3月8日(日)、大阪市立日本橋小学校体育館において、ロボカップジュニア2009の大阪・堺・和歌山ノード大会を開催した。これまで各ノードに別れて実施していたが、今回はブロック内の交流を図るため、1カ所に集まって実施。会場内でコートを分けて試合を行なった。
この大会で優秀な成績を納めたチームは、3月29日(日)に開催の関西ブロック大会に進む。関西ブロック代表権を得ると、5月に大阪で開催されるロボカップ・ジャパンオープン大会に出場できる。ジャパンオープンで選出されたチームは、日本代表として6月29日(月)からオーストリアで開催されるロボカップ2009世界大会へ出場できる。
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多くの参加者で熱気に溢れた場内
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地元小中高校の協力を得て実施。多くのスタッフがボランティアで運営に参加協力している
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会場となった大阪市立日本橋小学校
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● ロボカップジュニアとは
競技は、サッカーチャレンジ、レスキューチャレンジ、ダンスチャレンジの3種目。今大会には3種目に合計72チームが参加した。14才以下が出場するプライマリと15才以上19才以下のセカンダリに別れている。出場するロボットはいずれもセンサー等で動作する自律型だ。会場内の設備ブースには、保護者や指導者は立ち入ることができず、競技中の参加者にアドバイスはできない。ロボカップジュニアは、単にロボット競技会というだけではなく、ロボットを製作する過程で、科学技術を学びプレゼンテーションや国際協調を目指したコミュニケーションを体験する総合学習が目的になっている。
関西ブロックへの出場権は、競技結果だけではなく、会場に張り出されたプレゼンシートを審査員がチェックするプレゼン大賞の受賞者にも与えられる。そして今年は、参加者とスタッフが選出する「ノード大賞」を創立し、受賞者にも代表権を贈った。
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ブースでプログラムの最終チェックやロボットのメンテナンスに取り組む参加者達
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競技中のトラブルは全て自分で解決する
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会場内に張り出されたプレゼン資料を参加者や保護者が熱心に見つめていた
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● ルールが一段と厳しくなった「サッカーチャレンジ」
ロボカップジュニアで、一番人気があるのがサッカーチャレンジだ。セカンダリに14チーム、プライマリに39チームが出場した。
サッカーチャレンジだけに限らないが、ロボカップのルールは毎年、改訂され難易度が上がっていく。2009年度の大きな変更点には、以下がある。
1.床のグレースケールが廃し、緑一色になる
2.ゴールは青と黄色に色分けされる
3.ゴールにクロスバーが設置
4.ロボット規格に最低高が設定され、高さ14cm以上22cm以下となった
これらは世界大会でのルールであり、各地区大会やジャパンオープンでは、委員会が定めたローカルルールで実施する。今回は、2008年度ルールをベースに、いくつかの新ルールを適用している。適用したのは、上記の2、3項目だ。クロスバーを設置したことにより、14cm以上のロボットはゴール内に機体ごとボールを押し込むシュートができなくなった。また試合数が多いため、5分ハーフの短縮ゲームで実施した。
ノード大会は誰でも参加できるため、キャリアが長いチームと初心者では実力差がそのまま点数に現れる傾向にある。しかし今大会では、接戦になる試合が多かった。競技時間が短いため一概には言えないが、各チームの技術力がアップしているのだろう。参加者はもちろんだが、各チームのメンターの技術力・指導力も向上しているように感じられた。
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試合前の車検。ロボットは直径22cm、高さ22cmの円筒に納まらなくてはならない
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サッカーフィールドは、ゴールにクロスバーがついた
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ゴールは青と黄で色分けされているが、ロボットが自律で認識するのは難しそうだ
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競技の結果、セカンダリ8チーム、プライマリ20チームが、関西ブロック出場権を得た。各リーグの1、2位が関西ブロックへの出場権を得るが、上位チームがノード大賞やプレゼン賞を受賞している場合はリーグ3位のチームが繰り上がりできる。
プレゼン賞は、プライマリが「やまと」、セカンダリは「マイペース」、ノード大賞はプライマリから「シルフ」「やまと」「龍京」「チーム名募集中。」の4チーム、セカンダリが「M&N」が受賞した。「やまと」はプレゼン賞を受賞しているため、ノード賞枠の出場権は次点の「チーム名募集中。」が繰り上げとなった。
リーグ1位、プレゼン賞、ノード大賞と好成績を納めた「やまと」チームの2人は、「日頃の努力が実って嬉しいです」と喜んだ。ロボットは、自律型制御ロボット教材「ORCA Junior 2」をベースに、ボールセンサーを増設したりモーターをパワーアップしたという。「今年は、関西ブロックを勝ち上がってジャパンオープンに出場したい!」と意欲を燃やしていた。
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【動画】「M&N」VS「結局、おもいつきませんでした。」の試合。フェンス際でのボール処理が難しい
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【動画】「やまと」VS「The Earth」の試合。2台のロボットが連係プレーでゴールを決めた
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リーグ戦1位、ノード大賞、ベストプレゼン賞を受賞した「やまと」の2人
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【関西ブロック大会 出場チーム】※表内 *N:ノード賞 *P:プレゼン賞
・セカンダリ
| 【Aブロック】 | 【Bブロック】 | 【Cブロック】 | 1位 | エアーズ | モノクロ | ラビリンス・コード | 2位 | M&N(*N) | マイペース(*P) | ハリケーン |
3位 | 結局、おもいつきませんでした。 | モンテスキュー |   |
・プライマリ
| 【Dブロック】 | 【Eブロック】 | 【Fブロック】 | 【Gブロック】 | 1位 | ハチドリ2号 & TeamTTS & YR | NR | ガボット | やまと(*P/*N) | 2位 | 第一ゼミナール栂・美木多校B | はつしばロボ | ARUMAZIRO | flowers | 3位 |   |   |   | The Earth |
| 【Hブロック】 | 【Iブロック】 | 【Jブロック】 | 【Kブロック】 | 1位 | Team Hawkeye | 奈良ジュニア | Change | ROM | 2位 | シルフ(*N) | ROCK KIDS | ネギみそ | チーム名募集中。(*N) | 3位 | トップ・ジュニア | 龍京(*N) |   | Hope |
● 新しい障害物が追加された「レスキューチャレンジ」
レスキューチャレンジには、セカンダリ7チーム、プライマリ11チームが出場した。
ロボカップジュニアのレスキューチャレンジは、被災者を救助するのではなく、4つの部屋をスタートからゴールまで障害物を避けて進み、銀または緑の被災者を発見する競技だ。
今年のルール変更点は、障害物に直径10mmの半円形パイプが加わったことだ。このパイプは“減速バンプ”と呼ばれ、ライン上にある減速バンプをクリアした時は10ポイントが加算される。また、ロボットがコース上で停止した場合、審査員の指示に従ってキャプテンがロボットを指定された位置に移動することになった。
第1室は、ライン上に被災者がいる。第2室は、ラインが途切れ、石や減速バンプの障害物がある。第3室は、ラインなしのスロープだ。第4室では、ラインがなく直径3mmの棒がばらまかれている中で被災者を発見しなくてはならない。
被災者を確実に発見するためには、銀と緑の反射率の違い、ライン上とラインなし、棒の下にいる場合など各種条件に対応しなくてはならないため、プログラミングが難しい。
今年から追加された減速バンプを乗り越えるためには、モーターや足回りの強化が必要となる。プログラム的には、減速バンプとスロープの区別をする必要が生じる。というのも、多くのロボットは傾斜センサーを使用して、スロープに差し掛かったらモーター出力を変更したり、ライントレースから自律走行に切り替えたりしているためだ。こうした処理に手こずったのか、リタイアするロボットが多かった。
レスキューロボットチャレンジの得点は、被災者を発見、ラインの切れ目や障害物回避などのミッションをクリアした時に加算される。コース設定によって課題が変わるため、今大会は試走が185点、本走行ではスロープの中央に緑の被災者が追加され195点満点だった。得点には関係しないが、本走行では第2室と第4室に減速バンプが追加されていた。
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【動画】レスキューは4つの部屋に別れており、課題が次第に難しくなっていく
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【動画】レスキューロボット第2室は、ラインが途切れ、障害物が設置される。減速バンブが新たな課題として追加された
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【動画】「初芝SR01」は、障害物を避けるモーションが速かった
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第3室のスロープからラインがなくなる。本走行では、途中に被災者が追加された
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【動画】第4室は、直径3mm以下の棒が飛散しているため、被災者の検知が難しい
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【動画】1位の「ステッピー7」。安定した走行をみせて参加者の注目を集めていた
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試走と本走行の両方で「ステッピー7」が1位となった。「ステッピー7」は、昨年蘇州で開催されたロボカップ2008のプライマリ部門に出場し、優勝している。今年は、第4室の棒を避けるために、機体カバーをプログラムで上下する機構を搭載したが、まだうまく動いていないそうだ。断トツの成績を納めたにも関わらず「今日の出来は60点」と厳しい自己採点をしていた。
レスキューチャレンジは、全チームが関西ブロック大会に出場できる。今大会の経験を元に、各チームがどこまでロボットをブラッシュアップしてくるか楽しみだ。
プレゼン賞は、プライマリが「ロック・オン」、セカンダリは「Y・K」、ノード大賞は「ステッピー7」が受賞した。
■レスキューチャレンジ順位
1位:ステッピー7(119点)
2位:Y・K(114点)
3位:初芝SR01(105点)
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レスキューロボット。レゴマインドストームや、キャタピラ型のロボットなど多種多様
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ダイセン電子工業のキット「TJ3」をベースにしたロボットも多い
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競技前にはレスキューロボット審判団のミーティングを実施。ルール変更に伴うジャッジの統一が重要
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● ロボットが音楽に合わせてパフォーマンス「ダンスチャレンジ」
ダンスチャレンジには、「TKKO」チームが出場した。レゴブロックで製作したロボットが、GReeeeNの「きせき」に合わせて、ダンスを披露した。ロボットが曲に合わせてパーツで拍子を取って動き回ると、客席からも手拍子が起こった。
「きせき」を選んだのは緩やかな曲でリズムが取りやすいと思ったからだそうだが、ギアを調整してロボットが手拍子を打つのが難しかったという。
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「TKKO」チームがダンスチャレンジに出場
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ロボットの工夫点についてアピール
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● “マナーアップ”を合い言葉に大会を実施
全競技が終わった後に、コートにロボットを並べて、ノード大賞の投票を行なった。各チームが「マナー」「デザイン」「技術力」それぞれポイントカードを、優れていると思ったチームに投票して選出する。
ノード大賞は、参加者が他チームとも交流するきっかけになるようにと企画された。競技会の最中は、ロボットのメンテナンスと勝敗だけに目が奪われがちになるが、プレゼンシートや他チームの競技を見て、良いロボットを互いに認め合って全体のレベルアップをはかることが目的。投票する際には、ポイントカードに「どこがよかったか」のメッセージを書かなくてはならない。選ぶのが難しいのではないか? と思ってみていたが、どのチームもスラスラとメッセージを書いて投票していた。
今大会では、開会式から「マナーアップを心がけよう」と実行委員会からしきりに声が掛かっていた。式の間は、作業やお喋りを止めてきちんと話を聞くこと、会場内で出したゴミは持ち帰ること、会場内を走って移動しないこと(これが一番難しかったようだ)の注意が出されていた。競技会は8時受け付け開始で17時に終了と、長時間に渡る。終盤には、緊張と疲れでダレ始めている参加者もいたが、閉会式は無駄話をせずマナーのよい態度で参加していたのに感心した。
最後に、大会を支えたスタッフの方々に参加者全員が「ありがとうございました」と礼をして終了した。
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ノード大賞選考会。ロボットを展示して、「マナー」「デザイン」「技術」それぞれのポイントカードを投票する
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大阪・堺・和歌山ノード大会 参加者記念撮影
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【動画】競技が早く終わったコートで、プライマリとセカンダリの交流戦も実施
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関西ブロック大会は、3月29日(日)に大阪南港ATC マーレ広場で開催される。サッカーチャレンジには各ノード大会で選抜されたチームしか参加できないが、レスキュー及びダンスチャレンジは、関西地域に在住・在学している19歳以下(2009年7月1日時点)ならば参加可能。エントリーはロボカップ・ジュニア 関西ブロック公式HPで受け付ける。面白い競技会なので、多くの方に参加してほしい。
■URL
ロボカップ・ジュニア大阪ノード公式サイト
http://jr.osakanode.com/
ロボカップ・ジュニア 関西ブロック公式サイト
http://jr.kansaiblock.com/
RoboCup 2009(英文)
http://www.robocup2009.org/1-0-home.html
■ 関連記事
・ ロボカップジャパンオープン2008沼津レポート ~ロボカップジュニア編(2008/06/06)
( 三月兎 )
2009/03/11 18:13
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