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「ロボカップジュニア2009 関西ブロック大会」レポート
~3競技8チームがジャパンオープンの出場権を獲得


関西ブロック代表の座を巡り1日かけて競技を実施
 3月29日(日)、大阪南港ATCにおいて「ロボカップジュニア2009 関西ブロック大会」が開催された。サッカー、レスキュー、ダンスの3競技を行ない、5月に大阪で開催するロボカップジャパン出場チームを選出した。主催はロボカップジュニア関西ブロック大会実行委員会。

 ロボカップジュニアには、サッカーチャレンジ、レスキューチャレンジ、ダンスチャレンジの3種目がある。今大会には3種目に合計53チームが参加した。各種目は14才以下が出場するプライマリと15才以上19才以下のセカンダリに別れている。出場するロボットはいずれもセンサー等で動作する自律型だ。

 同大会は、関西地区で活躍するロボカップジュニアチームと、広く科学技術に関して興味を持つ子ども達を対象に、技術力、コミュニケーション、プレゼンテーション力の発表と評価の場として実施している。場内のパドックには、保護者や指導者は立ち入ることができず、競技中の参加者にアドバイスはできない。参加者は、マシントラブルやプログラム調整を自分たちの技術のみでクリアして、競技に挑まなくてはならない。


開会式 ロボカップジュニア関西ブロック大会 参加者達 多くの協賛、協力によって運営されている

競技の合間に次に備えてプログラムのチェックと修正 整備コーナーでロボットの修理 本部ではスタッフが競技ボールのメンテナンスを行なう

大阪南港ATC マーレ広場 エントランスでダイセン電子工業のDOG WANが、ロボカップジュニアをアピールしていた 芸を見せて、あっという間に子ども達の人気者になったDOG WAN

激戦の「サッカーチャレンジ」

 一番競技人口が多いサッカーチャレンジは、セカンダリに8チーム、プライマリに20チームが出場した。予選はリーグ戦で行ない、得失点差で順位を決定。上位チームが決勝トーナメントに進出した。ジャパンオープンへの切符は、セカンダリが1枚、プライマリが3枚と厳しい戦いになった。


今年からゴールにクロスバーが付き、ロボットが飛び込めないようになった ハーフタイムには、フィールド横でロボットのメンテナンス

 セカンダリの決勝は、M&Nとラビリンス・コードの対戦となり、12対14でラビリンス・コードが優勝した。ラビリンス・コードのロボットは他チームに比べて断トツにスピードがあった。素早い動きとパワーでゴールを次々と決めていた。“次々”という割に点差が開いていないのは、前後半合わせてオウンゴールで7点献上しているからだ。

 「方位センサーによる姿勢制御が完全ではないため、思わぬ苦戦を強いられた」という。ジャパンオープンまでに万全の体制をとり、本来の能力を思う存分に発揮してほしい。


【動画】サッカー競技セカンダリ決勝戦。ラビリンス・コード VS M&N の対戦 熱戦でラビリンス・コードのロボットの底部が割れてしまった
【セカンダリ】
順位チーム名出場権
1位ラビリンス・コード
2位M&N
3位結局、おもいつきませんでした。
4位スタートスイッチ


 プライマリは、奈良ジュニアとARUMAZIROが決勝戦に進出し、13対11で奈良ジュニアが優勝した。奈良ジュニアはボールセンサーを4つ搭載し、ボールに対する反応をよくしたという。またタッチセンサーが確実に反応するように、輪ゴムで補助もしている。プログラムはできる限りシンプルなロジックで組み、誤作動がないようにしたそうだ。奈良ジュニアは、後半にぐんぐん追い上げて勝つ試合が多かった。後半戦に強い秘訣があるのか質問をしたら「必死に神頼みしてました」という回答だった。


【動画】プライマリ決勝戦。奈良ジュニア VS ARUMAZIRO。点の取り合いで奈良ジュニアが優勝 【動画】プライマリ3位決定戦。トップ・ジュニア VS ROM。ROMが3枚目の代表権を獲得した
【プライマリ】
順位チーム名出場権
1位奈良ジュニア
2位ARUMAZIRO
3位ROM
4位トップ・ジュニア


ジャッジが厳しくなった「レスキューチャレンジ」

 レスキューチャレンジには、セカンダリに15チーム、プライマリに9チームが出場した。


3つのフィールドで競技を実施 調整用フィールドにはダイセン電子工業のサポートで3つのカメラが設営され、モニタに競技の様子が表示された 調整用コースの周囲で念入りに最終チェックを行なう

 ロボカップジュニアのレスキューチャレンジは、4つの部屋をロボットが自走し、床に貼られた緑又は銀の救助者マーカを発見する競技だ。最初の部屋は入り口から出口までラインがあり、トレースすればいい。2つ目の部屋は、ラインがとぎれたり石やバンプの障害物がある。3つ目の部屋以降はラインがなくなる。3つ目の部屋はスロープで、登り切った4つ目の部屋には一面に3mmの棒がばらまかれている。

 今回は2つ目の部屋が、大きな円弧、90度以下の急カーブ、カーブ直後の障害物と課題が難しくなっていた。また、減速バンプ(直径10mmの半円形パイプ)が新たに追加されたことで、段差を乗り越える機能が必須になっている。

 ジャッジも厳しくなったこともあり、参加者が苦戦していた。というのは、これまでは被災者を発見できずに前進しても、「スルー」として競技を進めることができた。今大会では「課題をクリアすること」が前提となり、スルーした場合はリスタート地点に戻ってリトライしなくてはならない。同じ課題を2回エラーした場合は、次の課題にチャレンジできるが、リトライのたびに違う課題でエラーをすると必ず最初のポイントに戻されてしまう。これまで以上に誤動作が許されない競技となった。

 本走行は2回行なわれたが、ゴールに到達したのはステッピー7、初芝SR03、初芝SR04の3台のみという厳しい状態だった。


部屋1。ラインは全てつながっている。一番優しい課題からスタートとなる 部屋2。ギャップ、大きなカーブと90度以下の急カーブ。カーブ直後の障害物と新障害のバンプが設置されている

部屋3は坂道。本走行では、途中に要救助者が追加された 【動画】部屋4には一面に棒が散らばり、減速バンプやブロックの障害物もある

 セカンダリで優勝したのは、ステッピー7。大阪・堺・和歌山ノード大会で未完成だった棒避けのカバー上下機構が稼働していた。

【セカンダリ】
順位チーム名得点出場権
1位ステッピー7155
2位らんたーん131
3位DMS-N127
4位Patriot98


 プライマリは、初芝SR01が優勝。レゴマインドストームのクローラー型ロボットで、コントロールボックスを床ギリギリに搭載して低重心で安定歩行するようにした。前方を取り囲むようにバンパーをつけ、障害物や壁に対してスムーズな移動を可能にしている。初芝SR01は1回目が終わった時点で10位と苦戦を強いられたが、制御タイマーを細かく設定して2回目に挑み、総合順位でも1位と劇的な逆転を果たした。

 レスキューは、セカンダリもプライマリも同じコースで競技を行なう。今大会では、本走行2回のうち得点がよい方で順位を決定した。このルールで涙をのむことになったのが、2位入賞のロック・オンだ。もし合計得点で競うのなら、50点以上差をつけて総合1位だったのだ。プライマリはジャパンオープン出場枠が1つしかない。製作者は小学3年生女子だが、「セカンダリに出ていたら2位で全国大会に行けたのにな」と頼もしいことをつぶやいていた。今後の活躍に期待したい。


レスキューチャレンジ優勝の初芝SR01 プライマリで2位入賞のロック・オン

 ロボカップジュニアには、レゴやTJ3などのキットロボットをベースにして出場しているチームが多い。その中で、レスキューに完全自作のロボット、DMS-Dがいた。カラーセンサーの搭載が間に合わず、緑の被災者を発見できなかったため成績は振るわなかったが、意欲的なチャレンジをしていた。年齢制限のため今年が最後の出場となったが、「後輩のサポートに回り、技術を伝えたい」と言っていた。


自作ロボットでレスキューにチャレンジするDMS-D(大阪電気通信大学高等学校) レゴ マインドストーム RCX

レゴ マインドストーム NXT ダイセン電子工業のTJ3が多い
【プライマリ】
順位チーム名得点出場権
1位初芝SR01165
2位ロック・オン141
3位RTS125
4位S.O.S123


「ダンスチャレンジ」

 ダンスチャレンジにはTKKOが参加し、全参加者の前でGReeeeNの「きせき」に合わせて、ロボットが拍手しながら動き回るダンスを披露した。今回は、拍手が客席からよく見えるようにロボットに手袋をかぶせる工夫をした。

 ダンスチャレンジは、競技前に審査員によるインタビューが行なわれる。インタビューでは、ロボットの設計と構造、プログラム、センサーの使用など技術的な面や、チーム内の役割分担や協力体制について質問される。このインタビュー評価とダンスの評価で順位が決定する。国内でのインタビューは日本語だが、世界大会では当然、英語でインタビューを受けなくてはならない。技術だけではなく、コミュニケーション能力も問われる競技だ。


インタビューでメンバーの役割や協調性、ロボットの創意工夫点をアピールする ダンスチャレンジのTKKO

レベルがアップしたペーパープレゼン

 閉会式で、金田忠裕氏(大阪府立工業高等専門学校)からプレゼン大賞の発表と講評があった。


金田忠裕氏(大阪府立工業高等専門学校) 会場外にプレゼンシートが貼りだされ、参加者やメンターが熱心に読んでいた

 金田氏は、「3週間前に実施した大阪・堺・和歌山ノード大会の時よりも、格段にレベルが上がっている」と参加者の努力を褒めた。そしてプレゼンにおけるポイントをアドバイスした。まず、アピールポイントを写真や図で視覚的に分かりやすく見せること。その時に、ポイントを絞り込むために、丸で囲んだり矢印を入れたりして目立たせる。説明文は端的に分かりやすく書くことだという。

 「サッカーチャレンジは、試合に負けた時には対戦相手のプレゼンシートを良く読んで、どんな工夫をしてきているのか、自分たちと何が違うのかを探って欲しい。プレゼンテーションは、大学や就職する時にも重要視されるため、ロボカップジュニアの活動の中で能力をアップしてほしい」と、プレゼンテーションの重要さを述べた。


サッカープライマリのTeam Hawkeye。トラブル状況とその対策がしっかり書かれている レスキュープライマリのS.O.S。新障害のバンプと坂道の処理についてポイントを絞っている レスキューセカンダリのDMS-D。自作ロボットでチャレンジ。各部屋攻略のアルゴリズムについて説明がちゃんとされている

 各競技の上位チームがジャパンオープン出場権を獲得した。今後、各ブロックとの調整で審査員推薦枠があるかもしれないそうだ。大会で出場決定していない参加者達も、いつ連絡がきてもいいように、ロボットの調整をしっかり行ないジャパンオープンに備えて欲しい。

 「ロボカップ・ジャパンオープン 2009」は、5月8日(金)~10日(日)に大阪京セラドームで開催する。


サッカーチャレンジ セカンダリ優勝のラビリンス・コード サッカーチャレンジ プライマリ ジャパンオープン出場確定者 レスキューチャレンジ ジャパンオープン出場確定者

URL
  ロボカップ・ジュニア 関西ブロック公式サイト
  http://jr.kansaiblock.com/
  ロボカップ・ジュニア大阪ノード公式サイト
  http://jr.osakanode.com/
  RoboCup 2009(英文)
  http://www.robocup2009.org/1-0-home.html

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( 三月兎 )
2009/04/01 19:29

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