名古屋市の中心地「栄」駅から徒歩1分の場所にロボットをテーマにした複合商業施設「ロボットミュージアム in 名古屋」が10月12日午前11時にオープンする。運営は株式会社アイディーユーと株式会社ジャイロウォーク。10日に、オープンに先立ってプレス向け内覧会が開かれた。
中は現代のロボットやロボット技術そのものというよりもむしろ、レトロなSFを中心としたロボットのイメージ、ロボットの文化をメインに据えた展示となっていた。紹介する。
ロボットミュージアムは、カルチャーミュージアム「ROBOTHINK」、ショップである「ロボット未来デパートメント」、そしてレストラン「Famires」およびジューススタンド「watta juice」、インテリアショップ「HATTORI LUSSO」からなる複合施設だ。中心施設である「ROBOTHINK」は有料(一般1,300円、大学、高校、中学生1,000円、小学生700円)となる。ショップやレストランは中でつながっているがそれぞれ別の入り口があり、外から入ることができる。
ROBOTHINK 1Fは企画展スペース。現在はドイツ・カールスルーエにある「ZKM(アート・アンド・テクノロジー・センター)」を拠点として活躍しているアーティスト集団「robotlab」によるロボットアートが2点展示されている。
1点目は「profiler」。カメラでモデルのポーズを撮影し、その輪郭をホワイトボードに描くというもの。2点目は「instrument」。ロボットの動作音で音楽を奏でるというもの。どちらも産業用ロボットアームが用いられている。
企画展の名前は「Off-time? 今日は休みかもしれない」。開館日の10月12日から、来年の2月4日まで継続展示される予定だ。
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1Fの企画展スペース
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企画展ポスター
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profiler。カメラでモデルを撮影し、ホワイトボードに輪郭を描く
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使われているのはKUKA社の産業用ロボット。重量370kg
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robotlabの二人
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【動画】ロボットの動作音で音楽を奏でる「instrument」。ボタンを押すとそれぞれ演奏される
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階段で2Fにあがると常設展となる。常設展の最初はテーマ展「ロボットクロニクル」だ。テーマは「ロボットの創造と想像の歴史」。ロボットという名前がつけられる前のロボット的なからくりや神話から始まり、空想の存在だったロボットがメディアに登場する存在となりやがて現実化していくまでの過程を、主にパネルとコレクターによるおもちゃ類で展示している。
途中にはライブラリーとシアターコーナー、展示の最後には現在の実際のロボットと触れあうコーナーもある。音声ガイドにはiPodが用いられている。
ロボットクロニクルは5つのセクションに分けられている。セクション1「ロボット紀元前」はロボットという名前が登場する前のロボット的なものを紹介するトンネル。神話の世界からぜんまいや時計、蒸気機関など機械化にともなって徐々にロボットが現実に近づいていく様子が茶運び人形、オートマタ(自動人形)などで示されている。
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iPodによる音声ナビが使われる
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テーマ展「ロボットクロニクル」の入り口
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青銅の巨人タロス
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9代目・玉屋庄兵衛の茶運び人形
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「未来のイブ」
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セクション2は「ロボット革命」。チェコの作家カレル・チャペックによる戯曲「R.U.R.」(1920)でロボット(ロボタ)という言葉が登場したことをきっかけにイメージとしてのロボットが誕生し、映画や広告などの芸術分野から徐々に大衆化していったとしている。映画「メトロポリス」(1927)のマリア像や、家電メーカー・ウエスティングハウス社のキャラクター「エレクトロ」と「スパルコ」の人形などを展示している。
またフジテレビ「ひらけポンキッキ」などのテレビプロデューサーで海外のSF作品の翻訳家としても知られる野田昌弘氏による野田コレクションコーナーでは、およそ60冊の海外SF雑誌が引き出しのなかで展示されている。表紙しか見ることができないが、当時かたちづくられたロボットのイメージが非常に強固であり、現在に至るまであまり変わっていないことがわかる。
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年表は現実のロボット研究の歴史とロボットイメージの歴史が混在
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1966年のパワーアシスト機器「ハーディマン」
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なかにはこんなものも
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コレクターとして著名な北原照久氏のお気に入りをセレクトしたブリキのロボット
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ロビー
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雑誌「宇宙船」で活躍した聖咲奇氏のコレクション
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年表中に展示されているおもちゃはすべてが当時のモノではなく最近のものも多い
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セクション4は「ロボット飛躍期」。主として70年代~80年代を中心に、万博で展示されたロボットなどが展示されている。後に学研から「メカモ」として商品化される富谷隆一氏による「メカニマル」や、'85年に開催されたつくば科学万博で出展されたルイジ・コラーニによってデザインされたデュエットロボット2体、ベビーロボット1体などが展示されている。
特に、最近は「リアル・ドリーム・ドラえもん・プロジェクト」などで知られる株式会社バンダイのロボット研究所所長・芳賀義典氏による'80年代の家庭用ロボットコレクションが見ものだ。芳賀氏が個人として所有していたロボット20台が提供され展示されている。
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'70年の大阪万博のパネル
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デュエットロボット
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ハインラインのSF小説「宇宙の戦士」に登場するパワードスーツのフィギュア
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加藤直之氏のイラストも展示されている
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メカニマル
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80年代の各種ロボットキットや家庭用ロボットたち
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バンダイロボット研究所の芳賀氏が個人として所有しているもの
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芳賀義典氏
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セクション5「ロボット共生期」。現代だ。早稲田大学による世界初(1973)の等身大二足歩行ヒューマノイド「WABOT-1」の実物、ホンダ「ASIMO」のモックアップ、ソニーの歴代AIBO、ロボカップ・ヒューマノイドリーグで優勝した「ViSION TRYZ」のモックアップなどが展示されている。
なお展示はモックアップと実物が入り混じっているのだが、細かい説明などがまったくなく、ある程度知識がないとどれが本物なのかわからないかもしれない。全体的に肝心のロボット展示の説明がまだまだ不足している印象が強い。
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早稲田のWABOT-1、ホンダASIMO、PINO
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歴代AIBOとViSION TRYZ
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ライブラリースペース
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並んでいるのはロボットの本だけではなくアニメのパンフレットなども
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シアタースペース
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最後に、AIBOや三菱重工業のwakamaru、ZMPのnuvo、ALSOKの警備ロボットのほかKHR-2やPLEN、MANOIなど2足歩行ロボットキットを触れるコーナーで出口となる。
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触れあいスペース
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各種癒し系ロボット
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ALSOK警備ロボット「C4」、愛知万博でも出展されたかくれんぼロボット「ASKA」
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二足歩行ロボットキットを操縦したりすることもできる
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1Fにある「ロボット未来デパートメント」はロボットを中心としたショップで、オフィシャルグッズなどが販売されている。しかし、いっぽうでサーボモーターやセンサーなどが販売されているわけではなく、むしろ宇宙食や恐竜、映画「スターウォーズ」グッズなど、ロボットというよりは多様な文化グッズが販売されている印象だ。なお、書籍は販売していない。
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ショップ「ロボット未来デパートメント」外観
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ショップ内部俯瞰
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あちこちにレトロなアニメロボットの人形が立っている
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アニメロボットの人形の間にロボットトイが販売されている
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もちろん鉄腕アトムグッズも多数
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鉄人28号グッズ
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宇宙食や恐竜グッズコーナーもかなりの面積を占めている
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動かして遊ぶこともできる
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ホビー・ロボット・キットコーナーもある
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セグウェイなども展示されている
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ロボットをモチーフにしたアート作品なども販売されている
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ZMP社のロボットオーディオ「miuro」のデモ
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ウィンドウには基板をモチーフにしたオブジェが吊されてLEDが明滅している
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「ロボット未来デパートメント」の一角には「ロボットアカデミー」というコーナーがあり、ロボットキットやLEGOマインドストームズの教室が開催できるスペースが常設されている。LEGOの置かれている区画は「LEGOマインドストームセンター」と呼ばれており、センターと名の付く施設は世界で40しかないという。
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ロボット教材などが並ぶ「ロボットアカデミー」
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LEGOマインドストームセンター
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火星をモチーフにしたフィールドが常設
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探査ロボット「ブレイン・ボット」を組み立ててプログラミングする
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スクール担当の西山禎泰氏
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ロボットミュージアム in 名古屋は44カ月間限定のミュージアムだ。同館の石古暢良氏によれば、展示は期間内に随時アップデートされるという。
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2Fに位置するインテリアショップ「HATTORI LUSSO」。照明を中心としたセレクトショップ
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レストラン「Famires」。柱の模様はZMP社のロボット「nuvo」の図面をモチーフにしたもの
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ロボットミュージアム館長の石古暢良氏。ジャイロウォーク代表取締役
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オープンは12日。先着500名には記念品が配られる
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■URL
ロボット・ミュージアム in 名古屋
http://www.robot-museum.net/
アイディーユー
http://www.idu.jp/
ジャイロウォーク
http://www.gyrowalk.com/
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( 森山和道 )
2006/10/11 00:01
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