宇宙航空研究開発機構(JAXA)は23日、H-IIAロケットに相乗りする小型副衛星の通年公募を開始した。これまでは不定期に実施されていたものだが、今後は継続して募集を受け付け、制度の利用拡大を図る。また同日、2010年に打上げ予定の金星探査機「PLANET-C」に相乗りする衛星の募集も開始された。
● 今後はいつでも申請が可能に
小型副衛星(ピギーバック衛星)は、ロケット側に余剰能力があるときに主衛星と一緒に打上げられる、いわば「相乗り」の衛星。前身のNASDA/ISAS時代にそれぞれ例があるが、JAXAに統合されてからは2006年に初めて募集しており、そこで選定された6機関の相乗り衛星が、今年度中に温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT」とともに打上げられる予定だ。これらの衛星については、詳細は別記記事を参照。
これまで、小型副衛星の公募はその都度実施されてきたが、今後は基本的に毎日、応募や相談を受け付ける。書類到着後に審査を行ない、資格を満たしていれば「小型衛星搭載候補リスト」に登録。JAXAとの技術調整を経て、打上げ機会を待つことになる。選定時には各種条件などを考慮して、このリストの中から搭載衛星が決定される。
研究・教育機関のほか民間企業でも応募は可能。ただし、目的は「我が国の宇宙開発利用の拡大につながる研究開発に資するもの」または「大学等の教育への貢献など、宇宙分野の人材育成に資するもの」に限定されており、「営利的」と見られるものは不可。打上げ費用は無料だが、製造や各種試験のための費用は応募者が負担する必要がある。
衛星のインターフェイスは、JAXAが標準化した仕様を用意する。相乗り衛星は、10cm級(1~1.5?s)、20cm級(8~10?s)、50cm級の3タイプが考えられており、10cm/20cm級は箱型の分離機構「J-POD」(開発中)、50cm級は標準型の分離機構「PAF239M」が使用される。これらが何個搭載できるかは打上げによって異なり、ペイロードに余裕がなければ、相乗り衛星を搭載しないこともあり得る。
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「GOSAT」打上げ時のフェアリング内部。周りに置いてあるのが小型副衛星だ
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JAXAが開発中の箱型分離機構「J-POD」。10cm級なら4機、20cm級は1機を格納できる。JAXAは打上げから衛星の分離までを担当する
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注意して欲しいのは、全てのH-IIAロケットで相乗りが実現するわけではないということ。すでに同ロケットの打上げは三菱重工業に移管しており、今回の公募はあくまでJAXAの衛星打上げに限った話となる。今後、三菱重工業が海外から衛星打上げを受注して、H-IIAロケットの打上げ機会が増えたとしても、それとは関係ないので、多くても年間1~2回程度にしかならないだろう。打上げ費用がかからないのは魅力だが、かなりの「狭き門」となりそうだ。
● まずは2010年の「PLANET-C」で募集
前述のように、今後は継続して相乗り衛星を公募するが、その最初の打上げ機会として金星探査機「PLANET-C」が想定されており、これについてはスケジュールの制約から、5月23日までで応募を締め切る。PLANET-Cは2010年度に打上げられる予定なのだが、面白いのは、投入軌道を地球周回軌道のほかに、金星に向かう軌道も選べる点。これが実現すれば、宇宙機関以外では初の“惑星探査機”となる。
ただし、選定時期の6月中旬までには周波数帯域などの運用諸元が具体化している必要があるため、これから金星に向かう計画を立てて応募するのは難しいかもしれない。ちなみにPLANET-Cはエンジンを逆噴射して金星の周回軌道に入るが、相乗り衛星にそれはほとんど不可能なので、金星を通過して太陽をまわることになる。また小型衛星では通信も難しいので、地球との交信は絶望的という問題もある。
地球周回軌道の場合は、高度300kmの円軌道に投入される。軌道傾斜角は約30度。この軌道では通常、大気圏へ突入するまでの時間は10日から2カ月程度になるそうだ。相乗り衛星には、これら2つの軌道の合計で40kg以内(衛星部分のみ)を配分可能だが、今後の検討により増える可能性もあるとか。
● 門戸は広く開放して欲しい
ところで、これまでこういった小型副衛星は研究・教育目的のものばかりだったが、せっかく民間に門戸が開放されていても、それに限定していては民間のアイデアを広く集めることはできないだろう。もちろん、研究・教育目的が重要であることは否定しないが、それと同時に、ROBO-ONE衛星のような、もっと楽しいものが出てきてもいいと思う。逆に民間には、独創的なアイデアをどんどん出して、JAXAを動かして欲しい。
ROBO-ONE衛星に限らず、夢のあるプロジェクトであれば話題にもなり、子供達が科学や技術に目覚めるきっかけにもなる。それは十分、国益にも適う。JAXAには税金を使っている立場上、「国民に批判される」というある種の“恐怖心”があるのかもしれないが、例え商用目的であっても、要は「国民が納得できるもの」であればいいのだ。せっかくの制度、JAXAには柔軟な運用を願いたいところだ。
■URL
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
http://www.jaxa.jp/
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