● 安川電機の産業用ロボット・MOTOMANの実物展示
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【写真1】TEPIA第19回展示「ちえものづくり展~社会を豊かにする最先端技術~」PART-IIIメイン展示のゾーンでは、産業用ロボットが紹介されていた
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4月11日~7月20日まで、東京・港区の機械産業記念館(TEPIA)において、TEPIA 第19回展示「ちえものづくり展~社会を豊かにする最先端技術~」のPART-III「未来を創る ちえものづくり」が開催されている。
この展示自体は、昨年9月から開始され、国内産業の伝統的な「ものづくり技術」と最先端技術などの融合によって進展をみせる製造業の現状や将来の展望について幅広く紹介。昨年開催されたPART-Iの「身近に探る ちえものづくり」、3月まで実施されていたPART-IIの「社会を支える ちえものづくり」に続き、PART-IIIでは「未来を創る ちえものづくり」をテーマに展示内容の一部が衣替えされている。
たとえばメイン展示では、「ものづくり」の現場で活躍する産業用ロボットの役割を示しながら、ロボットの品質と性能を支える「ちえものづくり」について解説がなされている【写真1】。安川電機の産業用ロボット「MOTOMAN-HP6」【写真2】の実物展示や、双腕型ロボットの「MOTOMAN HP6」【写真3】(パネル、ビデオ展示のみ)などが目玉だ。
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【写真2】安川電機の産業用ロボット「MOTOMAN-HP6」。可搬重量は6kg、繰り返し位置精度は±0.08mm。小物部品のハンドリングからアーク溶接まで、生産現場において幅広く活躍している産業用ロボットだ
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【写真3】双腕型ロボットの「MOTOMAN HP6」。残念ながら、こちらのロボットはパネルとビデオによる展示のみだった
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安川電機は1977年から、全電気式産業ロボットとして、MOTOMANを発売。このロボットは、自動車産業を中心に自動化が進む生産現場で導入され、日本の製造業を支えてきた。同社の産業用ロボットの累計出荷台数は世界一で、現在(2006年10月)15万台を超えているという。
展示されているMOTOMAN-HP6は、6軸構成の産業用ロボット。マニピュレータ部、制御コントローラ部、プログラミングペンダントで構成され、小物部品のハンドリングや、自動車製造ラインでの溶接・塗装などの作業に用いられている【写真4】。駆動系は、DCモータのようなブラシ機構を持たないACサーボモータが採用されており、高精度な位置制御、高応答の速度制御、安定したトルク制御が可能だ【写真5】。
このほか、メイン展示のゾーンでは、ACサーボモータやアクチュエータなどの単品も展示されていた【写真6】【写真7】。一般的に、ロボットのアクチュエータは、モータ本体に加え、ギアや電磁ブレーキ、エンコーダなどが取り付けられるため、外寸が長く、重量も大きくなってしまう。そこで、同社ではロボットのスリム化を図るために、従来と同一性能を保ちながら、容積・重量を約3分の1にした扁平型アクチュエータを開発している。
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【写真4】MOTOMAN-HP6には6つの関節がある。写真はのアーム部および先端部。手首の部分は、上下と回転の運動が可能だ
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【写真5】MOTOMAN-HP6に搭載されているACサーボモータ。ブラシ機構を持たないため、メンテナンスフリーという特徴を持つ。高精度・高応答の位置速度制御、安定したトルク制御が可能だが、DCサーボと比べて高度な制御が必要となる
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【写真6】単品のACサーボモータとアクチュエータ。アクチュエータは、モータ本体に加え、ギアや電磁ブレーキ、エンコーダなども取り付けられている
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【写真7】扁平型およびエンコーダレスのアクチュエータ。従来と同一の性能を保ちながらロボットのスリム化を図れる
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また、モータの位置決めや速度制御用のセンサとなるエンコーダを搭載しないエンコーダレスアクチュエータも展示されていた。エンコーダは、光学式や磁気式のセンサなどが用いられているが、光学式の場合には衝撃に弱く、環境によってはコントローラへフィードバックされるパルスに抜けが出ることもある。そこで、エンコーダを用いない構成にしたそうだ。詳しい機構については企業秘密だという。
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【写真8】松下電工の視覚センサ(距離画像センサ)のデモ展示。写真は、センサによって取得したデータを専用プログラムで画像処理したところ
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また、センサでもロボットの目にあたる部分として、松下電工の視覚センサ(距離画像センサ)もデモ展示されていた【写真8】。こちらは、投光LEDが対象物に反射して戻ってくるまでの時間を画像ごとに計測し、周辺の空間情報をリアルタイムで取得。ステレオカメラでは難しい、コントラストのない平面の距離を把握したり、広い空間での障害物のマップを作成できるという。このほかにも、「産業用ロボットができるまで」「ものづくり現場で活躍する産業用ロボット」などをテーマにしたビデオ解説などもあった。
日本SGIとセントラル技研工業は、走行ロボット開発支援プラットフォームとして「BlackShip」を出展していた【写真9】。これは、電気通信大学の松野研究室と共同開発したレスキューロボット「FUMA」をベースに、汎用性のある走行ロボットのプラットフォームとして改良を加えたもの。ゼロからのハードウェア製作を必要とせず、簡易的な移動台車と開発環境を提供する。オプションを追加できる構造設計のため、ユーザーごとにカスタマイズして、さまざまなロボットに対応できる。
一方、以前から展示されていたロボットとしては、スピーシーズのネットワーク型ヒューマノイドロボット「MI・RAI-RT」【写真10】【動画1】や、エイチ・ピー・アイ・ジャパンの二足歩行ロボット「G-ROBOTS」も紹介されていた。前者のMI・RAI-RTは、インターネットを経由してサーバーからロボット用コンテンツをダウンロードできるネットワーク型ヒューマノイドロボット。実際にデモも行なわれ、ダウンロードしたCMコンテンツを披露していた。よく二足歩行ロボットの実用性について話題に上がることがあるが、ネットワークを利用して企業のCMのデモを実演するというアイデアは、新しいビジネスモデルになる可能性があると感じた。
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【写真9】日本SGIの走行ロボット開発支援プラットフォーム「BlackShip」。電気通信大学と共同開発したレスキューロボット「FUMA」をベースに、汎用性のあるプラットフォームとして改良を加えたもの。機構部はセントラル技研工業が担当
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【写真10】スピーシーズのネットワーク型ヒューマノイドロボット「MI・RAI-RT」。テレビやラジオのようにチャンネルの概念があり、ユーザー好みの番組を選択できる。これらの機能に加え、ボイス、モーション、ミュージックの3Dメッセージも実現
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【動画1】横にあるPCからコンテンツを選んで、ネットワーク経由でMI・RAI-RTにダウンロード。数秒で、ボイス、モーション、ミュージックによる企業CMのパフォーマンスをしてくれる
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他のゾーンでも、以前の展示に引き続き、シチズン時計の超小型ロボット「Eco-Be!」【写真11】【動画2】、テムザックの留守番ロボット「ロボリア」【写真12】、三菱重工のコミュニケーションロボット「wakamaru」【写真13】などのデモも実施されていた。エントランス付近には、TEPIA版のオリジナルプログラムが組み込まれたNECの「PaPeRo」【写真14】もあり、ユニークな漫談による掛け合いのパフォーマンスによって、来場者を迎えてくれた。
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【写真11】シチズン時計の超小型ロボット「Eco-Be!」。18×25mm(直径×高さ)のコンパクトなボディ。マイコン、小型ステッピングモータユニット、赤外線受光ユニット、表面実装型小型チップLEDなどを備える
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【動画2】Eco-Be!のデモ。無線LANでロボットを操作。機体それぞれにIDが割り当てられ、複数機体の同時制御も可能だ。Eco-Be!同士のサッカー対戦もできる
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【写真12】テムザックの留守番ロボット「ロボリア」。カメラや赤外線センサを装備し、留守中に侵入者や異常を検出するとオーナーに連絡してくれる。テレビ電話としても利用可能
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【写真13】三菱重工のコミュニケーションロボット「wakamaru」。話しかけると、「握手をしよう」「じゃんけんをしよう」など応答してくれる。特に子供たちに人気のあるロボットだ
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【写真14】エントランスでNECの「PaPeRo」がお出迎え。TEPIA用のオリジナルプログラムが組み込まれている
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また、ロボット関係ではないが、新しい展示として目を引いた製品には、ハリアーハイブリッドエンジンの実機、熱起電力によって高効率で電気を取り出すモジュール【写真15】、デジタルで処理できるレントゲンシステム【写真16】などがあった。
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【写真15】アールエフのデジタルX線センサ、デジトゲン「NAOMI」。レントゲンの撮影をデジタルカメラのように簡単に行なえる。X線の照射から画像表示まで数十秒という早さを実現。内蔵のセンサモジュール(左)も展示
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【写真16】東芝が開発した熱電モジュール「gigatopaz」。熱を電気として取り出す半導体を高密度に実装し、1個で40Wの電力を得られるという。36×39mmと小型で、自動車や工場などの廃熱からの発電に応用できる
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TEPIA第19回展示は、来年(平成20年)2月末日まで入場無料にて開催される予定だ。文部科学省が推進している「科学技術週間」にあたる4月21日には、特別企画として「TEPIAテクノワークショップ親子でつくろう!“ラジオボックス”」や、プレゼントも用意されているスタンプラリーなども企画されている。休日(土曜日)のため、親子連れで見学を楽しむのもいいだろう。
■URL
機械産業記念館(TEPIA)
http://www.tepia.jp/exhibition/index.html
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( 井上猛雄 )
2007/04/13 00:06
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