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ZMP、「nuvoソースコード公開プログラム」開始
~二足歩行ロボット関連の知財を公開、新規アプリの共同開発を狙う


ゼットエムピー「nuvo」
 8月6日、株式会社ゼットエムピー(ZMP)は、「nuvoソースコード公開プログラム」を開始すると発表し、記者会見を行なった。「nuvoソースコード公開プログラム」は、家庭向け人型二足歩行ロボット「nuvo(ヌーボー)」のソースコード、ソフトウェアAPI、電気回路図などを同プログラム参加ユーザーに公開するもの。家庭用二足歩行ロボットのAPIが公開されるのは同社によれば世界初。大学、企業ユーザー参加型のコミュニティを形成し、ロボットの情報系・人工知能の開発を加速することを狙っている。

 ソフトウェアAPIだけではなく「N2Core」というZMP社が開発したロボットのコアモジュールのソースコードも公開されるため、同プログラム参加ユーザーはAPIを使って独自アプリケーションを動かすだけではなく、たとえばソースコードを使って他社のミドルウェアを実装して既存のアプリケーションからロボットを制御することもできるようになる。

 最初のユーザーとして、制御工学や対人協調制御を専門とする東京工科大学松尾研究室、ロボット工学や認知ロボティクスを専門とする同・関口研究室が合計10台nuvoを導入。ICT-RT(Information and Communication echnology-Robot Technology)教育・研究の一環として活用することが決まっている。

 「nuvoソースコード公開プログラム」は、パッケージ価格257,250円で販売される。パッケージの内訳はnuvo本体(168,000円)と、ソフトウェアAPIそのほか、3日間の講習、そしてnuvoコミュニティ参加IDなどを含むプログラムコンテンツ(89,250円)からなる。1つのIDでnuvoを3台まで利用可能(追加1台につき168,000円が必要)。6日より受付を開始し、nuvo本体限定50台まで販売する(50IDではない)。

 なおnuvoの販売価格は588,000円なので、このプログラムでの本体価格は破格と言える。プログラム参加は大学や研究機関のほか個人も可能だが、いずれも研究目的であることが条件で、ZMP社とはNDA(秘密保持契約)を結ぶ必要がある。


「nuvoソースコード公開プログラム」概要 パッケージ販売される。価格は257,250円 研究・開発の例

ZMP代表取締役社長 谷口恒氏
 まず初めにZMP代表取締役社長の谷口恒氏は、今回の試みについて概要を説明した。

 ZMPはホームロボット事業と、RTソリューション事業を2本柱とするロボットベンチャー。nuvoはもともとユーザーの感性に訴求するホームロボットとして、世界的にも知られる工業デザイナー・奥山清行氏をデザイナーとして迎えて開発された。組み立て製造はセイコークロックで行ない、ソールや外装の一部をミズノと共同開発したことも話題になり、一般メディアでも取り上げられた。教育用の「e-nuvo」と合わせてnuvoシリーズ累計出荷台数は1,000台。

 だが人と共存するパートナーロボットにはキラーアプリがなく、まだ実施例や参入者が少ない。各社とも用途を探っている段階である。谷口氏は1社では開発に限界があると考え、ソースコードを公開し、パートナーと共同でアプリケーションの研究開発を狙う戦略を選ぶことにしたと語った。なお音声認識のコアエンジン等は他社が作ったものなので公開できないが、ZMPが開発した部分はすべて公開しているそうだ。


ZMP社のロボット開発の歴史 nuvo開発体制 ミズノとの共同研究開発も行なった

ZMPプロジェクトマネージャー西村明浩氏
 「nuvoソースコード公開プログラム」の詳細はプロジェクトマネージャーの西村明浩氏からデモを交えて説明された。上述のように、ユーザーはNDAベースでプログラムに参加。授業や研究でnuvoを活用する。成果物はコミュニティで共有される。

 nuvoは高さ39cm、重量2.5kg、15自由度。電源はリチウムイオン電池で満充電で1時間半程度動作する。ACアダプタで動作させることも可能。センサー類は頭部の30万画素のカメラとLEDのほか、ジャイロや加速度センサー、マイク、スピーカ、赤外線送受信装置、障害物検知センサーなどのほか、Ethernetコネクタや無線LANデバイスを内蔵している。

 システムアーキテクチャはメインCPUモジュール、センサーモジュール、そして複数のモータを制御するドライバが4つあるモジュール構造となっている。各モジュールはCANで接続されている。CPUはSH4(200MHz)、OSはWindows CE。


nuvoハードウェアスペック センサー類と周辺機器 システムアーキテクチャはCANでモジュールを繋いだ分散制御

 Windows CE上にZMP社が独自開発したリアルタイム制御ソフトウェア「N2Core」が載っている。「N2Core」は10ミリ秒ごとにハードウェアの情報を取得して目標位置を計算してモータ制御を行うと同時に、リモコン・音声認識・ウェブなどのアプリケーションを統合的に管理する。nuvoのソフトウェアは一番下位にデバイスドライバがあり、それらをWindows CEで制御、その上にN2Coreがのり、各コントローラーが載っているという構成になっている。

 今回公開される部分は、ドライバを制御し、アプリケーションを作るためのAPI、N2Core、市販プログラムのソースコード。N2Coreそのものを作り変えることもできるので、より深いレベルでユーザーはロボットを操ることができる。APIとソースコードを公開しているので、ZMP社が提携しているMicrosoft Robotics Developer Studio 2008だけではなく、ユーザーは必要であれば産総研のRTミドルウェアほか、既存の資産を持つミドルウェアを使ってロボットを制御することができる。

 ZMPでは上位系から下位系まで含めた、群ロボット/分散協調制御、ヒューマンインターフェイスやホームエージェント、ライフログ収集に基づいたサービス提供や人工生命、音楽検索、マスタースレーブ、歩行アルゴリズム開発などの研究・教育に活用できるとしている。


リアルタイム制御ソフトウェア「N2Core」 nuvoのソフトウェア構成 今回の公開でさまざまなアプリケーション開発が可能になる

今回公開される部分ソフトウェアAPI N2Coreならびにアプリケーションのソースコードも全て公開される 電気回路図も公開

 デモは、nuvo本体のアプリケーションを使った例、PC上で動作するアプリケーションとnuvoを連携させた例、Microsoft Robotics Developer Studio 2008を使った例の3種類が行なわれた。


【動画】音声認識を使った例 【動画】音声認識を使って起きあがり 【動画】障害物センサーで人を捉えて挨拶

【動画】PCからnuvoを操作 【動画】ミドルウェアとしてMicrosoft Robotics Developer Studio 2008を使った例 他のミドルウェアもユーザーが開発すれば利用可能

ソフトウェア系の学生に『実物の面白さ』を

 会見では、ユーザーとして既に決まっている東京工科大学コンピュータサイエンス学部教授の松尾芳樹氏と、同・講師の関口暁宣氏も出席。両研究室でのnuvo活用について期待を述べた。

 松尾教授は「ロボットは、次はロボットの時代と30年くらい期待されてきた。でもまだロボット産業を支えているのは産業用ロボットだけ」と述べ、これからは家庭内の家電ネットワークと融合し、システムとして役に立つ、あるいは面白いものができるのではないかと、ホームエージェントとしてのロボット発展の可能性に対する期待を述べた。


東京工科大学コンピュータサイエンス学部 教授 松尾芳樹氏 東京工科大学コンピュータサイエンス学部 講師 関口暁宣氏

 両氏は今年の4月から東京工科大に赴任。次の段階ということで「ユビキタスロボット」という観点で学生たちが何か新しいアイデアを生み出していくことができないかと模索していた中で、このプロジェクトとめぐりあったという。

 「いままでのロボット研究の素性はメカオタク、機界屋が多い。我々はホームロボットでキラーアプリを生み出すのはゲームやコンピュータの利用に強い学生たちではないかと考えて彼らに期待してる」という。だがいっぽう、「いまの学生はリアルなものにあまり興味を持たない」そうだ。そこでまず、nuvoを触ってもらうことで「実世界ロボットは面白いんだなと感じてもらって、ICTベースのロボット技術者に育ってほしい」と考えたという。

 たとえばゲームでは環境そのものも作れてしまう。だが実環境では床面ひとつとっても多種多様だ。実物でやることで技術的に新しいものを探すと同時に、そこを苦労してモノができたときの楽しさを教えていきたいという。「研究者も含めてソフトウェア開発者は得てしてそこを見逃しがちで、コンピュータの中でやってしまえば完成したと思っている。でもそうではない。リアルな空間で何かをさせる環境を作っていければいいなと思っています」(松尾教授)。


【動画】畳の上を歩くnuvo
 具体的には、これから後期の授業にて行なわれる「プレ卒論」のなかで実習を行なっていくそうだ。「学生たちはプログラムは割と得意。APIが公開されていればプログラムはできる。でも彼らは実物を動かすとどういうことが発生するのか知らない。そういう教育をやってみたいなと考えて導入した。APIを使ったらこんなものができるよというのをやることで、新しいホームネットワークロボットのアイデアを出してほしい。ソフトウェア系の学生に『実物の面白さ』を理解してほしいと思っている」と松尾教授は語った。ソフトウェア系のロボコンとして「ICTロボコン」のようなものを提案したいと考えているという。

 nuvoを選んだ理由は、発売後3年経ったハードウェアであり、安定したプラットフォームであること、そして中身はWindows CEでCANを使っているため、組込み機器開発としても可能性があること。またnuvoはデザインが良いためゲームオタクの学生も抵抗がないのではないかと考えたことも、nuvoを選んだ理由の1つだそうだ。ロボット教材としてレゴマインドストームも検討したそうだが「私のイメージでは、ある程度のスタイルは先にあってほしい。教育はそれを使って行ないたいと考えた。また内部でCANが走っている点も大きかった」と述べた。

 関口講師も「ハードウェアは必ずしも強くない学生達もこのようなロボットがあればアプリケーションを開発できるのではないか。何かぜひ面白いことをやっていきたいと思っている」と語った。


URL
  ZMP
  http://www.zmp.co.jp/
  製品情報
  http://nuvo.jp/

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( 森山和道 )
2008/08/07 00:44

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