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通りすがりのロボットウォッチャー ロボットよ災害から人を救ってくれ
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Reported by
米田 裕
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前回からひと月の間に、いろいろな災害が日本を襲った。梅雨前線の活発化による豪雨がしばらく続いた後に巨大台風がやってきた。
日本の周囲の海水温が高く、九州あたりまで水温30度という状況だったので、台風の勢力が落ちないまま日本へ近づいてきたのだ。
台風4号の最大風速は45m以上、瞬間最大風速が60mにもなり、沖縄ではトラックが風で横倒しになった映像がニュースで流れた。
大雨による川の増水では数人が亡くなっている。自然の猛威に人間の力はおよばない。
さて、台風は日本列島の太平洋岸に沿って進み、在来線、新幹線が止まり、飛行機も飛ばず、高速道路も通行止めになったりと、日常生活に大混乱を残して東の海へと去っていった。
やれやれと思っていると、16日の午前10時15分ごろ、今度はユサユサとした揺れを関東でも感じた。これは遠くの大きな地震かもとテレビをつけると、新潟で最大震度6強の大きな地震が発生していた。
● 原子炉建屋脇で火災発生
あそこには原発があったなと不安になり、テレビを見ていると、やがてヘリにカメラを積んでの空撮の場面が始まった。
高速道路には段差ができ、ところどころに潰れた家が見える。しかし、大部分の家は倒壊しているようには見えない。
そのうち、柏崎の刈羽原子力発電所から黒い煙が上がっているショッキングな映像が入ってきた。
前回、原子力施設災害に備えてロボットは必要だと書いたが、果たしてロボットが配備されているのかが気になった。防災用、社会に役立つとして開発されているロボットだが、産業用をのぞいては、ほとんどは実社会には出ていない。
原子力災害用ロボットは開発はされているが、それが実際の原子力発電所に配備されてなければ意味がない。刈羽原発にはあったのだろうか?
火災で燃えているのは変圧器で、原子炉は自動停止しているので安心だとテレビでは言うが、火災を消す作業はしていないようだ。
まわりにホースが引っ張られているが、すべてが地面に置いてある。変圧器の火災とはいえ、場所が場所だけに何がおきるかわからない。どうしてすぐ消さないのだ? という疑問は翌日以降に解明された。
初期消火に職員があたったが、水も出なくなり、火災で変圧器が爆発する危険もあったため、30mほど離れた建物から見ていたというのだ。
そして、市内から化学消防車が出動し、消火されたのはそれから2時間後のことだった。
● 原発火災にロボット消防士が欲しい
こんなときにロボットが使えたらなぁとうなってしまった。実際の火事現場というと、数年前にウチの1軒おいた向かいのアパートが火事になったことがある。火元からウチまで、わずか1軒の家をはさむだけという距離だったが、それは激しいものだった。
何かが爆発するポンポンという音はするし、火の粉は降ってくるし、火の手が強くなれば、ウチも避難しなくてはならないので、深夜にもかかわらず、心配でずっと見ていた。
火事の消火は消防士というプロでないと炎に立ち向かえない。一般人ではやはり怖い。実際に近づけば炎の勢いも強く、火の粉やはじけて飛んでくる火のついた破片で火傷もする。
となれば、遠隔操縦ができて、消化剤を積んだロボットも必要なのではないだろうか?
この新潟中越沖地震の翌々日、北九州ではテムザックが防災ロボット開発会議のメンバーと共同開発したレスキューロボット「T-53援竜」を発表した。
北九州市消防局の文字が入っているが、消火設備は持ってないようだ。あくまでも瓦礫や障害物をおしのけて、人をさがすというロボットらしい。
タンク車とホースをつけたアームというオプションをつけて、消火作業もできるようにならないだろうか?
原子力施設といった場所では、消防車を配備しても、人が行動できなければ、消火活動はできない。
今回はわずかな放射能漏れがあったが、人体に影響のある放射能の強さだと、消防車で消火に行くことはしないだろう。
だから、ロボットなんである。
原子力発電所には、消火ロボットや災害時に施設内で働くロボットを義務づけたらどうだろう。人は強い放射線には耐えられないし、誰もが身の危険をおかしたくはないだろうし。
遠隔操縦で、しっかりと働く防災ロボットの開発は最優先されないといけないテーマかもしれない。
ロボットが自律して動き、知能を持つのにはまだまだ時間がかかりそうだ。移動や現場での体勢保持などは自律的にできるようにして、操作や命令は人間がするようにしておけばいいだろう。
後日、発表された刈羽原発内の敷地は波打つようにデコボコになり、段差もかなり大きなものができていた。そのような場所を移動するには、足回りもただのキャタピラではむずかしそうだ。
小回りがきき、速度もある程度必要で、不整地も走破でき、階段も登れる。そんな足回りの機構が必要だろう。
● すぐに使えるレスキューロボットを全国に
一方、時間が経つにつれて、街中の被害の大きさもわかってきた。倒壊している家屋がつぎつぎとテレビに映し出された。
倒壊家屋の中に、人がいるかもしれないので、屋根を切ったり、救助隊員がファイバースコープで中を見ていたが、倒壊家屋の中へ救助に行くのも命がけだ。
地震は、本震だけではなく、大きな地震のときほど余震も多い。そして、余震といえども本震に近い震度も考えられる。震度6強の本震なら、余震は震度5以上というぐあいだ。
その振動で崩れかけた建物が完全に崩れてしまうことがある。余震の回数も多いと、わずかな時間の間につぎつぎと余震がやってくる。その中での捜索活動、救助活動をするわけだから、二次災害もありうるかなり危険な作業だ。
レスキューロボットの開発は、どこまで進んでいるのだろう?
今から12年前、阪神淡路を襲ったマグニチュード7.3の大地震は、都市部が被災をする深刻さを考えるきっかけとなった。その教訓から、レスキューロボットの開発に取り組んだ研究者も多いはずだ。
そうしたレスキューロボットのコンテストが、7月8日にあった。九州では梅雨前線による豪雨が続いていた日だ。
その後、台風、地震と続く。このように災害はいつあるかわからないし、場所も特定できない。日本全国のいたるところで、いつあってもおかしくないと考えておくものだろう。
となると、レスキューロボットも、日本各地、各市町村で持っていた方がいいものだと思える。しかし、そこまで踏み込んだ考えにはなってないのが実情といえるだろう。
今回の新潟中越沖地震の被災地の近くにあるレスキューロボットは、レスキューロボットコンテストにも出場している長岡技術科学大学にある。
長岡技術科学大学システム安全系 木村研究室では地震後3時間ほどで柏崎市へ行ったと報告がされている。そして、現在、申し込みがあれば、レスキューロボットを無償で貸し出すことが書かれている。テムザックの「T-53援竜」も貸し出されるそうだ。ナンバープレートをつけているから、公道を走れるというのが大きなポイントかな。どれぐらいの申し込みがあるのかということにも興味がある。
今後、レスキューロボットを用いたボランティア活動を国内のレスキューロボット関係者が進めているとのことだ。
小型のレスキューロボットが各地の基幹消防局に配備され、災害が起きればすぐに使える日が早くやってくることを願う。地震直後から実戦で使われるレスキューロボットが出てこないと、研究発表では自分たちの生活に直結していると考えられずに、一般への認知も進まないだろう。
また、人命を救ったとなれば、それだけ話題にもなるし、開発に拍車がかかるかもしれない。
ロボット大国といわれる日本だが、まだまだ社会の中で活躍し、有用であると認知されるロボットは少ない。
産学連携でレスキューロボットや災害対策用ロボットの早急な開発と実用化を期待したい。
災害は待ってはくれないものだしね。
■URL
レスキューロボットコンテスト公式ホームページ
http://www.rescue-robot-contest.org/
長岡技術科学大学 システム安全系 木村研究室
http://sessyu.nagaokaut.ac.jp/~kimuralab/
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・ 通りすがりのロボットウォッチャー 人にできないことをやらんとね(2007/06/22)
米田 裕(よねだ ゆたか)
イラストライター。'57年川崎市生。'82年、小松左京総監督映画『さよならジュピター』にかかわったのをきっかけにSFイラストレーターとなる。その後ライター、編集業も兼務し、ROBODEX2000、2002オフィシャルガイドブックにも執筆。現在は専門学校講師も務める。日本SF作家クラブ会員
2007/07/27 00:16
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