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第5回ROBO-ONEスペシャル「ROBO-ONE Special CUP」開催
~「ROBO-ONE」でのサッカー大会。宇宙大会予選競技も


 東京おもちゃショー一般公開日と同じ6月30日から7月1日、パナソニックセンター東京にて「第5回ROBO-ONEスペシャル」が行なわれた。「ROBO-ONEスペシャル」とは、ホビーストによる自作小型二足歩行ロボットの格闘大会「ROBO-ONE」の派生イベント。これまでは障害を突破したり走行能力を競ったりするアスレチック競技がメインだった。

 いっぽう今回の大会正式名称は「ROBO-ONE Special CUP」。新競技として加わった「ROBO-ONE Soccer」がメイン競技となった。「ROBO-ONEサッカー」とは、自作二足歩行ロボットで3対3のチーム対戦を行なうサッカー競技。ロボットサッカーというと主に大学研究機関が世界規模で行なっている自律ロボットのサッカー競技「ロボカップ」の知名度が高いが、ROBO-ONEサッカーは、自律ではなく操縦で競技を行なう。

 大会では、まず初日に予選として、伏せた状態から立ち上がり、ターンして走行速度を競う「ダッシュ」、サッカーのスローインをイメージした「ボール」、そして小型ボールを蹴る「シュート」が行なわれた。それぞれの競技での得点を合計し、2日目に、チーム得点の上位16チームでトーナメント方式で本戦が行なわれた。初日には、これまでどおりのアスレチック的なROBO-ONEスペシャル競技「イーグル」も開催された。

 2日目の本戦の合間には、ROBO-ONE宇宙大会予選競技も行なわれた。こちらは自作の二足歩行ロボットをわざと回転するようにポンと放り投げて、板の上にスクッと足で立ったら賞金10万円、3回立つことに成功したら賞金だけではなくROBO-ONE宇宙大会に公式に参加できる権利を獲得するというもの。今回は4人がエントリーし、うち3人が挑戦した。

 各競技の結果と模様をお伝えする。


ROBO-ONEアスレチック「イーグル」

 まず、初日に行なわれたROBO-ONEスペシャル「イーグル」競技だが、今回、規定タイムの4分以内にゴールできた選手は3名。第3位は「くまたろう」(引間奈緒子さん製作)、2位は「アリウス」(スミイファミリーさん製作)、そして第1位は「YOGOROZA-V(ヨゴローザ5)」(だうとさん製作)。「YOGOROZA-V」のタイムは1分37秒9だった。

 「イーグル」は、最初に長さ3mのステンレスパイプ棒を腕または足、あるいは体の一部を伝って渡っていき、クッションであり同時に障害でもあるゴム板の上に着地、回転ボードの上を渡ったあとに両開き扉を開け、さらにL文字型の細い一本橋を渡る。最後に階段を上ったあとに飛び降り、ゴール地点に至るというアスレチック競技である。

 ロボットそれぞれに得意な領域があり、そこをスムーズに突破して時間を稼ぎ、いかに苦手な領域を着実に時間をかけて突破できるかがポイントとなっている。


【動画】一本橋を渡り、階段を上っていく「アリウス」 【動画】安定感とスピードを兼ね備えた「ヨゴローザ5」 【動画】獣のようにわたっていく「くまたろう」

【動画】腕先にアタッチメントをつけ、凄まじい勢いで棒を滑っていた「Ivre VAN」 【動画】ワンウェイベアリングを使って棒をすべる「マジンガア」 【動画】膝で棒わたりをしていく「NABEDAM」

【動画】キィーという金属音を立てながらわたっていく「ストロングカシン1号」 【動画】体を振って反動で移動していく「みんみん」

ROBO-ONEサッカー予選 ~「ダッシュ」「ボール」「シュート」

 続けて、ROBO-ONEサッカーの予選が行なわれた。エントリーしたのは全部で20チーム。各チームは補欠含めて4台から構成されるのでロボット台数では80台がエントリーしたことになる。

 繰り返しになるが予選競技は3つからなる。伏せた状態から立ち上がり、ターンして走行速度を競う「ダッシュ」、ボールを両手で掴んでターゲット目指して投げる、すなわちサッカーのスローインをイメージした「ボール」、そして小型ボールをターゲット目指して蹴る「シュート」である。

 ボール競技、シュート競技はともにトライは3回で、合計得点を競う。ターゲットに近いほど得点が高くなる。満点は30点である。それぞれの競技には、1チームからそれぞれ別のロボットが出場しなければならない。

 予選の結果、同着1位が3チーム出た。「ロボット野郎Aチーム」、「RFCバンブーブリッジ」、「エスプレッソスギウラ」である。この結果をもとに競技での得点を合計し、上位16位が本戦に出場、2日目の本戦トーナメントが組まれた。


ダッシュ競技

【動画】9秒88で1位「チームアリウス」 【動画】素早い起きあがり動作で8秒90を出した「ROBOSPOT選抜チーム」。ダッシュ2位 ダッシュ3位は「ロボット野郎Aチーム」

ボール競技

【動画】的の真ん中にボールをあて10点を出す「チームアリウス」 【動画】「ロボファイターズF2」チームからはニワトリ型ロボット「レグホーン」がボールを投げた 【動画】ボールを投げたあとの反動を小刻みなバックで吸収する「トリニティ」チームの「クロムキッド」

【動画】体をそらせてボールを投げる「RFCバンブーブリッジ」チーム 【動画】ジャンプしながら投げる「ロボファイターズF1」チーム 【動画】同じくハイジャンプしバスケットボールのシュートのように投げる「ロボット野郎Aチーム」

シュート競技

【動画】力強いシュートの「カイザー・オール・スターズ」 【動画】的に見事にボールをあてて大喜びする「SH最強軍団(四川会)」チーム

【動画】ボールに比べてあまりに小さいロボット「G-ROBOTS」を使って健闘したG-ROBOTSチーム 【動画】「大阪産業大学テクノフリーク部」はJRプロポのRBシリーズで出場

 ボール競技ではさまざまな投げ方をしていたが、単に腕のスピードを上げてブンと振っても飛ぶわけではない。けっきょくのところ人間のように、ギリギリまでボールをキープしつつ、投げるときには肘を内側に回転させつつボールを手首で押し出すような、きちんとボールに対して加速度を与えられる機構を備えていたロボットが、再現性も高くボールを投げられていたようだ。特に「ジュピトリス」チームの改造したマノイATのボール投げが印象に残った。

 ROBO-ONE委員会代表の西村輝一氏は16チームを選出した予選の結果について「とにかくこの大会はできるだけ楽しく、参加者が楽しむ方向にルールを少しずつ変えていきたい。そのへんは皆さんからご意見をいただいて、よいものにしていきたい」と述べた。


ボールはウレタン製で変形しやすいため「マイボール」を使う参加者も多かった コスチュームをそろえてきた「フラワー戦隊ナガレンジャー」 競技の合間にはスポンサー企業PRを兼ねて、来場者がロボット操作を体験する時間も設けられた

ROBO-ONEサッカー本戦 引き分けになったら「バトル」で決着

 さて、こうして2日目にはROBO-ONEサッカーの本戦が行なわれたわけだが、本戦開始直前に、引き分けになった場合は両チームから1台ずつロボットが出て「バトル」が行なわれることが発表された。あとで委員会に確認したところ、当日朝のミーティングで急遽決まったものだったそうだ。サドンデスで試合を行なうことやジャンケンも検討されたが、時間もかかるし「これはROBO-ONEなんだから」という理由でバトルにすることにしたという。

 多くの参加者たちはこれまでの「ROBO-ONE」出場経験者であり、もともとバトルを行なってきたロボットでサッカーに出てきている。そのため急遽導入された「引き分けになったらバトル」というルールにも、モーション含めてすぐさま対応できたようで、このルール変更をすんなり受け入れた。いい加減に思えるがそれも「ROBO-ONEらしさ」ということなのだろう。

 しかしいっぽう、サッカーだけをやるつもりで出てきた参加者は、いわばサッカーをやるつもりで出てきたらタコ殴りにされたようなもので、参加者のなかには戸惑いを超えて憤懣やるかたない思いを抱いた人たちもいた。近藤科学主催のロボットサッカー競技での強豪「RFCバンブーブリッジ」や「G-ROBOTS」チームはこれで涙をのんだ。もっとも、観客からすれば、サッカーもバトルも見られるということで、ウケていたようだった。今後もこのルールは活かされそうだ。


 最終的にトーナメントを勝ち上がったのは「ROBOSPOTS選抜チーム」と「ロボット野郎Aチーム」だった。

 「ROBOSPOTS選抜チーム」は、近藤科学が運営するロボット・ユーザー交流スペース「ROBOSPOTS」の運営メンバーと、ROBO-ONE古株の「Metalic Fighter」から構成されたチーム。相手の動きを予想したお互いの連携、転倒からの素早い復帰、動き続ける運動量の高さがウリだ。華麗なプレーを見せる選手(ロボット)こそいないものの、最初から「優勝候補」との評判が高かった。

 対する「ロボット野郎Aチーム」は、ROBO-ONE本戦で優勝した「ヨコヅナグレート不知火」を頂点に、いわばパワープレイをウリにしたチームである。これまたどのロボットも運動性能は高く、動きも素早い。まだチームでの連携こそそれほどではないものの、ロボット1台1台の性能が高いため、今後非常に強くなる可能性を秘めている。

 対戦は押したり押されたりをお互い繰り返していたが、最終的には、「ロボット野郎Aチーム」の優勝となった。


【動画】決勝戦の様子。青いゼッケンが「ロボット野郎Aチーム」。赤いゼッケンが「ROBOSPOTS選抜チーム」 【動画】決勝戦の様子。「ヨコヅナグレート不知火」のスローインをキーパー「Metalic Fighter」がセーブ

【動画】決勝前半戦 【動画】決勝後半戦

ROBO-ONE宇宙大会予選

 さて今回は2010年に予定されている「ROBO-ONE宇宙大会」の予選競技も行なわれた。ROBO-ONE宇宙大会とは大きさ50cm四方の「ROBO-ONE衛星」と、4台の二足歩行ロボットを打ち上げ、宇宙でロボットバトル大会をやろうというもの。詳細は本誌での以前のレポート記事を参照してほしい。

□趣味を目的とした宇宙ロボットの可能性
~第8回ROBO-ONEテクニカルカンファレンス・レポート
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/06/05/27.html/
□宇宙ロボット開発を目指す仮想宇宙大会「第一回ROBO-ONE on PC / Sat.」開催
~無重量状態での二足歩行ロボット制御、格闘はどうなる?
http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/01/30/344.html

 今回の予選競技は二足歩行ロボットを、水平距離1m以上、垂直距離50cm以上の高さから、ROBO-ONE1/4リング上に投げ、二本足で着地、10秒以上倒れずに立っていられることを目指すというもの。

 ロボットは1kg以下、150×150×100mmの立方体に収まることが必要条件。ロボットの回転を制御させる競技であるため、方向を問わず90度以上ロボットが回転する投げ方をすることが必須条件。

 一回着地すれば10万円が賞金として与えられる。最初に3回連続して成功したロボットは、ROBO-ONE宇宙大会参加機体第1号となる。

 ロボットを空中に放り投げて姿勢制御を行なわせる競技となっている理由は、自由落下状態では無重量になり、その状態で姿勢制御できるロボットならば宇宙での姿勢制御への応用が期待されるからだ。また、もしこれができるようになれば、マンガの世界のロボット競技のように、参加者が自分のロボットをリングに放り投げても着地できるようになるかもしれない。

 逆に、着地できなければ、ロボットは、ほぼ間違いなく壊れる。この非常に厳しい姿勢制御競技に対し、今回は、「まこ」さん製作の「mako-one」、「おっくん。」さん製作の「たまG」、「ASIAN GUILD」さん製作の「PetaPina」の3台がトライした。

 たとえばデジカメを硬い板の上に投げろと言われて投げられるだろうか? まずはこの勇気ある挑戦結果の動画をご覧頂きたい。


挑戦した3台のロボット。左から、たまG、mako-one、PetaPina 【動画】「まこ」さん製作の「mako-one」 のトライ。足が取れて大破 【動画】「おっくん。」さん製作の「たまG」。ホイールによる姿勢制御までの時間を稼ぐため高い放物線軌道を描くように投げられたたが、そのまま胴体でガツンと落下。「実験一回で2,000円が飛ぶ」そうだ

【動画】「ASIAN GUILD」さん製作の「PetaPina」は応急修理しつつ3回トライした。1回目は胴体側面で激突 【動画】2回目の挑戦。失敗したが、よく見ると軌道の頂点で体を回転させ、足を下にして落下しているのが分かる 【動画】3回目の挑戦。こちらも失敗したが、足から落ちている。会場からは一斉に「惜しい」の声。プラボディによって非常に軽量に作られているという

 残念ながら全員失敗に終わったが、ASIAN GUILDさんの「petapina」は非常に惜しかった。また、まったく可能性がないわけではない、ということを実際に他の参加者たちにはっきりと示したことで、多くの参加者の心に火を付けたようだ。最近はあまり「ロボット」らしい点が見られなくなっていたROBO-ONEのロボットたちに良い刺激となったのではないだろうか。

 なおASIAN GUILDさんの「petapina」は非常にチャレンジングな独自の道を歩んでおり、以前も本誌レポートで取り上げられている。ひたすら「手間」がかけられているという。

 空中に浮いた自由落下状態で姿勢を制御して足で立つためにはどうしなければならないのだろうか。まず3軸加速度センサー等で最初に飛び出したときの姿勢情報を計測し、それに応じて姿勢を変えなければならないのだが、空中に飛び出した角運動量はそのまま保存されるので、これを何らかの形で吸収してロボットの姿勢を収束させなければならない。着地したら着地したで、着地検知と、着地の衝撃を吸収する技術が必要である。

 このため、宇宙ロボットや人工衛星の世界でよく使われるのが、フライホイールを回転させたトルクの反作用を利用するリアクション・ホイールである。リアクション・ホイールのもっとも分かりやすい応用例は、CMでも有名になった村田製作所の自転車型ロボット「ムラタセイサク君」だろう。「ムラタセイサク君」の胸では大きなホイールがクルクル回っていたが、あれはバランスを取るために回っていたのである。


 もう一つがコントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)である。CMGはフライホイールと、フライホイール回転軸に直交するモーター付きジンバルから構成されている。ホイールを回転させて角運動量を蓄積させておき、それを傾けることでジャイロ効果による回転力を得るわけだ。得られる力はフライホイールの角運動量とジンバルの回転速度の積となるためリアクション・ホイールの数十倍の力が得られるいっぽう、複数のCMGを使ったシステムの制御は複雑な逆行列演算を高速で行なわなければならないため難しいとされている。

 この特徴のため、CMGは大型の宇宙機、具体的には宇宙ステーションの姿勢制御に使われている。また機敏な反応が得られることから最近は宇宙と似た環境で働く水中ロボットの制御にも、東大・浦研究室で検討が始まっている(本誌レポート参照)。

 今回もロボットたちはそれぞれホイールをつけていたが、放り投げてから着地するまではわずか0.5秒。十分な回転数を得られなかった。だが、非常に惜しいロボットもあったことから、おそらく今後もこのようなアプローチが続けられることになるだろう。

 いっぽう、人間やネコには、はずみ車はついていない。だがネコは体をひねって姿勢制御できるようだし、人間でも、スキージャンプの様子を見ていると、空中に飛び出したあとも何らかの形で姿勢制御できるようだ。体に引きつけたり伸ばしたりできる手足を持った物体ならではの空中姿勢制御技術がROBO-ONEから生まれたら、それはそれで非常に面白いことである。

 また姿勢制御のやり方そのものも、センサー情報からのフィードバックだけではなく、フィードフォワードで、いわば最初から、飛び出した瞬間の情報からある程度「決め打ち」で身体の姿勢を変えているのだという説もあるようだ。

 空に飛んだROBO-ONEロボットがスタッと二本足で立つ日は来るのだろうか。期待したい。


URL
  ROBO-ONE
  http://www.robo-one.com/
  ROBO-ONE Special CUP
  http://www.robo-one.com/roboonesp/roboonesp5.html

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( 森山和道 )
2007/07/03 19:38

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