10月3日から7日までの5日間の日程で、千葉の幕張メッセにて、ITとエレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2006」が開催されている。主催は情報通信ネットワーク産業協会、社団法人電子情報技術産業協会、社団法人コンピュータソフトウェア協会の3団体。7回目となる今年のテーマは「デジタルコンバージェンスが変える、社会・生活・ビジネス」。出展団体数は807。開催5日間の来場者は20万人と見込まれている。
会場では大型ハイビジョンディスプレイや次世代DVD規格、電力線通信など各種技術が展示されている。そのなかでポツンポツンとロボットも出展されているので紹介しよう。
● ぜんぶムラタです ~ムラタセイサク君
特に大人気で黒山の人だかりだったのが、やはり村田製作所の自転車ロボット「ムラタセイサク君」だ。IT関連の展示会でのロボットは基本的にデモンストレーションのためのプラットフォームあるいは「客寄せ」として用いられていることが多いのだが、こちらのブースではブースの真ん中にムラタセイサク君のデモンストレーションステージを設置。全面的に「ムラタセイサク君」をアピールしていた。
ムラタセイサク君は、自転車の形をした約50cmの小型ロボット。走行速度は時速約2km。搭載されているセンサーはジャイロセンサー、ショックセンサー、超音波センサー。バッテリはリチウムイオン2次電池。胸にバランスを取るための大きなモーメンタムホイールを内蔵していることが特徴で、静止状態でも倒れずにぴったり停止する「不倒停止」が得意技である。
なお、勘違いされることも多いそうだが、二足歩行ロボットが自転車に乗ってこいでいるわけではない。モーターは自転車のほうに搭載されていて、足と手はあくまで受動的に動いている。
だが、ヒト型をしたものが乗っているように見えるから、これだけ注目されているのだろう。ロボットのデモンストレーションにおいて外見が占める割合が少なくないことを改めて感じさせる。
新しくなったムラタセイサク君は、25度の坂道走行、S字平均台走行、バック走行と車庫入れ、Bluetoothを使った携帯電話からの遠隔操作やPCからの音楽再生機能などをデモンストレーションしてくれる。
なおムラタセイサク君は基本的にリモートブレインで、S字走行のときも、センシングした情報を外部のPCに送って処理をさせ、PCから送り返された制御信号を使って動いている。
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ムラタセイサク君。得意技の「不倒停止」中
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後ろ。バックするときに使うリアカメラがある
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アイカメラのレンズはガラスよりも屈折率が高い透明セラミックス
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胸の穴は障害物を認識する超音波センサ
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側面
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村田製作所ブースは黒山の人だかり
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【動画】ゆっくりと25度の坂を上っていくムラタセイサク君
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【動画】別方向から。意外と胸のホイールが回転していない
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無事にのぼりきった
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続けて「バックでの車庫入れ」に挑戦する
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【動画】まずハンドルを切りながら前進
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【動画】バックで駐車
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【動画】BlurtoothでPCからの音楽ファイルを再生
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自転車に搭載されている薄型平面スピーカーは厚さ1mm
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Bluetooth携帯からムラタセイサク君を操作可能
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最後にS字走行に挑戦する
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【動画】S字走行の様子
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【動画】ハンドルを右から左に切ってゴールに向かう
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● ビジブル型、バーチャル型、アンコンシャス型のロボットが協調 UNS2006
「ユビキタスネットワークシンポジウム2006ショーケース」ブースでは、総務省の委託研究「ネットワーク・ヒューマン・インターフェースの総合的な研究開発(ネットワークロボット技術)」の研究成果が一部、出展されている。この研究はビジブル型、バーチャル型、アンコンシャス型と呼ばれる違う型の「ロボット」技術の協調によって、どんな状況でもシームレスなサービスを実現する基板技術開発を狙うもの。
ビジブル型が形を持ったいわゆる「ロボット」で、アンコンシャス型は環境に埋め込まれたカメラやセンサー類から形成されるもの、そしてバーチャル型とはウェブ上などで活動するエージェントだ。人とロボットの情報をXMLベースで記述し、データベースで一元管理。サービス状態遷移モデルに基づいてサービスを実行するという。
2004年度~2009年度までの研究で、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、日本電信電話株式会社、株式会社東芝、三菱重工業株式会社、松下電器産業株式会社が参加している。
東芝の「ブログアルファ」はホームロボットが外出中のユーザーから指示を受けて留守宅をチェックするというアプリケーション。ロボットは普段から自分でブログを書いていて、ユーザーとコミュニケーションする。そしてユーザーがブログにコメントの形で指令を書き込むと、ロボットは自身が持っている「生活オントロジー」と呼ばれるさまざまな知識に基づいてその指令を解釈して、実行する。
例えば「カギは?」と聞かれただけで、ドアノブをチェックしにいく、といった動作ができる。
なおこれは東芝のアプリアルファを使った研究だが、デモしているロボットのカメラが一つだけなのは旧型のモデルを使っているからとのこと。
ATR知能ロボティクス研究室ネットワークロボット研究室はビジブル型ロボットである「Robovie-R2」や人の動きを感圧スイッチで検知する「フロアセンサシステム」などを提示している。ロボットとユビキタスなセンサネットワーク連携のデモだ。
三菱重工業は複数のカメラと確率モデルを使って人の位置と移動方向を検出したり、行動認識を行なう技術を展示している。また、このブースにはスケルトンの「wakamaru」がいる。wakamaruはもともとRobovieの研究がもとになっており、Robovieは大阪大学・石黒教授によって開発された。ロボット好きならば是非足を運んで見るといいだろう。
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ネットワークロボット技術の概念図
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東芝「ブログアルファ」
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ブログアルファの概念図
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ブースにはカメラが複数あり、そこから混雑状況がわかる
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ATRによるネットワークロボットのデモ
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床には感圧スイッチがあり人の動きがわかる
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スケルトンのwakamaru
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wakamaru頭部
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wakamaru腕部
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RFIDプラザブースでは、デンソーウェーブによるUHF帯RFIDを使ったロボットアームによるピッキングのデモンストレーションが行なわれている。後工程から要求された部品をRFIDによって読み取ってピッキングするというものだ。
また、ATRは情報通信研究機構(NICT)のブースでもロボットを出展している。インタラクション・メディアとしてのロボット、という位置づけだ。
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RFIDを使ったロボットによるピッキングのデモ
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部品投入時にはチェックを行なって誤投入を防止する
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ATRブース
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研究室などで使われているRobovie-M(左)とRobovie-MS。ヴイストンから発売されている
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● 各社のロボット
大阪のSky株式会社は「受付ロボットシステム」を出展している。来客者を検知して音声と身振りで案内をし、またタッチパネルと組み合わせることで地図を表示して案内するといったことができる。また管理画面からはロボットに搭載されたカメラ画像を確認することができる。受付時間終了後には警備モードで不審者を警戒し、検知するとカメラで記録する。
同社ではこのロボットを、およそ300万円で販売している。販売実績はまだ一件のみだそうだ。デザインはCIに合わせることもできるという。
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Sky社ブース
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受付ロボット。タッチパネルあるいは名刺リーダーと協調動作する
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【動画】動き
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NECブースにはパーソナルロボット「PaPeRo(パペロ)」がいて、チャイルドケアのアプリケーションと、「ネットワーク型ロボットエージェント」としてカーナビのデモを行なっている。PaPeRoは海外からの来場者や子ども達、お年寄りたちの興味をひいていた。
また、富士通のブースには受付や搬送作業ができるロボット「enon」がいる。現在、各所で実用化に向けた実証実験を続けている。enonには実際に触ることもできる。
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NEC「PaPeRo」
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音声コマンドによってカーナビのなかにPaPeRoが移動するデモンストレーション
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こちらはチャイルドケア用のPaPeRo
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富士通「enon」
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enon側面
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ルネサステクノロジはマイコン利用の例として「ロボットステージ」でロボットのデモを日替わりで行なっている。3日は筑波大学・山海教授、4日は筑波大学・油田教授、5日と7日は防衛大学・滝田教授、6日は千葉工業大学・小柳教授が、それぞれ13時~と15時~の1日2回、ロボットの実演を行なうとのことだ。
なお3日は山海教授の「HAL」のデモと講演が行なわれるはずだったが、HAL本体はグッドデザイン賞を受賞したため別の場所で出展されているとのことで講演のみが行なわれた。
また、CANの応用例のひとつとして、ZMP社の教材「e-nuvo」の展示も行なわれている。
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ルネサステクノロジブースの「ロボットステージ」。講演・デモで登場予定の各研究室のロボットが展示されている
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筑波大学油田研究室の「山彦トントン」
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防衛大学滝田研究室「マイコンカー」
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千葉工大小柳研究室「レスキューロボット」
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筑波大学山海教授による講演が行なわれた
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ルネサスブース「e-nuvo」
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nuvoシリーズにはCANが採用されている
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● センサ利用例、プラットフォームとしてのロボット
また、各社のブースに、ロボットがセンサーの利用例やプラットフォームとして展示されている。
光半導体メーカーのコーデンシ株式会社は赤外線測距センサや自社のLED使用例として、株式会社レイトロンの音声認識コミュニケーションロボットを出展している。
沖電気工業株式会社は3軸加速度センサに3軸地磁気センサをプラスした3軸方位&3軸加速度電子コンパスモジュール「ML8960」のデモンストレーション用として、ロボットキット・バイオロイドにセンサを搭載。ロボットを歩行させて、その向きや軌跡がリアルタイムに分かるというデモンストレーションを行なっている。
エプソントヨコムは軌道補正用ジャイロセンサー使用例として韓国サムスンの掃除ロボットを静展示している。
このほか、ロボット専門雑誌「ロボコンマガジン」を出しているオーム社ブースは、近藤科学の「KHR-2」ほかのデモを行なってアピールしている。
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コーデンシブースの音声認識コミュニケーションロボット
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センサー類は頭部に搭載されている
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沖電気ブースではバイオロイドを使ったデモを行なっている
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頭部に3軸方位&3軸加速度電子コンパスを搭載
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ロボットを動かすとその向きや移動軌跡がわかる
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エプソントヨコムブース、サムスンの掃除ロボット
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KHR-2他が展示されたオーム社ブース
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● イベントホール「産学交流パビリオン」
またイベントホールでは全国38の理工系研究室が集まってブースを出展している「産学交流パビリオン」が開かれている。こちらは動線が切れることもあって、かなり閑散としている。なお7日土曜日には高校生による相撲ロボット大会「第18回ロボット相撲大会 関東大会」が11時~16時の日程で開催される。ロボット関連としては千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科がロボット技術をパネルで紹介している。
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イベントホールの「産学交流パビリオン」。38の大学ブースが並ぶ
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7日には相撲ロボット大会が開催される予定
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千葉工業大学ブース
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千葉工大 米田研究室の四足歩行ロボット「HYPERION 3」
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■URL
CEATEC JAPAN 2006
http://www.ceatec.com/2006/ja/visitor/
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( 森山和道 )
2006/10/04 00:21
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