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米ディズニー、世界の大学とロボットの共同研究を開始
〜まずはCMUとインタラクティブなロボットを開発、日本人研究者も参加


 米ウォルト・ディズニーは世界各国の大学と共同で、ロボットやコンピューター・アニメーションなど最先端技術の研究開発に取り組む計画を発表した。同社が最初の提携先として選んだ米カーネギー・メロン大学(CMU)とは、ディズニーランドなど同社が運営するテーマパーク向けに、人間とインタラクションができる新しいロボットの開発を実施する。CMUとのプロジェクトには日本人研究者が参加するほか、ディズニーは今後、日本の大学とも連携する考えで、日本のロボット技術が同社を通じて実用化される道が開けてきた。


ディズニーのロボット映画「WALL・E/ウォーリー」は米国で大ヒット アニメのキャラクターを実物のロボットにもしたが、同社はこうしたロボットが人間と真にインタラクションできるようにしたいと考える

 ディズニーはこのほどCMUと共同で、同大学のすぐ近くに新研究所の「Disney Research Pittsburgh」を設立し、新研究所のディレクターには同大のジェシカ・ホジンズ教授が就任した。共同研究は当面、5年間の計画で、ディズニーは研究予算額を明らかにしていないが、教授職を兼務するホジンズ教授のもと、7〜8人の研究者をディズニー社員として新研究所で採用する方針だ。すでに2人の研究者が決まっており、このうちの1人が東京大学情報理工学系研究科の元・准教授の山根克氏。山根氏は2008年9月末で東大を辞め、10月1日付けで新研究所のシニア・リサーチ・サイエンティストに就任した。このほか、CMUの教職員や学生、他大学からの客員教授なども研究に参加する。


新研究所のディレクターに就任したCMUのホジンズ教授 ディズニーのシニア・リサーチ・サイエンティストになった山根氏

パーク内を歩き回るロボットは今でも多少、人とのやり取りができるが、さらに高度なインタラクションのできるロボットの開発が目的だ
 この研究所で最初に取り組むプロジェクトの1つが、テーマパークで来場客とインタラクションができる新しいロボットの開発だ。ディズニーが運営する複数のテーマパークではすでに多数のロボットが活躍しているが、そのほとんどはあらかじめ設定された動きしかできない。新たに開発するのは、「人間の視線や微妙な行動から、その人がロボットとどのようなインタラクションを持とうとしているのか、またインタラクションを楽しんでいるのか否かなどを判断し、それにあわせて随時動きを変えられるロボット」(ホジンズ教授)だ。

 こうしたロボットを実現するために必要な技術開発は大きく3つ。1つは人の反応を検出するセンサーの開発で、まずはどういった情報をとらえれば役立つのかを見極めたうえで、それを検出する方法を見出さなければならない。次に、状況ごとに変わるロボットのさまざまな動きをたくさん創出する方法。そして第3に、人がロボットとのインタラクションを真に楽しめるように、作り出した動きを自然に再現する仕組みだ。

 中でも山根氏が最初に取り組むのは、「ヒューマノイド・ロボットの動きを簡単に作り出せるようにするシステムの開発」だ。今のロボットはあらかじめ作って置いた動きをただ再生するにしても、その動きを作るのが大変で、たった1分間の一連の動作を作るのに何十時間もかけているのが現状。真にインタラクティブなロボットを開発するには、従来よりも簡単・迅速に多数の動きを作成できる道具が不可欠だ。「しかもテーマパークのロボットは1体ではなく、複数を同期させないといけないし、見た目も美しくなければならない」(山根氏)。動きを創出する新しい方法として同氏は「人間から直接データを取るモーションキャプチャを出発点として、そこから簡単にいろいろな編集ができるようなシステムを作りたい」と話している。同氏はこれまでに、モーションキャプチャデータをロボットの機構にあわせて自動的に修正する研究などで実績を積んでおり、これまでの経験が大いに生かされる見込みだ。


 5年後の目標は「客の反応や周りの環境に応じて、ある程度、インタラクティブに動きを変えられるアトラクション系のロボットを実現すること」(山根氏)。一番の技術的チャレンジは「いくら動きが変わるといっても人間から見て不自然な変わり方をしても仕方がないので、自然な変わり方をするために、何を観察してどう反応させるかというところだろう」と言う。同氏がディズニーに転職することを決めた理由は「エンターテインメントがロボットの最初のアプリケーション分野として有望と考えた」から。しかも「ディズニーならテーマパーク内だけでも実現した時の規模が大きく、関係会社を含めると、映画やテレビなどの分野にも広がる可能性が大きい」。さらに、「将来はエンターテインメント分野での経験と教訓を、家庭用ロボットの開発など別の分野でも生かせると考えた」とも言う。

 Disney Research Pittsburghではこのほか、ハイテクを利用してフットボールなどのスポーツ試合をテレビの前の視聴者がより楽しめるようにする「sports visualization」の研究にも取り組む。ディズニーはまた、映画製作とゲーム開発の世界で使用する新しいカメラやコンピューター・アニメーションの技術開発に共同で取り組むため、スイスのETH Zurich(連邦工科大学チューリッヒ校)のマーカス・グロス教授とも同様に新しい研究所を設立した。これはディズニーの傘下にはスポーツ専門放送局のESPNや、映画会社、ゲーム開発会社があるためだ。


ディズニーの研究開発担当のジョー・マークス副社長
 ディズニーと大学との共同プロジェクトの責任者であるディズニー研究開発部門のジョー・マークス副社長は、同社が大学と積極的に協力することに決めた理由について次のように語った。「我々は、どこかで開発された技術を市場から購入するのではなく、新しい技術の開発プロセスの初期段階から積極的に開発にかかわって行きたいと考えた。なぜならば、産業用や軍事用ロボットと違って、エンターテインメント用ロボットの市場はまだ小さく、我々のユニークなニーズを満たすような技術を市場ではなかなか見つけることができない。かと言って当社1社で何から何までやることはできないので、すばらしい研究成果を挙げている世界の大学の協力を得ることにした」。

 過去に三菱電機の北米研究所のリサーチ・ディレクターを務めた経験もあるマークス氏は「日本の大学とも同様の協力関係を持ちたいと考えており、すでにロボットの分野で著名な日本の大学、研究者とその方向で話し合いを始めた」と明かす。ディズニーが特に関心を持っているロボットの分野は、「来場客に混じってパーク内を自由に動き回れるような新しいロコモーションの技術、近付いてきた人間の手を握ることができるようなマニピュレーションの技術、小さな子供と『いないいないばー』をしたり人間とゲームができるようなインタラクションの技術」の3つだ。

 CMUとETHとの共同研究計画は当面、5年間の予定だが、「近くリリースされる映画やゲームにすぐに利用できるような短期的な成果から、我々の商品・サービスに大きなインパクトを与え、顧客の体験を今までとは質的に大きく異なったものにするような長期的な成果まで、研究開発にはポートフォリオを持たせるのが成功するために必須」とマークス副社長は考える。

  「ディズニーのテーマパークにはおそらく世界のどこよりも多数のヒューマノイド・ロボットがあるので、我々の初期の研究プロジェクトが成功すれば、ロボティクス分野全般の進歩に大きなインパクトがあると思う」とCMUのホジンズ教授は言う。「ディズニーは我々の研究成果をもとにおもしろいハードウエアを設計したり、他社に製作を委託する力があるので、それらをテーマパークに導入できればこうした技術の本当の市場が生まれる」(同教授)からだ。同教授らは新研究所のために積極的に採用活動をしており、現在は「ヒューマン・ロボット・インタラクション(HRI)の専門家、着用型、小型の携帯端末などを使った新しいインタラクションの方法を開発できるような専門家」を探しているとしている。


URL
  カーネギー・メロン大学(CMU)
  http://www.cmu.edu/index.shtml
  WALL・E/ウォーリー
  http://wall-e.jp/


( 影木准子 )
2008/11/05 17:02

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