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スピーシーズのロボット「SPC-101C」
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6月19日、スピーシーズ株式会社は、「ロボット放送」のビジネス展開を始めると発表、記者会見を開いた。「ロボット放送」とは同社の造語で、インターネット上の専用サーバー経由でロボットに動きやサウンドを伝え、コンテンツを表現するメディア。ロボットは遠隔操縦できる「歩くウェブカメラ」として機能し、モーションでメッセージを伝える。
今月末に「ロボット試験放送評価キット」を発売する。キットにはロボット「SPC-101C」本体と「Speecys OS ver.2.1」がインストールされたminiSDカード、ロボット放送受信用アプリケーション「BotRoller(ボットローラー)」ベータ版が付属する(Windows用)。価格は399,000円。販売予定数は100セット。
「BotRoller」はPCにインストールしてロボット放送専用サーバーに繋ぐためのソフトウェアで、コミュニケーションを実現する「Motion Messenger」と「Remote Presence」、情報提供機能を実現する「Real 3D Browser」と「Motion RSS」のほか、スケジュール機能やお祝いメッセージ機能を搭載する。近日中にキャラクター設定機能も搭載する予定。
また台湾のPCベンダーMicroStar International(MSI)と協力し、2009年2月を目標に、より低価格の身長23cm、重量500gのロボット「NNR-1」を発売する予定。価格帯は6~8万円を想定している。
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インターネット経由でロボットを遠隔操作
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BotRoller。チャットやメッセンジャーのように左側にネットに繋がったロボットの一覧が出ている
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モーションのアイコンを選択してメッセージと共に遠隔のロボットに送ることができる
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試験放送評価キットと新ロボット「NNR-1」の製品情報
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スピーシーズ代表取締役の春日氏
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スピーシーズ代表取締役の春日氏は会見に先立ち「なかなかコンシューマーのロボットで成功したところはない。我々もぜひ成功したいのだが、そのためには解決しなければならない問題が2つある。1つはコスト。10万円を切らなければ買ってもらえない。そのくらいの価格でもホビー用ロボットはあるが、認識やネット接続の機能が不足している。もう1つの問題はアプリケーションだ。まだロボットの使い方は明らかではない。パソコンの初期段階と同じで、どう使えば良いのかよく分かってない。そのための答えを一歩づつでも出ていかなければならない。『ロボット放送』は、かなり良い線を行った答えではないかと思う」と語った。
春日氏は、キャラクター、メカトロ、インターネット放送など日本が得意としている分野を集大成すると「ロボット放送」になり、それを世界に発信していきたいという。リビングにロボットを置き、それが家族や仲間を繋いだり、情報端末として役に立つものにしたいという。従来メディアと違う点は動きがあること。それにより感情移入できるメディアになりえるというのが春日氏の考えだ。
「試験放送」(専用サーバーの稼動)は6月末から。コミュニケーション、インフォメーション、アシスタンスの3つをコンテンツとする。年内に機能アップをし、来年春に新機種が出るのに合わせて「本放送」を始め、コンテンツ連携を深めて、より楽しいものにしていきたいと考えているという。ゆくゆくはコマーシャルを入れることを目指す。「そうなったら一人前」だという。また他社ブランドのロボットへの対応も考えているとのことだ。
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「ロボット放送」のイメージ
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「ロボット放送」の位置づけ
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「試験放送」のコンテンツは3種類
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ロードマップ
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デモでは恵比寿の記者会見場と渋谷にあるスピーシーズ本社とをインターネット経由で繋ぎ、ロボットを操作してメッセージとモーションを送りあう様子、「ボットムービー」と同社が名づけたインターネット上の動画との連携の様子などが示された。ボットムービーは、HTMLと連携した「RTML」というスピーシーズ独自のスクリプト言語でロボットを動かす仕組み。CMとしての活用の可能性も含めて、将来はRTMLを自動生成することで任意の動画サイトでもロボットが動くようにしたいという。
春日氏は「サーバーを介してロボットをインターネット経由で操作できることを示したかった。この仕組みを使うことでロボットを賢く見せることができる。iPodやiTunesのようなビジネスモデルが考えられる」と語った。
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デモのシステム概要
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RTMLというスクリプトでロボットを動かす
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ロボット放送は新しいメディアになるとアピールした
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【動画】モーションのアイコンを選択して実行ボタンを押すとロボットで動きが再生される
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【動画】メッセージとモーションアイコンを選択してメッセージの読み上げ・モーション再生させる様子
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【動画】恵比寿から渋谷のロボットを遠隔操作。真ん中の画像がロボットのカメラの画像
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【動画】モーションでダルマを落とす。なお次世代機ではカメラの画角はより広くする予定
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【動画】こちらはダルマを倒すことには失敗
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【動画】RTMLを使って動画に合わせてロボットが踊る
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【動画】ロボットを使ったCMのイメージ。背中から出ているのはスピーカー出力用のライン
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PREMA9株式会社代表取締役 有島政彦氏。プロダクトデザイナー
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来年発売を予定する端末ロボット「NNR-1」のデザインは「SPC-101C」同様、PREMA9(プレマナイン)株式会社代表取締役の有島政彦氏が手がけた。
ふだんは医療機器などのプロダクトデザインを行なっているという有島氏は、リビングのなかに入っても違和感がなく、触りたくなる気配を中心に、どことなく丸みがあるデザインを目指したそうだ。「丸み感があるものには触ってみたくなる衝動があり、それをいろんなところにまとめたライン」になっているという。ロボット・デザインの難しさの一つはサーボモーターの存在にあるが、関節のところはふわっとふくらんでいて、やわらかく流れているデザインとなっている。なお性別は男とも女ともつかないものになっているが、男の子、女の子をイメージしているそうだ。
有島氏は背中やお尻、腰のラインなども紹介しながら、さわればさわるほど愛着がわくものとして「あかちゃんの足の裏や掌など、ぷくぷく感があるラインにまとめた」と語った。カラーリングは検討中だがホワイトとサーモンピンクが第一候補だという。
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背中
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カラーリングは検討中
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株式会社ADKインターナショナル 上嶋渉氏
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マーケティング戦略案に関しては、10代から60代の男女に聞いたアンケート結果を示して、株式会社ADKインターナショナルの上嶋渉氏が説明した。
「ロボットに興味あるか」と聞いたところ、男性のほうが高く、女性のほうの関心度はその半分程度だった。いっぽう「NNR-1」の特性を62項目で説明したあとに同じ質問をすると、男性のほうはあまり変化しなかったが、女性のほうは50%を超えるくらいの興味度へと顕著に変化したという。なかでも子供を持った家族のなかで興味が上がる傾向があったそうで、「機能を的確に理解してもらえれば一般家庭にも普及できる可能性がある」と考えていると語った。
そのために啓蒙活動としての方策として、「ロボット創造委員会(案)」が示された。スピーシーズが運営するもので、利用者のニーズと作り手のシーズをマッチングさせてCGM的な盛り上がりを狙うという。
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ロボットへの興味とNNR-1に関する説明後の変化
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ユーザーに対するアピールのステップ
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「ロボット創造委員会」でユーザーのニーズとシーズをつなぐ
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最後に春日氏は「どうすればいいか分からないという面はなくなった。この路線で行けるなという自信は持っている。だが我々だけではできないので協業させていただきたい」と他社に協力を呼びかけた。
■URL
スピーシーズ
http://www.speecys.com/
ニュースリリース(PDF)
http://www.speecys.com/release/pressreleaseSP08-0619.pdf
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( 森山和道 )
2008/06/19 18:16
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