10月17日、日本遠隔制御株式会社(JR)とヴイストン株式会社は、入門用二足歩行ロボットキット「RB300」と「RB2000」を発売すると発表した。リリース予定は11月下旬から12月初旬、価格はRB300が29,400円、RB2000が79,800円。
● 13軸でダイナミックに動く「RB2000」
2社からは昨年12月に初のロボットキットとなる「RB1000」が発売されているが、そこで得られたデータやユーザーからの声をもとに、改良を加えて新設計されたのが「RB2000」である。
大きな変更点は、可動軸が「1000」の19軸に対し、「2000」は13軸まで減らされているのと、マイコンボードがヴイストン製「VS-RC003」に換装されている点。サーボは同じ「RBS581」であり、バッテリもニッケル水素の5セル(6V)2,000mAhと、それ以外はほぼ同じ構成になっている。
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RB2000
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右がすでに発売されているRB1000。左がRB2000。ひじと足のヨー軸、足の付け根のロール軸が削られているのと、全体的なシルエットがスリムになっている
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開発の経緯として、JR代表取締役 久山昇ニ氏は「RB1000は発売当時としては画期的な10万円を切る価格のキットだったが、それでも一般の人にはやはり高価で、もう少し手ごろな値段にらないものか、といった声が多くあった」と、価格面でのきっかけがあったことを紹介。「基本デザインを活かしながら、設計を見直すことで実現を目指した」(久山氏)と述べた。
機体の設計・開発を担当したのは、ロボカップ三連覇を誇る「Team OSAKA」にも参加しているヴイストン。代表取締役の大和信夫氏は「ロボットをもっと楽しむために何をすればいいのか、と考えたときに、ロボットが元気に動くことが一番重要なんだということがわかってきたんです。可動軸を増やせば“できること”は増えますが、反面、重量が増えて動きが鈍くなりますし、うまく歩かせるためにはコツがいる。ダイナミックな動きを保てる最小の軸数を見つけることで、軽量化と扱いやすさを両立できたんです」と語ってくれた。
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日本遠隔制御(株)代表取締役 久山昇ニ氏
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ヴイストン(株)代表取締役 大和信夫氏
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発表では実際に動きのデモンストレーションが行なわれたが、「RB2000」は、全身で13軸しかないとは思えないほどスムーズに動き、歩行はもちろん前転・後転や側転などの派手な動きや、階段の上り下り、鉄棒にぶら下がっての“逆上がり”、“大車輪”まで披露していた。
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【動画】13軸で重心移動して歩くために、「重心を移動させる側の足を縮めてから歩き出す」といモーション上の工夫も取り入れられている
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【動画】大車輪を見せるRB2000。かなりパワフルに動くため、鉄棒にはしっかりとウエイトが付けられていた
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また、「ロボットは動きだけで楽しむのではなく、しゃべることなどの表現で楽しむことで広がるのではないか」(大和氏)という考えのもとに、RB2000はスピーカーを標準装備。マイコンボードにも2Wの出力端子があるので、あとはwavファイルをメモリに書き込めばコントローラーの操作やモーションに応じて任意のタイミングで再生させることができる。
こちらのデモも行なわれ、音楽にあわせて楽器を演奏する「動き」を見せる“エアギター”、“エアドラム”のトリオが登場。また、ゲームパッドを使ったリアルタイムで音とモーションを制御するデモも行なわれた。
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胸部分に搭載されるスピーカー。音が出やすいように胸パーツにはスリットが入っている
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【動画】エアギターの演奏も披露。曲名は「ROBO&PEACE」
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【動画】ゲームパッドのボタンに音とモーションを割り当て、ハイハットならハイハットの音とたたくしぐさが再生されるようにもできる
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● 成長させる楽しみがある「RB300」
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RB300
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一方、「RB300」は3軸の“超入門モデル”。プラスドライバーとはさみさえあれば1~2時間で組み立てられてしまうキットだ。見た目でもわかるとおり、ヴイストンが先日発売した「Robovie-i」と基本的な構造・パーツ構成は同じである。
入門モデルといっても、このキットで楽しんだあと「別の上級キットを買う」のではなく、入門モデルで学んだことを活かしながらステップアップするため、マイコンボードや操作ソフトはRB2000とまったく同じものを搭載。ユーザーは使い慣れたソフトとマイコンボードとともに成長していけるのだ。ステップアップキットとして、RB300からRB2000にコンバートするためのアップグレードキットも用意され、64,050円で発売される。
「入門用のキットを教育現場向けに送り出してみると、価格面と同時に『ロボットを動かすだけでは教育にはならないよ』とか『自律動作とか、センサは使えないの?』といった声をいただくことが多くありました。そういった声にお答えする形で、拡張性の高いマイコンボードを搭載しました」(大和氏)
RB2000、RB300に共通で搭載されるマイコンボード「VS-RC003」は30軸を制御できるだけでなく、オンボードで音声出力を搭載。拡張入力ボードでジャイロや加速度センサ、デジタル/アナログ入力など、自律動作させるための十分な機能を持っている。
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マイコンボード「VS-RC003」とその拡張ボード群。この頭脳を引き継いでステップアップできる
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大和氏はさらに「キットが2つ(RB300・RB2000)発売されることに意味があると思っています。小学生でもRB300なら組み立てることができます。そこでロボットに対する興味を呼び起こしたうえで、(CPUやソフトが共通の)RB2000やその先にステップアップできるんです」と述べた。
RB300からRB2000へのアップグレードキットのほか、2軸ずつ追加するためのブラケットキットを利用して、RB2000を15軸、17軸とグレードアップさせることもできる。便宜的に「RB2500」、「RB2800」という型番が与えられているが、それらはパッケージとして発売されるのではなく、最大で23軸まで追加できるようにリリースされていく予定のパーツを組み上げたサンプルケースである。
また、RB2000のパーツはRB1000と穴位置などの互換性が取られており、バラ売りされるパーツを利用して既存のRB1000ユーザーのグレードアップパーツとしても使用できるという。
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RB1000(右)と同じ軸構成にした19軸版の“RB2500”
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ひざのサーボを2つにし、腕のヨー軸を追加した“RB2800”。ボールを持っているのはダテではなく、「ボールを拾い上げて、投げる」というデモを行っていた。
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【動画】ボールを拾って投げる
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■URL
日本遠隔制御株式会社
http://www.jrpropo.co.jp/
ヴイストン株式会社
http://vstone.co.jp/top/j_top.html
■ 関連記事
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( 梓みきお )
2006/10/18 15:53
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