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「第19回全日本ロボット相撲中国大会」レポート ~個性的なロボットが上位に進出。計21台が全国大会出場権を獲得
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10月14日(日)に、広島県立広島工業高等学校において、第19回全日本ロボット相撲中国大会が開催された。
全日本ロボット相撲大会は、富士ソフト株式会社が1990年に第1回大会を開催、第5回大会より文部科学省の後援と全国工業高等学校長協会の共催を得て、今大会で19年目を迎えた。
参加出場部門は、開催地方の高校生のみに出場が限定される「高校の部」と、誰でも参加できる「全日本の部」に分かれている。それぞれの部門が、ロボットにコンピュータを搭載して戦う「自立型」と、ラジコン操縦で戦う「ラジコン型」に分かれてトーナメント戦を行なう。
毎年9月、10月の2カ月間に渡り、全国を9ブロックに分けて地方大会を実施する。各地区大会を勝ち抜き、全国大会に進めるのは高校生の部64台、全日本の部128台だ。
本年度は、トータルで1,595台のエントリーがあり、中国大会には、高校の部に自立型11台、ラジコン型28台、全日本の部は、自立型51台、ラジコン型60台の計150台が出場した。
開会式で、社団法人社全国工業高等学校長協会中国地区代表理事でもある山口県立宇部工業高等学校長の吉川直紀氏が「毎年、進化を続けるロボットが出場していることに驚いている。勝敗だけではなく、ロボット相撲を通じて仲間作りを楽しんでほしい」と参加者に挨拶した。
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150名の選手が全国大会出場権を目指して戦った
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(社)全国工業高等学校長協会中国地区代表理事 吉川直紀氏(山口県立宇部工業高等学校長)
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● ロボット相撲とは
前述の通り、ロボット相撲には、ロボット内部にコンピュータを搭載してプログラムで自立で相撲を取る「自立型ロボット」と、操作員がプロポでロボットを操縦する「ラジコン型ロボット」の2種類がある。自立型とラジコン型はそれぞれ分かれてトーナメント戦を行なう。
ロボットの規格は、試合開始時の幅と奥行きが20cm以内、重量は3kgと規定されているが、高さには制限がない。そのため試合開始後にアーム等を倒す変形ロボットもある。
ロボットが相撲をとる土俵は、直径154cmの鉄板だ。試合は3分間3本勝負で、一方のロボットが土俵から落ちた時に勝負がつく。時間内に2本先取した方が勝者となる。
中国大会には、アームなどギミックに凝ったロボットが多かった。
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【動画】低速タイプのアーム型ロボットは、パワーで相手を土俵から押し出す。鉄人ツトム(三嶋工房)シャトルギア(大阪電気通信大学)
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アームには、2つのパターンがある。1つ目は、低速パワー型ロボットにアームをつける場合で、ロボット本体だけではなく、アームにも強度があり囲い込んだ相手ロボットを押し出すタイプだ。
例えば、シャトルギア(大阪電気通信大学)が、このタイプだ。シャトルギアは、アームの間に張ったワイヤーで、相手のロボットを押しだす戦法を取っている。
このアームタイプにもう一工夫したのが、福岡工業大学附属城東高等学校のロボット「魔女の鼻」や「魔法の剣」達だ。このロボット達は、アームの間に網を張っていた。網で相手のロボットを絡みとるのかと思ったら、そうではなく網と網の中にあるワイヤーで相手をひっかけて押し出していた。
アーム型のもうひとつのパターンは、アームの先に白い旗などをつけているスピード型ロボットだ。こちらは、アームには相手ロボットを押すだけのパワーはない。自立型の場合はセンサーで相手ロボットを探し、ぶつかりあって勝負をつけるが、正面からぶつかるよりは、相手のサイドや背後に回り込んだ方が勝負は有利になる。そこで、ロボット本体を黒くしてセンサーに見つかりにくくし、アームに白い旗をつけることで、ロボット本体ではなく相手ロボットを旗におびき寄せる。自分のロボットが相手のサイドに回り込むのではなく、相手にそっぽを向かせておいてすかさずそのサイドを突くという戦法だ。
アームの両端に白い羽をつけるロボットが多いが、KADAM5(福岡工業大学)は、ロボットに白い提灯のようなものを搭載しているのがユニークだった。
ラジコン型の場合は、人間が判断して操縦しているため、「センサーを惑わすためのアーム」という考え方はない。だが、ロボットがアームを広げると、必然的に相手ロボットの可動領域は狭くなる。狭い土俵の中でアームを避けつつ高速で移動して相手のサイドや背後を取るのは、難しいのだろう。ラジコン型のアームは自立型ロボットとは違う効力があるように見えた。
前述の福岡工業大学附属城東高等学校の網アーム搭載ロボットは、自立型、ラジコン型の両方に存在した。自立型ではアームの剛性が足りずに勝つのが難しかったようだが、ラジコン型では上位に食い込んでいる。
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【動画】白い筒を振り回して相手ロボットを翻弄するKADAM5。W'RUN(香川県立三豊工業高等学校)VS KADAM5(福岡工業大学)
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魔法の剣R2。自立型にもラジコン型にも、このタイプのロボットが福岡工業大学附属城東高等学校から参加していた
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【動画】網をつけたロボットは初登場ではないだろうか? 魔法の剣R2(福岡工業大学附属城東高等学校)VS 南風(MTY-OB's-)
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上位の取り組みを動画で紹介しよう。
● 高校自立型
高校自立型の3位決定戦は、修道館2号(島根県立松江工業高等学校)VS AS(山口県立宇部工業高等学校)。
1本目、修道館2号が勢いよく飛び出したが、なぜかASの前で反転し土俵際に向かって走り始めてしまった。すぐに向きを変え、ASに正対したがパワー負けして押し出された。2本目は修道館2号がASの斜め前方からきれに入りASを一気に土俵外へ押し出した。
続く3本目。ASは2本目と戦略を変更し、仕切り線から遠く斜めにロボットを置いて取り組みに挑んだ。2本目と同じ軌跡で突進してきた修道館2号をASが正面から捉えて力で押し出し勝利を決めた。
決勝は、熱シー'07(山口県立宇部工業高等学校)VS 修道館1号(島根県立松江工業高等学校)の対戦。1本目はスピードが速い修道館1号が、低速型の熱シー'07の左に回り込み一気に土俵からはじきとばした。だが、2本目は正面からぶつかりあいになり、熱シー'07がパワーで修道館1号を押しだした。1対1で迎えた3本目は、修道館1号が左斜め前から一気に攻め込み優勝を決めた。
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【動画】3位決定戦、修道館2号(島根県立松江工業高等学校)VS AS(山口県立宇部工業高等学校)。1本目と2本目の取り組み。この後、3本目をASが決めた
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【動画】決勝戦、熱シー'07(山口県立宇部工業高等学校)VS 修道館1号(島根県立松江工業高等学校)。スピードに勝る修道館1号が優勝した
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● 高校ラジコン型
高校生の部ラジコン型は、上位にアーム型ロボットが残った。
3位決定戦の黒龍刃(山口県立岩国工業高等学校)VS 不撓XVI号(島根県立江津高等学校)は、1本目は不撓XVI号が取り、2本目を黒龍刃が素早い動きで一気に攻め込み取り返した。
最後、3本目は、不撓XVI号がアームをおろすよりも速く黒龍刃が飛び出し、不撓XVI号をサイドから押し込み土俵際に追い詰めたのだが、勢い余って体勢が入れ替わってしまった。黒龍刃はぎりぎり土俵際に踏みとどまり、不撓XVI号のアームを避けて土俵中央に出ようとしたが、操縦ミスで土俵から落ちしまった。
決勝戦は、アーム型の修道館翔(島根県立松江工業高等学校)VS アパシー(山口県立宇部工業高等学校)。修道館翔もアパシーもラジコン型には珍しい低速パワー型ロボットだった。
1本目の取り組みで、修道館翔がアパシーをじりじりと土俵際まで追い込んだのだが、押し出すことができずに主審の「待て」がかかり、仕切り直しとなった。仕切り直しは、逆にアパシーが修道館翔を押し込んだが、これも膠着状態という力比べの相撲となった。
4回目の仕切り直しでは、アパシーが動くことができなくなり「戦意なし」を取られてしまった。結局、両者はがっぶり組んだままどちらも土俵を割ることはなかったが、判定で修道館翔の優勝が決定した。ラジコン型ではこうした展開は珍しいが、力の入った決勝戦だった。
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【動画】3位決定戦の黒龍刃(山口県立岩国工業高等学校)VS 不撓XVI号(島根県立江津高等学校)
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【動画】決勝戦の修道館翔(島根県立松江工業高等学校)VS アパシー(山口県立宇部工業高等学校)。力比べの末、アパシーはバッテリーに負荷がかかり不動になってしまった
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● 全日本自立型
全日本自立型3位決定戦に駒を進めたのは、Linus(阿南工業高等学校メカトロ部)とアーム型の酒豪旅心(大阪電気通信大学)だ。
酒豪旅心は、本戦にも毎年のように出場している強豪ロボットだ。アーム搭載の低速パワー型で力で相手をねじ伏せる相撲で勝ち進んできた。今大会では、筆者が見ただけで酒豪旅心と戦ったロボットのうち1台が過負荷で煙を出し、2台のロボットが力負けして不動となった。3位決定戦も、酒豪旅心とLinusが土俵真ん中で力比べの膠着状態となり、何度も主審から「待て」の声が掛かり仕切り直しとなった。
自立型では、試合開始時にロボットを置く位置は、仕切り線より後であれば操作員が自由に決めることができるが、均衡した状態で勝負がつかない場合は、主審が両者に位置と方向を指定する。
この時は、主審から土俵際ぎりぎりで互いに背を向けた方向において立ちあうように指示があった。低速型の酒豪旅心にはきわめて不利なポジションだったが、ここまでの取り組みでパワーを使い果たしたLinusには、方向を変えるだけの余力しか残されておらず戦意なしと判断され、酒豪旅心の勝利となった。
決勝戦は、三豊工将軍(香川県立三豊工業高等学校)VS 虎穴(大分県立国東農工高等学校)。1本目は白羽をつけたアームを広げて虎穴が突進し、三豊工将軍を一直線に場外へ押し出した。続く2本目は、虎穴がアームを降ろすより一瞬速く三豊工将軍がサイドに回り込み、虎穴を弾き飛ばして1対1にした。
優勝を決める最後の1本は、土俵の中で両ロボットが走り回り互いをセンサーで認識して、正面からぶつかり合った。三豊工将軍のブレードが虎穴の下に入り、土俵の上で虎穴を半回転させたまま土俵外へ押し出した。まさにロボット相撲の醍醐味といった取り組みで、三豊工将軍が優勝を決めた。
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【動画】3位決定戦、Linus(阿南工業高等学校メカトロ部)VS アーム型の酒豪旅心(大阪電気通信大学)。土俵中央で膠着状態となり、何度も取り組みをやりなおした。判定で酒豪旅心が3位に入賞した
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【動画】決勝戦、三豊工将軍(香川県立三豊工業高等学校)VS 虎穴(大分県立国東農工高等学校)。3本目は決勝戦にふさわしい見応えのある取り組みだった
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● 全日本ラジコン型
全日本ラジコン型の3位決定戦は、香川県立三豊工業高等学校同士のX-LINE VS バルキリーの対戦となった。
日頃から学校で練習戦をしているのだろう。両者が土俵上で攻守を切り替えながら、素早い攻防が展開された。最後、バルキリーが操縦ミスから場外に落ちてしまったが、ラジコン型らしい面白い取り組みだった。
決勝戦は、南風(MTY-OB's-)VS 2位:魔女の鼻R2(バルビゾンファミリー)。南風が、素早く2本取って優勝を決めた。
南風を制作した小山秋信さんは、昨年は四国で全国出場権を獲得したため中国大会には出場していないが、第16回、17回大会も中国大会で優勝している。
今年の「南風」はバッテリを変更し、昨年度に比べてスピードが1.5~2倍も速くなっているという。優勝コメントを求めると、小山さんは、「高校時代にロボットの操縦を猛練習しました。今年は全国大会でベスト8を目指したい」と全国大会に向けて豊富を語った。
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【動画】3位決定戦、X-LINE VS バルキリー。香川県立三豊工業高等学校の対決となった
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【動画】決勝戦、南風(MTY-OB's-)VS 2位:魔女の鼻R2(バルビゾンファミリー)。南風が中国大会で3度目の優勝を決めた
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● 全国大会の出場権
中国大会で全国大会出場権を得たのは、高校の部から自立型、ラジコン型がそれぞれ3台、全日本の部は自立型7台、ラジコン型8台だった。今大会で出場権を得たのは、次の方々である。
【高校の部】
・自立型
優勝:修道館1号(島根県立松江工業高等学校)
2位:熱シー'07(山口県立宇部工業高等学校)
3位:AS(山口県立宇部工業高等学校)
・ラジコン型
優勝:修道館翔(島根県立松江工業高等学校)
2位:アパシー(山口県立宇部工業高等学校)
3位:不撓XVI号(島根県立江津高等学校)
【全日本の部】
・自立型
優勝:三豊工将軍(香川県立三豊工業高等学校)
2位:虎穴(大分県立国東農工高等学校)
3位:酒豪旅心(大阪電気通信大学)
4位:Linus(阿南工業高等学校メカトロ部)
5位:シャトルギア(大阪電気通信大学)
6位:ヨーゼフ(山口県立宇部工業高等学校)
7位:大電通OS1(大阪電気通信大学)
・ラジコン型
優勝:南風(MTY-OB's-)
2位:魔女の鼻R2(バルビゾンファミリー)
3位:バルキリー(香川県立三豊工業高等学校)
4位:X-LINE(香川県立三豊工業高等学校)
5位:漆黒(愛媛県立今治工業高等学校)
6位:魔法の剣R8(福岡工業大学附属城東高等学校)
7位:石鎚2(愛媛県立東予高等学校機械部)
8位:魔法の剣R3(福岡工業大学附属城東高等学校)
第19回大会の地区大会は10月28日に開催される九州大会を残すのみとなった。最後の全国大会出場権を得るのは誰だろうか。
全国大会日程は以下の通り。
・高校生の部
11月23日(金・祝) 沖縄
・全日本の部
12月23日(土・祝) 東京 両国・国技館
■URL
全ロボット相撲大会
http://www.fsi.co.jp/sumo/
富士ソフト株式会社
http://www.fsi.co.jp/index2.html
社団法人 全国工業高等学校長協会
http://www.zenkoukyo.or.jp/
■ 関連記事
・ 第19回全日本ロボット相撲 近畿大会レポート ~全国大会を目指すロボット力士の熱い戦い!(2007/09/28)
( 三月兎 )
2007/10/19 02:31
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