|
WABIAN-2R
|
9月26日、早稲田大学理工学術院高西淳夫研究室と株式会社テムザック、株式会社シンクフリーは、福岡市博多区の上川端商店街にて、2足歩行ヒューマノイドロボット「WABIAN-2R」の公道での歩行実証実験を行なった。
福岡県・北九州市・福岡市の共同運営による「ロボット産業振興会議」の「平成18年度ロボット開発技術力強化事業」の助成によるもので、ヒト型2足歩行ロボットが公道で歩行実験を行なったのは世界初だという。実験は9月26日から29日まで、上川端商店街近辺で行なわれる。
「WABIAN-2R」は身長147.5cm、重量67.5kg。能動関節は39(脚6×2、腰2、体幹2、腕7×2、首3、手3×2)。このほか受動関節として両足のつま先がそれぞれ可動する。アクチュエータはDCサーボモーター。モータードライバは、工場のライン用機械メーカーである特殊電装株式会社と共同開発した独自デバイスが用いられている。CPUはPentium M 1.6GHzを搭載。バッテリはニッケル水素で連続稼動時間は15分程度。
腰に可動する骨盤を持ち、他の多くの二足歩行ロボットと違って、人間のように膝を伸ばした状態での歩行が可能である点が特徴だ。平均歩行速度は時速にすると約2km程度。
今回の実験は、市街地の段差や斜面がロボットの歩行に与える影響を調査することが目的。プロジェクト費用は2年で2,000万円。早稲田大学が主としてアルゴリズムの研究開発を行ない、テムザックが実用化技術を開発、シンクフリーがロボット用電気関連の実装化技術を確立することを目指す。
26日の記者公開実験は、商店街の熊本ファミリー銀行前で、報道陣ほか、多くの通行人が群がるなかで行なわれた。今後も実証実験は衆人環視のなかで行なわれるが、実験の場所は変わる可能性もある。アスファルトや点字ブロック上での歩行実験も行なうという。
|
|
【動画】骨盤を動かして膝を伸ばした歩行を行なう
|
【動画】商店街の道は水はけを良くするために微妙にアールを描いているが、そのような路面でも歩けるようになった
|
|
|
【動画】玄関マットの上を歩かせてみるが若干バランスを崩す
|
【動画】歩かせ方によってはマットの上もバランスを崩さずに歩ける
|
|
|
【動画】通常の2足歩行ロボットのような膝を曲げた歩き方もできる
|
【動画】その脚部
|
|
|
つま先を使った歩行
|
足はかかとから着地
|
|
|
|
WABIAN-2Rのスペック
|
実証実験場の上川端商店街。博多の中心だ
|
ロボット公道実験立て看
|
|
早稲田大学理工学学術院教授 高西淳夫氏
|
今後、早稲田大学、テムザック、シンクフリーは、このロボットをテストベッドとし、市街地、屋内などの実環境を対象として、自立移動型ロボット全般に適応可能な運動安定化技術の開発を行なう。これから約2年間の間に、移動ロボットを安定制御する技術の基盤構築を目指す。
高西教授は「今回の発表はこれから2年間、こんな研究を行なうというもの。温かい目で見てもらいたい」と述べた。
ロボットは移動能力と作業能力が組み合わさって本来の機能を発揮するものだと高西教授は語る。移動方式としてはキャタピラや車輪などがあるが、家庭内をキャタピラで動くわけにはいかないし、車輪型でも転倒の問題はクリアしなければならない。
いずれにしても地上での移動様式は「重力」と「路面との摩擦力」を使うことがポイント。なかでも、二足歩行は一番難しい対象だ。もし2足歩行ロボットでさまざまな路面状況に対応できるようになれば、その安定化技術は他の車輪やキャタピラを使った移動ロボットにも適用できる。そこでWABIAN-2Rをテストベッドとして使って技術開発を行なうことにしたという。
WABIAN-2Rを使うことで、ロボットが社会に出て行くための基本技術を開発し、また同時に、人に対して路面の形状が良いか悪いかも検証できる可能性があり、人のための環境づくりに使える可能性があるという。
高西氏は最後に「ロボットの実証実験は福岡市が内容的にも一番進んでいるし熱心だ。これからも福岡市から情報発信できればと考えている」と述べた。
|
|
|
株式会社テムザック代表取締役社長 高本陽一氏
|
株式会社シンクフリー代表取締役 笠田文一氏
|
3者の役割分担
|
● ロボット体験スペース「ロボスクエア」
なお記者会見が行なわれた「ロボスクエア」は、ロボカップ2002福岡・釜山大会を契機に開設された、市民がロボットに対して理解を深め、交流するためのスペース。
「ロボット体験スペース」として、自由に無料で入場してロボットに触れあったりグッズそのほかを購入するショップの機能だけではなく、ロボット組み立て教室やミニロボコンなどが行なわれている。また、産学官交流などの機能も持っている。早稲田大学福岡分室もここにある。
地下鉄「中洲川端」駅直結の博多リバレイン地下2Fという交通至便な場所にあり、福岡市新産業課長・北嶋昭三氏によれば、昨年度は16万5,000人の来場者があったという。
|
|
|
ロボスクエア
|
静展示ながら多くのロボット実物が展示されている
|
テムザック社の各種ロボット
|
|
|
懐かしのAIBOたちも、ここでは現役
|
ショップ機能も充実している
|
|
|
ホビーロボットも販売されている
|
福岡市新産業課長 北嶋昭三氏
|
■URL
早稲田大学高西研究室
http://www.takanishi.mech.waseda.ac.jp/
テムザック
http://www.tmsuk.co.jp/
ロボスクエア
http://www.robosquare.org/
■ 関連記事
・ ロボット業界キーマンインタビュー 早稲田大学 高西淳夫教授(2006/09/22)
・ FA屋の発想で実用ロボットを目指す~株式会社テムザック(2006/05/29)
( 森山和道 )
2006/09/27 01:18
- ページの先頭へ-
|