曲を演奏
会場となったのは、複数あるメガウェブの施設の内の「ユニバーサルデザインショウケース」(UDS)。あらゆる人が公平に自由に、そして簡単にわかりやすく使うことができ、しかも間違いにくく安全といった考え方を基本にした「ユニバーサルデザイン」を題材にした施設だ。ユニバーサルデザインに基づいた、トヨタ車に搭載もしくは研究されているシステムや、実際に家電メーカーから販売されているユニバーサルデザインの洗濯機や掃除機、そのほか多数の日用品などが紹介されている。トヨタ・パートナーロボットやパーソナルモビリティの「i」シリーズなども展示されている施設だ。
UDSには、トヨタ・パートナーロボットの内の二足歩行型のトランペットロボが常設されているが、今回は「ロボットカルテット演奏会」とあるように、それ以外のタイプも集結。二輪車型のトランペットロボ、ドラムスロボ、チューバロボがやって来た。普段は愛知県のトヨタ会館で演奏しているロボットたちで、予備のもう1組と合わせた計8体が、ゴールデンウィークのメガウェブにやってきたというわけだ。
トヨタパートナーロボットは、昨年12月に新たに発表されたバイオリンロボと合わせると、約10種類が開発されている。その内の演奏ロボットは、トランペット(二足歩行型と二輪車型の2タイプ)、チューバ、ドラムス、トロンボーン、ホルン、DJロボット、バイオリンとなっている。なお、各ロボットが現時点で何体あるかというのは秘密だそうだ。記者が数えた限りでは、二足歩行型のトランペットロボットが最も多いようで、トヨタ会館の2体(今回メガウェブに来た演奏用と予備の展示用)、UDS入口に常設されている1体、池袋のトヨタのクルマテーマパーク・アムラックス東京に常設の1体、トヨタテクノミュージアム(産業技術記念館)に常設の1体、中部国際空港常設の1体と、6体は間違いなくいる。今回やって来た二足歩行型トランペットロボ以外の3種類は、少なくとも2体ずつだ。ちなみに、4種類それぞれに愛称が付けられており、ドラムスロボが「リッチー」、二輪車型トランペットロボが「デイブ」、チューバロボが「チャック」、二足歩行型トランペットロボがカルテットのリーダーだそうで「ハリー」となっている。種類ごとの愛称だそうで、個体ごとの愛称は特にないそうだ。
ロボットカルテット演奏会は「ロボットと遊ぼう!」の全期間中で実施されたわけではなく、4月26日から29日および5月2日から6日までの9日間のみ行なわれた。演奏は1日4回。演奏会の前には、2007年10月に開催された第40回東京モーターショーで披露された最新パーソナルモビリティ「i-REAL」と、愛・地球博でパートナーロボットたちとともに活躍した「i-unit」のデモンストレーションも行なわれた。
各ロボットを説明すると、リーダーのハリー(二足歩行型トランペットロボ)はこれまでも紹介したことがあるが、トヨタパートナーロボットの代表格。自動車メーカーのロボットといえば、トヨタのライバル企業であるホンダのASIMOが有名だが、体格的にはASIMOよりも若干スレンダーなイメージがある。特徴は人工肺と人工唇により、本当にトランペットが吹ける点(トランペットは人工唇の形に合わせてマウスピースが改造されているぐらいで、機能的には通常のものと同じ)。楽器は人間が使う道具の中でも特に操作が繊細で難しい部類に入るが、それらを使いこなせることからも分かるように、指先が器用なのである。また、同じトランペットロボのデイブは、ハリーの下半身が脚から小型の二輪車に取り替えられたとイメージしてもらえばほぼ問題ない。人工肺や人工唇もハリーと同じように備えている。
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二足歩行型トランペットロボのハリー。カルテットのリーダーだ
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二輪車型トランペットロボのデイブ
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演奏会で次の曲の演奏を待っているところ
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トランペットはマウスピースが人工唇の形に合わせてある
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演奏会での一場面
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リッチー(ドラムスロボ)は、デイブのものよりもやや大きい、スカートのついた車輪型の下半身を備えたロボットだ。スカートは地面すれすれまであるので、表側からは二輪車なのかそれ以上なのかは確認できないが、二輪車だそうである。ドラム(パーカッション)は、スカート前部に備え付けられている形で、パッド(スティックで叩く部分)がみっつ、コントローラーがひとつ、取り付けステーの根本近くにバスドラム(もちろん、アコースティックドラムのものに比べると非常に小型)という組み合わせだ。ちなみにコントローラからすると、パーカッションはヤマハ製のようだ。パーカッションがそれなりの重量となるため、デイブのよりも車輪のタイプが大型になっている。なお、スティックを握る指は、根本は動作するものの、第1・第2関節は曲がらない。あらかじめスティックを持つのに適した曲がり具合の指が備えられているようだ。それはほかの管楽器のロボットたちにも共通のようで、指はピストンを押しやすい形にあらかじめなっている。
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ドラムスロボのリッチー
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パーカッション
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バスドラム
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スティックを握る指は、最初からそれに合わせてあるようだ
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演奏会での様子
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チャック(チューバロボ)も二輪車型だ。大型のチューバを安定させて支える必要があることから、こちらもリッチーと同じスカート付きの車輪型の脚部を備えている。ちなみに、チャックのチューバの構え方や演奏の仕方は人が吹く場合と少々異なるようだ。人の場合は、一般的に身体の前でチューバを縦に抱きかかえ、開口部を上方に向けており、左手で抱えて右手でピストンを押して演奏する形だ。それに対してチャックは、左肩にチューバをバズーカ砲のように載せて開口部を真正面に向けており、ピストンは左手で押す。人工肺と人工唇はハリーやデイブと同じだ。ただしチューバは大型なので、ハリーたちのように口から外すことはできないようだ。
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チューバのロボのチャック
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チューバのピストンは左手で押す
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演奏会での様子
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4体を見比べてみると、実は意外と共通デザインのパーツが少ない。4体とも完全に同じと思われるのは、腕部のみと思われる。ボディーの胸部はリッチーとチャックは同じだが、ハリーもデイブもそれぞれ異なる。これは、下半身の構造が異なるということもあるだろう。顔もよく見ると、4体ともそれぞれ違う形状をしている。目の形、口の形が異なるし、葉の形をした緑色の耳飾りも、ハリー、デイブ、リッチーは左耳にあるが、チャックはチューバを抱えている関係で右にあるという具合。リッチーとチャックの下半身も、リッチーにはパーカッションが組み付けられているので、厳密にいえばまるっきり同じというわけではない。少しでもそれぞれに個性を持たせようという配慮もあるようだが、こうして1体1体異なるということは、それだけ製造にかかる費用もかかるはずだ。
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ハリーの顔
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デイブの顔
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リッチーの顔
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チャックの顔
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ハリーの胴体
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デイブの胴体
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リッチーの胴体
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チャックの胴体
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デイブの脚部の二輪は小型
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リッチーはスカート付きの二輪車型。車輪のサイズなどは直接は見られない
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チャックの脚部は、リッチーのものからパーカッションを取った形
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演奏された曲目は、1曲目が「ルパン三世のテーマ」。ハリー(二足歩行型のトランペットロボ)を除く3種類は、個人的には初めて見たのだが、実際に演奏が始まってとにかく驚かされたというか、感動させられたのが、リッチーのスティックさばき。ハリーやデイブもトランペットの上下角を変えるなど、本物のミュージシャンのようなアクションを見せたり、空いている方の手をふったりと、それなりのアクションをするが、基本的に金管楽器の操作はピストンを押す形なので、あまり目立たない。それに対し、リッチーは常に素早く手を動かしており、実に迫力があった。バイオリンロボもデビューしているので、今後は同じ弦楽器のギターロボやベースロボなどを開発して、ぜひバンド活動をしてもらいたいところである。
そして2曲目は、ジャズメドレー。1曲目が「Moonlight Serenade」。1939年にグレン・ミラーにより作曲されたスウィング・ジャズの代表的な曲で、グレン・ミラー楽団のバンドテーマ。2曲目が、「Stompin' at the Savoy」。こちらは、1936年にエドガー・サンプソンらによって作曲。アンディ・ラザフ作詞による歌詞もある。3曲目が、「Take the 'A' Train」。日本では「A列車で行こう」で知られ、1941年にデューク・エリントン楽団のピアニスト、ビリー・ストレイホーンが作詞・作曲を担当。同楽団のテーマ曲となっている(ちなみに、A列車とはニューヨーク市の地下鉄の8番街急行線の名称)。
最後の3曲目は、「世界に一つだけの花」。ご存知、SMAPの曲だ。聴いたことがない人を探す方が難しいのではないかというほど知られているので、もはや説明は不用だろう。この曲の時がロボットたちのパフォーマンスが最も活発で、ハリーを中心に3体がグルグルと回るなど随分と動いていた。
演奏は都合3回見させてもらって、その内の1回は最前列中央の特等席で鑑賞。4体が揃って前に出てくる時はさすがに迫力があった。子供たちも随分と聞いていたが、ロボットたちのあまりの上手な演奏ぶりに、見とれていたようだ。次は、最新のバイオリンロボなども含めた、すべてのミュージシャン系パートナーロボットによる大演奏会をお願いしたいところである。ちなみにそのことをスタッフの方に聴いたのだが、残念ながら相当スペースが必要となるそうで、ライブ会場などを借りない限りは難しいという。また、バイオリンロボットはほかの楽器と比べると、どうしても音が小さいため、ロボットの数を揃えないとダメということで、その辺も予算的な面も含めて難しいようだ。しかし、“世界のトヨタ”だけに、将来的にはロボットオーケストラ楽団などを編成してくれそうな気がするので、気を長くして待っていよう。
● ホビーロボットが数十体集合した「ホビーロボット大集合」
ロボットカルテット演奏会と対を成していたのが、「ホビーロボット大集合」だ。同じUDS内の別のスペースに、数々のホビーロボットが集合した。触れたり話しかけたりもできるロボットも数多く展示されており、老若男女問わず楽しんでいた様子だ。
ホビーロボットは複数のジャンルに分類されて展示されていた。組み立て型はRB2000(JR PROPO)、ROBONOVA-I(ハイテックマルチプレックス)、G-ROBOTS&G-DOGS(HPIジャパン)、MANOI PF01(京商)、KHR-2(近藤科学)など、Robot Watchの読者にはお馴染みのものが多数(いうまでもなくG-DOGSはヒューマノイドではないが、この分類は組み立て型と等しいものと思われる)ヒューマノイドロボットとして紹介されていた。完成品は、キャラクターロボットと癒し系ロボットに分類されて紹介。キャラクターロボットは、イフボット、ハローキティロボ、プレオ(以上、ビジネスデザイン研究所)、プリモプエル&プリモプエラ(バンダイ)など。癒し系ロボットはセガトイズが独占という形で、i-penguin、i-dog STEREO COOL TAP、夢ねこスマイル、夢こねこ、夢ひよこ、夢おうむ、夢ふくろう、MIOなどが展示されていた。そのほか工作ロボットとして、ロボットアーム(イーケイジャパン)や大江戸からくり人形(学研)などもあった。さらに別枠で、黒と白のi-SOBOT(タカラトミー)や、R/C空飛ぶドラえもん&ドラミちゃん(タイヨー)など、有名どころが揃っていた。
またイベントスペースが用意されていて、そこではロボットのダンスショーや操縦体験コーナーなどを実施。大人も楽しんでいたが、特に子供たちは食い入るように見ていた。かぶりつきの位置で身を乗り出すようにしており、何体ものロボットたちが揃って踊っていたりするのは、魔法か何かのように見えるのかもしれない。ちなみに、たまたま取材したときだけかも知れないが、意外と小さい子は男女関係なく興味を持つ模様。ROBONOVA-Iが踊っていたのだが、見ているのは女の子の方が多かった。
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ホビーロボット大集合のスペース
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ヒューマノイドロボットのコーナー
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ヒューマノイドではないが、G-DOGも
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ハローキティロボ。かわいいけど、45万円!
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左がプリモプエラで、右がプリモプエル
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i-SOBOTの白と黒も展示されていた
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子供や女性にも人気の夢ペットシリーズ。こちらは夢こねこ
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音楽ロボットのセガトイズ「i」シリーズ。こちらは、i-penguin
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複数のROBONOVA-Iがタイミングを合わせて踊っていたイベント
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今後も、メガウェブではロボット関連のイベントを開催する方向で検討しているそうなので、期待したい。都心部から少々時間と交通費がかかるのだが、ゆりかもめの青海駅からは目と鼻の先だし、近隣の駐車場は充実しているなど、メガウェブのアクセスは決して悪くない。入館料は無料で、イベント料も今回のように無料であることが多いので、今後も定期的にロボットイベントを開催していってもらいたいところである。
■URL
メガウェブ
http://www.megaweb.gr.jp/
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( デイビー日高 )
2008/05/15 13:44
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