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香川ダイハツ販売ショールームで、二足歩行ロボットふれあいイベント開催
~四国のロボット愛好者が子ども達に自慢のロボットを披露


 4月13日(日)、香川ダイハツ販売株式会社本社ショールームにおいて、二足歩行ロボットふれあいイベントが開催された。ショールームオープン1周年を記念したイベントの一環で、四国在住の二足歩行ロボット愛好者が集う「香川ヒューマノイドロボット研究会」のメンバーが協力して実現した。

 「香川ヒューマノイドロボット研究会」のメンバーは、四国でロボットイベントを開催したいという熱意で積極的に活動し、ロボカントリーIVなどを開催している。昨年秋の第12回ROBO-ONE大会 in 高松の開催にも、彼らが尽力している。そのROBO-ONE大会に香川ダイハツ販売株式会社が協賛したのがきっかけで、今回の1周年記念イベントに協力することになった。

 香川ダイハツ販売株式会社代表取締役の泉谷正紀氏は、所用でROBO-ONE大会を観戦できず、目の前で動く二足歩行ロボットを見るのは、今回が初めてだという。「TVでは見たことがありますが、実際に見ると楽しさと迫力が違う。個人で作ったロボットが、こんなによく動くというのに驚きます」と、目を細めて語った。

 イベントは午前と午後の2回。ロボット達が自己紹介をした後、子ども達が好きなロボットを自由に動かしたりバトルをしていた。最初は、初めて見るロボットを遠巻きにしていた子どももいたが、他の子が遊んでいるのを見ると順番に並んで操縦体験をしていた。お母さんに「もう、帰るわよ」と促されても、まだまだ遊びたがったり、「欲しい~。買ってぇ」とねだっている子もいた。


会場となった香川ダイハツ販売株式会社本社ショールーム 香川ダイハツ販売株式会社 取締役社長 泉谷正紀氏 子ども達が楽しそうにロボットを操縦し、簡単なバトルを楽しんだ

個性的なロボットと製作者達

 今回、参加した「香川ヒューマノイドロボット研究会」に所属するロボット達を紹介しよう。

 熊工房氏が製作した「CROW2」は身長40cm、体重3kg。22軸の完全オリジナル設計のロボットだ。フレームは樹脂製なので転倒や衝撃でゆがむことがない。一見Wサーボに見える膝は、シングルサーボになっているのが軽量化のポイントだという。

 実は、CROW2が完成したのが前日の夜で、今回はまだあまりモーションが入っていなかったという。子ども達の体験操縦には市販キットのKHR-2HVを提供していた。

 熊工房氏は、2005年の第5回ROBO-ONE Jクラスにエントリーしている。この時は、ロボット経験ゼロの状態でオリジナル設計にチャレンジしたため、ロボットの完成が間に合わず出場できなかったという。

 地方では、東京や大阪と比べるとロボットを作っている人が少ない。そのため、製作を始めたばかりの頃は分からないことがあっても、情報を収集するのに苦労したという。「実際に動くロボットを見たことがなかったので、ポイントを押さえることができなかったんです」と熊工房氏はいう。そこでKHR-2HVを購入して、ロボットの構造やモーションの作成方法を研究。その後、改めてオリジナルロボット開発を始めたという。

 今後は、CROW2のモーションを作り込み、センサを使った自律制御を充実させていきたいと抱負を語る。「腕でモノが掴めるように手をきちんと作るつもり」だという。


「CROW2」。サイズは身長40cm、体重3kg。完全オリジナル設計のロボットだ 製作者の熊工房氏

 「国史(くにし)II」は、「香川ヒューマノイドロボット研究会」の代表を務める松田圭司氏(穴吹工科カレッジ)のロボットだ。松田氏の勤務先である穴吹工科カレッジは、電気通信や自動車整備を学ぶ専門学校。電気通信学科の学生が、自主研究などでロボットをテーマに実践的な学習をしている。今回は、松田氏がロボットを持参して参加していた。

 今後は、国史IIのサーボを換装してハイパワー化を目指す。現在、ジャイロがうまく効いていないので入れ替えて確実に動作するようにしたいという。


「国史II」。KHR-1HVをカラーリングして、顔をつけている 「香川ヒューマノイドロボット研究会」代表 松田圭司氏(穴吹工科カレッジ)

 子ども達の人気を集めていたのは、可愛い熊のぬいぐるみ型ロボット「KUMACO」だ。四国や関西では、子ども達とのふれあいをメインにしたイベントが多い。KUMACOは女の子だけではなく、男の子にも人気のあるロボットだ。サイズも重量も子どもが抱いてちょうどいい大きさだからかもしれない。中にモーターが入っているから、動かした後に抱くとほんのり暖かいのも優しい気分にさせてくれる。

 KUMACOの製作者みっちー氏は、今年大学を卒業したばかりだ。みっちー氏は、大学時代にロボットに興味を持ち、研究室に参加して二足歩行ロボットを始めた。当初は、ROBO-ONE仕様のバトルロボットを製作していたという。だが、大会に出場して優勝を狙えるレベルのロボットを製作するのは、難しかった。既にROBO-ONEはハイパワーサーボを使った重量級ロボットが勝つ方向に進んでいた。ROBO-ONE上位クラスのロボットを作るためには、技術力とともにそれなりの資金も必要なのだ。

 「このまま、普通のバトルロボットを作っていても、目立たない」ということに気づいたみっちー氏は、オリジナル路線を模索した。2007年1月、友達と「テディベアが歩いたら、可愛いよね」という会話があって、KUMACOのアイデアが生まれたという。

 「見た人が喜んでくれるロボット、思わず可愛いっと言って手にとってくれるロボットを作れば、結果的に目立つこともできる」そう考えたのだ。

 KUMACOは、ぬいぐるみの中に機構を仕込むために、フレームから完全にオリジナル設計で自作した。ゲームパッドをコントローラーにして、マスタースレーブで動くロボットにするためマイコンボードも自作だった。

 第11回ROBO-ONE大会にKUMACOで初参加した時は、資格審査前にマイコンを焼いてしまい出場できなかった。せめてKUMACOの可愛さをアピールしようと、ロボットを抱いて会場や控え室を歩いていると大勢の人に「なぜ、ぬいぐるみを持っているの?」と聞かれたとみっちー氏は笑う。「ロボットですよ」と答えるとみんなが驚いてくれて、“目立つ”という手応えを感じたという。それ以来、みっちー氏はKUMACOを育ててあちこちの大会やイベントに参加している。

 最近になって、自分が欲しかった機能を搭載したマイコンボードが発売されたので移植した。今後は、新しいマイコンボードの性能を活かして、音声機能を追加したいという。普通に人語を話すようにするのか、クマらしい発話にするべきか、KUMACOの魅力を最大に引き出す方法を考えているところだという。


可愛らしさで一番人気の「KUMACO」。身長30cm、体重999g。全身13軸の本格的ロボットだ KUMACOの製作者みっちー氏。今年から社会人になった若手ロボットビルダーだ

 今回、アニメ系ヒーローロボットを披露したのは、中川氏だ。新型ロボットの名前は、乙ガソダム(おつがそだむ と読む)。中川氏は、振武というバトル系ロボットでROBO-ONE本戦にも出場経験があるバリバリの武闘派だ。だがどんなに強くても、「黒いロボットは子どもにウケない」ということがわかり、ふれあいイベント用に新機種を製作したという。

 乙ガソダムはKHR-2のパーツを一部使用している。自宅にあった余っているサーボなどを流用して、1カ月程で仕上げた。外装はKHR-2用の外装キットに塗装している。頭はガシャポンのオモチャを流用。今後は子どもと遊べるモーションを増やしていきたいという。「仮想敵はKUMACOです」と、中川氏は子ども達のヒーローの座を狙っている。


武闘派ロボット「振武」。バトル成績もよく全国大会でも名を知られている 子ども達のヒーローを目指す「乙ガソダム」。身長34cm、体重2.2kg 「乙ガソダム」製作者の中川氏

ロボットを楽しむ時代がやってきた

 子ども達の二足歩行ロボットふれあいイベントではあるが、子ども達以上に製作者が楽しんでいるようすが印象的だった。

 本誌で伝えるロボットコンテストの記事は、優勝したロボットや上位入賞したロボットの活躍を中心に報告することになる。そうした上位クラスの人達は、やはり業務で何か得意なスキルをもっていることが多い。すると記事を読んだ読者は、趣味でロボットをやるには高い技術力や労力が必要なのだと思ってしまうだろう。

 もちろん、そういう“すごい人”がいることは事実だ。だが、多くのロボットビルダーは、基本的にシロウトさんだ。市販キットを購入して、マニュアルを片手に手探りでロボットを始めた人の方が圧倒的に多いのだ。

 ここで紹介したメンバーに限らず、ロボット作りを始めたばかりの人も競技会トップクラスの人も、「ロボットを作るのは楽しいけど、一人でやっていても面白くない」と口々に言う。もちろん、製作したりモーションを作り込むのは一人でやる作業が多い。やっている間は、夢中になって楽しい。だが、できあがった時に作品を見てくれる観客がいなければ、張り合いがないのだろう。

 この場合、一番の観客は自分と同じくロボット好きの仲間だ。互いのロボットを見せ合い情報交換する中で、新しい技術を仕入れたり、アイデアが沸いて互いのロボットを成長させていく。ロボット製作者の多くが、コンテスト直前になるとモチベーションが上がって作り込みに力を注ぐのも、優勝という目標だけでなく自分のロボットを誰かに披露したいという気持ちがあるからだろう。ロボットを趣味として長く楽しむためには、一緒に遊べる仲間の存在が何よりも重要だ。

 二足歩行ロボットの場合は、コンテストだけではなく、今回のように子ども達へロボットを披露する機会も多い。多くの人が子どもの頃に、TVを見てアニメのロボットに夢中になったように、イベント会場では子ども達が目の前で動くロボットに夢中になってくれる。昔、ヒーローに憧れていた男の子達が、大人になって自分の作ったロボットを子ども達のヒーローとして披露できる。ホビーロボットの楽しみには、そんな側面もある。

 実際、シニア向けのロボット組立教室に参加した方が、自宅でロボットを調整していて「おじいちゃん、すごいっ!」とお孫さんに尊敬され、一緒にコンテストに挑戦するようになった例もある。


 ロボットというと、専門的な知識と難しい技術がなければ扱えないものという意識の人が今も多いだろう。筆者も市販キットがあるからと言って、「誰にでも簡単に楽しめる」とは言わない。昨今の購入してすぐに遊べるホビー用品に比べたら、やはりロボットキットはハードルが高いと思う。だが、そのちょっぴり高いハードルがあるからこそ、ロボットを手に入れて自分で動かした時の喜びがある。

 かつて二足歩行ロボットのイベントは、東京でROBO-ONE大会が年に2~3回あるだけだった。だが、最近では東京・大阪だけではなく地方でもコミュニティが発足して、イベントや練習会が開かれるようになってきている。

 子どもの頃にロボットに憧れたことがあって、今もそれを懐かしく思い返す人は、ぜひ一度、ホビーストが集うロボットイベントを見に行ってほしい。ニュース記事だけでは伝えきれない楽しさが会場には溢れている。


URL
  香川ダイハツ販売
  http://dd2.daihatsu.co.jp/kagawaD/
  香川ヒューマノイドロボット研究会
  http://www.robocountry4.com/

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( 三月兎 )
2008/04/18 16:13

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