エイチ・ピー・アイ・ジャパンから登場した「G-ROBOTS GR-001」(以下GR-001)は、全高255mm、重量900gの小型軽量ボディながら、20自由度という二足歩行ロボットキットの中でもトップクラスの自由度を実現した、二足歩行ロボットキットだ。GR-001は、双葉電子工業との共同開発によって誕生した製品であり、アクチュエーターとして、双葉電子工業のロボット用小型サーボモーターを採用している。
● 先進的なコマンド式サーボモーターを採用
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エイチ・ピー・アイ・ジャパン「G-ROBOTS GR-001」
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ホビー向けロボットで使われているサーボモーターは、ラジコン用サーボモーターと同じように、PWM信号によって制御されているものが一般的だが(近藤科学のKRS-4013HV/14HVのように、PWM信号とシリアル信号の両方に対応した製品もある)、GR-001では、シリアル信号(RS485)対応のコマンド式サーボモーターが採用されている。PWM式では、波形の幅を変えることで、サーボモーターの角度を指定するが、コマンド式では、コマンドとパラメータを送ることで、サーボモーターを制御することが特徴だ。
PWM式サーボモーターでは、コントロールボードの出力に対してサーボモーターを1対1で接続する必要があるため、サーボモーターの数が増えると、ケーブルの取り回しが面倒になる。しかし、コマンド式サーボモーターでは、サーボモーターをデイジーチェーンで接続したり、USB機器のようにハブを介して接続できるため、ケーブルの取り回しがすっきりするというメリットがある。
また、コントロールボードとサーボモーターが双方向でデータをやりとりできるため、サーボモーターの角度情報や温度情報などを、コントロールボード側で読み込み、それを元に制御を行なうことや、サーボモーターの動作特性を変更することも可能になる。このように、コマンド式サーボモーターは、一般的なPWM式サーボモーターよりも進化したサーボモーターであり、二足歩行ロボットに適したアクチュエーターである。
● 樹脂製フレーム採用で、組み立てが簡単
またGR-001は、樹脂製フレームを採用していることも特徴である。一般的な二足歩行ロボットキットでは、サーボモーターにアルミ製ブラケットをネジで固定し、ブラケット同士やフレームとブラケットをネジで固定していくことで組み立てを行なうため、非常に多数のネジを必要とするが、樹脂製フレームを採用したGR-001は、サーボホルダーにサーボモーターをはめ込んだり、フレームとフレームをはめ込んでいくだけで、本体の組み立てが可能なので、非常に組み立てやすい。ネジ止め箇所はわずか34カ所であり、一般的な二足歩行ロボットキットの3分の1以下だ。GR-001の組み立ては、初めての人でも4、5時間、慣れた人なら2、3時間程度でできるだろう。
また、樹脂製フレームであることを活かして、関節にトルクリミッターが搭載されていることも特筆できる。これは、過大な負荷がかかったときに、フレームとサーボホーンがずれることで、サーボモーターのギヤの破損を防ぐ仕組みである。
● 無線コントローラーも付属しており、モーションも標準で組み込まれている
GR-001は、無線コントローラーも付属しているほか、プロセッシングユニットの「RPU-11」にあらかじめ一通りのサンプルモーションが組み込まれているため、組み立ててすぐに無線で操縦できることも魅力だ。
バッテリには高性能なリチウムポリマー電池を採用し、急速充電器も付属するなど、オールインワンパッケージだ。199,980円という価格は、他の二足歩行ロボットキットに比べるとやや高いが、20自由度を実現していることに加えて、無線コントローラーや急速充電器などが付属していることを考えれば、決して高すぎるというわけではない。樹脂製フレームを採用しており、重量も軽いため、フローリングなどの上で動かしても、床を傷つけることはほとんどない。
このように、GR-001は、新世代の二足歩行ロボットキットとして、魅力的な製品である。それでは、早速組み立て手順を紹介していこう。
● キャリブレーション済みなので、位置出し作業は不要
GR-001は、一般的な二足歩行ロボットキットと同様に、足裏部分から順に上半身に向かって組み立てていく。樹脂製フレームを採用しているため、フレーム同士をはめ込んだり、サーボモーターをフレームにはめ込んで、カバーで止めることで固定が行なえ、ネジ止めが必要な箇所は非常に少ない。
また、出荷時にすべてのサーボモーターのキャリブレーションが完了しており、出力軸のセンターにあわせてサーボホーンが仮止めされているため、サーボモーターの位置出し作業を行なう必要がない。KHRシリーズなどでは、出力軸にサーボホーンやサーボアームを取り付ける際に、サーボモーターとコントロールボードを接続して電源を入れ、センターの位置出しを行なう必要があるが、これはなかなか面倒な作業だ。
また、出力軸とサーボホーンのセレーション(歯のギザギザ)がぴったり合わない場合も多い(組み立て完了後、トリム調整でずれを吸収することになる)。しかし、GR-001の場合、面倒な位置出し作業は不要で、トリム調整も基本的に不要だ。なお、組み立て中にサーボホーンを出力軸から取り外す必要はないが、万一、サーボホーンを外してしまった場合でも、出力軸のセンターを示す凹マークとサーボホーンの切り欠きを合わせて、サーボホーンを取り付ければよい。
コマンド式サーボモーターでは、サーボモーターをID番号によって識別する(PCでいえば、SCSI IDのようなものだと思えばよい)。GR-001で利用する20個のサーボモーターには、あらかじめ1から20までのID番号が割り振られている。そのため、ロボットの各部分に取り付けるサーボモーターのID番号を間違えないように注意が必要だ。
なお、GR-001では外形サイズが同じ2種類のサーボモーターが利用されている。トルクが要求される下半身にはハイトルクタイプの「RS301CR」(トルク7.1kg・cm)、上半身にはスタンダードタイプの「RS302CD」(トルク5kg・cm)が採用されている。さらに、それぞれケーブル長が50mmと100mmの2種類があるので、合計4種類となる。
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「G-ROBOTS GR-001」のパッケージ。パッケージはKHR-2HVなどと同じくらいの大きさで、かなり大きい
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GR-001を構成するパーツ。発泡スチロールの梱包材の中に、整然と配置されている
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20自由度なので、サーボモーターも20個入っている。それぞれのサーボモーターには、1から20のID番号が付けられており、キャリブレーションも行なわれている
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GR-001では、ハイトルクタイプの「RS301CR」とスタンダードタイプの「RS302CD」の2種類のサーボモーターが使われており、それぞれケーブル長は50mmと100mmの2種類がある
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サーボモーターは、あらかじめサーボホーンが仮止めされている
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● 下半身の組み立て作業
今回は、下半身の組み立てを行なう。ネジが少ないので、組み立ては比較的簡単だが、いくつか注意すべきポイントがある。
サーボモーターは、樹脂製フレームにはめ込み、サーボカバーを上からはめ込むことで固定する。このとき、フレームの最後までしっかりはめ込むようにすることが重要だ。パチッという音がしてちゃんと爪がかみ合っているかを確認しよう。サーボモーターの反対軸は、爪をフレームの穴に入れてから、プラブッシュで爪を固定し、その中央にゴムブッシュをはめ込んで固定する。サーボケーブルを反対側から引き出す場合は、ケーブルをゴムブッシュで挟み込んでから、プラブッシュにはめ込む。
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サーボホーンの周囲には90度ごとに凹マークがあり、その数も1,2,3,4と異なっている
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出力軸側は、仮止めされているサーボホーンのネジを外して、樹脂製フレームの上からPOMワッシャーとワッシャーを通して、再びネジを締めることで、サーボホーンとフレームの固定を行なう。サーボホーンの周囲には90度ごとに凹マークがあり、その数も1、2、3、4と異なっているが、この凹マークの位置と数を樹脂製フレームの凹マークに合わせて固定することがポイントだ。また、パーツによっては、左右の区別があるものがあるが、パーツにLまたはRの刻印があるので、その刻印を見ながら、左右を間違えないようにすること。
以上の点さえ注意すれば、初めて二足歩行ロボットを組み立てるという人でも問題なくGR-001を完成させることができるだろう。
● 足裏からすねまでの組み立て
GR-001の組み立ては、足裏からスタートする。まず、足裏パーツに足首パーツを取り付けて、足首サーボホルダーにサーボモーターをはめ込み、足首サーボホルダーを足首に取り付ける。次に、すねを取り付ける。すねを取り付けたら、サーボケーブルのコネクタを中継ハブに接続する。コネクタには向きがあるので、間違えないようにすること(逆にするときちんと入らない)。
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足裏の組み立てに必要なパーツ
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足裏パーツに足首パーツを取り付ける。ネジなどは使わず、パチッとはめ込めばよい
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同様にして、左右の足裏を組み立てたところ。足首パーツには前後があるので、取り付ける向きに注意する
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足首サーボホルダーの組み立てに必要なパーツ
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No.20のサーボモーターを「足首サーボホルダー(L)」にはめ込む。奥までしっかりと差し込むこと
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今度はNo.19のサーボモーターをはめ込む。No.20のサーボモーターのケーブルを挟まないようにする
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「足首サーボホルダーカバー」を取り付ける。同様にして、左右の足首サーボホルダーカバーを組み立てたところ
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足裏と足首の取り付けに必要なパーツ。先ほど組み立てた、足裏と足首サーボホルダーの他に、プラブッシュやラバーブッシュ、POMワッシャー、ワッシャーが必要となる
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まず、足首サーボホルダーを足裏パーツに取り付ける。反対軸側から斜めに差し込んで、出力軸側をはめ込めばよい
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反対軸にプラブッシュをはめ込む。パチッと音がするまでしっかり差し込む
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サーボモーターの出力軸のネジを外す
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外したネジに、POMワッシャー(白色)とワッシャーを通して、再びネジを締める。このとき、足裏のパーツの凹の数と、サーボホーンの凹の数が合うようにすること(この場合の凹の数は3つ)
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反対軸にラバーブッシュを取り付ける
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同様にして、左右の足裏に足首サーボホルダーを取り付けたところ
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すねの取り付けに必要なパーツ
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サーボケーブルをすね(L)に通し、足首と同様に反対軸側から差し込んで取り付ける
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サーボケーブルをプラブッシュに通して、反対軸にはめ込む
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サーボケーブルをラバーブッシュに挟み込み、プラブッシュにはめ込んで取り付ける
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サーボケーブルをフックにひっかけて、中継ハブの一番上の空いているコネクタに接続する。コネクタの向きに注意すること(逆にすると入らない)
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今度は、反対軸から出ているもう1本のサーボケーブル(短いほう)をフックにひっかけて、中継ハブの一番下のコネクタに接続する
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出力軸のネジを外して、POMワッシャーとワッシャーを通して、再びサーボホーンをネジ止めする
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同様にして、左右のすねを取り付けたところ
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● ふとももと股関節の組み立て
今度はふとももと股関節の組み立てだ。基本的な手順はすべて同じなので、どんどん組み立てていくことができるだろう。先ほど組み立てたすねまでの脚部分に、ふとももと股関節を取り付ければ、脚部分が完成する。
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ふとももの組み立てに必要なパーツ
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ふともも(L)にNo.18のサーボモーターをはめ込む。左右があるパーツは、LまたはRの刻印がされているので区別すること
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サーボカバーを取り付け、サーボモーターを固定する
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ふとももをすねに取り付ける。ひざのサーボケーブルをすねに通して、ふとももをはめ込み、プラブッシュで固定する
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サーボケーブルをラバーブッシュで挟み込み、すねのプラブッシュにはめ込んで取り付け、サーボケーブルを中継ハブの中央のコネクタに接続する
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出力軸のネジを外して、POMワッシャーとワッシャーを通して、再びサーボホーンをネジ止めする
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同様にして、左右のふとももをすねに取り付けたところ
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股関節サーボホルダーの組み立てに必要なパーツ
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股関節サーボホルダー(L)にNo.17のサーボモーターをはめ込む
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No.17のサーボケーブルを上から出して、No.16のサーボモーターをはめ込む
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股関節サーボカバーを取り付けて、サーボモーターを固定する
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同様にして、左右の股関節サーボホルダーを組み立てたところ
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股関節サーボホルダーの取り付けに必要なパーツ
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サーボケーブルをふともものパーツに通し、反対軸側からはめ込む
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プラブッシュをはめて、サーボケーブルをラバーブッシュで挟み込み、プラブッシュにはめ込む
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出力軸のネジを外して、POMワッシャーとワッシャーを通し、再びサーボホーンをネジ止めする
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サーボホーンと樹脂製フレームの凹の位置と数が合うように取り付ける(この場合の凹の数は1)
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サーボケーブルを中継ハブに接続する
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同様にして、左右の股関節サーボホルダーを取り付けたところ。これで脚部分が完成
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● ウエスト組み立て
ウエスト部分を組み立てて、ウエスト部分と脚部分を取り付ければ、下半身が完成。メインハブに各部分からの中継コネクタを接続する。
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ウエストの組み立てに必要なパーツ
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ウエスト部品にNo.9とNo.15のサーボモーターを取り付ける。左右のサーボモーターのID番号を間違えないように注意すること
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No.1のサーボモーターを取り付け、サーボカバーをはめ込んで、サーボモーターを固定する
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メインハブカバーにメインハブ(メインスイッチが付いた基板)をはめ込む
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メインハブをウエスト部品に取り付ける。サーボケーブルを横から逃がすのを忘れないように
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3種類のネジが付属しているが、GR-001の組み立てで利用するネジは、中央のT.PバインドネジM2×6mmのみだ(バインドネジM2×6mmやT.PバインドネジM2×8mmは、サーボホーンの固定に使われるが、あらかじめ仮止めされているため、そのネジを利用する)
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股関節の取り付けに必要なパーツ
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電源ケーブルをウエスト部品のフックにひっかけていく
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腹部カバーをウエスト下側に取り付け、ネジで固定する
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脚ヨー軸のサーボホーンの上にPOMワッシャーを載せる
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股関節(L)と股関節(R)をPOMワッシャーの上に載せる。左右を間違えないようにすること
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サーボホーンのネジを外して、POMワッシャーとワッシャーを通し、再びネジでサーボホーンと股関節部品を固定する
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両脚の取り付けに必要なパーツ
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左脚を股関節にはめ込み、プラブッシュをはめる
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プラブッシュにゴムブッシュをはめ込んで固定する。右脚も同じように取り付ける
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出力軸のネジを外して、POMワッシャーとワッシャーを通し、再びネジでサーボホーンを固定する
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メインハブに、ウエストの中継ケーブルと右脚の中継ケーブル、左脚の中継ケーブルを接続する
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これで下半身が完成
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ドライバーをあまり使わずに、樹脂製フレームやプラブッシュをパチッ、パチッとはめ込んでいくことで、ロボットが形になっていくのはなかなか快感だ。次回は、腕などの上半身を組み立てて、GR-001を完成させる予定だ。
■URL
エイチ.ピー.アイ.ジャパン
http://www.hpiracing.co.jp/
製品情報
http://www.hpirobot.jp/
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2007/04/11 00:01
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