1月13日、大阪産業創造館にて、ロボットフォースが主催する二足歩行ロボットユーザー交流会「ロボゴング7」が開催された。
ロボゴングは、初心者でも参加可能な二足歩行ロボットユーザーの交流会だ。参加するロボットのレギュレーションが緩やかで、市販の二足歩行ロボットキットがノーマルのままでも参加できる。
ロボットフォース代表の岩気氏が「ホビーロボットユーザーの裾野を広げるために、仲間同士で遊べる場を用意したい」と考え、2005年春から定期的にイベントを開催してきた。以来、初心者が参加しやすい雰囲気を大切にしながら、ROBO-ONE本戦で上位に名を連ねるロボットと交流できるイベントになっている。
イベントの運営は、単にユーザーが集まってバトルトーナメントを行なうのではなく、参加者同士がコミュニケーションをとって楽しめるように工夫されている。今大会では、新たな競技やウィナーカードシステムが導入された。
● バトルトーナメント
メインのバトルトーナメントは、大型自作機が多いORC(オーバーレギュレーションクラス)と、市販ロボットベースのSRC(スタンダードレギュレーションクラス)に別れて行なう。
ルールは、3分1ラウンドの6ポイント制。ロボットやリングにダメージを与えない発射体が許可されているなど、独特のルールがある。概ねは、ROBO-ONEルールに則している。
ORCでは、前回のロボファイトまでSRCに出場していたクロイチ氏の「Captain.PEKO」が、ORCに転向していきなり3位決定戦まで上がってきた。
対するは、ロボゴング第1回大会で優勝しているまぼたん氏が製作する「FANTASYSTA」。FANTASYSTAは、ロボット界一の伊達男、ライバルロボットをキザな台詞で挑発する(ちなみに、女の子ロボットには甘い言葉をささやくらしい)というキャラクタ。一方のCaptain.PEKOは、海賊船の船長だ。
ということで、FANTASYSTAは、昼休みに台詞を仕込み、バトル前にCaptain.PEKOに対して挑発していた。海賊船の船長なのに、センパイの挑発をちゃんと正座して拝聴しているCaptain.PEKOが可愛らしくて可笑しい。バトルは、FANTASYSTAが3ダウンKOで勝利を決めた。
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【動画】ORC3位決定戦。バトル前にCaptain.PEKO(製作:クロイチ氏)を気障台詞で挑発するFANTASYSTA(製作:まぼたん氏)
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【動画】ORC3位決定戦。FANTASYSTA VS Captain.PEKO
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決勝戦まで勝ち上がったのは、kanarow氏の「unfix MkII」とNAKAYAN氏が製作する「レグホーン」だった。
unfix MkIIもロボットフォースイベントの常連で、試合の場数を踏んでバトル慣れしてきているが、「怪鳥」の異名をとるレグホーンにあっけなくやられてしまった。
その後に行なわれたORCのランブルでも、レグホーンが怪鳥ぶりを発揮。開始の合図と同時に、隣のヒーホーハット(製作:のむむ氏)を一撃でリングアウトした。レグホーンは次々ロボットを落とし、最後に残ったHADES(製作:まつしろ氏)が起き上がるのを余裕で待っていて、タイミングを見定めて背後から一気に突き落とした。
レグホーンがあまりに強いので、余興でレグホーン対団体戦のランブルも行なわれた。
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【動画】決勝戦。unfix MkII(製作:kanarow氏)VS レグホーン(製作NAKAYAN氏)のバトル
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【動画】ORCランブル。レグホーンが大暴れして次々ロボットを落としていく
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余興のレグホーン対団体の試合開始の配置図。これでもしばらくレグホーンは戦っていた
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SRC3位決定戦は、案山子(製作者:仙人氏 )VS アフ・ロゥ(製作者:マサ吉氏)の対戦。ちなみに案山子はスケアクローと読む。試合は、リングを逃げ回るアフ・ロゥを案山子が追い詰めて3ダウンでKOした。
決勝戦は、ジローちゃん♪(製作者:motoぶちょう)VS ソーマ(製作者:かろと氏)。動画をみていただければ判ると思うが、3位決定戦と決勝戦ではバトルのレベルが違う。スリップを重ねたジローちゃん♪がポイントで5-3と追い詰められたが、ダウンを奪いポイントが追いついた。だが、最後はソーマがクリーンヒットを決めて、優勝をものにした。
優勝したかろと氏と、3位入賞の仙人氏は、大同大学の学生だ。事前に、学校で練習してきたという。前回の大会では、バトル中に故障する機体が多かったが、今回はトラブルが少なく実戦的なロボットになってきた。かろと氏は、「教授にも先輩にもいい報告ができます」と嬉しそうだった。
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【動画】SRC3位決定戦は、案山子(製作者:仙人氏 )VS アフ・ロゥ(製作者:マサ吉氏)
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【動画】SRC決勝戦、ジローちゃん♪(製作者:motoぶちょう)VS ソーマ(製作者:かろと氏)。ダウンを取り合ういい試合内容だった
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おなじみのロッポ大会も行なわれた。ロッポは、ロボットフォースが販売するアルミフレームキットの商品名だが、ロッポ大会にはロッポっぽいロボットであれば、参加できる。
市販キットで二足歩行ロボットを製作すると、カスタマイズしていくうちにサーボを強力なものに換装したくなり、余剰パーツがでることがままある。そうしたパーツで小さなロボットを作って、「気楽に楽しもう!」というのが、ロッポ大会のコンセプトだ。もちろん、初心者の入門にも最適だ。今回は、レンタルロッポの参加枠も2体あった。
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【動画】紙相撲のようなのりのロッポ大会
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レンタルロボットで子どもオペレーターで参加できる
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● 新競技、団体戦の「おみこしバトル」と「ロボトラップス」
新たに2種類の団体戦競技も行なわれた。
団体チームは5体~7体のロボットで構成される。事前にチームリーダーだけが決まっていて、当日、参加したい人は自分からリーダーに申し出てチームに入団する。憧れのロボットチームに参加する人、参加メンバーを見て強いロボットが集まっているところに入る人、それぞれだ。勝つためには、どのチームに参加するかも重要なポイントになる。チームメンバー数に上限があり、出遅れると参加できなくなってしまうため、自分から積極的に声を掛けることも必要だ。
団体競技のひとつ、「おみこしバトル」は木製のおみこしに1体のロボットを乗せて、紅白に分かれて戦う。相手チームのおみこしをリングから落とした方が勝つ。
これまで行なわれていたバトルカオスよりも、勝敗が観客にわかりやすく、おみこしが派手に動くシーンもあって見ていて面白い。
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団体戦には積極的に参加しよう。レグホーンチームは、若い参加者に人気!
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【動画】新競技「おみこしバトル」。1体のロボットをおみこしに乗せ、互いのおみこしをリングから落とし合う
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もうひとつの「ロボトラップス」は、障害物競争だ。スタート地点のサイコロ壁を崩し、細い棒がゴロゴロと動くすり足トラップやリング中央にある可動バー、コーンなどの障害を避けてゴールへ向かう。
対戦形式になっていて、コーンの位置は対戦チームのリーダーが決める。コーンは倒すとペナルティになる。転んでしまったロボットを他のロボットが押してゴールまで連れていってもいい。
最初に競技を行なったレグホーンチームは、リーダーのレグホーンがサイコロ壁を崩し、すり足トラップを抜けて、一気にゴールへ向かった。いちごちゃん(製作者:さや氏)もほぼ同時にゴールに入った。だが、続くロボット達は、障害物に阻まれて苦戦していた。このようすを見て、他のチームは戦略を練ってチャレンジした。
FANTASYSTAチームは、小型で俊敏に動く「力士マンJr(製作者:robotec氏)」を先陣に立てた。力士マンJrは、すり足トラップを前転でクリアして、コーンを回り込んで可動バーを内側から開き、後続ロボットに道を開いた。仲間のロボットは悠々と歩き、最短タイムで全ロボットがゴールに入った。
robotec氏は、「団体競技は、みんなで戦略を考えて挑戦する。そして何が起こるか分からないという面白さがある」と語っていた。
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【動画】スタート地点からゴールまで数々のトラップをくぐり抜けて、全員でゴールを目指す「ロボトラップス」
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この競技はチーム内の戦略が重要だ。先陣を切るロボットが後続ロボットのために障害物を除いて道を作るのがポイントになる
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【動画】すり足トラップ。細い棒がコロコロしているため、すり足のロボットは乗り越えることができない
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可動バーを開いて道を切り開くのが突破のポイントとなる
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【動画】身軽な力士マンJr(製作者:robotec氏)が、トラップをくぐり抜けて仲間のために道を造った
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戦略の勝利! チーム全員が見事にゴールしたチーム「まぼたん」
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● 挑戦状バトルとウィナーカードシステム
これまでロボゴングでは1、2回戦で敗退したロボットが、敗者復活戦を2×2バトルで行なっていた。スタッフがなるべく初めての組み合わせでペアを組み、トーナメントを戦うことでユーザー交流ができるよう配慮していた。
今回は、2×2バトルの代わりに参加者が対戦相手を自分で選ぶ「挑戦状バトル」を行なった。「挑戦状バトル」はトーナメント敗退すると誰でも参加できる。ロボットユーザーは、「あのロボットと一度対戦してみたい」という思いを持っているので、自分から挑戦を申し込めばその夢が叶う。
挑戦状バトルにはクラス分けがないため、ORCとSRCのロボットがバトルすることもできる。1体のORCに2体のSRCで挑戦するのもOKだ。
挑戦状バトルや団体戦に出たロボットは、試合に勝つとウィナーカードを1枚貰える。トーナメントも3回戦以降は勝者にウィナーカードが1枚与えられる。これは、トーナメントで勝ち進んでいる間は、挑戦状バトルにチャレンジできないためだ。
ウィナーカードは、抽選券になっていて、最後に抽選で賞品が当たる。
トーナメントで負けてしまっても、挑戦状バトルや団体戦に積極的に参加して勝てば、賞品を貰える確率が高くなるのだ。
ロボゴングでは、今まで上位入賞者に協賛各社から豪華な副賞が贈られていた。強いロボットが副賞のサーボ等を使ってロボットを強化し、ますます強くなっていくというスパイラルがあった。
主催者の岩気氏は、「中級者が次回に強くなって参加すると、イベントがもっと面白くなる」と考えて、ウィナーカードシステムを取り入れたという。
このシステムでは、岩気氏のもくろみどおり「トーナメントでは上位に入れなかったけれど、バトルが楽しくてしかたがない」という人が、賞品を得るチャンスが一番多いことになる。
ウィナーカードは、今後のイベントを通じてたくさん集めておくと何かいいことがある、かもしれない。まだ具体的な案はないというが、参加者の意見を取り入れながら、今後、ウィナーカードをたくさん集めた人に何か特典を考えるという。
イベントに積極的に参加し、どんどんバトルに勝ってウィナーカードを集めよう。
今回のロボゴングでは、これまでSRCに出場していた人が、ORCに参入して上位に入ったり、SRCの上位の顔ぶれが違うなど、世代交代が行なわれているのを感じる。また、小中学生や女性の参加も増えている。
ますますユーザーの裾野を広げながら、面白いイベントになっていくことを期待したい。
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【動画】岩気氏が製作した関西お笑い芸人ロボットの「プッシュくん」がサイコロを振って、抽選をする
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上位入賞者にはメダルと記念品が贈呈された
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会場の外に、協賛企業ブースが設置されている
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■URL
ロボットフォース
http://www.robot-force.jp/
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