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ユニバーサル・シティウォーク大阪で、ASIMOとRobovie-IIの連携実証実験を実施
~「ロボット喫茶店」でドリンクをデリバリー


家族連れで賑わうクリスマスのユニバーサルシティウォーク大阪
 12月23日(火)~25日(木)の3日間、ユニバーサル・シティウォーク大阪4階「ロボットパラダイス」の店舗前において、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)のRobovie-IIと、ホンダのASIMOがネットワークを介して連携しサービスを提供する実証実験を実施した。場所の提供は、ユニバーサル・シティウォーク大阪(以下、UCW)を運営する住商アーバン開発株式会社が協力している。また、本実験におけるASIMOとの連携については、ATRと株式会社本田技術研究所が共同研究契約に基づき技術協力を行なった。

 12月1日に、同会場で4社7体のロボットを連携しサービスを提供する実証実験を実施した。その際は、ネットワークロボット開発の参画企業のロボットと、異種ロボットとして株式会社イーガーの6軸アーム型ロボット「ARC(アーク)」をネットワークロボットプラットホーム上で接続し、サービスを行なった。この時、Robovie-II以外のロボットは「ロボットパラダイス」内で稼働していたが、今回はASIMOも半屋外の通路を歩き回り、異種ロボットが位置情報を共有してコミュニケーションを取りながら連携する実験になっている。


UCWでRobovie-IIとASIMOが連携してサービスを提供した 午後には多くの観光客が、ロボットの実証実験を見守っていた

客をテーブルに案内し、オーダーをとるのはRobovie-IIが担当 ドリンクをデリバリーするのは、ASIMOが担当

 まずRobovie-IIが、実証実験スタートにあたっての注意事項を観客に伝える。その間に、ASIMOがロボットパラダイス内から出てきて、Robovie-IIに紹介してもらってから、オーダーの待機位置へ移動する。

 客が喫茶店にやってくると、Robovie-IIが席まで案内してオーダーをとる。ドリンクを運ぶのはASIMOの仕事だ。この時にRobovie-IIは音声で「ASIMO、コーヒーよろしく」と言っているが、実際にはオーダーはネットワークを介してASIMOに伝わる。

 オーダーを受けたASIMOは、傍にいる人にオーダーを伝え、トレイにドリンクをセットしてもらい受け取る。そして、テーブルまでドリンクを運ぶ。その間、Robovie-IIは客にユニバーサルシティウォークの観光案内などをし、接客に余念がない。

 ドリンクを運び終わったASIMOが、定位置に戻ろうとすると、入り口に新しい客が待っている。ASIMOはちゃんと客に気づいて挨拶し「案内はRobovieがします」と、業務を引き継ぐ。ASIMOから連絡を受けたRobovie-IIは、客の前まで移動してきて、テーブルへ案内しオーダーを受ける。

 ASIMOが新しいドリンクをテーブルまで運んで行くと、先の客が帰るために通路に立っているため、ASIMOは立ち止まって道を譲る。無事に2回目のデリバリーを終えて、ASIMOとRobovie-IIはそれぞれの定位置に戻る。

 帰る客をRobovie-IIが見送って、デモンストレーションが終了。Robovie-IIが挨拶をし、2体のロボットが仲良く手を振って解散。ASIMOはロボットパラダイス内にある充電ステーションへ戻っていく、というのが実証実験の流れとなる。


【動画】ASIMOがロボットパラダイスから出てきて、Robovie-IIが実証実験開始のアナウンスを行なう 【動画】Robovie-IIが客をテーブルへ案内する 【動画】Robovie-IIはオーダーを取ったあと、客に話しかけて接客を続ける。その間、ASIMOがドリンクを受け取ってくる。このように、ネットワーク上でパラレルにロボットが作業を行なっている

【動画】Robovie-IIが受けたオーダーは、ネットワークでASIMOに伝わる 【動画】ASIMOがドリンクを受け取って、テーブルまで運ぶ 【動画】ASIMOが、ドリンクをデリバリーし、Robovie-IIが注文の確認をしている

【動画】ASIMOはドリンクを丁寧にテーブルに置いてくれるので、客として大切に扱われている気分になるという 【動画】戻りかけたASIMOが新たな来客に気づいて挨拶。Robovie-IIに案内を頼む。2体のロボットがネットワークで連携していることが分かる場面

【動画】ASIMOから業務を引き継いだRobovie-IIが、客を席へ案内する 【動画】ネットワークサーバーの情報から「客が帰る」という行動を読み取り、挨拶をするRobovie-II

 Robovie-IIもASIMOも、あまりにもスムースに動いているから、何も知らずに見ていると、事前にタイミングよく組み込まれたプログラムに従って動いているかのように思ってしまう。しかし、これらの動きはネットワークロボットプラットホームから、それぞれのロボットが周囲の環境を取得し、連携しながら自律で動いているのだ。

 よく観察しないと気づかないが、床にはASIMOが移動時に位置確認するためのマーカーが貼られている。ASIMOはこのマーカーを手がかりに、自分の位置を決定し、自分で経路を作成して会場内を移動している。新しい客の来店や進行方向に人が立っているのに気づくのは、テーブルの周囲に配置した5台のレーザーレンジファインダのデータをサーバから受けているためだ。昨年のデリバリー実験の時には、訪問者が光通信カードをつけていたが今回は使用していない。ネットワーク環境から得た情報と、ASIMOのアイカメラで周囲の環境を認識している。

 ドリンクが入ったトレイを受け取る時は、手渡しする人との位置をアイカメラで確認して立ち位置を補正している。確実に受け取れると判断できるまでは、取らない。ASIMOが「お預かりしました。よろしいですか?」と問いかけるのに対して、「はい」と応えがあったことを確認してから、テーブルに向かう。テーブルにトレイを置く時は、テーブルに描かれたマーカーを認識している。


テーブルには、トレイを置く位置がマークされている ASIMOがドリンクを運ぶ専用トレイ 【動画】オーダーを受けたASIMOが、ドリンクを受け取る場面を別の角度から撮影。騒音の中で、音声コミュニケーションをしている

床のマーカー(白く反射している点)と、5台のRLFで環境情報を取得している 【動画】床の材質が違う中を、マーカーで立ち位置を認識しながら、自分で経路を選んで移動する 【動画】経路上に人がいると、ASIMOは立ち止まってどいてくれるのを待っている

 一方、Robovie-IIはマーカーに頼らずに、周囲の情報を認識して移動している。最後に客が帰る時に、挨拶をするのはネットワークロボットプラットホームの情報履歴から、「客2」が「帰る」という行動の意味情報(行動プリミティブ)を取得し、自発的に行なっている。

 ASIMOとRobovie-IIがこのように同じ空間内で協調して動くのは、もちろん今回が初めての試みだ。また、ASIMOはUCWのような半屋外の環境で実証実験を行なうのも初めてである。UCWは屋根はあるものの、天気のいい日は西日が差し込むなど時間帯によってかなり明るさが異なる。移動用のマーカーやテーブル上のマーカーが、反射して見失うこともあるそうだ。そういう時は、リトライして認識する。どうしても認識できない時には、ASIMOが止まるということだが、取材当日は、午前中は雨が降って薄暗く、午後からは晴れ間が出て直射日光が当たるという変化が激しい状態だったにも関わらず、問題なく動いていた。

 動画をご覧いただければ分かるが、UCW内はBGMが反響してかなりうるさい。その中で、Robovie-IIもASIMOも、人と音声認識でコミュニケーションをとっていることに注目してほしい。

 UCWの床は、ASIMOが待機している場所が四角いタイル、テーブルがある場所は石材、そしてロボットパラダイス内と3種類の材質がある。しかも、ASIMOが歩く途中にはごく細い溝もあるし、タイルは一部欠けているところもある。またロボットパラダイスの入り口はごく緩い(とはいっても、ロボットには問題となる)傾斜があり、ドア用の段差もある。二足歩行ロボットが動き回るには、かなり厳しい状況だ。


中村孝広氏(株式会社本田技術研究所 第2研究室 主任研究員)
 この環境の中をASIMOは、自由に移動している。デモを終えてロボットパラダイスに戻る時にドア付近で立ち止まるのは、傾斜を登るために位置の補正を厳密に行なう必要があるからだという。今回の実験担当者である株式会社本田技術研究所の中村孝広氏も、最初は半屋外の環境下でASIMOを動かすことに不安があったそうだが、何回か調整し問題ないことが確認できたそうだ。

 Robovie-IIがオーダーを取った以降、ASIMOはドリンクの運搬、Robovie-IIは接客とそれぞれがばらばらに動いている。タスクがパラレルに走っているというのは、デモンストレーションとしては少々見づらいが、ロボットが働く時のあるべき姿だろう。このようにパラレルに動くことができて、初めてタスクがスムースに連携できる。こうした枠組みは、複数のロボットが稼働する状態をネットワークが管理して初めて可能となる。

 ATRが目指すのは、異種ロボットを持ってきてもすぐに動くネットワークロボットプラットフォームの構築だ。今回の実験にあたり、ASIMOには、環境プラットフォームと連結するための処理を加えただけで、昨年行なった連携実験の時と基本的には変わっていないという。もちろん、UCWに来てからプログラミングをするわけにいかないので、事前に社内で模擬環境を用意してテストをしてきているが、さほど苦労なく繋ぐことができたという。


塩見昌裕氏(知能ロボティクス研究所 コミュニケーションロボット研究室研究員)
 ATRの塩見昌裕氏は、「異種ロボットが、人のすぐ近くでコミュニケーションできたことに新しい可能性を感じる」と語った。音声認識をオペレータがうまくチェンジして、半自律で人とコミュニケーションするというタスクはRobovie-IIが得意なジャンル。一方、物を運ぶサービスはASIMOの方が得意だ。人間にも得意・不得意があって役割分担をしているように、ロボットも人間社会で効率よく働くためには、連携して互いに補完しあうことが必要だと述べた。

 今までは、Robovie同士が連携していたが、移動速度やソフトウェアも違うロボットともネットワークロボットプラットフォームを使うことで、意外にすんなり協働できた。今後、ロボットが互いの得意な作業を役割分担し、コラボレーションをしてサービスを提供するのはあり得る未来だということを実感したという。

 ホンダは、昨年12月に複数のASIMOが協調して、案内・デリバリーサービス機能の実験を行なっている。中村氏は「去年、2体のASIMOがデリバリーした時、ロボットが連携して動くことで新しいサービスが提供できる可能性を示せた。今回はRobovie-IIと連携し、将来ロボットはこのように協調して人間にサービスを提供していくだろうという、更に先の未来を見せることができた」と語った。頭の中で分かっていたことでも、実際に初めてASIMOからサービスを受けると、違う印象を受ける。そういった感覚を大切にして、今後、さまざまなロボットと協調して動かしていきたいと思っているそうだ。

 具体的に、ロボットからサービスを受ける気分を尋ねると、「ASIMOはとても丁寧にサービスしてくれるので、すごくいいお店に来たなと、自分が特別なお客さんになったような気分になる」という。

 通りかかった観光客の多くが、ASIMOやRobovie-IIに気づくと足を止めて実証実験に見入っていた。今回は実験の主目的を、ATRとホンダの両社がネットワークロボットプラットフォーム上で、ロボットが連携してサービスを提供することができるのを確認することとしているため、この実証実験が持つ意味やネットワークロボットについての詳しい説明はしていなかった。それでも、Robovie-IIとASIMOが会話をして仕事を割り振ったり、ASIMOが器用にドリンクを運ぶのを見て驚きの声をあげていた。


URL
  国際電気通信基礎技術研究所
  http://www.atr.jp/
  ニュースリリース
  http://www.atr.jp/html/topics/press_081222_j.html
  ホンダ
  http://www.honda.co.jp/
  ASIMO
  http://www.honda.co.jp/ASIMO/

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( 三月兎 )
2008/12/26 20:27

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