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次世代ロボット共通プラットフォーム技術の現状は?
~「次世代ロボット連携群」講演会レポート


 9月17日、香川大学 幸町キャンパス(香川県高松市幸町)にて、計測自動制御学会「SICE Annual Conference 2007」のワークショップの一つとして「総合科学技術会議 科学技術連携施策群 次世代ロボット連携群」の講演会が開催された。


次世代ロボット連携群とは

東芝研究開発センター技監 松日楽信人氏。次世代ロボット連携群 副主監
 まず「次世代ロボット共通プラットフォーム技術」全般の概要、進捗状況、ロボット総合市場調査結果について、東芝研究開発センター技監で次世代ロボット連携群 副主監を務める松日楽信人氏から発表が行なわれた。

 今年で活動3年目を迎える「総合科学技術会議 科学技術連携施策群」は、主として政府各府省が推進している研究・開発の重複を防ぎつつ加速することを目的とした組織。ロボットのほか、ユビキタスネットワークや燃料電池、ナノバイオなど全体で14テーマが走っている。

 「次世代ロボット連携群」は「次世代ロボット共通プラットフォーム技術」の開発を中核にすえ、「環境情報構造化」と「ロボット用基盤ソフトウェア」、2つの観点でロボット開発を効率化すべく活動している。各府省でそれぞれの目的のロボットを開発するのがこれまでの進め方だったが、共通技術プラットフォームによって効率化していこう、そのための環境を整備しようというものだ。

 環境情報構造化とは一言でいえば、ロボットが動きやすいように環境側を整備しようというものである。環境のセンシングはどんなロボットでも必要だ。それを共通化させれば、たとえばロボットをポンと置くだけで位置そのほかの環境情報を取ることも可能になる。

 共通技術プラットフォームとは、ロボットの開発コストを引き下げることを目的とし、各種ソフトウェアをモジュール化・共通化しようというものである。

 これらの実行のために次世代ロボット連携群では以下の4つの課題が3年度かけて行なわれた。

1) ソフトウェアプラットフォーム:分散コンポーネント型ロボットシミュレータ
2) 環境プラットフォーム:ロボットタウンの実証的研究
3) 環境プラットフォーム:施設内外の人計測と環境情報の構造化
4) 環境プラットフォーム:環境と作業構造のユニバーサルデザイン

 現在、おのおの公開の準備を進めているところだという。またおのおの目的は違うが、それぞれカメラやタグなど共通デバイスが使われている。これらのプラットフォーム化も進めていく予定だという。

 また、同組織ではロボット産業総合統計作成のための市場調査も行なった。ロボット市場は無人搬送機や医療・健康関連機器や、システムインテグレーションなども取り込むと、これまで言われているよりも多く、現状でおおよそ1兆円を超えるという。


ロボットが動きやすい環境の整備を行なうのが「環境情報構造化」 これまでのロボット開発 共通プラットフォームを使ったロボット開発への移行を促す

ロボットタウン

 続けて「ロボットタウンの実証的研究」と題して九州大学システム情報科学研究院 知能システム学部門 知能処理システム教授の長谷川勉氏が発表を行なった。ロボットが工場で働けているのは、工場がロボットのために整備されているからだ。普通の家庭でも家の中をIT技術で環境情報化すれば、ロボットにとって動きやすい環境になる。それを町に広げたのがロボットタウンである。

 環境に埋め込まれた分散センサー、歩行者位置の検出のための分散ビジョンシステム、位置情報そのほかを統合化してロボットからの要求に応じて情報を送る「タウンマネジメントシステム(TMS)」などを開発対象としている。

 プロジェクトでは、九州・福岡のアインランドシティの1画にて実証実験を行なった。各システムのほか、3次元モデル情報を作る測量ロボット群、複数のカメラを1つの座標系でキャリブレーションできるシステムも開発している。現在、クリーニング店でロボットがお客さんから預かった服を探し出して渡すといった実験をタグ等も使って行なっているという。

 ロボットはタウンマネジメントシステム(TMS)にログインし、さまざまな情報を使う。ユーザーはTMSのコアの仕組みを知らなくてもアプリケーションが組めるという。ロボットタウンのAPIを活用することでロボットの感覚機能を時間的・空間的に拡張し、ロボットの用途をユーザーに応じて大きく広げられるという。


環境を知能化・情報化した「ロボットタウン」 ロボットタウンの研究要素 個別の移動ロボットとロボットタウンシステムの関係

TMSアクセス用API 福岡市アイランドシティで整備中 屋内外に分散ビジョンやタグシステムが敷設される

ATR 知能ロボティクス研究所 所長 萩田紀博氏
 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の萩田紀博氏は「施設内外の人計測と環境情報構造化の研究」と題して講演した。ロボットが人にサービスを提供するためには人の位置そのほかを計測する必要がある。人間の座標や時系列データだけではロボットサービスの構築は難しく、空間情報と行動の意味づけが必要だという。

 そのためにこのプロジェクトでは、環境情報を4階層に設定。「プリミティブ層」でたとえば「人が往来している場所」で「うろうろしている人」といった形で情報の意味づけを行なうこととした。実験場所は、けいはんなのNICTと、大阪のユニバーサルシティウォークを予定している。実験の公募運営はロボットラボラトリーで行なっている。


施設内外の人計測技術と環境情報構造化プラットフォーム 空間と行動情報の意味づけが重要だという

環境情報の4階層モデル ユニバーサルシティウォークで実験予定

産業技術総合研究所 知能システム研究部門 空間機能研究グループ 大場光太郎氏
 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 空間機能研究グループグループ長の大場光太郎氏は、「環境と作業構造のユニバーサルデザイン」と題して講演した。大場氏らは、環境と作業の共通点を探すことで、環境構造を「知識的」に一定にするときの決め方の検討を行なっているという。

 たとえば冷蔵庫は人間が使うためにデザインされている。当然のことながらそのままではロボットには使いづらい。だがもし知識的にこれを環境構造化できれば、ロボットになんらかの形で情報を提供できる冷蔵庫となる。あるいはこれを、たとえばロボット用の取っ手を作ったりして物理的に構造化すると、ロボットに使いやすい冷蔵庫になる。あるいは冷蔵庫そのものをロボット化するという手もある。どこまで構造化するかは、ユーザー次第だが、知識による環境構造化ならハードウェアの専用化を伴わないので一般ユーザーにも受け入れられやすい。

 制御ソフトウェアやセンサーからの情報はRTミドルウェアでコンポーネント化されている。必要なものだけを組み合わせて使いやすいようになっているという。作業構造なども共通点を探すことでそれぞれを構造化して、たとえばドア一つとっても、引き戸であれば引き戸、押すドアであれば押すドアであるということをドアに貼り付けたタグに書き込むことを検討しているという。具体的にはQRコードをビジュアルガイドとし、RTミドルウェアでコンポーネント化して使う方向も検討中だ。

 最終的には複数の構造化された環境で複数のロボットが複数の作業を行なえるようなものを想定しているという。実験場所は産総研と神奈川県の住宅展示場を提供できるという。また「ロボLDK」のようなイベントを通じて普及活動も行なっているという。


RTミドルウェアを使ったロボット群。タスクには共通点と違うところがある 環境構造、作業構造それぞれにおけるユニバーサルデザインが必要だという

環境構造と作業構造の具体的項目 RTミドルウェアによるソフトウェア提供イメージ図

産業技術総合研究所タスクインテリジェンス研究グループ グループ長 神徳徹雄氏
 最後に「分散コンポーネント型ロボットシミュレータ」と題して、産業技術総合研究所タスクインテリジェンス研究グループグループ長の神徳徹雄氏が「OpenHRP3」について講演を行った。

 産総研では現在、東京大学中村・山根研究室、ゼネラルロボティクス社らと共同で「OpenHRP2」と「RTミドルウェア」を組み合わせた汎用ロボットシミュレータ「OpenHRP3」を開発中だ。

 「OpenHRP」はこれまで150以上の研究機関に配布しているが、ヒューマノイド用だったそれを一般用として作り直した。マニピュレータ、各種移動ロボットなどの物理シミュレーションを行なうことができ、そのコードをそのまま使って実機を動かすこともできる。ロボットのモデルはVRML97のフォーマットに準拠しており、各種CADフォーマットから読み込める。

 「OpenHRP3」では動力学シミュレーションも、より高速になったという。衝突シミュレーションもより正確に行なえるようになった。シミュレータのなかには視野画像シミュレータも組み込まれており、計算機のなかでロボットの視野を作り出し、それを取り出して使うことができる。

 また「OpenHRP3」はCORBAを用いた分散オブジェクトシステムだが、CORBAの知識が必要不可欠だったOpenHRP2に比べ、RTミドルウェアでカプセル化して使うことで、ユーザーはCORBAを意識せずに使えるようになったという。

 そして、OpenHRP3はバイナリではなくオープンソースとして提供される予定で、そのぶんユーザー・コミュニティーからのフィードバックも期待しているという。10月から最初はプロジェクト参加者、不特定限定数ユーザーから提供し始め、平成20年度からは不特定多数のユーザーに使ってもらうことを想定しているとのことだ。

 また産総研知能システム研究部門では「ロボットビジネス推進協議会」主催で、RTミドルウェア普及を目指してコンポーネントを充実させるために「RTミドルウェアコンテスト」の公募を9月13日から開始している。11月10日(土)がプログラム及び資料登録の締め切りで、12月22日の「SI2007」会場にて結果が発表される予定だ。


OpenHRP3の構成 その一部、コントローラーの概念図 任意の数のCPUに対して最適なアルゴリズムを生成するなどして高速化

ロボットを歩行させたときのモーター特性のシミュレーション。モーターの動作が規定の値内におさまっていることを示す 視野画像シミュレーションも可能 OpenHRP3とOpenHRP2の比較

総合討論

 討論では「ロボットができて終わりではなく、今回のプロジェクトはインフラ。これからが本番。環境を運用していかなければならない。見通しがつくまで努力したい」と東芝・松日楽信人氏は語った。

 また単体のロボットだけではなく環境情報を使ってビジネスをやるべきだといった意見や、もっと省庁連携を進めると同時に、デフォルトでさまざまな共通プラットフォーム技術が使える場所を内閣府のほうで省庁を越えて作ってほしいといった意見も出た。


URL
  計測自動制御学会
  http://www.sice.or.jp/
  総合科学技術会議
  http://www8.cao.go.jp/cstp/
  RTミドルウェアコンテスト
  http://www.is.aist.go.jp/rt/RTMcontest/rtmcontest.html

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( 森山和道 )
2007/09/20 00:11

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