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第16回高校生ロボット相撲全国大会。キャッチコピーは「未来をつかめ!」
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11月2日(日)、大阪市中央体育館において「第16回高校生ロボット相撲全国大会」が開催された。主催は社団法人全国工業高等学校長協会、大阪府実業高等学校長協会。富士ソフト株式会社が協賛している。
本大会は、12月に開催される「全日本ロボット相撲大会」の高校の部決勝大会となる。8月から全国9カ所で実施された地区大会に144校から378台がエントリーし、39校から64台のロボットが決勝大会への出場権を獲得した。
ロボット相撲はマイコンとセンサーを搭載し自立で動き回る「自立型」と、操縦する「ラジコン型」の2部門に別れている。ロボットの規格は、スタート時のサイズが縦横20cm以内、高さ自由、重量3kg以内となっている。土俵は直径154cmの鉄板製で、相手ロボット本体の一部を土俵外の地面につけたら勝負が決まる。試合時間は3分間で、時間内に2本先取したロボットが勝ちとなる。
体育館にずらりと土俵が並べられ、ピットに収まりきれないような人の熱気が渦巻く地方予選と違い、全国大会は整然とした風景だ。その中に、ぴりぴりと張り詰められた空気が漂っていた。
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大阪中央体育館
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自立型ピット。どの選手もロボットの最終調整に余念がない
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ラジコン型ピットでは、混線が起きぬようクリスタルをチェックし、プロポを本部へ預ける
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「第16回高校生全国大会」の開会式風景
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試合は2つの土俵で行なわれる
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決勝大会の土俵。高さ30cmの台形のベースに154cmの鉄板土俵が設営されている
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● パワーとスピードが増したロボットが活躍する自立型部門
地方大会から感じていたことだが、昨年と比べてロボットが非常にコンパクトになっている。参加者に話しを伺ったところ、自立型は強力なモーターを使って、スピードとパワーを増す方向にあるようだ。今大会の上位入賞ロボットの中には、今年から150Wモーターを採用した学校もある。昨年までの60Wや90Wに比べるとモーター1個あたり約200g重量が増えることになる。重量が3kg以内の制限がある中で、2個で400g増というのは厳しい課題だ。そうした背景があり、自立型ロボットはアーム型が以前よりも減り、コンパクトでスピード型のロボットが多くなっているようだ。
もちろん、スピードだけでは勝てない。スピードとパワー、そして戦術のバランスがよくなければ、厳しいトーナメントを勝ち上がることはできない。上位ロボットの取り組みを紹介しよう。
5位決定戦は香鈴糖(富山県立大沢野工業)vs強勢撤去(香川県立三豊工業)の対戦。両者スピードとパワーのあるロボットで、土俵上で激しくぶつかり合って相手ロボットを場外に弾き飛ばす迫力ある取り組みだった。1-1で迎えた3本目を強勢撤去が制した。
3位決定戦は、石鎚6(愛媛県立東予)vs黒津崎零(大分県立国東)。実は、黒津崎零は準決勝の2本目で対戦相手と正面からがっぷり組み合い、煙を吐いて動けなくなってしまった。短時間では修理できなかったと見えて、3位決定戦も不動だった。しかし、1本目の取り組みで石鎚6が自ら土俵外に落ちてしまったため、1本先取。続く2本目では両者1歩も動かず、審判から「両者戦意なし」を宣告され互いに1本取られた。結果、辛くも黒津崎零が3位入賞となった。
決勝戦は、雷公(三重県立四日市中央工業)vsF・ヨーゼフ(山口県立宇部工業)。F・ヨーゼフは今大会には珍しい低速パワー型のロボットだった。1本目は雷公に一気に押し出されたものの、2本目は回り込んできた雷公を正面で捉えてがっちりと押さえ込んだ。取り直しで、雷公が左斜め前方からF・ヨーゼフをすくい上げて押しだし優勝を決めた。
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【動画】自立型5位決定戦。香鈴糖(左、富山県立大沢野工業)vs強勢撤去(香川県立三豊工業)
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【動画】自立型3位決定戦。石鎚6(左、愛媛県立東予)vs黒津崎零(大分県立国東)
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【動画】自立型決勝2本目。雷公(左、三重県立四日市中央工業)vsF・ヨーゼフ(山口県立宇部工業)。中央で押し合い両者一歩も引かず取り直し
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【動画】2本目取り直し。雷公(左)がF・ヨーゼフの左斜めからすくいあげて一息で押し出した
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自立型優勝ロボット。雷公(三重県立四日市中央工業)
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● 半自立化が進むラジコン型部門
プロポを使って操縦するラジコン型は、ロボットの性能だけではなく操縦者の技量によるところも大きい。以前はシンプルな形が多かったが、最近はアーム型や羽根つきロボットも出てきた。
羽根つきロボットは、元々はセンサーで相手を発見する自立型で多く用いられてきた。目立つ羽で相手ロボットのセンサーを惑わし、自分のサイドに寄ってきたところを一気に押し出す戦略だ。しかし人が操縦するラジコン型では、そもそも白旗に惑わされることなどないため、搭載されることはなかった。
だが、最近はラジコン型もセンサーが搭載されるようになり、土俵際の白線検知だけではなく相手ロボットを自立で発見し、操縦者とロボットが協働で動くタイプも増えてきている。その対策として、羽根つきロボットが登場したわけだ。
他にも可動ブレード搭載のロボットなど、シンプルになる自立型とは対照的に、ラジコン型の機構が複雑な方向になっているのが興味深い。
地区大会では土俵はシートを敷いた床の上に設置されているが、全国大会になると高さ30cmくらいの台形の台座に設置される。人が操縦するラジコン型の場合、土俵の高さや周囲の色など「決勝大会だけ環境が違う」という要素が勝負に影響を与えるそうだ。操縦者は台座の下で操縦するので、距離感覚がかなり狂うらしい。強豪校の中には、土俵の台座を用意して決勝大会の練習をするところもあるそうだ。
5位決定戦の迅雷(香川県立高松工芸)vs神咲(千葉県立茂原樟陽)は、1本目迅雷が一気に攻め込み1本先取。2本目は神咲が土俵際でタイヤが外れて動けなくなったところを、軽く突き落として試合を決めた。
3位決定戦は、修道館腕(島根県立松江工業)vs美工山HSM(北海道美唄工業)の取り組み。1本目は修道館腕のアームに弾かれて美工山HSMが土俵外へ。2本目は長い戦いになった。アームに囲われて何度も土俵際に追い詰められた美工山HSMが、うまく立ち回って逆転ポジションを取ったのだが、相手のアームを土俵外へ押しやろうとして勢い余って自分が落ちてしまった。2本先取で修道館腕の勝利。
決勝戦は、三重県立四日市中央工業の同校対決で刹那風vs木の芽風となった。1本目は土俵中央で組み合った後に、刹那風が一歩引き互いに距離をとってのにらみ合いとなった。そして刹那風が回り込んでサイドから木の芽風に突っ込み押し出した。2本目は開始と同時に木の芽風が一気に飛び出し、1本取り返した。1-1で迎えた3本目、土俵中央で取り組み両者押し合ったままぐるぐると回り続け、取り直し。
最後は大きく回り込んだ刹那風を木の芽風が土俵際で正面から捉え、綺麗に押しだして優勝を決めた。第16回高校生ロボット相撲全国大会の最後を飾る見事な取り組みに、会場から大きな拍手が湧いた。
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【動画】ラジコン型5位決定戦。迅雷(左、香川県立高松工芸)vs神咲(千葉県立茂原樟陽)
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【動画】ラジコン型3位決定戦。 修道館腕(左、島根県立松江工業)vs美工山HSM(北海道美唄工業)。修道館腕(島根県立松江工業)の勝利
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【動画】ラジコン型決勝3本目。刹那風(奥、三重県立四日市中央工業)vs木の芽風(三重県立四日市中央工業)
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【動画】3本目取り直し。回り込んできた刹那風(左)を木の芽風が押し出し、見事優勝を決めた
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ラジコン型優勝ロボット。木の芽風(三重県立四日市中央工業)
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第16回高校生ロボット相撲全国大会の入賞者達
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自立型・ラジコン型ともに三重県立四日市中央工業が優勝した
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■URL
全日本ロボット相撲大会
http://www.fsi.co.jp/sumo/
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( 三月兎 )
2008/11/12 14:21
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