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日本チームが善戦! 初の優勝チームも
~WRO2007国際大会(日本編)


【写真1】「WRO 2007 国際大会」が開催された台北市の台湾大学スポーツセンター(NTU Sports Center)。地下1階、地上3階の豪華な設備だ
 11月17日と18日の両日、台北市の台湾大学スポーツセンター(NTU Sports Center)において、「WRO2007国際大会」が開催された【写真1】。WROは、自律型ロボットの製作とプログラム開発の技術を競い合う、青少年のためのロボットコンテストだ。教育用レゴマインドストームを利用して、与えられた競技や課題をクリアする創造性と、問題解決能力の育成を目指しているという。

 本大会は、国立シンガポールサイエンスセンターの発案により2004年からスタートし、今年で4回目を迎えた。年々その規模も大きくなってきており、今年は日本、台湾、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、デンマーク、ロシア、オーストラリアなど参加国も23に増えている。世界各国の予選会に参加した約9,640チームの中から、ひとつずつ駒を進めてきた200チームほどのツワモノたちが、国際大会という晴れの舞台に立った。ここでは、日本から出場したチームの活躍を紹介する。

 本大会の競技は、小・中・高校部門でレギュラー部門とオープン部門がある。レギュラー部門は大会規定のコースを走り、ロボットのタイムや得点を競う。一方、オープン部門は毎年異なるテーマが与えられ、それに沿って自由にロボットを組み立るため、とてもユニークな作品が多い。入賞作品も人気投票によって行なわれる。ただし、オープン部門には日本チームからの参加はなかった。レギュラー部門では、日本から小・中・高校、合わせて10チームが参加し、決戦に挑んだ。いずれの競技も午前・午後に2つの異なるコースが用意され、それぞれ2回ずつ出走し、タイムと得点を競い合った。

 大会前日には、競技会場とは別の場所(青年活動センター)で走行の準備が着々と進められた【写真2】。ここは参加者が宿泊する施設も兼ねており、いわば選手村のようなところだ【写真3】。関係者のミーティングも夜半まで行なわれ、大会当日のレギュレーションの変更点などについても議論された。


【写真2】大会前日の走行準備が進められた青年活動センター。写真左上にそびえる赤い建物は、あの有名な圓山大飯店だ 【写真3】前日からマシンのチェックに余念がない各国の代表チーム。すでにこの日から試合は始まっていたのだ

 この大会では事前にコースが発表されるが、たびたびルール変更があるため、大会当日になってみないと見えない部分も多い。関係者によると、このようなルール変更は日常茶飯事だという。実際に故意に行なっているようで、ルールが変わっても素早く適応できるような能力を参加者に問うという側面もあるようだ。ルール変更にともなって、その対策を取るために深夜まで練習するチームもあった。前日から、すでに戦いは始まっているのだ。


善戦を繰り広げたオールジャパンWROチーム

 ここからは、日本チームの本大会の模様と活躍を、部門・チーム別にそれぞれ紹介していこう。


小学生部門

 小学生部門では、午前中にライントレース、午後に障害物の競技がそれぞれ2回ずつ行なわれた。ライントレースは路面に描かれた黒いラインに沿ってロボットが走る一般的なトレース競技だが、事前のコースと比べ、本番のコースは大きく変更になっていた【写真4】。また障害物競技は、フィールド内に小石、ブリッジ、停止したクルマのようなオブジェ、トンネル、草地があり、これらの障害物をすり抜けて、最後に用意された風船を割れば、さらにボーナスポイントが与えられるというもの【写真5】。

 競技としては、午後の障害物コースのほうが難易度は高いだろう。斜面のある山をクリアするために、ホイールベースの大きさを変えたりするなど、機構部の安定性を工夫する必要がある。

 センサもひと工夫が必要だ。芝生の部分は緑色平面のため、センサの受光感度が悪くなる。芝生のエリアを抜け出る際に方向を見失わないように、センサの取り付け位置や間隔に注意しなければならない。また、停止したクルマのようなオブジェをタッチセンサなどを利用してうまく回避できるかということも重要だ。

 このような障害をすり抜け、最後にひかえた風船割りでフィニッシュとなる。日本に限らず、ほとんどのロボットには、風船を割るために先端には針が付いていた。こちらの競技も世界大会ということもあって、クリアするチームが多く、パンパンと勢いよく風船が割れる音が会場に鳴り響いていた【動画1】。

 日本から出場した小学生部門のチームは以下の2チームだ。


【写真4】小学生部門、午前中に実施されたライントレース競技のコース。それぞれのラインはパネルになっているので、コースの組み換えは自在 【写真5】小学生部門、午後に行なわれた障害物競技のコース。フィールド内に小石、ブリッジ、停止したクルマのようなオブジェ、トンネル、草地があり、最後に用意された風船を割ってフィニッシュ 【動画1】午後の障害物競技の模様。世界大会とあって、やはりレベルも高い。競技を完全にクリアするチームも多かった。パンパンと風船が割れる音が勢いよく鳴り響くシーンもたびたび

「サンダーバード53号」(富山県 うかさロボット教室)

 このチームは、富山県ITセンター情報工房施設で開催されたロボット講習会に参加したことが契機になり、国内の予選会で勝ち進み、WRO2007まで駒を進めた。うかさロボット教室は、昨年も中国の南寧で開催された世界大会に出場している。

 小学生部門だけではなく、すべての部門で共通することだが、試合の際にはすでに組みあがったロボットを使用するのではなく、まずバラバラにしたレゴの組み立てから始まる。ここで一歩つまづくと、そのあとの競技に影響が出てしまうことになる。制限時間60分以内に、いかに手際よくロボットを組み立てられるかということが第一のポイントだ【写真6】。当然ながらチームワークが求められるため、事前に組み立ての練習をしたりするチームもあるという。そして、ほとんどのチームがロボットのハードウェアの組み立てと、プログラミングを担当別に分けていたようだった。

 実際の競技では、サンダーバード53号の試合運びは小学生ながら冷静沈着だった。実際に心中はそうではなかったのかもしれないが、遠めに見て落ち着いて淡々と試合に臨んでいる感じがした【写真7】。ライントレースもスムーズに完走し、タイムもよかった【写真8】【動画2】。


【写真6】まずは1時間以内にロボットを組み立てるところから競技がスタートする。すばやく組み立てが行なえるように、事前に練習してきたチームも多かった。写真は日本チームのサンダーバード53号 【写真7】サンダーバード53号、ライントレース競技開始。小学生ながら、冷静沈着に試合を運んでいるように見えた

【写真8】サンダーバード53号、走行中の模様。かなりよいタイムをはじき出していた 【動画2】サンダーバード53号の試合運び。十字のラインも判断して最短でゴールに向かう

「われもの注意」(千葉県)

 われもの注意(FRAGILE)は、千葉県の塾「じゅく科学教育研究所」からの代表チーム。前大会の出場経験を生かして、ロボットを組み立てる際には、手順ごとにパーツを袋に入れて作業をしやすくする工夫も見られた【写真9】。こちらのロボットは、レゴRCXではなく、最新のNXTを利用しての出走だ。NXTのほうが性能がよく、いろいろなことができるので有利なようにも思えるのだが、実際の大会では半分ぐらいが、まだRCXを使っていた。モータの速度の関係や、使い慣れたものがよいという判断があるのかもしれない。ライントレース競技での走りもよかった。こちらも難なく完走した【写真10】【動画3】。一方、午後に行なわれた後半戦の障害物競技では、クルマのようなオブジェにひっかって、車体の方向が逆転してコントロールが利かなくなってしまうという一幕もあった【写真11】。


【写真9】千葉県の塾「じゅく科学教育研究所」からの代表チーム「われもの注意」(FRAGILE)。手順ごとにパーツを袋に入れて手際よく作業していた 【写真10】「われもの注意」はNXTを利用してロボットを組み立てていた。実際の大会では半分ぐらいが、NXTを使っていたが、RCXの人気もまだ根強いようだ

【動画3】われもの注意のライントレース競技の走行。走りもよく、難なく完走を果たした 【写真11】午後に実施された、われもの注意の障害物競技。オブジェにひっかって、車体の方向が逆転してしまうという一幕も

中学生部門

 中学生部門では、午前中に障害物、午後には坂道の競技が行なわれた。障害物競技は小学生部門と同じものだが、出場するロボットは車輪走行ではなく、歩行ロボットにしなければならないため、そのぶんロボットづくりでも、あるいは制御面でも難易度が高くなっている【写真12】。

 車輪走行の場合は、左右の車輪の回転を均等に制御すれば直進してくれるのでプログラムも比較的簡単だ。だが、脚型になると直進も方向転換も一段と難しくなる。大抵のロボットは安定を考慮し、6本脚になっているものが多かったが、どのチームも機構部のみならず、ロボットを巧みに動かせるようなプログラム作りに苦労していたようだ。

 一方、坂道競技は、ゴールまでに折り返し地点が2つあり、そこでスイッチバックして方向を転換していかなければならない【写真13】。うまくスイッチバックできるかが、この勝負の分かれ目だ。また、実際の競技では坂道での傾斜によって、センサに光が回り込んでしまうことがあり、その場の環境に合わせた調整も大切なポイントになるようだ。以下、日本の中学生チームの活躍を見ていこう。


【写真12】午前中に行なわれた中学生部門の障害物競技のコース。障害物は小学生部門と変わらないが、ロボットを歩行型にするというルールが難易度を高めている 【写真13】午後に実施された中学生部門の坂道競技のコース。ゴールまでに折り返し地点が2つあり、そこでスイッチバックして方向を転換する

「東山Robo1」(東山中学校)

 東山Robo1は、国内大会で優勝したチーム。前半戦の障害物コースでは、RCXを利用して、クランク機構の6本足ロボットを組み上げて参戦【写真14】。ロボットの構造はシンプルで、どちらかというと歩幅が小さく、小刻みで足早にすばやく動く印象だった【写真15】。一方、後半戦の坂道競技で出場したロボットは車輪型。坂道をすばやく移動するため、ほとんどのチームがこのタイプだった。缶を運ぶ際には前方から缶を囲むようにして牽引する機構を採用していた【写真16】。


【写真14】国内大会で優勝した強豪、東山Robo1の組み立て準備の模様。大会アナウンスも英語で行なわれるため、語学(英語)の勉強もしておかなければならない 【写真15】東山Robo1が製作したクランク機構の6本足ロボット。ロボットの構造はシンプル。歩幅が小さく、小刻みで足早にすばやく動く。小回りも利きそうだ 【写真16】東山Robo1が後半戦の坂道競技用につくった車輪型ロボット。缶を運ぶ際には前方から缶を囲むようにして牽引する機構

「たけんちゃん」(横浜市立東山田中学校/横浜市立奈良中学校)

 たけんちゃんも、国内大会で準優勝した強豪チームだ【写真17】。ロボットの名前は、チーム二人の名前(竹平悠作さん、住吉賢太さん)をあわせ命名したものだという。こちらは、国内大会ではRCXを利用していたが、世界大会では前半・後半戦ともにNXTを利用し、ロボットを組んでいた【写真18】【写真19】。


【写真17】国内大会で準優勝した、たけんちゃんチームのロボット製作の模様。真剣な様子が写真からもよく伝わってくる 【写真18】たけんちゃんチームの障害物競技用ロボット。こちらもNXTを利用した6脚タイプだった 【写真19】たけんちゃんチームの坂道競技用ロボット。NXTを利用した車輪タイプで坂道を一気に駆け上る

「E-ROBOT」(横浜市立小山台中学校)

 小山台中学校のE-ROBOTチームは、中学生の技術・家庭の授業の一環としてロボットづくりに励み、世界大会まで進出したチーム。国内の決勝大会では3位だった。コーチの先生もいうとおり、自由に伸び伸びと大会を楽しんでいる姿がとても印象的だった【写真20】。

 障害物競技では、RCXを利用した6脚リンク機構のロボットを製作していた【写真21】。実際の競技では、小石エリアを抜け、クルマのオブジェの回避のところで引っかかるシーンもあった【写真22】【写真23】【動画4】。この場所はタッチセンサや超音波センサで回避することになるが、同チームに限らず、他の外国チームでも一番の難所だったようだ。


【写真20】小山台中学校のE-ROBOTチーム。中学生の技術・家庭の授業の一環としてロボットづくりに励んできた。伸び伸びと大会を楽しんでいた 【写真21】E-ROBOTチームの障害物競技用ロボット。こちらはコントローラにRCXを利用した6脚リンク機構だ 【写真22】E-ROBOTチームの障害物競技の模様。いざ、出陣。ロボットの行方を見守る。動きはよかった

【写真23】小石エリアを難なくすり抜けていくE-ROBOTチームのロボット 【動画4】クルマのオブジェの回避のところで引っかってしまい残念。この競技では、この場所が他の外国チームでも一番の難所だったようだ

「奈良教育大学附属中学校」(奈良教育大学附属中学校)

 奈良教育大学附属中学校は、3人のメンバーで出場。同校は、他のロボット世界大会でも常に上位に入ってくるチームだ【写真24】。本大会のライントレースでは、RCXを利用した6脚ロボットを組み、通常どおりスイッチバックもうまくいった【写真25】【写真26】。ただ、折り返した坂道の途中で、ラインから外れてしまう場面もあって惜しかった【動画5】。やはり路面の光の反射状況が影響したものと思われる。


【写真24】奈良教育大学附属中学校のメンバー。同校は、ロボット教育で優れた成果を出していることで有名 【写真25】奈良教育大学附属中学校の障害物競技用の6脚ロボット。こちらもコントローラはRCXを利用していた

【動画5】奈良教育大学附属中学校の坂道競技の模様。祈るような気持ちで出走するも…… 【写真26】イントレースでは、通常どおりスイッチバックして、うまくいったのだが、その直後にラインから外れてしまった。握り締めるこぶしが熱く、こちらも思わず力が入る

高校生部門

 高校生部門では、午前中に坂道競技、午後にはロボットソーティング競技が行なわれた。坂道コースは中学生部門と同じもの。だが、ゴールエリアは頂上ではなく、ロボットが頂上にある缶を取ってきて、再びスタート地点まで戻るルールになっている【写真27】。また、新しいソーティング競技は、異なるアイテム(レッドスタッドル、タイヤ、ピラミッド)を、ロボットによって指定のゴールエリアに振り分けていく競技。この競技が本大会の中で最も難易度が高そうに感じた【写真28】。

 実際に、自律的にアイテムがどのようなものであるか判断して、ロボットでそれを動かすのは大変だ。CCDカメラでパターン認識してアイテムを判別することはルールの規定からは不可能だ。そこで、アイテムによって異なる大きさを判断の材料としているものもあった。たとえば、ハンドなどでアイテムを把持するときの機構部の開度によってどのような種類のアイテムかを判断し、指定エリアに運んでいくという方法だ。

 これ以外にも、台湾チームのようにロボットに搭載されたスイッチを押すことで、内部プログラムのルーチンに飛んで、ロボットが走行する方向をシーケンシャルに設定できるものもあった【写真29】。1回ずつスタートラインに戻って、アイテムを狙い撃ちしてから、ゴールエリアにアイテムを集めて行くという作戦だ【動画6】。


【写真27】高校生部門では、午前中に坂道競技があった。中学生コースと異なる点は、頂上に缶があって、それを把持してスタート地点まで戻ること 【写真28】本大会で新しく取り入れられた午後のソーティング競技。本大会で最も難易度が高そうだった。ウェアハウス内にあるレッドスタッドル、タイヤ、ピラミッドのアイテムを、ロボットによってゴールエリアに振り分けていく

【写真29】台湾チームのソーティング用ロボット。「RS30」(写真上)と「RED SUN」(写真下)。ロボットに搭載されたスイッチを押すことで、内部プログラムのルーチンに飛び、ロボットが走行する方向をシーケンシャルに設定できる 【動画6】1回ずつスタートラインに戻って、アイテムを狙い撃ちしてゴールエリアにアイテムを集めて行くという作戦

「生産システム研究部」(栃木県立宇都宮工業高等学校)

 大会会場では時間によって会場の明るさが変化する。午前中と午後の競技では、やはりセンサの調整も異なるようだった。宇都宮工業高校の生産システム研究部チームでは、準備段階で事前にコースのどの位置で、どのくらいセンサの感度が変化するのか、調整シートを作って念入りに細かく書き込んでいた【写真30】。

 同チームは国内の決勝大会では優勝を果たしており、磯子工業高校と双璧をなす強豪チームだ。世界大会での活躍が期待された。午前中の競技では、RCXを利用しロボットを製作。缶を把持する機構がモータを使うものではなく、ゴムの力を利用したシンプルな機構である点が特徴的だった【写真31】。

 一方、午後のソーティング競技では、NXTを用いてロボットを製作【写真32】。レッドスタッドやピラミッドのアイテムをゴールにうまく運んで得点をゲットした【写真33】【動画7】。


【写真30】宇都宮工業高校の生産システム研究部チーム。磯子工業高校と双璧をなす強豪チームだ。午前中の組み立ての模様。2回目の競技前の準備時間には、入念にセンサの感度をチェック 【写真31】生産システム研究部チームが製作した坂道競技用のロボット。RCXを利用して製作。缶を把持する機構では、ゴムの力を使うアイデアが光る 【写真32】生産システム研究部チームは、ソーティング競技ではNXTを用いてロボットを製作

【写真33】生産システム研究部チームのソーティング競技の模様。床に近い位置に配置したハンドで囲いながらアイテムを押し出していく 【動画7】レッドスタッドやピラミッドのアイテムをハンドで囲いながらゴールに運んで得点をゲット!

「X(イクス)磯工」(神奈川県立磯子工業高等学校)

 国内の決勝戦で準優勝したX(イクス)磯工チームも、周囲環境によるセンサ感度の変化について事前に徹底的な対策を施していた。センサ部にカバーを付けて外乱ノイズとなる要因をシャットアウトしていた【写真35】。同チームは、午前中の坂道競技の段階で2位という好タイムをはじき出して完走【写真36】。この時点で上位入賞の期待は大きく高まった。

 そして午後のソーティング競技では、ロボットのウィング部を大きく広げることによって、アイテムを1つずつ移動せず、すべてのアイテムを一気にゴールエリアに運ぶという大胆な作戦を敢行。アイテムをソーティングするという観点からは外れるようにも思えるが、逆にいえば目からウロコの「コロンブスの卵」的な発想でもある。

 スタート時にはロボットのウィングはXの形でたたまれているが、アイテムが置かれているウェアハウスのエリアまで来るとウィングが一挙に広がり、アイテムを押しながらゴールへと突き進んでいく【写真37】【写真38】【写真39】。これによってタイム得点も同時に稼げるという狙いがあったという。とはいえ、大会直前のルール変更によって、タイム得点が加算されないという話も出て、実際にはタイムによる恩恵は受けられなかったようだ。


【写真35】X(イクス)磯工チームが製作した坂道競技用ロボット。過去の経験から、センサ部にカバーを付けて外乱ノイズとなる要因をシャットアウトしたという 【写真36】X(イクス)磯工チームの坂道競技の模様。午前中の競技では2位という情報が舞い込んだ。入賞の期待が高まる 【写真37】磯工チーム、午後のソーティング競技の模様。スタート時にはウィングがXの形で折たたまれているが……

【写真38】ロボットがアイテムの置かれているウェアハウスエリアまで来るとウィングが大きく広がりビックリ 【写真39】さらに一気にすべてのアイテムを押しながら、ゴールエリアに突入する。すごく大胆な作戦に唖然とする

「AΩ」(向の岡工業高校)

 向の岡工業高校は、国内の決勝大会でデザイン賞を獲ったチーム【写真40】。坂道の頂上にある缶をピッキングする機構が他チームとは異なっており、とても斬新だった【写真41】【写真42】。前方に突き出した2つの回転ホイールによって缶をホールディングする仕組みで技術的にとても優れていた。しかし、本戦では本来の実力を出し切れなかったようで残念だった。午後のソーティング競技では、エリア内にレッドスタッドやタイヤなどのアイテムを運んで得点をゲットした【写真43】【写真44】【動画8】。


【写真40】向の岡工業高校、AΩチームのロボット組み立ての模様。同チームは国内の決勝大会でデザイン賞を獲った実力派 【写真41】缶をピッキングする機構が斬新。前方に突き出した2つの回転ホイールによって缶をホールディングする。コントローラはNXTを利用 【写真42】AΩチーム、午前中の坂道競技模様。折り返し地点までたどり着き、スイッチバックに入る前のひとコマ

【写真43】AΩチーム、午後のソーティング競技の模様。スタートラインから慎重にスイッチをオンにして、いざ出動! 【写真44】AΩチームが製作したソーティング競技用ロボット。こちらもNXTを利用してた。駆動系はクローラなので安定性がある 【動画8】エリア内にレッドスタッドやタイヤなどのアイテムを運んで得点をゲットするも、本来の実力を出し切れなかったようで残念。次回に期待!

「福井高専ロボット同好会」(福井工業高等専門学校)

 正攻法で実直に攻めていたのは福井高専ロボット同好会の3人【写真45】。国内の決勝大会では第3位に入賞した実力派チームだ。午前の坂道競技用のロボットは、缶をビックアップする際に横方向と上方向から囲む形の機構になっていた【写真46】。

 出走直前には、審判からロボットの動作が大会のルール規定から外れるという話も出て当惑したが、最終的に問題なく出走することができて、我々もホッとした。午後の競技では、日本らしく「風林火山」を旗印にしたロボットをくみ上げて出走した【写真47】【写真48】。前方にあるハンドでアイテムを把持して、確実にゴールエリアにアイテムを運んでいた【動画9】。同チームのロボットはハンド部の開度によってアイテムを認識していたという。


【写真45】福井工業高等専門学校のロボット同好会の皆さん。午前中のロボット製作の模様 【写真46】福井高専、午前の坂道競技の模様。缶をビックアップする際に、横方向と上方向から囲む形の機構を採用 【写真47】福井高専、午後のソーティング競技の模様。正攻法で実直に攻めていて、とても好感が持てた

【写真48】「風林火山」を旗印にした福井高専のソーティング競技用ロボット。ハンド部の開度によってアイテムを認識していたという 【動画9】福井高専、ソーティング競技の模様。前方にあるハンドでアイテムを把持して、確実にゴールエリアにアイテムを運ぶ

4年越しの願いがかなう! 日本、ついにゴールドメダルを手中に

 本戦の翌日となる18日には、試合結果の表彰とクロージングセレモニーが催された。さすがに国際大会とあって、世界各国から多くの来賓も招かれ、派手なイベントも催された【写真49】【写真50】。

 今回、台湾での開催ということもあり、レギュラーカテゴリーの小学生部門と中学生部門で、1位から3位までを台湾勢が独占するという勢いだったが、高校部門で神奈川県立磯子工業高等学校のX(イクス)磯工チームが、日本初となる優勝の栄冠に輝いた。チームメンバーの安田敬太さん、鈴木聡さん、高山壮真さんや関係者らスタッフは、この快挙に日の丸を掲げて、満面の笑みで応援の観衆に応えていた【写真51】【写真52】。


【写真49】表彰式典の前には、お国柄を象徴するような各国の伝統的なイベントも催され楽しかった 【写真50】閉会のセレモニーでの挨拶。写真はWROチェアーマンを務めた金井徳兼氏(神奈川工科大学)

【写真51】レギュラーカテゴリーの高校部門で見事に優勝を果たした神奈川県立磯子工業高等学校のX(イクス)磯工チームの皆さん。やったね! コングラチュレーション 【写真52】磯工の優勝に日本の関係者やスタッフも大喜び。本当に喜びアフレル、小林靖英氏(代表取締役社長・WRO Japan実行委員)と金井氏、がっちりと固い握手

 このほかにも、3位入賞は逃したものの、栃木県立宇都宮工業高等学校の生産システム研究部や福井高専ロボット同好会など、4位から7位ぐらいまでに与えられる優秀賞に選ばれたチームも多数あった【写真53】。優秀賞を獲得したチームは、小学生部門ではサンダーバード53号、中学生部門では横浜市立東山田中学校・横浜市立奈良中学校、奈良教育大学附属中学校、東山中学校。大会を総じてほとんどの国内チームが善戦した結果となった。

 また、大学生部門の展示部門でも、日本から唯一の参加となった神奈川工科大学の安西・内田ペア(吉野和芳コーチ)が、階段をゆっくりと歩行していく相撲力士のようなロボットを製作し、ゴールデンアワードを受賞した【写真54】【写真55】【写真56】。

 来年はご当地、日本(横浜)において、WRO国際大会が開催されることが決定決している。さらに多くのチームからの参戦も予定されているが、いよいよ国内での開催となるだけに、今回の日本チームの優勝を機に、他チームの戦いにも大きな弾みがつきそうだ。


【写真53】入賞を果たした栃木県立宇都宮工業高等学校の生産システム研究部の皆さん 【写真54】大学生の部門展示において、ゴールデンアワードを手にした神奈川工科大学の安西・内田ペア

【写真55】ドスコイ、ドスコイと階段を上っていく神奈川工科大学のロボット。そのヒョウキンな姿が海外の方々から人気を博した様子 【写真56】神奈川工科大学が受賞したゴールデンアワードとフレンドシップ賞。ブラボーです

URL
  WRO2007
  http://www.wroj.org/2007/

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( 井上猛雄 )
2007/12/10 19:32

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