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1kg以下級二足歩行ロボット大会「U1K」レポート


 1月18日(日)、東京・秋葉原のアールティにおいて、アールティ主催の「U1K」が開催された。U1Kは、Under 1kgの略で、その名の通り、重量1kg以内の二足歩行ロボットによる大会である。ROBO-ONEを代表とするロボットバトル大会では、基本的にロボットの重量が大きい方が有利であるため、年々大型化・重量化が進んでおり、大会によっては軽量級と重量級を分けて行なわれている。しかし、大型ロボットの製作には、多大な費用がかかり、強力サーボを使うために、指などを挟まれたり、倒れたりした場合の危険性も大きくなる。また、モーション作成にも広いスペースを必要とするなど、製作のハードルが高い。大型の二足歩行ロボットを作るということには、確かにロマンを感じるというか、憧れるのも理解できるのだが、サイズが大きくなれば、その分、消費するリソースやエネルギーは増えるわけで、環境には優しくない。

 そうした中、開催されたU1Kは、大型化が進む二足歩行ホビーロボット界への1つのアンチテーゼともいえそうだ。もちろん、小型で軽い二足歩行ロボットを作ることも、決して簡単なことではない。サーボの数を減らしたり、小型軽量だが非力なマイクロサーボを使うなど、ノウハウや工夫が必要になる。小型軽量でキビキビ動く二足歩行ロボットは、狭いスペースでも気軽に動かせるので、日本の住宅事情にもマッチする。


U1Kのレギュレーション

合計12台のロボットが参加したが、フリューゲルは未完成で棄権となった
 U1Kのレギュレーションは、身長60cm以内、重量1kg以内、さらに腕部6サーボ、脚部8サーボで、合計15軸以上の二足歩行可能な機体とされている。単に軽くするだけなら、サーボを極力減らしたロボットを作ればいいのだが、15軸以上という規定があるため、その手は使えない。また、足裏の最大長は12cm以内、腕を広げたときの最大長は60cm以内と規定されている。市販の二足歩行ホビーロボットで、無改造でU1Kのレギュレーションを満たす製品は、エイチ・ピー・アイ・ジャパンの「G-ROBOTS GR-001」(重量900g)とタカラトミーの「i-SOBOT」(重量350g)、創和の「PLEN」(重量700g)くらいだ。そのため、出場ロボットは自作機が多く、今回出場した全12台のロボットのうち7台が自作機、3台がi-SOBOT、2台がG-ROBOTS GR-001であった。


U1Kの競技ルール

 今回のU1Kでは、メイン競技となるパイロンアタックと、希望者のみで行なわれるバトルカップの2つの競技が行なわれた。パイロンアタックは、90cm四方のリングの対角位置にパイロンを置き、相手側のパイロンを先にリングから落としたほうが勝ちというシンプルなルールだ。勝負は3セットマッチで行なわれ、先に2セットとれば勝ちだ。なお、中央には障害物として4つの黒い硬質スポンジブロックが置かれる。相手機への攻撃も許されており、リング上でダウンしても負けにはならないが、ダウンからの起き上がり時にリングより落ちると敗北となる。また、操作ミスなどで、リングから落ちてしまった場合も負けとなる。i-SOBOTは、他の機体に比べて重量が半分以下しかなく不利なので、ハンディとしてi-SOBOT側のパイロンは、ガムテープの中に置かれる。

 バトルカップは、90cm四方のリングでのバトルであり、3回ダウン(自分から倒れた場合も含む)するか、ダウン後10カウント以内に起き上がれない場合、リング外に出た場合は負けとなる。


パイロンアタックの様子。リングは90cm四方の正方形で、対角位置にパイロンが置かれ、中央には4つの障害物が置かれる。相手側のパイロンを先にリングの外に落としたほうが勝ち i-SOBOTと他の機体との対戦時は、ハンディとして、i-SOBOT側のパイロンはガムテープの中に置かれる

パイロンアタックの優勝はG-ROBOTSベースのデモ機5号

競技はトーナメント形式で行なわれた
 パイロンアタックは、全12台のロボットによるトーナメント形式で行なわれた。1kg以下のロボット同士の戦いは、大型機に比べて迫力という点では見劣りするが、大型機に負けない機動性を実現していた機体もあり、見ていてもなかなか面白かった。操縦者によって戦略も異なり、パイロンを落とすことよりも相手機体を追い詰めて倒し、リングアウトを狙う人もいた。各ロボットの対戦の様子は以下の動画を見てほしいが、特に強かったのがG-ROBOTSベースの「デモ機5号」(UE村さん)と「ソウガ」(イガアさん)だ。両者の戦いとなった決勝戦は、スピード感にあふれた素晴らしいものであった。「ソウガ」は投げにこだわっていたようだが、操縦テクニックのうまさで素早くパイロンを倒した「デモ機5号」に軍配が上がった。準優勝は「ソウガ」、3位は「種子島」となった。各賞として敢闘賞が「種子島」に、技能賞が「ME-09」に、努力賞が「Emillio」に与えられた。

 また、i-SOBOTはハンディをつけても不利だということで、i-SOBOT同士のトーナメントも急遽行なわれることになったが、こちらはKENTAさんが操る機体が優勝した。


【動画】G-ROBOTベースの「Gボロット」(奥)と自作機「Black Rabbit」との戦いの様子。2-1で「Black Rabbit」が勝利 【動画】自作機「Emillio」(手前)と「i-SOBOT(マルちゃん)」との戦いの様子。2-0で「Emillio」の勝利。さすがに体重差と移動速度の差が大きすぎて、i-SOBOTでは苦しそう 【動画】自作機「ダンプティー」(奥)と「i-SOBOT(KENTA機)」との戦いの様子。2-0で「ダンプティー」の勝利。「ダンプティー」は、総予算3万5,000円で作ったという

【動画】緑色の機体「Emillio」(奥)と「種子島」との戦いの様子。2-0で「種子島」の勝利 【動画】i-SOBOTベースの「たかそぼっと」(奥)と自作機「ME-09」との戦いの様子。2-1で「ME-09」の勝利 【動画】「ダンプティー」(奥)と「ソウガ」の戦いの様子。「ソウガ」の見事な投げが炸裂し、「ダンプティー」がリングアウト。2-0で「ソウガ」の勝利

【動画】「デモ機5号」(奥)と「種子島」との戦いの様子。2-0で「デモ機5号」の勝利 【動画】「ME-09」(奥)と「ソウガ」の戦いの様子。2-1で「ソウガ」の勝利

【動画】3位決定戦は、「ME-09」(奥)vs「種子島」の戦いとなり、2-1で「種子島」の勝利 【動画】3位決定戦の続き。「種子島」は相手側パイロンの近くで転倒したものの、起き上がりでパイロンを落とすことに成功

【動画】決勝戦は「ソウガ」(手前)vs「デモ機5号」の戦いとなった。両機体とも素晴らしい動きだ。最初のセットは、「ソウガ」が勢い余ってリング外に落ちてしまい、「デモ機5号」の勝利 【動画】決勝戦の2セット目。「ソウガ」の投げにより「デモ機5号」がリングアウトし、「ソウガ」の勝利 【動画】決勝戦の最終セット。わずかな差で、「デモ機5号」が先に相手側パイロンを落とすことに成功。トータル2-1で「デモ機5号」が優勝

【動画】急遽、i-SOBOTだけでのトーナメントが行なわれることになった。第1試合は「たかそぼっと」vs「i-SOBOT(KENTA機)」。手前のKENTA機が2-0で勝利 【動画】「たかそぼっと」vs「i-SOBOT(KENTA機)」との勝負の続き。KENTA機が先に相手側のパイロンを落とすことに成功

【動画】i-SOBOTトーナメントの決勝戦。90cmのリングだと広すぎて時間がかかるので、30cm四方のリングで戦うことに変更。「i-SOBOT(KENTA機)」vs「i-SOBOT(丸ちゃん)」の戦いは、2-0でKENTA機の勝利 パイロンアタックトーナメントの結果

バトルカップの優勝は「ソウガ」

 パイロンアタックの終了後、希望者によるバトルカップが行なわれた。参加ロボットは、「ソウガ」「ダンプティー」「デモ機5号」「ME-09」「Black Rabbit」の5台で、総当たりのリーグ戦が実施された。バトルカップで優勝したのは4勝0敗の「ソウガ」で、準優勝が3勝1敗の「ダンプティー」。以下、「デモ機5号」、「ME-09」、「Black Rabbit」という順位である。「ソウガ」はやはり投げにこだわったところが勝因であろう。「Black Rabbit」は起き上がりモーションが完成しておらず、リング上で倒れたらその時点で負けになってしまっていた。


【動画】「ソウガ」(左)vs「ダンプティー」の戦いの様子。「ダンプティー」に「ソウガ」の投げが決まり、ダウンから復帰しようとしてリング外に落下。「ソウガ」の勝利 【動画】「Black Rabbit」(手前)vs「ME-09」の戦いの様子。「Black Rabbit」には起き上がりモーションが実装されておらず、ダウン後そのまま10カウント負けとなった 【動画】「デモ機5号」(手前)vs「ソウガ」の戦いの様子。最初に「デモ機5号」のパンチが「ソウガ」にカウンター気味にヒットして1ダウンを奪うが、その後「ソウガ」が投げを連発し、3-1で勝利

【動画】「ダンプティー」(左)vs「Black Rabbit」の戦いの様子。「Black Rabbit」が起き上がれず、「ダンプティー」の勝利 【動画】「ME-09」(左)vs「デモ機5号」の戦いの様子。「ME-09」がダウン後、起き上がろうとしてリングから落下してしまい、「デモ機5号」の勝利 【動画】「ソウガ」(左)vs「Black Rabbit」の戦いの様子。「Black Rabbit」が起き上がれず「ソウガ」の勝利

【動画】「ダンプティー」(手前)vs「デモ機5号」の戦いの様子。3-0で「ダンプティー」が勝利 【動画】「ソウガ」(左)vs「ME-09」の戦いの様子。「ME-09」がリングアウトしてしまい、「ソウガ」の勝利

【動画】「デモ機5号」(左)vs「Black Rabbit」の戦いの様子。「Black Rabbit」が起き上がれず「デモ機5号」の勝利 【動画】「ME-09」(左)vs「ダンプティー」の戦いの様子。「ME-09」がリングアウトしてしまい、「ダンプティー」の勝利

 1kg以下の二足歩行ロボットということで、ユニークな自作機が多かったが、その中でも印象に残った機体としては、まこさん製作の「ME-09」があげられる。「ME-09」は、サーボモーターを分解してモーターや制御基板を取り出し、自作ギアとフレームと組み合わせていることが特徴だ。ギアとフレームを一体化することで、軽量化に貢献。全長33cmという、1kg以下級としては背の高い機体を実現した。


まこさん製作の「ME-09」。軽量化のためにサーボモーターを自作し、ギアとフレームが一体化した構造を採用している 「ME-09」の足部分のアップ

大同工業大学ロボット工房の仙人&少佐さん製作の「ダンプティー」。15軸ながら総予算3万5,000円という低価格が特徴だ 「ダンプティー」では、価格を抑えるためにコントロールボードも自作したという

UE村さんの「デモ機5号」。G-ROBOTSベースだが、トルクリミッタ機構が働かないように改造を施している Kさん製作の「Black Rabbit」。腕が非常に細い。サーボモーターにはMicroMGを利用

 U1Kの次回開催は未定とのことだが、3月15日に開催された「ROBO-ONE on PC/Sat.3rd発表会」内で、ROBO-ONE 1kg以下級大会が実施されたこともあり、1kg以下の二足歩行ロボットへの注目が集まっている。このクラスの二足歩行ホビーロボットの進化にも期待したい。


URL
  アールティ
  http://www.rt-net.jp


( 石井英男 )
2009/03/18 15:27

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