6月28日~30日までの日程で、東京ビッグサイトにて「第9回組込みシステム開発技術展」が開催されている。「第15回ソフトウェア開発環境展」、「第1回RFIDソリューション展」などとの併催。主催はリード エグジビションジャパン株式会社。
出展企業数は452社で、モーションコントロール、組込み画像処理、ボードコンピュータ、設計・開発サービス/コンサルティング、無線通信、タッチパネルの6つの特設ゾーンが設けられている。
組込みといえば携帯電話や車載システム、デジタル家電であり、同展でもそれらの関連展示が非常に多い。特に今年はCAN(Controller Area Network)/LIN(Local Interconnect Network)に続く次世代車載LAN規格として注目されている「FlexRay」関連の展示が目立った。
いっぽうロボットも組込み機器そのものである。また、現在の小型ロボットのなかには、組込み技術者のトレーニングのための教材としてビジネス展開されているものも少なくない。いくつかのブースでも各種ロボットがデモ用に駆り出されており、人目を集めていた。やはり実際に動くモノは開発を実際に行なっている人たちの興味もそそるようだ。
特にロボットに着目して、同展の展示を簡単に紹介する。
組込みLinuxや各種システムの法人向け委託開発事業を行なっている株式会社トラスト・テクノロジーは小型のロボットと、同社が開発したモーション作成ソフトウェア「Trust Motion」をデモ展示している。
「Trust Motion」は任意の自由度とモーター数に対応したロボットモーション作成ソフトウェア。DXF形式やVRML形式などのモデリングデータの読み込みや各ユニットの形状や関節位置の調整もでき、さまざまなロボットのコントロールに使えるという。制御ボードへの通信インターフェイスはRS-232C、USB、TCP/IPをサポート。
「Trust Motion」は、今秋にも発売される予定とのことだ。そのほか各種ロボット制御用基板も合わせて参考出品している。トラスト・テクノロジーではこれらの製品群を「ロボモジュール」と呼んでいる。
トラスト・テクノロジーのロボット事業は経済産業省平成16年度中小企業・ベンチャー挑戦支援事業の実用化研究開発事業に採択されている。また同社は、バンダイが2001年に発売していたエンターテイメントロボット「BN-1」の開発にも携わっていた。代表取締役の山本隆一郎氏によれば、今後、さまざまなロボット開発事業に乗り出す予定だという。
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(株)トラスト・テクノロジーの「Trust Motion」
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ロボットそのものは腕を振り回すような動きのデモのみ
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参考出品の各種ロボット制御用ボード
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各社ブースで目立ったのが、株式会社ゼットエムピー(ZMP)の二足歩行ロボット「nuvo」と、同じく教材ロボット「e-nuvo」の姿だ。まとめて紹介する。
「ROBO-ONE on PC」のスポンサーでもあるサイバネットシステム株式会社のMATLABブースではMATLAB/Simulinkでの制御ロジック作成とReal-Time Workshopの機能の1つ、Embedded Coderを使ったCコード生成と、SILS(Software in the Loop Simulation)環境での評価デモが行なわれていた。
株式会社ルネサステクノロジのブースでは、ルネサスのCAN内蔵マイコン(メインマイコンのSH2、モーター制御用のH8S、M16C/Tiny)をCANで接続して二足歩行ロボット制御に使った例としてnuvoがデモ展示されていた。CANを使っていることでモータやセンサの追加が容易になり、ワイヤハーネスの削減や、メンテナンス簡素化が可能だという。
また、マイクロソフトブースでも、ビジネスデザイン研究所の会話型ロボット「ハローキティロボ」と並んで、nuvoの姿をみることが出来る。マイクロソフトは先日、ロボット開発/実行環境「Robotics Studio」を発表したが、その関連展示は残念ながらなかった。
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サイバネットシステム(株)MATLABブースでの「e-nuvo」を使ったデモ
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教材用ロボット「e-nuvo」。ZMP独自開発のDCギアードモーターを使い、CANでメインマイコンとモータドライバその他を接続している。価格は70万円程度
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二足歩行ロボットのモデルベース開発のデモ
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サイバネットシステムのブースでは、レゴ・マインドストームを使ったモデルベースデザイン手法を使った組込みシステム開発のデモ展示も行われている
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ルネサステクノロジ・ブースでのデモ
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【動画】デモの様子
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ルネサスブースでは、同社製Tinyシリーズを実装した倒立制御学習キット「PUPPY」もデモ展示されている
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(株)北斗電子と室蘭工業大学が共同開発した教育キット。ニッケル水素乾電池で連続5時間稼動する。角速度センサは村田製作所製
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マイクロソフトブースにもnuvoの姿がある
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Windows Embeddedを全面に押し出した展示だが「Robotics Studio」関連展示はなかった
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NECブースでは「PaPeRo」のCGエージェントとロボット間の連携デモンストレーションが見られる。
同社が開発して販売しているソフトウェアプラットフォーム「RoboStudio」のデモも兼ねており、RoboStudioの機能により、異なるOSで動作している機器間でも、同じようにCGキャラクター(エージェント)が動作する様子が分かる。
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NECのパートナーロボット「PaPeRo」とPDA、カーナビの連携デモ
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【動画】「移動しま~す」と言ってカーナビに移動するPaPeRo
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カーナビの中にPaPeRoがいる間は、「本体」はオフになる
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展示名は「ロボット型ユーザーインターフェイスの組込み端末への応用」
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AMD Geodeプロセッサに特化した製品を開発、製造、販売している株式会社ピノーのブースでは、先頃、ロボットによるサッカー大会「RoboCup(ロボカップ)」で優勝したTeamOSAKAのロボット「VisiON TRYZ」に採用されたボード「PNM-SG3-500MHz」その他が展示されている。
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小型ボードを並べた(株)ピノーのブース
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Geode LX800を搭載した「PNM-SG3F」ボード。VIsiON TRYZが搭載しているものと同じ
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I/Oボード「PNI-SRN」。USB×2、LAN×2、その他シリアルと音声出力を持つ
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日本ノーベル株式会社アドバンスト・クオリティ事業部では、組込み機器の品質テストを行なうための組込みソフトウェア自動検査システム「Quality Commander」というロボット・システムをデモンストレーションしている。
「Quality Commander」は、人手で行なっていた組込み機器のテストをロボットで自動化したシステム。バグ取りには実際のテストが欠かせないが、それをロボットで行なうのだ。ロボットがボタンを押し、結果をカメラで撮影してキャプチャ。期待画像と比較して合否判定を行なう。24時間人間に変わって休まずにテストを実行するシステムだ。
外部機器とも接続でき、たとえばWindowsアプリの自動操作も行なえるため、PDAとPCの連携などの自動試験もできる。人手でやるよりも3倍のテスト効率があるという。
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【動画】 「Quality Commander」。6軸ロボットによるテストの様子
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【動画】 ロボットの手元のアップ。ダイヤルを回すことも可能
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タッチパネルや携帯電話のテストを行なうXYロボットによるデモ
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富士ソフト(株)の無線LANラジコン。軽快な動作が見られる
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富士ソフト株式会社は変わった「ラジコン」を使って組込み無線LANモジュールのデモを行なっている。IEEE 802.11bを使ったラジコンだ。独自のフレームフォーマットを用いることで従来と比べて高スループットを実現した。
操作から実際の動作までのタイムラグを減らしたことにより、操作ミスが減るメリットがあるという。11bなので画像伝送には無理があるが、それ以外であれば各種ロボットに適用できる技術だと考えているそうだ。
その他のロボットをまとめて紹介する。
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【動画】インテルブースで、旭エレクトロニクス株式会社がデモしていたリアルタイムOSを使った二足歩行ロボットのデモ
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制御ボードは外にある。ウインドリバーのVxWorksでもLinuxでもリアルタイム・システムを開発できることを示すソリューションのためのデモ
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フリースケールセミコンダクタによる8bitマイコンと加速度センサを使ったデモ
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ロボット名は「うでたて君」
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コントロールボードと子基板。右のボードは市販されている
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その他、同展では各種専門セミナーなどが行なわれている。
■URL
第9回組込みシステム開発技術展
http://www.esec.jp/
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( 森山和道 )
2006/06/29 02:17
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