5月16日、東京ビッグサイトにて、「第10回組み込みシステム開発技術展(ESEC)」が開幕した。主催はリードエグジビションジャパン株式会社。会期は5月18日まで。ESECは組み込みシステムのハードウェア、ソフトウェア、開発環境の専門展で、組み込みボード・コンピュータのほか、電力線通信、画像処理、無線通信、設計開発サービスなどのゾーンが設置されている。
ESECではロボットは教材用、デモンストレーション用として利用されている。会場内で見かけたロボット展示をご紹介する。
中でも目立ったのが教材としてもしばしば用いられているマインドストームで、今回は、あちこちのブースでレゴマインドストームNXTを使ったデモンストレーションが見受けられた。
テンプスタッフテクノロジー株式会社ブースでは「チームテンプラ」として「ETロボコン2007」に参加している同社の取り組みがアピールされている。またエンジニア向け研修サービスや教育機関向け実習教材販売などを手がけている株式会社アフレルのブースでも、同じくマインドストームがデモを行なっていた。
また、サイバネットシステム株式会社のMATLABブースでは「ロボットコーナー」を設置。マインドストームNXTによる倒立振子の制御モデルをMATLAB/simlinkで開発するというデモを行なっていた。これもトレーニング用である。
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テンプスタッフテクノロジー株式会社ブース
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株式会社アフレルのブース
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「ロボットコーナー」を設置した MATLABブース
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レゴマインドストームNXTによる倒立振子のデモ
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モデルベースの組込みシステム開発のための教材としての提案
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組み込み用Linuxボードを専門とする株式会社トラスト・テクノロジーは、同社で独自に開発したロボット制御用の小型ボード「TT-RMCB01」などからなる「ロボモジュール」製品群を展示している。「TT-RMCB01」は6cm角で重量35g。CPUはARM7で、30チャンネルのRCサーボモータを制御可能。miniSDメモリカードを搭載することもできる。「TT-RMCB01」を搭載し、近藤科学社製サーボを採用した小型二足歩行ロボットを使ったデモも行なっている。
C言語による開発が行なえることと、同社の開発したロボット操作ソフトウェア「Trust Motion」を使えば仮想3次元空間のロボットモデルを動かすだけでモーションを組んだり、他社のCAD形状データを読みこんで利用できることなどが特徴で、今後はロボット制御用ソフトウェア開発を容易にするために各種拡張ユニットのAPI公開などを予定している。
6月下旬にボードならびにロボットを、自作ロボット製作者や教材向けに発売予定だという。
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株式会社トラスト・テクノロジーの「ロボモジュール」
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二足歩行ロボット。サーボモーターには近藤科学の2350が採用されている
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背面。モーションデータなどを記録するSDカードを差すことができる
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制御ボード「TT-RMCB01」
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オプションとしてDCサーボモータ制御用ブリッジボードや通信ボードそのほかも発売予定
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将来的にはカメラモジュールなども発表していくという
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モーション作成ソフトウェア「Trust Motion」
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【動画】歩行デモ
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【動画】腕立て伏せ
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ITRON準拠のOSほか組込みシステム開発における各種オープンソフトウェアを開発している団体TOPPERS(Toyohashi OPen Platform for Embedded Real-time Systems)プロジェクトのブースでは、株式会社ソフィアシステムズと株式会社ベストテクノロジーが組込みシステム技術者育成のために開発されたロボット教材「eMaster GEAR」を展示している。
「eMaster GEAR」は身長32.5cm、重量1.4kg、16自由度(足5×2、腕3×2)。アクチュエータはDynamixel AX-12。CPUユニットはAtmel製AT91SAM7S128(ARM7)。開発ツールとして「GCC Developer Lite」が付属する。
なお制御ソフトウェアや教材コンテンツは公開されている。また6月15日には大田区産業プラザ・コンベンションホールにて「TOPPERSカンファレンス2007」が開催される予定だ。
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「eMaster GEAR」
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TOPPERSの教育ワーキンググループの成果
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株式会社ウェルビーンのブースでは、株式会社フラクタリストによる「NomadicNode(ノーマディック・ノード)」というネットワーク間機器連携システム構築のためのソフトウェアのデモに、日本遠隔制御のロボットキット「RB1000」を使っていた。
「NomadicNode」は機器の接続管理を行なうサーバーとクライアント側に実装されるクライアントモジュールからなり、NAT超え通信機能、ファイアウォール超え通信機能、データ暗号化、メッセージ認証機能などを提供するという。
デモは、PDA上でフラッシュで作られた操作インターフェイスを使うことで、ネットワーク越しにロボットの動きを操作するというものだった。今回のデモは上半身を動かしていただけだったが、今後は下半身も動かしてサッカーなどもやらせてみたいという。なお本来のターゲットは家電などの操作である。
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株式会社ウェルビーンのブースでは日本遠隔制御の「RB1000」がデモに使われていた
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「NomadicNode」を使ったM2Mのデモ
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米国LANTRONIXの組込みデバイスサーバ「XPort AR」を使ったシリアル/イーサネット変換ボード「DT-Free」で接続
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NECブースではPaPeRoとキティロボが展示されているが、残念ながら発表されたばかりのPaPeRo miniの姿はなかった。ただし同時に発表された小型音声対話モジュールはデモ展示されている。
株式会社レイトロンと北海道大学の共同ブースでは先頃発表された家電製品を制御するコミュニケーションロボット「Chapit(チャピット)」や、音声対話を行なうロボットが展示されている。雑音ロバストな不特定話者音声認識LSIの応用例という位置づけだ。
サンリツオートメイション株式会社ブースでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の展示協力で「騒音計測用ローバ」が展示されている。独自の通信・画像遅延補正技術による遠隔操作IPシステムによって任意の地点に移動。映像と音声を収録して送信する。車速と操舵角情報から予測画像(疑似未来画像)を作り出し、遅延を感じさせない操作が可能だという。
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NECブースのPaPeRo
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NECの組み込み用小型音声対話モジュール
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PaPeRo miniにもこのモジュールが採用されている
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レイトロン/北海道大学ブースの「Chapit(チャピット)」
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そのほかのロボット
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雑音ロバストな不特定話者音声認識LSIの応用例という位置づけ
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サンリツオートメイションブースの騒音計測用ローバ
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正面
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もう1つ、ロボットではないのだが紹介しておきたいものがある。東芝ブースでは発光ダイオード(LED)による光通信を利用したビークルのモックアップが展示されている。お互いに可視光を使って通信をしながら動く未来の乗り物をイメージしたものだ。動くことはできないが、光通信部分そのものは実際にデモされている。信号から車が渋滞情報などを受信し、さらに後続の車に伝えるといった応用が想定されているそうだ。
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可視光通信ビークル。透明パネルで乗車した人のイメージが示されている
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片方の車から光で通信を送り、もう片方で受信する
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下が発光部、上が受光部。上の丸のうち一番下の丸部分のなかに、よく見ると四角形の物体が見えるが、それが受光部分だ
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なお会期3日目の特別講演では、本田技術研究所 基礎技術研究センター 第2研究室室長 上席研究員の広瀬真人氏による「ホンダ『ASIMO』の開発と、モノづくりにおける組込み業界への期待」が予定されている。
■URL
第10回組み込みシステム開発技術展
http://www.esec.jp/
■ 関連記事
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( 森山和道 )
2007/05/17 00:43
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