10月24日~26日までの日程で東京ビッグサイトにて、防犯、防災、リスク管理をテーマにした展示会「危機管理産業展2006(RISCON TOKYO)」が開催されている。主催は株式会社東京ビッグサイトで、東京都が特別協力している。出展企業数は335社。特別併催企画展として「アスベスト対策環境展'06」も行なわれている。
同展は昨年第1回が開催され、今年は第2回の開催となる。今回は国際情勢を反映したのか、テロ対策関連展示が目立った。前回よりも数は少なかったが、先ごろリリースされたばかりの三菱重工業株式会社の防災支援ロボット「MHI MARS-G」ほか、防災や警備を用途としたロボットの姿も見受けられた。ユビキタス・コンピューティング技術とロボット技術を中心にレポートする。
三菱重工の「MHI MARS-G」は高さ40cm、幅50cm、全長1mのクローラ移動式のロボットで、重量は55kg。本体の構造材にはアルミパイプフレームを使い、軽量化し、運搬性を向上させた。リチウムイオン電池を搭載し、2時間以上の連続動作が可能。前後左右に4台のカメラを搭載し、遠隔から目視点検ができる。操縦者は無線または有線でコントロールする。操縦は2本のジョイスティックで行なう。誰でも簡単に操作できることを目指しているという。
段差20cm程度の階段を昇降することができる。走行速度は低速、中速、高速に切り替えることができ、低速モードでは時速0.5km以下、高速モードでは最大時速6kmで移動することができる。オプションとして各種センサーや作業用ツールを搭載することができる。
横幅は地下鉄の改札を通過できるサイズとして設計されており、用途としても地下街や地下鉄などのテロ対策現場や、トンネル崩落事故現場などが想定されている。
このロボットは、もともとは原子力発電所での事故現場で活用されることを想定して研究開発が始まったものだ。最初はさまざまなエンドエフェクタを付け替えることができる各種アームがついていたり、クローラも左右それぞれに2つ付いていたりしたのだが、その後、研究開発を進めるに従ってよりシンプルなほうが実用的だということになって現在に至っているそうだ。今後もユーザーの声を聞きながら改良を続けていくという。
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三菱重工「MHI MARS-G」
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後面
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これまでの開発の歴史。徐々にシンプルになっている。同社ブースではビデオも見られる
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操作の様子。ジョイスティック2本のシンプル操作
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ロボット搭載のカメラからの画像
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日立製作所は前回も出展していた監視用無人走行ビークル、無人飛行機(UAV)のほか、レスキュー用の「パワーアシストシステム」を出展している。独立行政法人防災科学技術研究所と共同開発した「パワーアシストチェーンブロック」と既存のレスキューツールを組み合わせたもので、力のない人でも簡単に瓦礫などを除去することができるというもの。
チェーンを手で引っ張るとモーターでアシストしてくれることにより、およそ8kgの力で1.5トンの重量物を動かすことができる。バッテリは一度充電すればほぼ一日使えるそうだ。
価格は三脚そのほか込みで500万円。緊急時だけでなく、日常においては街路樹伐採や二輪車移動・運搬などに利用できるという。地震被害のあったインドネシア・ジョグジャカルタ地方などで実証試験を行なっている。
なお25日(11時~、14時~の2回)には無人走行ビークルによる屋外での自律走行デモンストレーションが行なわれる予定だ。GPSを使わず、周囲をセンシングしながら走るという。
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日立の監視用無人走行ビークル
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アーム部分
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UAV。カメラを搭載して地上を撮影する
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別のUAV
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「パワーアシストシステム」
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【動画】チェーンをからからと引っ張っていくだけで巨大なガレキを動かすことができる
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Allen-Vanguardの遠隔操作IED処理用軽車両「Vanguard Mk2」
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コーンズ・ドッドウェル株式会社は、英国Allen-Vanguardの遠隔操作爆発物処理用軽車両「Vanguard Mk2」を展示している。まだ日本での採用例はないそうだ。
情報通信研究機構(NICT)ブースは、NPO法人国際レスキューシステム研究機構の「IRS-U」において用いられている「レスキュー・コミュニケータ」を中心としたロボットとの連携システムをパネル出展している。
レスキュー・コミュニケータは三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社が開発した小型省電力のコミュニケーション・サーバーで、無線LANと音声入出力機能を持ち、被災地での人命救助を目的としている。OSにはLinuxが採用されている。マルチホップ機能を持ち、アドホックネットワークを作ることができる点が特徴だ。
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レスキュー・コミュニケータ
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複数のロボット間を繋ぐアドホックネットワークの連携を狙った研究が行なわれている
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NTTコムウェア株式会社は「タンジブル災害総合シミュレータ」を出展している。「センステーブル」と呼ぶテーブルにプロジェクタで電子地図を投影。タグを埋めたコマを使って、ルート検索などの防災シミュレーションを行なえる。
シミュレーション中には避難状況をリアルタイムにグラフ表示することもできる。複数のタグを同時に認識することができるので、複数人による避難シミュレーション、防災計画立案や、地域住民の防災教育に有効だと考えられるという。
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タンジブル災害総合シミュレータ
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投影された電子地図上にコマを置いて使う
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株式会社ジーエイチクラフトは無人VTOL「QTW-UAV FS3」を出展している。垂直離発着ができる無人航空機で、長さ360cm、幅は328.7cm。最大全備重量95kg、空虚重量は55kg、搭載品重量は20kg。最大航続距離は1,000km。現在は国立極地研究所用に開発されており、南極など極地でエアロゾル調査などに使うことを目標に開発を進めているという。
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ジーエイチクラフトの無人VTOL「QTW-UAV FS3」
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正面から
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特徴あるプロペラ翼
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先端にカメラを搭載
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株式会社PDIは遠隔操作あるいは直接操作で発射できるペイント弾発射装置を出展している。犯罪者に対して発射してマーキングを行なうものだ。同社が開発した特殊ペイント弾を発射するもので、カメラやロボット技術と組み合わせることができるという。
一部は実際にテムザックが開発した警備ロボットに搭載されている。15m以上の飛距離を持つそうだ。和歌山県警と共同開発された製品もある。
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株式会社PDIの各種ペイントボール発射銃
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防犯用ボール発射器
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ロボットなどに搭載できるモデルもある
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各種ペイントボール
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松下電器産業株式会社は電子タグ・ユビキタス・センサーネットワーク技術を使った「街角見守りセンサーシステム」を出展している。5GHz帯無線ネットワークと子どものランドセルに取り付けたRFID、IPカメラなどを組み合わせて、子どもたちの登下校の時刻・画像を保護者に確実に伝えることを狙ったシステムだ。
ソニーブースではパノラマ監視や1km先までのズームが可能な広域モニタリングシステム「XI's(エクスアイズ)」がやぐらの上で動いている。ブース内では、そのほかネットワークカメラと画像処理技術を使った監視ソリューションが展示されていた。
NECは、無線LANを使った位置情報システムを出展している。GPSの届かない屋内で誤差数メートルで位置を特定できることが特徴で、株式会社ナムコが北海道札幌市のショッピングセンター「5588KOTONI」内に今年6月にオープンした「ナムコあそベース」ではすでに使われている。
綜合警備保障は「ガードロボットD1」を出展している。以前本誌でもキャナルシティ博多での運用開始のニュースを報じたが、既に数十台が運用されているという。
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松下電器産業「街角見守りセンサーシステム」
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ランドセルにRFIDをつける
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ソニーの電子火の見やぐら「XI's(エクスアイズ)」
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NECの無線LAN位置情報システム
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綜合警備保障「ガードロボットD1」
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■URL
危機管理産業展2006
http://www.kikikanri.biz/
【2006年4月24日】IRS、ロボット装備レスキュー部隊「IRS-U」の想定訓練を公開(PC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0424/irs.htm
■ 関連記事
・ IRS、化学テロを想定したレスキューロボット実証実験(2006/06/27)
( 森山和道 )
2006/10/25 00:21
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