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ロボット商品化の技術的課題に焦点、米「ROBO DEVELOPMENT」会議開催
~Microsoft、ベンチャー企業がパートナー探しに奮闘


展示場入口
 米シリコンバレーで11月18日(火)、19日(水)に米国内外のロボット関係者を集めた「ROBO DEVELOPMENT」会議・展示会が開かれた。ロボット商品化のための技術的課題に焦点を当て、企業や大学研究者などの情報交換を目的とした会議で、今年は主要スポンサーだった米Microsoftが同社のロボットアプリケーション開発ツールの最新版「Microsoft Robotics Developer Studio 2008」(MRDS)をリリースした。複数のベンチャー企業も展示や講演をし、どの会社もパートナー探しに奮闘していた。

 ROBO DEVELOPMENT会議はメディア会社EHパブリシングが主催するイベントで、今年で2回目。出展企業数は約40社だったが、米国を中心とした各国の家庭用、サービス用ロボットの業界動向を知る良い機会となった。


Microsoftの開発ツールが徐々に浸透

基調講演するMicrosoftのトローワー氏
 初日の基調講演のトップバッターはMicrosoftのロボティクスグループ ゼネラルマネージャーのタンディ・トローワー(Tandy Trower)氏。同社は2006年12月に初めて独自の開発ツールを発表してから、今回は2007年7月に続いて、3回目の主要リリースと位置付けらている。トローワー氏によるとMRDS最新版の特徴は、全体的なパフォーマンスが従来の1.5~3倍に向上したことと、分散型アプリケーションの開発を容易にするための「Visual Programming Language(VPL)」の改良。またアプリケーションのシミュレーション環境としてすぐに使えるよう、アパート内部、アウトドア、市街地の3モデルを新たに提供する。

 同社はこの日、MRDSのライセンス制度の変更も発表した。従来は「商用ライセンス」と「非商用ライセンス」の2種類に分かれていたが、その境界線が不明確だったため、今後は商用であるかどうかに関係なく、だれもが無料で利用できる「Express」バージョンと、より専門的な開発に適した「Standard」バージョンに分け、Standardの価格を499.95ドルとする。2009年2月に提供開始予定のStandardは、ランタイム コンポーネント (CCR と DSS) の配布が無制限であるのに対し、Expressでは再配布を禁止する。このほか、学生や教育機関向けの「Academic」版を準備中だ。

 今回のROBO DEVELOPMENT会議では、MRDSの利用がじわじわと広がっているという印象を受けた。MRDSを製品開発に使用、またはMicrosoftのプラットホームをサポートしている企業数は60社に達しているが、今回はMRDS利用の二足歩行ロボット教材「e-nuvo WALK」を販売する日本のZMPを含め、5社と1大学がMicrosoftの展示ブースに製品とロボットを並べた。


Microsoftの展示ブース ZMPの製品はMicrosoftの担当者が説明に当たった

 そのうちの1社がフランスのアルデバラン・ロボティクス(Aldebaran Robotics)社だ。二足歩行ロボットの「Nao」を開発・販売する。Naoは約4.5kgと軽量で、「HOAP-3(富士通オートメーションの小型ヒューマノイド)とほぼ同じ機能を、それよりも低価格で提供できる」のが特徴とアルデバラン社のソフトウエア・エンジニアであるクリス・キルナー氏は言う。Naoは自律ロボットサッカー競技の「ロボカップ」で、ソニーのAIBOを使った四足ロボットリーグが廃止となった後、ロボカップ国際委員会が後継競技のために選定したロボット。これまでに大学・研究機関向けに100台が出荷されている。

 ただ、価格が1台1万ユーロ(約120万円)と高価で、まだ一般に普及していないため、今年夏に中国で開かれたロボカップではNaoのシミュレーション競技だけが行なわれた。このシミュレーション競技はMRDSを使って開発された。

 従来のNaoはLinuxを搭載しているが、キルナー氏によると「2009年の下半期にはWindowsバージョンのリリースを予定」している。次期バージョンは利用者がOSを選択できるようにし、価格は現在の半分の約5,000ユーロに抑えたい考えだ。


ロボカップ用にNaoのシミュレーション競技が開発された Nao本体 【動画】Naoは今年夏に中国で開かれたロボカップのため、太極拳を披露できるようにした

 一方、ロボット玩具のメーカーとして知られるWowWee社の出身の起業家が韓国に設立したベンチャー企業のロボウェア(Roboware)社は、来年発売予定の3輪型のヒューマノイド「E3」を展示した。E3はWindows XPを搭載しており、言わば「移動するパソコン」。テレプレゼンス・ロボットしての家庭向けと、教育用市場を狙っており、同社のマイク・キム社長によると3,000ドル以下で売り出す方針だ。


ロボウェア社のキム社長とE3 【動画】自己紹介するE3

 マサチューセッツ工科大学のシンシア・ブレジール准教授の研究室では、テディベア型ロボットの「Huggable」でMRDSを利用する。MRDSはロボットのカメラやマイク、スキンセンサーなど個々のサブシステムから得られるデータを効率的にリンクさせ、ロボットの遠隔操作を容易にする。Huggableは、例えば遠隔地にいる高齢者が孫とコミュニケーションをとるのに活用したり、遠隔教育、パートナー・ロボットとしての利用を狙っている。


MITが開発したテディベア型のロボットHuggable Huggableの構造

【動画】Huggableのカメラやセンサーから来るデータはMRDSで処理される 【動画】Huggableはマスター・スレーブ・システムで遠隔操作できる

 このほかスイスの産業用ロボット大手のABBは、MRDSを使ったシミュレーション・システム「ABBコネクト」を発表し、一般の人がソフトをダウンロードすれば、仮想空間内でABBの産業用ロボットで遊んだり実験できるようにした。ABBのバーチャルなロボットは実際の産業用ロボットと同じ制御ソフトを使うので、このような環境を外部に公開することで、学生などからのフィードバックを期待している。また3次元CAD「SolidWorks」を販売するDSソリッドワークス社は、CADでできたモデルをそのままMRDSに取り込めるようにした。

 全体としてMicrosoftは、まずシミュレーションの分野を糸口に研究者やロボット・メーカーとの関係を構築してニーズを情報収集し、そこからロボット分野における次のステップを見出そうという戦略のようだ。Naoの例が象徴的だ。Microsoftは今年5月にロボットのシミュレーション・コンテストの「RoboChamps」を始動したが、これもMRDSの利用者数を拡大するための重要な戦略だ。この中の火星探査のシミュレーション競技では、米航空宇宙局(NASA)が隔年で実施している実際の火星探査機の打ち上げが2011年にはないことが決まっているため、NASAとMicrosoftが共同で、同年にバーチャルな打ち上げを行なう話が持ち上がっていると、同社のトローワー氏は言う。

 MicrosoftはROBO DEVELOPMENT会議の前日に、報道陣向けに展示内容の内覧会を開いたが、その場でトローワー氏は「ナビゲーションの分野に投資することを考えている」と明かした。無人ロボット車などロボットのナビゲーション用に複数のセンサーやシステムが商品化されているが、「どれも高価であり、この分野で我々の持つ画像技術を活用できないか検討中」(トローワー氏)と言う。さらに同氏は「ロボット開発者だけでなく、ロボットのエンドユーザーを対象とした需要調査も行なっており、多数の人々から意見聴取したうえで、今後の方向性を決めたい」と語った。「我々は(すぐに利益を出さなければならないと)急いでいるわけではなく、ロボット分野には長期的に取り組んで行く」とも強調した。


無人ロボット車から台所ロボットまで

トルン教授基調講演
 トローワー氏のほか、ROBO DEVELOPMENT会議初日に基調講演に立ったのはスタンフォード大学のセバスチャン・トルン教授とサザンカリフォルニア大学のマヤ・マタリック教授。トルン教授は、米国防総省高等研究計画局(DARPA)が2005年に実施した、砂漠の中を無人ロボット車が駆け抜けるレース「Grand Challenge(グランド・チャレンジ)」で優勝したチームのリーダー。2007年に同じくDARPAが開いた市街地の無人ロボット車レース「Urban Challenge」(アーバン・チャレンジ)では2位だった。2つのレースに向けたロボット車の開発経緯について講演し、「インターネットがデジタル情報の輸送を様変わりさせたように、無人ロボット車は実世界に大変革をもたらす」と語った。


マタリック教授基調講演
 一方、マタリック教授は「Socially Interactive Robots(社交的なロボット)」と「Assistive Robots(支援を目的としたロボット)」の融合分野である「Socially Assistive Robot」の研究に取り組んでいる。「私はシンプルで低価格、情緒的なロボットを開発したい」と言う同教授は、リハビリの現場向けに開発したさまざまなロボットの映像を紹介した。歩行訓練の支援ロボットは、患者の足に付けられた反射板を追跡することで歩幅を計測でき、患者を励ましたり、歩き方を注意することができる。脳卒中を患った患者が雑誌を本棚に入れる作業を繰り返すリハビリ運動では、患者が腕を上下させるだけでロボットのカメラをごまかし、運動をなまけることがあるのに対応して、本棚の底面に雑誌の重さを検知するスケールを置いた。ビデオでは患者が「なんでさぼっていることが分かるのかしら」と話す場面があり、会場は大うけした。「ちょっとした工夫で、リハビリの効果を大きく上げることができる」と同教授は主張した。


【動画】歩行練習を支援するロボット 【動画】脳卒中患者のリハビリにもロボットを活用

 展示場に目を移すと、入口付近で大きな場所を確保していたのが、テスト・制御システム開発のナショナルインスツルメンツ社。同社はモジュール式の制御・計測プラットフォームである「CompactRIO」をロボット市場向けに大々的に展開しようとしている。CompactRIOはリアルタイムプロセッサと再構成可能なFPGAを組み合わせたのが特徴で、モジュール式の入出力システムであるため、さまざまなセンサーやアクチュエータとの接続が可能なほか、高度なリアルタイム画像処理機能を備えている。同社は、科学教育の振興を目的とした非営利団体のFIRSTに対し、今後5年間で数百万ドル相当のCompactRIOを寄贈することを決めた。来年以降、FIRSTが主催するロボット競技への参加全チームにCompactRIOを提供する。チームが迅速にロボットを製作できるようにし、競技の焦点である自律制御ソフトの開発課題に注力できるようにするのが目的だ。2009年の競技参加者数は1,500チーム、5万人に達する見込みで、「我々にとってCompactRIOの最大ユーザー・グループとなるので、たくさんのフィードバックを得て、ロボット市場の開拓につなげたい」と同社のプロダクト・マネジャーのアヌ・サハ氏は意気込む。


NIロボット・その1 NIロボット・その2 【動画】NIロボットビデオ

 今年2月にYouTubeでブレークしたレディーボット(Readybot)社の台所掃除ロボットは、今回の会議で初めて実物がお披露目された。レディーボットはもともと、シリコンバレー周辺のハイテク企業に勤める技術者有志によって開発されたが、その後、開発したソフトを商品化するため、会社を作った。ただ、製品化のために過去1カ月でソフトをほぼ全面的に書き換えたそうで、ロボットはこの日はうまく機能しなかった。考え方としてはハードの種類によらず、家事手伝いができるロボット用のソフトを開発し、販売することを目指している。


レディーボット社の創業者たち 台所掃除ロボットの内部 【動画】アームで机の上から皿を取りラックに載せるが、この日はうまく動かなかった

【動画】皿を載せたらドアは閉まり、自動皿洗い機に運びラックごと移す仕組み 【動画】アームは伸び縮みする 【動画】もう1本のアームは9kgまで持てる

ウィロー・ガレージのロボットのセンサーヘッド、ロボットの全体像はここで見ることができる
 オープンソース形式で、家事や高齢者介護で役立つパーソナル・ロボット用のソフトとハードのプラットホームを開発中のベンチャー企業がウィロー・ガレージ社だ。同社のスティーブ・カズンズ社長兼最高経営責任者(CEO)によると、同社はプラットホームが完成後、来年には少なくとも10の大学や研究機関に対し、無償でソフト・ハードの両方を提供する方針だ。今回の会議で講演した同社長は「ロボティクスのLinuxになりたい」と語った。同社は起業家のスコット・ハッサン氏が創業した会社で、潤沢な資金があるため当面は利益を追求する必要がない。ただ「いずれロボット市場の機が熟した段階で、ベンチャー企業をスピンオフして行く考えだ」(ハッサン氏)。


パートナー相手としてディズニーが人気

 ウィロー・ガレージは、パーソナル・ロボットのプラットホームに、必要な各機能を実現する最適なソフトを1つずつ取り込みたい考え。このため、インテルやウォルト・ディズニーのように、ロボットの研究開発に取り組んでいるものの、それによって直接、利益を稼ぐ考えのない企業に対し、開発したソフトをオープンソース形式で公開することを促している。ロボット開発環境が整えば、みんなが恩恵を受けられるという考え方だ。少なくとも会場で話したディズニーの担当者の1人は、このような考え方に賛同していた。

 ディズニーは同社が運営するテーマパーク向けにロボットの研究開発を強化しているが、RoboDevelopment会議ではアニメ映画「WALL・E/ウォーリー」の主人公を実物のロボットとして製作したプロジェクトに関して講演があった。目的は映画のプロモーションで、開発期間はたったの7カ月。映画の中のウォーリーは200以上の自由度を持っていたが、それを22自由度にしながら、できるだけ映画のキャラクターと同じ動きをさせるのに苦心したという。ロボットの動きは、映画を製作したディズニーの子会社、ピクサーが開発した「MENV」というソフトを用いて作製し、シミュレーションを通じて実際のロボットに載せた。ロボットにはリアルタイムOSを使ったシングル・ボードが内蔵されており、カメラは頭と背中などに4つ。ロボットは基本的に遠隔操作で動くが、本物に見せるため映画のキャラクターのように手は自動的に手もみの格好で動くようにした。同映画は日本でも12月5日(金)に封切りとなるため、このロボットは今週、国内各地でお目見えとなる予定だ。


ウォーリーのロボット開発に携わった3人による講演があった 【動画】ロボットはできるだけアニメのキャラクターと同じ動きができるように苦心した 遠隔操作は2本のジョイスティック、ペダルを用いる

ウォーリーロボットのソフトの構造 ロボットのできるさまざまなポーズ

 ディズニー担当者たちの講演後、Microsoftのトローワー氏がすかさず近寄り「子供たちがウォーリーをプログラミングできるようなシミュレーションゲームなんか楽しいのではないか」と持ちかけていたのが印象的だった。ディズニーの研究開発部門ディレクターのアキル・マダニ氏は「ぜひ連絡を取り合いましょう」と答えていた。


スウェーデンのロボット用学習ソフト開発ベンチャーも

 このようにパートナー探しが会議参加の大きな目的であるが、もう1社、パートナーを探していたのがスウェーデンのベンチャー企業の「Institute of Robotics in Scandinavia(iRobis)」という会社。進化ロボット工学(Evolutionary robotics)の専門家であるチャルマーズ技術大学のピーター・ノーディン助教授が開発した「Brainstorm」というソフトの商品化を目指している。タスクを描写した「Fitness Function」を上手に決めることで、そのタスクを実現するためにロボットが試行錯誤を繰り返しながら徐々に学習し、最終的にできるようになるというソフト。このソフトを二足歩行型ロボットに搭載した例を映像で紹介したが、「前に進む」というFitness Functionを設定することで、ロボットは数カ月で歩き方を自ら学ぶことができるようになったという。ただ、Fitness Functionの設定の仕方にノウハウがあるようで、実際には誰もがすぐに二足歩行を実現できるようになるものでもないようだ。同社はスウェーデン軍などから資金提供を受けている。


iRobis社の事業開発担当副社長のロジャー・ゲイ氏が講演した 【動画】300ドルで完成したロボットが数カ月で歩けるようになったいう

URL
  ROBO DEVELOPMENT
  http://www.robodevelopment.com/


( 影木准子 )
2008/11/26 00:02

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