2008年6月21日(土)と22日(日)の2日間、宮城県仙台市にある仙台市科学館にて、ロボット競技会実行委員会、メカトロで遊ぶ会、社団法人日本ロボット学会が主催で第20回知能ロボットコンテスト2008が開催された。本コンテストは自律型ロボットによる競技で、1.8×1.8mの競技台の上に置かれたボールや空き缶、石けん箱を所定の時間内にゴールのバスケットに入れ、その得点によって順位を決めていく。3色のボールが競技台上に配置されるチャレンジコースと、ボールと空き缶、石けん箱が配置されるテクニカルコースの2つのコースから構成される。
直接ロボット同士が対戦するわけではないのであるが、一次予選通過には実行委員会推薦枠があり、さらに二次予選と決勝戦では複数の審査員によってパフォーマンス性や技術力、デザイン性などを評価する審査員点が加算されるため、毎年さまざまな面で創意工夫を凝らしたロボットが登場し、会場を沸かせるコンテストである。今年も日本各地からこの日の晴れ舞台のために製作者が手塩にかけたロボットが集合し、会場を大きく沸かせた。そのようなロボットたちの競演の一部を紹介する。
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チャレンジコースでは3色のラテックス製のボール各5個ずつが台上にランダムに配置される。色に対応したゴールにボールを入れると3点、違う色のゴールに入れると1点。その他に競技台上の任意の位置に置ける自由ボールがあり、これをゴールすると5点
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テクニカルコースではテニスボールと空き缶、せっけん箱が配置される。空き缶と箱は対応したゴールに入れると6点、ボールは4点。違うゴールに入れた場合でも1点が加算。自由ボールはボールに対応したゴールに入れることで4点に
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同時に開催されるロボコンジュニアではプラモデルのように簡単に製作が可能なロボット『梵天丸』を用いてかんたんな競技を行なう。初めての参加でも「メカトロで遊ぶ会」のメンバーがその場で講習を行ない、随時指導をする
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● チャレンジコースは粒ぞろいのロボットたちで大激戦
今年のチャレンジコースは、去年より10チームほど多い85チームが競技に参加した。例年、一次予選では機体のトラブルや調整不足でスタート位置から動くことができずに涙するロボットも多いのであるが、今年は一次予選から面白い動きを見せるロボットが多く、3台ある競技台のどれからも目が離せない大激戦となった。
そのように面白い動きやデザインで観客を魅了するロボットが多い中、確実な動きと2台のロボットの協調という高い技術力で『常連』のパワーを見せつけ、決勝ではすべてのボールを正しいゴールに入れるパーフェクトを達成した小出剛史氏のロボット『智嚢ロボット2008』が優勝の栄冠に輝いた。
また毎年透明のプラスチック板を用いて初夏のコンテストにふさわしい涼しげでデザイン性豊かなロボットで参戦する、福島高専分子生物学愛好会のチーム『福島高専堀越くまさん ペンタくん A』のロボット『ポチ』は、決勝でパーフェクト目前! のところで機体が傾き、惜しくもパーフェクトを逃して準優勝となった。
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【動画】『智嚢ロボット2008』の競技の様子。2台のロボットがそれぞれの位置やもっているボールの色を互いに通信し、競技台上でぶつかることなく強調して動いていることが分かる
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2台のロボットが競技台の上で、ボールの受け渡しをする場面も。このような細やかな協調の実現が、高い『知能』を感じさせる
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【動画】『ポチ』の競技の様子。4つのローラーでボールをロボット上部へと次々に回収、色判別をして最後にまとめて各色のゴールへボールを吹き出す。透明の機体の中をカラフルなボールが動くさまは本当に美しい
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● 競技台をキャンバスに、冴えるデザイン
特にチャレンジコースにおいて、デザインや動きの面白さを追及した魅力的なロボットが多かった今回。審査員の中でもそれが争点となったようで、今回特別に『デザイン賞』という賞が急遽設けられ、2台のロボットが受賞した。
レーザーで加工された見事なシルエットとウェブカメラ1台でのボール認識技術、そしてメカ好きの心を掴む動きで会場からも「かっこいい!」との声が続出したのは東京工業大学ロボット技術研究会、チーム『竜頭蛇尾』のロボット『丘の上のドラゴン』。競技台中央に鎮座したドラゴンがボールを次々にくわえては背中を転がしてゴールする姿は、特に子供たちの注目の的となった。
対して小型の機体ながらふんだんにセンサーを盛り込み、かつ掴んだボールの色と同じ色に機体内部、そして上部に取り付けられた自作のぼんぼりが輝く演出を見せたのは、東京農工大学ロボット研究会のチーム『RUR-KM』のロボット『MADE IN JAPAN』。競技時間の残り時間によってゴールの仕方を変えるというテクニックも相まって、玄人受けする技術を見せた。
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【動画】『丘の上のドラゴン』の競技の様子。競技開始と同時にスタート地点から競技台中央の台の上に陣取り、ボールをくわえては首、そして背中のスロープを転がしてゴールする
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中央の台からやや距離のある青色のゴールへは、尻尾を曲げてボールを入れるという見せ場も。そうきたか! と思わせるテクニック
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赤色のボールを掴み、色判別をすると同時に機体内部と上部の球状のぼんぼりが赤く輝く『MADE IN JAPAN』
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【動画】『MADE IN JAPAN』の競技の様子。青色のボールを掴んだときには機体は青く輝く。離れたところからボールを転がしてゴールする離れ業も見せた
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● アイディアと技術が詰まった個性派ロボット!
さてこの知能ロボコン、ロボット同士が競技台上で激突することはないのであるが、それゆえそれぞれの参加者はアイディアと技術を自らのロボットに詰め込み、競技時間を使ってその個性を存分にアピールする。
チーム『AT-X』のロボット『Nice Case.』は、「スパイ映画好き」という製作者の趣味により、アタッシュケースをそのままロボットに改造してしまったもの。アタッシュケースを下げたスーツ姿の競技者がおもむろにそれを競技台の上におき、サイドに巧妙に隠されたボタンを押すと同時にアタッシュケースが走り出す、それはまさに映画のワンシーンのようであり、見事『ベストパフォーマンス賞』を受賞した。
『Nice Case.』と同じ『ベストパフォーマンス賞』を受賞したのは、東京農工大学ロボット研究会のチーム『RUR-夏』のロボット『片付ケロ!』。動きの面白さと確実性を重視したというその機体は、市販のほうきとちりとり、そしてカエルのヌイグルミそのもの。カエルがほうきでボールをちりとりに掃き集め、ゴールへと掃き出す愛らしい様子で、会場からは「かわいい!」との声が多数上がった。
チャレンジ賞を受賞したのは、渋谷幕張高校物理部のチーム『しぶまく「簾」』のロボット、『Pitcher』。チーム名にもなっている簾が取り付けられたロボットが、何をするでもなしに赤色のゴール近くに鎮座しており、「???」と思った瞬間、もう1台のロボットが投げたボールが見事に簾に当たって角度を変え、ゴールに吸い込まれていく。ボールを掴んで投げる一連の動作もまさに野球のピッチャーを思わせるダイナミックさで、高い評価へとつながった。
他にも多数のロボットが登場したが、ここではその一部を画像で紹介する。
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【動画】『Nice Case.』の競技の様子。ボールを発見するとアタッシュケースのふたがおもむろに開いて内部からハンドが飛び出し、ボールを収納してまたふたを閉じる様子は圧巻
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【動画】『片付ケロ!』の競技の様子。色判別を諦めた代わりに、会場を沸かせる可愛らしさとユニークな動きを実現。個人的にはカエルのヌイグルミについている値札? ラベル? は外してほしかったところ
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【動画】『Pitcher』の競技の様子。紙で作られたハンドで器用にボールを掴みあげ、全身を反り返らせて思い切りボールをスローイング。見事に簾に当たり、ゴールへとボールが入る
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『もやねのアトリエ』のロボット『となりの化け猫』。どこかで見たような猫型ロボットである。赤外線フィルタを装着したカメラで競技台全体を撮影し、その映像を元にロボットの位置を制御するという技術も
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T-Semi OBの『Oh!No』のロボット『G-Shooter NXT Rev.2』。見ての通り、LEGO Mindstormsで構成されており、これでも十分ロボコンに参戦できるということを示した
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【動画】実行委員会の東北学院大学の熊谷正朗准教授も、自らの開発した玉乗りロボットを持参してデモンストレーションを行なった
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今年も多くのロボットが、その能力を存分にアピールした『知能ロボットコンテスト』。バトルはないが、そこには技術者や表現者としての熱い思いの闘いが繰り広げられている。第20回という節目を越し、今後も更なる発展と熱戦が繰り広げられるであろう。
■URL
第20回知能ロボットコンテスト2008
http://www.inrof.org/irc/
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( せとふみ )
2008/06/30 14:05
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