【iREX2009】大学や研究機関の各種ロボットが出展された「RT交流プラザ」


 11月25日(水)~11月28日に行なわれた「2009国際ロボット展」では、サービスロボットゾーン内に「RT交流プラザ」という大学・研究機関が出展したゾーンがあった。この記事では各大学ごとに出展内容をレポートする。

 東京工業大学北川・塚越研究室は、レスキューロボット各種を出展していた。瓦礫をジャンプして人名探査を行なうロボット、投擲型ロボットなどのほか、瓦礫を持ち上げるロボット、壁に張り付く小型ロボットなどが展示されていた。またこのほか、水道圧を使ったアクチュエーターをリハビリ機器に応用した研究も展示されていた。

東京工業大学北川・塚越研究室ブース瓦礫をジャンプして人名探査を行なうロボット、投擲型ロボットなどを出展
瓦礫のなかに進入するルートを確保する「Bari-bari-II」壁に張り付いて移動する粘着式移動ロボット「Peta-peta-1」足首屈曲を促す流体ソックス、面状アクチュエータによる手首動作支援ロボット
【動画】面状アクチュエータによる手首動作支援ロボットの動き

 東京工業大学 精密工学研究所 川嶋研究室は、空気圧駆動の外科手術ロボットシステムを出展。マスタースレーブの外科手術ロボットで、スレーブ側に空気圧アクチュエータを使っている点が、他の手術ロボットとの違い。

東京工業大学 精密工学研究所 川嶋研究室ブーススレーブ側に空気圧アクチュエータを採用【動画】マスタースレーブ外科手術ロボット
中央大学ブース

 中央大学からは、ロボット工学・大隅久研究室、バイオメカトロニクス・中村太郎研究室、計測制御工学・國井康晴研究室の3研究室が合同で1つのブースに研究内容を出展。惑星探査ローバーや「つくばチャレンジ」に出場した移動ロボット「Beetle-one」、ソニーの「AIBO」を使った四脚ロボットの移動パターンの研究、水陸両用のアメンボロボットなどが出展されていた。

國井研の惑星探査ローバーつくばチャレンジに出場した移動ロボット「Beetle-one」バイオメカトロニクス研究室のアメンバロボット

 センサフュージョンを研究する東京大学石川・小室研究室は、高速ビジョンシステムを用いたスローイング・バッティングロボットシステムを出展。ロボットがボールを投げて、それを1秒間に1,000枚の画像を処理可能な高速カメラで捉え、ボールの3次元位置を検出し、バットで打つというものだ。スローイングロボット、ビジョンシステム、バッティングロボットと全体では大きなシステムだが、実演も行なわれていた。人間は軌道を予測してバットを振っているが、このロボットはボールの位置を1/1,000秒単位で認識してバット軌道を修正する。

 なお東京大学からは「IRT研究機構」も、屋内用パーソナルモビリティを出展していた。

 明治大学からは武野純一研究室が、ロボットによる鏡像認知を使った「人工意識」の研究を展示していた。

システム全体高速アーム+高速ハンド。4自由度+3本指8自由度バッティングロボット
【動画】スローイング・バッティングロボットシステム【動画】スローモーションでスローイングとバッティングの様子を【動画】空振りすることもある
東京大学IRT研究機構の屋内用パーソナルモビリティ明治大学武野研による鏡像認知によるロボットの意識の研究

 宇都宮大学からは、3つの研究室がそれぞれ別々のブースに出展していた。宇都宮大学大学院システム力学研究室は閉リンクの振る舞いを解析する研究を、モデルを使って解説。宇都宮大学大学院工学研究科 横田和隆研究室ブースでは、視覚的特徴量を使った自己位置判別の研究をパネルとロボットで展示していた。環境の色情報を使っているという。影の影響に関してはあらかじめ各色を分割して判別することで対応しているが、今後は光源の影響を事前に計算するといったアプローチも考えているとのことだった。

 計測・ロボット工学研究室(尾崎研究室)は栃木県の各メーカーと共同で開発した農業用ロボット「イチゴ摘みロボット」と、「つくばチャレンジ」に出場したロボットを出展していた。つくばチャレンジには2台のロボットが出場し、いずれも予選を突破。今回出展されていたロボット「arim」は決勝で220mを記録、もう一台の「ERIE」は課題を見事達成している。

【お詫びと訂正】初出時、つくばチャレンジに出場したロボットについて、誤った成績を記述しておりました。お詫びとともに訂正させていただきます。

宇都宮大学大学院システム力学研究室ブース【動画】リンクの動きを解析するためのモデル宇都宮大学大学院工学研究科 横田和隆研究室ブース
横田和隆研究室のロボット色を用いて自己位置判別を行なう宇都宮大学大学院尾崎研究室ブース
イチゴ摘みロボット【動画】イチゴ摘みロボットのデモつくばチャレンジに出場したロボット「arim」

 東京理科大学小林研究室は、受付ロボットの「SAYA」ほか、マッキベン式人工筋肉を使った歩行アシストロボットや、パワーアシストスーツを出展していた。パワーアシストスーツは着用体験も行なっていた。

東京理科大学小林研究室ブース受付ロボット「SAYA」アクティブ歩行器「ハートステップ」

 電気通信大学 知能機械工学科下条研究室は、フォトトランジスタを使った「ネット状近接覚センサー」を使った研究と、それを全方向移動機構のロボットに適用した「i-carrier」などを出展していた。非接触で人間や環境の障害物などの接近を検知できるセンサーで、マトリクス状の抵抗ネットワークにフォトトランジスタを挟み込んだ3層構造になっている。大面積化が可能で自由曲面に配置できるので、ロボットの全身を被覆することができるという。

 「i-carrier」は上面にもセンサーを配置。センサーを使って搬送物の中心を検出して自動的に搬送物の真下に移動したり、側面センサーで障害物を避けることで、インテリジェントなキャリーロボットや椅子のようなロボットとしての応用を考えているという。車輪部分には全方向移動でき、なおかつ直径を大きくしたことで段差を乗り越える走破性を持たせた「Omni-Ball」を開発して使っている。

近接覚センサーのデモンストレーションロボットハンドでの把持にも応用可能【動画】下条研究室の近接覚センサーを使ったロボットアームのデモ
全方向移動ロボット「i-carrier」上面にもセンサーを配置従来のオムニホイール(右)よりも走破性を高めたオムニボール(左)

 電気通信大学大学院長井研究室は、「RoboCup」の家庭用ロボット部門である「@ホームリーグ」で国内で優勝、2009年の世界大会で準優勝したロボット「DiGORO(ダイゴロー)」を出展。このロボットは電気通信大学、NICT、玉川大学との共同研究で構築されたもの。下半身はSegwayで、上半身には6自由度の腕を2本、CCDカメラと赤外線カメラを備える。カメラで物体認識、位置を計測し、アームで把持して操ることができる。また音声認識機能も持つ。

 電気通信大学田口研究室は、スケーティングロボットロボットを静展示。平面では滑走することで高速移動するというアイデアだ。

【動画】ステージでのデモの様子。DiGORO登場【動画】DiGOROの自己紹介【動画】事前に覚えたペットボトルとバケツの形状をもとに認識してペットボトルをバケツに入れる
電通大田口研究室のスケーティングロボット「BSR-2」

 東京電機大学/理研/情報通信研究機構(NiCT)は、レスキューロボットシステム各種を出展。有線・無線ハイブリッドネットワークを安定して構築するためのロボットシステムの研究をしており、今は通信速度を一つの基準としてアドホックにネットワークを構築できるシステムの研究をしているという。

 京都大学/東北大学/国際レスキューシステム研究機構は、NEDOの「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」での自律移動ロボット用のRTC関連の研究をパネルとロボットで出展していた。

 首都大学東京システムデザイン学部 山口研究室は、知能化した車椅子ロボットを出展していた。このロボットについても本誌で何度かレポートしているので詳細はそちらをご覧頂きたい。

レスキューロボット「Kenaf」アドホックネットワークを作るためのロボットシステム。親ロボットが無線ノードとなる子ロボットを適切な場所でおろしていく
京都大学/東北大学/国際レスキューシステム研究機構ブースのロボット首都大学東京システムデザイン学部 山口研究室の電動車椅子型ロボット

 消防庁消防大学校 消防研究センターは、消防用のレスキューロボット「FRIGO」を出展。消防研究センターの研究をベースに三菱電機特機システム株式会社と商品化開発を行ったロボットだ。防水、防塵、耐衝撃、非着火性などの耐環境性能を持ち、簡単な操作で扱え、搬送可能な軽量システムとなっている。新産業創造研究機構のブースでは、株式会社エスケイバンと有限会社姫路ソフトワークスのロボットが出展されていた。

消防用レスキューロボット「FRIGO」
新産業創造研究機構ブースエスケイバンと姫路ソフトワークスのロボット姫路ソフトワークスのコントロールボード「HSWB-03FS」。双葉電子工業のコマンド方式サーボに対応。近藤科学のサーボモータを使うことも可能

 東京農工大学遠山研究室は、超音波モーターを使った配管検査ロボットや、農作業用のパワーアシストスーツをパネルで解説していた。間もなく新型のパワースーツを発表する予定だという。早稲田大学 人間科学学術院可部研究室は、認知症の予防を支援するための赤ちゃん型ロボット「Herby」、笑いで免疫力の向上を支援する「Toccoちゃん」、鬱病の早期発見システムなどを出展していた。

超音波モーター赤ちゃん型ロボット「Herby」笑いで免疫力の向上を支援する「Toccoちゃん」

 静岡大学松丸隆文研究室は、前後の床に画像を提示できるプロジェクターを搭載した移動ロボットを使って、「ステップ・オン・インターフェイス」のアプリケーションをデモしていた。デモしていたアプリケーションは簡単なゲームのようなもので3種類。プロジェクションされた画像を踏むことでゲームをプレイする。リハビリなどにも使えるのではないかという。

【動画】動物のしっぽを踏むゲーム【動画】爆弾の爆発を踏んで止めるゲーム【動画】歩行訓練等のリハビリ用ゲーム


(森山和道)

2009/12/1 19:31