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「2008 KYOSHO アスレチクスヒューマノイドカップ 公式記録会 in トヨタ ユニバーサルデザイン ショウケース」レポート
~福永氏のマノイPF01「虎太朗」が驚異的な記録で5冠達成!


トヨタユニバーサルデザインショウケース内のコミュニケーションスペースに競技フィールドが設置された
  ゴールデンウィークの幕開けとなった4月26日、東京・お台場のトヨタユニバーサルデザインショウケースにおいて、「2008 KYOSHO アスレチクスヒューマノイドカップ 公式記録会」が開催された。KYOSHO アスレチクスヒューマノイドカップは、京商の二足歩行ロボット「マノイ」シリーズによるアスリート競技イベントで、2006年12月に表参道で第1回が、2007年12月に秋葉原で第2回が行なわれている。毎年12月に行なわれる本大会とは別に、各地で同じレギュレーションによる公式記録会が開かれており、記録会で出したタイムも公式記録として認定される。昨年(2007年度)は、全部で7回の公式記録会が開催され、記録が次々と更新されてきた。

 今回の公式記録会は2008年度の開幕戦となり、従来の5m走に加えて10m走と20m走が新たな競技として追加され、競技フィールドが化粧合板からパンチカーペットに変更されるなど、昨年までとは大きく内容が変わっている。新たな競技規則については、こちらの記事を参照して欲しいが、まっすぐ走ればゴールに到達する5m走とは異なり、10m走や20m走ではパイロンをぐるりと回って折り返す必要があり、より競技としての難易度が上がっている。


今回の公式記録会には、総勢9台のマノイが出場した 公式記録会の案内パネル。ゴールデンウィーク初日ということもあり、家族連れも多数見に来ていた

マノイに関する展示やカタログなどの資料 先日発表された新型外装「TYPE-C」ボディも展示されていた

予選ではパンチカーペットに苦戦するマノイが続出

 今回の記録会では無線クラスの5m走に9台、10m走と20m走に各4台のマノイが出場した。まず予選走行が3回ずつ、そして午後に決勝走行が3回ずつ行なわれた。予選走行が終わった時点で、上位10台が決勝に進めるのだが、今回は参加台数が10台以下のため全てのマノイが決勝に進むことになった。

 予選走行では、競技フィールドの材質が固い化粧合板から摩擦の大きいパンチカーペットに変更されたため、足がひっかかって転倒してしまうマノイが続出。全体的にタイムの更新はなかった。従来のフィールドでは安定した走行ができていたマノイでも、足裏の材質を変えたり、モーションを変更する等のパンチカーペット対策を行なわないと、好記録の実現は難しかったようだ。

 そうした中で、5m走の予選2回目に12秒57という好タイムを出したのが、福永昇氏製作のマノイPF01「虎太朗」である。PF01はキャラクター性を重視したモデルであり、アスリート競技にはあまり向かないとされていたのだが、サーボモーターの交換をはじめ、下半身を中心にさまざまな改良を施すことで、マノイAT01を遙かに上回る記録を叩きだした。

 新競技である10m走についても、虎太朗は他の3台の最高タイムと比べてなんと半分以下の38秒29という、圧倒的な記録で予選を1位で通過。虎太朗は、PS2ワイヤレスゲームパッドとTEC-3を利用しており、アナログスティックを利用したスラローム走行を実現。左右に旋回しながらの歩行モーションも用意することで、上手にコースを回っていた。一方20m走の予選は、佐藤公彦氏のマノイAT01「F325」が2分36秒85という記録で1位通過し、虎太朗は2分38秒53の僅差で2位となった。20m走というのは、1/5スケールのマノイにとってはなかなか過酷な競技であり、途中でバッテリが切れて立てなくなったりするなど、ゴールまでたどり着けない機体も多かった。


今年度から、競技フィールドの材質がパンチカーペットに変更された。ワタナベ工業社製のニードルパンチカーペット(グレー)が使われている 【動画】5m走予選走行1回目の様子。右の機体は、現在5m走9秒01の世界記録を保持している、Dr.GIYこと萩原佳明氏の「ミャノイ02」、左の機体は榊原誠夫氏の「マノタイガー」 F325は京商の4013HV脚キットを利用して、脚のサーボモーターをKRS-4013HVに換装しているほか、腰と腕にもヨー軸が追加されている

タイムを大きく縮めた決勝走行、虎太朗がぶっちぎりで優勝

 予選から決勝でどれだけタイムを縮められるのかというのが、アスレチクスヒューマノイドカップの見所のひとつ。各選手とも、予選では苦しんでいた新しい競技フィールドの癖をつかみ、モーションを調整することでタイムを大幅に縮めてくる。予選では何度も転倒していても、決勝ではほとんど転倒せずにゴールに到達する機体も出てきた。

 その中でもやはり群を抜いて速かったのが、虎太朗だ。5m走決勝走行2回目に、今回の5m走で最速タイムとなる10秒66を記録。予選の最高タイムから2秒近くも縮めてきたのだ。5m走で2位のタイムを記録したのはF325で、決勝走行3回目で13秒25を記録。また、上西泰輝氏のATACOは、予選走行ではゴールに到達することはできなかったのだが(最高4m14cm)、決勝は3回ともゴールし、3回目には3位のタイムとなる14秒07を記録した。予選と決勝の短いインターバルの間に、ここまで修正をしてきたのは本当に素晴らしいと思う。

 10m走については、虎太朗が決勝1回目に29秒75という今回の記録会での最速タイムを記録。2位のミャノイ02の最速タイムが53秒79であることからも、いかにこの記録がすごいかがわかる。また20m走でも虎太朗が決勝3回目に1分38秒64という、記録会での最速タイムをたたき出し、アスリート競技3種目を見事に虎太朗が制覇した。


【動画】虎太朗の5m走決勝走行2回目の様子。今回の記録会での最速タイムとなる10秒66を記録 【動画】上西泰輝氏の「ATACO」の5m走決勝走行3回目の様子。5m走で3位となる14秒07を記録 【動画】右が佐藤氏の「F325」、左が根本善己氏の「鉄人マノイ28号」。F325は5m走で13秒25の好タイムをだした

【動画】10m走決勝走行1回目の様子。右が虎太朗で、左がマノタイガー。虎太朗のタイムは29秒75で唯一30秒を切った 【動画】20m走決勝走行1回目の様子。手前がミャノイ02で、奥が高知尾氏の「マックス」。ミャノイ02は決勝で安定性が向上し、20m走のタイムを半分以下に縮めた

5m走で3位となったATACO。下半身のサーボモーターをKRS-4013HVに換装し、ブラケットもアルミ製のものに変更している 脚のフレームのアルミ製パーツは上西氏が自分でCADを利用して設計し、ROBOSPOTのアルミ加工サービスを利用して製作したものだ 塗装が見事な鉄人マノイ28号

パフォーマンス種目とコンクールドエレガンスも虎太朗が制覇

【動画】虎太朗によるパフォーマンス。準備体操からはじまって、パンチやキック、最後はうさぎ跳びまで見事なパフォーマンスを見せてくれた
 アスレチクスヒューマノイドカップでは、アスリート種目のほかにパフォーマンス種目も行なわれる。パフォーマンス種目は、2分間のフリーデモンストレーションを審査員が採点するものだ。今回の記録会でパフォーマンス種目に出場したのは、虎太朗1台のみであったが、準備体操やパンチ、キック、うさぎ跳びなど、見事なパフォーマンスを見せてくれた。また、各大会で最も外装や塗装が優れたマノイに対して、コンクールドエレガンスという賞が与えられる。今回の記録会に出場したマノイは、どの機体も綺麗にカラーリングされていたが、虎太朗は塗装が美しいだけでなく、背中に羽根を背負ったり頭に光る触角を生やすなど、外装のトータルの完成度が高いことが評価されたのであろう。パフォーマンス種目(今回は参加が1台だけなので自動的に優勝なのだが)もコンクールドエレガンスも、虎太朗が獲得。全ての種目を完全制覇し、前人未踏の5冠を達成した。


5冠を達成した虎太朗。触角や羽根を装備するなど、外装も凝っている 虎太朗の側面。光る触角が美しく、羽根もかっこいい 虎太朗の脚回りのサーボモーターはKRS-4013HVに換装されている。さらに、剛性を向上する強化パーツを採用

虎太朗の足裏。摩擦の小さなカグスベールを周囲に貼り、中央部に一方向にのみ滑り、逆方向にはひっかかるエチケットブラシを貼っている 虎太朗は全ての種目で優勝し、5枚の賞状を受け取ることになった。まさに完全制覇だ

開幕戦から予想を上回る好記録が続出

 最後に表彰式が行なわれ、2008年度公式記録会開幕戦が終了した。もう一度結果をまとめると、5m走の優勝は虎太朗(10秒66)、2位はF325(13秒25)、3位はATACO(14秒07)。10m走の優勝は虎太朗(29秒75)、2位はミャノイ02(53秒79)、3位はマノタイガー(1分0秒81)。20m走の優勝は虎太朗(1分38秒54)、2位はミャノイ02(2分1秒18)、3位はF325(2分31秒04)となった。

 5m走の入賞者の機体は、下半身のサーボモーターを標準のKRS-4024SからKRS-4013HVに換装しているほか、さまざまな工夫が凝らされていたが、それにしても開幕戦とは思えない好記録であった。京商ロボットグループの岡本マネージャは、10m走の優勝タイムを40~50秒程度と予想していたそうで、いきなり30秒を切ってくるというのは想定外とのことだった。

 2008年度公式記録会の第二戦は、6月15日に神奈川工科大学のオープンキャンパス内で行なわれる予定だ。アスリート種目は、無線で操縦を行なう無線クラスの他に、マノイが自律で走る自律クラスもあるが、自律はハードルが高く今回は参加者がいなかった。また6月15日の公式記録会では、神奈川工科大学チームが10m走と20m走の自律走行にチャレンジする予定とのことだ。どうやって自律でパイロンを回って、ゴールまで走るのか、非常に楽しみだ。


5m走の入賞者。左から2位の佐藤公彦氏(F325)、優勝の福永昇氏(虎太朗)、3位の上西泰輝氏(ATACO) 20m走の入賞者。左から3位の佐藤公彦氏(F325)、優勝の福永昇氏(虎太朗)、3位の萩原佳明氏(ミャノイ02) コンクールドエレガンスで優勝した福永昇氏と虎太朗

URL
  京商
  http://www.kyosho.com/jpn/
  MANOI公式ページ
  http://www.kyosho.com/jpn/products/robot/

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( 石井英男 )
2008/05/13 16:21

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